Infinite Stratos ~Pupil to Beni from Ao~《瞳は蒼から紅へ》 作:ぬっく~
学園祭襲撃から大分経ち、寮で夕食をいつものメンバーで摂っている時だった。
「一夏の誕生日って、今月なんだ」
「おう」
シャルロットが初めて、一夏の誕生日を知った時だった。
「いつなの?」
「9月の27日だ」
「確か、その日は………」
9月27日はISの高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』当日なのだ。
「となると、4時ぐらいでいいかな」
「そうだね」
キャノンボール・ファスト。
本来は国際大会として行われるが、IS学園では少し状況が違った。
市の特別イベントとして催される為、学園の生徒たちが参加するのだ。
と言っても専用機持ちが圧倒的に有利な為、一般部門と専用機部門に別れてレースが行われる。
さらに、学園外にある市のISアリーナを使用するそうだ。
「ん?となると高機動調整をしないといけないな」
「基本的には高機動用のパッケージのインストールだが、白式には無いだろう」
プチトマトを頬張りながら告げるラウラ。
「その場合だと駆動エネルギーの分配調整とか、各スラスターの出力調整をすることになるね」
白身魚のフライをかじるシャルロットが、言葉を続ける。
「なるほど、確か高機動パッケージって臨海学校の時に………」
「ええ、わたくしのブルー・ティアーズには、主に高機動戦闘を主眼に据えたパッケージ
『ストライク・ガンナー』が搭載されていますわ!」
誇らしげに腕を胸を押さえるセシリア。
(全員、何とか専用機は修復できたからいいが、奴らに勝てるのだろうか………)
『亡国機業』ーー『ファントム・タスク』は学園祭襲撃以降、特に動きを見せていない。
(今、考えても仕方ないか)
少なくともーー今は。
そう思った俺は、キャノンボール・ファストに意識を戻した。
「となると、セシリアが有利だよなぁ」
「そうですね」
(瞬動術を使えば少しぐらいなら、対応できるだろう)
「つうかさぁ、うちの国はなにやってんだか。結局『
「『リヴァイヴ』は元々、第二世代だからこれ以上の開発がないから、増設ブースターで対応するよ」
シャルロットの愛機、リヴァイヴの正式名称は『
あーーなるほど、納得だ。
「ふーん。ラウラんところはどうするの?そっちも第三世代なんでしょ?」
「姉妹機にある高機動パッケージを調整して使うことになるだろう」
大体、全員の専用機の準備はできていた。
箒は除いて。
「一夏、あんた生徒会の貸し出しまだなわけ?」
「今は抽選と調整で無理だ」
「ふーん………」
学園祭の結果発表で見事に勝ったのは生徒会だった。
楯無先輩の罠に嵌められた哀れな女子どものせいで、俺は生徒会に強制的に入れられる事になった。
それだけなら良かったのだが、周りの生徒が五月蠅いと言うことで………
『織斑一夏の貸し出し』ってことで騒ぎは落ち着いた。
「簪はどうするんだろな」
簪には
高速移動するなら、
(まあ、あれを使われたらレースすらならないだろう…………)
雷天大壮は秒速150Km、疾風迅雷は雷天大壮ほど速くはないが高機動パッケージなど足元に及ばないほどの速度は出せる。
なんだかんだ、ちょうど食事も終わり俺はトレーを片付け、食堂を後にした。
◇
「さて、これでよしっと」
IS学園外の市のホテルのスイートルームでは、一着数十万はするだろうドレスを身に着けた女性がいた。
「…………」
その横には『サイレント・ゼフィルス』の操縦者、エムがいた。
「なぁに、エム。まだ食事に行くことに不満なのかしら?」
「……私が同行する理由がない」
「あるわよ。私の護衛が必要じゃぁなぁい?」
「笑わせるな。スコール」
スコールと呼ばれる女性とそのISの性能を知っていたエム……いや、織斑マドカにして見れば、皮肉しかない。
「さて、行こうかしら」
「ふん……」
「少しくらい笑いなさいよ。今日はあの、ISの最初の開発者である篠ノ之束とご対面なのだから」
「…………」
結局、マドカはスコールの後に続いた。
◇
「うん、うん。このお肉おいしいねぇ。あ、わいーん」
束は遠慮なしに飲み食いしていた。
「お気に召したか?束博士」
「んー、そうだねー。睡眠薬入りのスープ以外はね~」
企みを暴かれも、顔色ひとつ変えないスコール。
スコールは両肘を立てて、笑顔を絶やずにいた。
「それで、束博士。我々、
「あははー、いやだよー」
ISのコアを作れるのはこの世界では彼女だけだった。
「そこをなんとか…………」
「お断りしまーす」
束は、スコールの話を断る。
「どうしても、ですか?」
「うん」
「では、これならどうですか?」
スコールは指を鳴らし、後ろからオータムが束の頭に銃を突き付ける。
「………まっくん。やってもいいよ」
「はぁ!?」
『
オータムは横に吹き飛ばされる。
「!?」
先程まで誰もいなかったはずなのに、そこには渦巻の面をした者がいた。
黒地に赤雲の模様が描かれた外套のようなものと笠を装束とした服装を着ていた。
「お疲れ、まっくん」
束はまっくんと呼ばれる者の隣に立ち、優しく微笑む。
「くっ………」
これは、スコールの完全な誤算だった。
オータムがやられても、最悪の場合は自らのISである『ゴールデン・ドーン』を使ってねじ伏せようと考えていたが……
面の男を前にISを起動させても勝てるかどうかも分からない。
それより前に、ISすら起動させるだけの隙があるだろうか。
「~♪」
束を前にスコールは奥歯を噛み締める。
しかし、そこで状況が変わる。
「動くな」
外で待機していたマドカが『サイレント・ゼフィルス』を展開状態でレストランに入ってきた。
(ーーやったわ。エム、いいタイミングよ)
これで五分五分の勝負ができると思っていたがーー甘かった。
「ふぅん……面白い機体に乗っているねぇ。まっくん、殺しちゃダメだよ」
『
面の男はマドカを引き寄せる。
「!?」
マドカは何も出来ず首を掴まれる。
「こんなの……!?」
首を掴まれた瞬間、『サイレント・ゼフィルス』のエネルギーが急激に減り始めた。
「なんだ、これは……」
あっという間に『サイレント・ゼフィルス』は燃料切れを起こし、解除されてしまった。
「…………」
束はマドカの顔を見て動かない。
マドカは動けなかった。
動けば、消される。
「あは」
「……?」
「あははははっ!キミ、名前何って言うの?」
いきなりの哄笑に、戸惑うマドカ。
「…………」
「あは、当ててみようか?」
相当可笑しく、束は腹を抱えて笑う。
「織斑ーーマドカ、でしょ?」
「「!?」」
スコールとマドカは同時に驚いた表情を浮かべた。
「当たった!へへ」
束は考える仕草をしてから、スコールの方を向いた。
「この子、もらっていい?」
「え!?」
驚きの声を出したのはマドカだった。
「そ、それはちょっと…………」
スコールは渋る顔しか出来なかった。
「なんだよー、ケチだなぁ、まどっちを縛っているのはキミなんだ………」
束はどこらからか、大きな鍵を取り出す。
「じゃあ、今からまどっちを自由にしてあげる」
束はスコールに向かって指さし、唱えた。
「リライト」
スコールは花びらとなって消えてしまった。
「す、スコール!!」
起き上がったオータムが消えるスコールを見て、叫ぶ。
「まだ生きていたんだ。じぁあね………リライト」
オータムは何も出来ず、消えてしまった。
「まどっち、まーくん。行こうか」
マドカは何も言えず、束の後をついて行くことしか出来なかった。