「うん、美味しい。ありがとう○○さん」
「気に入ってもらえて何よりだよ」
私は魔法少女とお茶会をしていた。お茶会の相手は七海やちよ。年上の私よりもしっかりしていて、女子大学生兼ファッションモデルという二足の草鞋を履いたうえに、魔法少女までしているという優れた女性だ。
「ちゃんと、食べてるの? カップ麺やレトルトのゴミがたくさんあるのだけれど」
部屋にあるゴミ箱を見て、私の食生活に対して心配する彼女。
「今週は忙しくてね。料理する暇がなかったんだ」
一人暮らしなので、一応最低限料理はできる。今週は忙しかったので、簡単なもので済ませたのだ。
ふーん、そうなのね…と彼女は顎に手を当て、何かを考え込む仕草をする。
「それじゃあ、こうしましょう。○○さんには私含めて、いつもお世話になってるからみかづき荘でご飯を出してあげる。一応食費代は出してもらうけど、」
「いや、それはみんなに悪いよ」
女性のみしかいないみかづき荘(そのほとんどが思春期の少女)という空間。そこに知り合いとはいえ、男がいたら彼女達は不安になるだろう。
「いろは達なら、歓迎するはずよ。それに、〇〇さんは変な気を起こす人ではないでしょ」
「それはそうだけど」
家主から家に来てもいいというお墨付きをもらっても、踏ん切りがつかなかった。今まで恋人のいなかった私にとって、女性の家に入るという行為が聖域を踏み荒らすように思えて、気が引けてしまう。別に大した事じゃないでしょと思う人がいるかもしれないが、私は違う。
「あのー」
学生時代はオタク気質のある男同士でグループを作って過ごしていたことから、女性と話す機会はあまりなかった。あっても、学校行事などで偶に話すくらいだった。遠巻きに、他人の陰口や噂話をするクラスメイトの女子を見ているだけだった。そういう話が苦手だった私は、自分の話題が出ないように善良な生徒として過ごしてきた。小中高ずっと同じだった。
「ねえってば」
そんな人間に彼女など作れるはずもない。そういう青春を過ごしてきたからこそ、女性を触れてはいけない存在と扱ってしまい、無意識的に遠ざけてきた(相手は私を気に留めてもないが)。家族の女性とは違い、性別も違う。ああ、そうか。私は女という生物が苦手だったのだ。
そう、だかr
「〇〇さん!聞いてる?」
だんだん変な考えに向かっていた私の思考は彼女の声によって、遮られた。私が考え込んでる間に、何度も話しかけていたらしい。私は彼女に謝罪しようとして、彼女の方向を向こうとする。頭を上げると、彼女の顔が目の前にあった。
「!?」
青い長髪。青い瞳。長い睫毛。整った顔。処女雪のようにきれいな白い肌。美人だとは前から思っていたが、近くで見ると彼女の美貌がよく理解できる。謝罪の事も忘れて、彼女を見つめていた。
「そんなにまじまじと見られると、恥ずかしいのだけれど」
「あっ、ごめん」
慌てて、後ろに下がる。ギロリ、と冷たいまなざしが私に突き刺さる。少し怖い。
「まあ、いいわ。話をもどすわよ」
「それなんだけど、ご飯を私の家に持ってきてもらうのはどうかな。ご飯食べるときに、みかづき荘の誰かをアプリで呼び出せば。」
デリバリーみかづき荘みたいな。我ながらに良いアイデアなのでは。私は美味しいご飯を食べれて、やちよからの心配もなくなる。一石二鳥だ。
あれ、やちよの様子がおかしい。私のアイデアを聞いて、彼女はすこし俯いていた。
「分かりました。○○さんの案にします」
彼女は私の案に、少し怒気を含めたような、呆れがまじったような声で賛同した。
「そろそろ時間なので、アプリでみかづき荘まで送ってください」
「えっ、あっはい」
しまった。彼女を怒らせてしまった。ここまで、アプローチをしてくれていたのに、私は彼女の善意を無下にしてしまったのだ。彼女は私に信頼していてくれたのに。
「あっ、待って!」
「何です?」
このままでは彼女に誤解されてしまう。だから、自分の思いを伝えなくては
「今は無理だけど、いつか、絶対みかづき荘に招待してほしい。」
「言質とったからね、○○さん」
さっきまでの態度が嘘だったかのように、彼女は満面の笑みを浮かべる。
「えっ、あれっ。怒ってたんじゃないの?」
「ごめんなさい。少し鎌をかけさせてもらったの」
困惑する私をおいて、彼女は話を続ける。
「仲良くなったから、いつかは○○さんのことをみかづき荘に招待しようと思っていたのは本当。でも、男の人を招くのは初めてだから、○○さんのことをちゃんとした人か確認したかったの」
「まあ、女の子をアプリで、自宅にポンポン呼び出してる○○さんがちゃんとした人かは疑問だけどね」
さっきまで渋っていた私に、ぐさりと言葉の槍を刺す。
「うっ、その言い方は辞めてくれ。まるで、私がいかがわしいことをしている人間にみえてしまう。」
「あら、違うの?」
「違う‼」
私のことをからかって、クスクスと笑う彼女。私は羞恥心と照れが混ざったような気持ちになった。この気持ちを誤魔化すために、彼女をみかづき荘に送るための準備をすることにした。
「ほ、ほら。アプリを起動したから。忘れ物とかない(疑問)?無いよね(確認)無いな(理解)」
「えっ、ちょっ、ちょっと○○さん。まっ」
私はアプリを使用して、彼女を送還した。
sideやちよ
気が付くと、私はみかづき荘の目の前にいた。
私が静止させようとするのを無視して、またねの一言もなしに送り返されたのだ。
「次会ったら、文句言おう」
でも、からかい過ぎた私も悪い。彼が面白いから、ついからかってしまった。私はそういうタイプの人間じゃないのに。反省のために自分の行動を振り返る。
さっきまで、彼の顔に至近距離まで接近したことを思い出す。あと少し接近したら、
やちよはその先を想像してしまい、赤面した。
「あれはそういうのじゃないから」
そう、彼はあくまで友人。話を聞いてくれたり、色々と助けてくれる人。恩人。
だから、この鼓動はそういうのじゃないから。
自分にそう言い聞かせて、やちよはドアを開け、自分の帰る場所みかづき荘に入った。
やちよさん、可愛いよね。しっかり者だし、ベテラン。
でも、彼女の甘えるところとか見てみたいですよね。普段はみかづき荘のお母さんしてるから、たまには甘えてほしい。
小説の分量について(作者は小説1000字書くのでも、キツイです)
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今の分量で満足(作者に任せる)
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時間をかけて 3000字〜4000字
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同上 5000字〜6000字