転生したと思ったら過去の日本だった…ここM県S市ってまじで? 作:山吹乙女
転生と聞くと普通は異世界であったり現代であったり、はたまた未来の世界であったりを想像することもあるだろうが、近未来どころか過去の世界であった場合はほんの少しガッカリしてしまうことは、当事者になって考えてみると想像に難くない。
Switchどころかファミコンすらなく、スマホどころかポケベルすらない。今で言うところの未来を知ってしまった自分としては石器時代のような世界に生まれ直してしまったのだと己の身を呪ったものだ。何よりまた同じように退屈な学生生活を送らなければならないのも拍車をかけた。
そんな私であるが故に、見た目は子供だが精神状態は大人なので、周りの子供達と遊ぶことは遊ぶが、同年代の子供と比べると驚くほど大人しく、驚くほど融通が利き、驚くほど都合の良い私は、両親からコレといった虐待をされずにしっかりした子供だからと半ば放任的に育てられたのは明確に良かった点とも言える。
そんな私も小学生の最終学年に上がると奇妙な体験をした。学校のクラスが変わり、新学期が始まってからの同じクラスの中に吉良吉影という金髪の子供がいたのだ。その時の私は偶然の一致もあるものだと感心したが、私自身も珍しい名前から彼との接点を持つために会話をしてみるとかなり気の合う人物であった
しかし彼との会話の節々には過酷な家庭環境と、親からの教育方針の厳しさが見え隠れしており何かと引っかかった。聞いた限りだが、それは自分が知る吉良吉影の人生と瓜二つであったからだ。
そこで私は放課後に調べ物をするため街の図書館に寄り、思い当たるキーワードの幾つかを調べることにすると見つけてしまった
一代で巨万の富を築いた世界的大富豪であるスピードワゴン財団の初代会長であるロバート・E・O・スピードワゴンに、世界的不動産王として知られるジョセフ・ジョースターという偶然の一致ではない名前と、当時のナチス軍を語る伝記のようなものには、機械の体を持って戦場で活躍したシュトロハイムらしき人物が、名前は伏せられていたが知ってる人なら気づくように書かれていた。
いや…なんてことだ…ここは『ジョジョの奇妙な冒険の世界』だったのか…道理でこの場所が杜王町という聞いたことのある名前だと思ったわけだ。しかも時代的には吉良吉影と同い年なので三部のスターダストクルセイダーズもまだ始まっていないということか
ということはこの世界なら方法自体は分からないが、スタンドの矢が無くともスタンド能力に目覚める可能性があるということか、花京院などの前例もあるし。
欲しいな…うん、あると分かるとどうしても欲しくなってくるものだ。前世の自分もよく考えたものだ。いや、誰だって考えたことくらいあるだろう、どう言った能力になるか、どう言った見た目になるかなど、年頃の男の子なら考えなかったことはないだろう。となるとまずはスタンドが存在するということを自覚することからだろうか、エンヤ婆も言っていたが出来て当然と思うことから始めることにするか。
◆◆◆
新学年に上がってから僕に新しく友達が出来た。名前を
普段はやらないが、勉強もスポーツも人並み以上に出来る僕からしてみても彼は飛び抜けて優秀に見えた。しかしその能力を誰かに誇示することはなく、至って普通を装っている。そう装っているのだ、外面だけならどこにでもいる優等生でそれだけであるが、僕のように人には言えない特殊な性癖でも持ち合わせているかのように装っているのだ
そう言う点も僕が彼に同族嫌悪じゃあない、ちょっとした親近感を持ち合わせている所以なのかもしれない
あとは単純に話が合うのも関係しているだろう、どこかで聞いた話だが、人間のIQが二十違うと会話が成立しないと言っていたが、そう言うことなら僕と彼の地頭は似通っているのだろう。
「またテストでいい点数を取ったそうじゃあないか、羨ましいな」
「ハハッ、何を言うんだ。君が本気になったら私なんて足元にも及ばないだろう?最も本気になって私に負ける可能性が少しでもあるのだから、あえて手を抜いて言い訳できるようにしているのだろうし」
「はぁ、君は分かっててそれを言うのか…」
「分かってて言うさ」
「まったく…」
彼に出会ってからの時間は少しだったが、親友とも呼べる関係性になったんじゃあないかと我ながら思う。単純かもしれんがね
しかし彼の容姿が非常に優れており、手の白さなんて他の女性では到底出せないような美術品のような美しさを持っていたのも原因かもしれない。待てよ?もしやコレを籠絡というんじゃあないだろうか?…まぁいい
◆◆◆
吉影の様子がどうやらおかしい…いや、違うな…普通であることがおかしいんだ。吉良吉影といえば女性の手に異常な執着を見せ、定期的に訪れる殺人衝動を爪の長さを測って計算している…というのが私が考えていた吉良吉影の人物像であり、一七歳に初の殺人を犯すような親友ではあるがヤバいやつのはずなのだが、それらしい兆候が見られない。
女性とお付き合いしてたりするが、健全的でその女性の手に対しての異様な執着はあまり見られない
彼女をほったらかして、定期的に遊んで力試しと言って腕相撲をよくやってくれて話を聞けるので、どれだけ女性の手に対してのめり込んでいるのか、こちらとしても用心してできる限り悲劇は避けたいと思っていたところだったんだが…ずいぶんと肩透かしを食らったものだ。
まぁ親友の殺人なんて起こらない方がいいに決まっているので、現状に概ね満足している。しかし今日は吉影から夜中に肝試しをしたいといきなり言い出したので面を食らった。吉影もホラーは苦手じゃあないが、好んで見るような人ではなかったはずだが…
「肝試しと言ってもいささか時期が早すぎないか?まだ梅雨に入ってないぞ?」
「あぁ、いいんだ…新学期に入って時間も出来たからね…」
「しかし一七歳か、案外お互い変わらないものだな」
肝試しの場所が古びた洋館のような出立ちをしていて結構雰囲気は出てるな。ホラーがそこまで得意じゃないから普通に怖いんだが…
「ただ、時期も時期だし少し冷えてくるな。あっ…小雨も降ってきたしさらに冷えることになるな」
あーあ、雨まで降ってきたよ。十分程しか探索してないが既に帰りたくなってきたな
「頃合いだし、ここでいいか…」
そう言って懐中電灯を持って前を歩いていた吉影は、後ろをついて行ってるこちらに振り返り近づく
体には少しの衝撃が走り、そして腹部には生暖かい感触と、ポコポコと外の小雨に負けないほどはっきりと音を立てて水が溢れる音が聞こえ、下を見ると魚を捌くような厚い刃の包丁が腹部に刺さっていた。
「は?」
「さようなら、君のことは親友としてとても好感的に思っていたが…つい我慢できなかったんだ。許してもらおうとは思ってないよ」
そうして私は薄れゆく意識の中で、私の手首に包丁を振り下ろす吉影の姿が見えた。
◆◆◆
私は親友だった者の手首に包丁を入れていく。骨と骨の関節に刃を入れ、倒れている親友の手首に包丁の刃を当てて体重をかけて切る。魚の頭を落とすような感覚だ
そして私の手にはまるで白魚のような白さで美術品のような一対の手を解体した。
「喋っている君も魅力的だが、喋らない君も実に美しいよ」
「そうか、怨みでの犯行じゃあないだけいいとするか…」
瞬間、誰もいないはずの廃墟の洋館の一室から聞こえてくるはずのない声が聞こえてくる、声が聞こえてきたのは窓からだった。
そこで私は恐る恐る窓に向けて懐中電灯の灯りを向けると私が殺したはずの親友、宝城時実が窓枠に奇妙な格好で座っていた。
「ばっ、馬鹿な!時実だと!?しかし先ほど私が殺したはず…」
しかし死体があったはずの場所に時実は居なかった。
「『オールフィクション、私の死を無かったことにした』…ってね、一度言ってみたかったんだ。ほんの冗談さ」
「幻覚を見ているのか?私は…」
「幻覚じゃあないよ、現実さ…君は一度私を殺した。コレは紛れもない事実さ」
眩暈がしてきた…彼の言葉が正しいのなら彼は一度死んで生き返ったと言ってるようなものじゃあないか…私はおかしくなったのか?
「どうやら現実を受け入れられないようだね、でも君は私を一度殺した。それなら私も君を殺したとしても何も問題はないよね?」
そう笑みを浮かべてこちらを見つめてくる彼は…本当に人間なのか?
「まぁ、私を殺すのが憎しみや怨みじゃあないようだから別にどうともしないよ。雨も強くなってきたようだし、そろそろ帰ろう。明日は学校が休みでも流石に夜更かしは体に良くない」
しかし彼は私をどうにかするようなことはなく、今まで通りに接していた。
「…私を殺さないのか?」
帰ろうとしていた彼の背中に私は恐る恐る聞いてみた。
「どうして私が君を殺さなきゃならないんだ?君のその行為も性癖のようなものだろ。他の人を殺そうものなら止めようと思っていたが、私なら別に死なないから問題じゃあないからね、今まで通りさ」
彼はあっけらかんと答えた。まるで日常生活の受け答えのように極々自然に返答した
そして彼は、本当に私が彼を殺したことを何も気にしていなく、次の日の遊びの約束も予定通り一時間早く来ていた。
お疲れ様でした。
スタンド名とその能力は次回に回します。その方が引きが良くて面白いと思ったからですね!
ちなみにスタンド名も結構ありきたりな名前なので海外バンド名を少し調べたら当てられちゃいそうなんですよねぇ…