ダンジョンに英雄を、伴侶を、名声を、正義を、混沌を。果ては出会いなどを求めるのは間違っている   作:七海香波

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 今話もこんばんは、作者です。
 皆様感想評価諸々いつもありがとうございます。

 そろそろここのネタも切れてきたのでどうしようか悩み頃な今日この頃ですが、またまたどうぞよろしくお願い申し上げます。
 


「連中は俗に、一匹見れば百は居るという」

 

 まだ、神々が下界に降りて間もない頃。

 地上に蔓延るモンスターたちを一掃すべく形成された彼らの派閥(ファミリア)の間には、今のような政治的・神話体系的な軋轢は存在しなかった。

 皆が一体となって下界に平和を齎そうと奮闘したあの時代においては、本来ならば相容れぬ他派閥であろうと頭を下げて助力を請うことが何一つ恥ではなかったのだ。

 だが、それでも。

 鍛冶の神(ゴブニュ)に、武の神(スカサハ)に、医療の神(ディアンケヒト)に……現代においておよそ冒険者に必須とされる技能(スキル)を司る数多の神々に対して、いっそ厚顔無恥と呼べるほど節操のない弟子入り懇願(ドゲザ・アタック)を敢行した大馬鹿者はクレス・カタストロフを置いて他にはなかった――。

 

「――久しいな。良かろう、炉を貸してやる。……進歩を見せろ」

「――ふはははっ、さあ今回は何を手に入れたか早速見せてみろ!! そのついでに貴様の腕もなまっておらんか見てやらんでもないぞ、ほんのちょびっとくらいならばな!」

 

 

 

 

 

「……久しい師との顔合わせも済ませた。ならば後は資材の買い込みだけ、商会のある第六区画へ向かうぞカオス」

「うん、クレス君。……しかしいやァ、二神(ふたり)とも相変わらずだったねェ」

 

 現在のオラリオにおいて未だ健在であるゴブニュとディアンケヒト。

 かの偉大なる二柱から久々に教えを受けた後、クレスはカオスを連れて残る目的地であるオラリオの商業区画へ向けて歩いていた。

 その道中で話題となるのは必然、先ほどまで彼らが顔を合わせていた神々のことだった。

 

「ゴブニュは寡黙で職人気質で、ディアンケヒトの奴は底抜けの守銭奴(ぞくぶつ)根性で。ホント天界にいた頃からそのままだったよねェ……。特にディアンケヒトの方なんか、クレス君の持つ『フェニクスの涙』をあの手この手で買い取ろうとしてくるあのしつこさったら」

 

 保護者気分で神々とクレスとのやり取りを眺めていたカオスが、特に片方の神について呆れたように言及する。

 一方(鍛冶神)は水の如く静かに弟子の腕を見るのに対して、一方(医療神)は猛火の如く弟子に詰め寄りその持ち物を強請る。その性格は正反対にして、両極端。

 

 そんな彼らがクレスという共通の弟子を認めている――その理由は偏に、彼がそれぞれの要求に対して誠実に向き合い続けているからだ。

 ゴブニュの求める、『真摯に己が()と対話する』こと。

 ディアンケヒトの求める、『派閥の運営資金(表帳簿)の三倍を支払う』こと。

 求められたそれらの供物を一切の嘘偽りなく捧げているからこそ、彼らもまたクレスの求める神の在り方を順守する。鍛造修行や調合の相談を請け負い、時に褒め時に慈愛の眼を向け、時に叱り時に唾を飛ばしながら、彼の進歩を各々なりの態度で見守る師匠として。

 

 しかし弟子と言っても、なんでもかんでも師匠の意に沿う従順な機械ではない。

 カオスの語る印象に同意するように、クレスもまた声に少なからぬ面倒臭さを含ませる。

 

「『深々層』素材の個人的な売買はウラノスとの契約で禁止されていると、こっちの口にタコが出来るほどには何度も言っているんだがな。『身に余る力はやがてその身を滅ぼす。今のオラリオの冒険者に与えることは好ましくない』……せめて誰か一人でも今の奴らが100層を突破してくれれば、この契約も緩くなるんだが」

「神時代以来一番進んでたゼウスとヘラの派閥(ところ)も、黒竜にやられちゃったからねー。それが叶うのもまだまだ先の話、チート(クレス君)で近道しようったってそうは問屋が卸さないってね」

「ここはウラノスに正当性があるからな。過ぎたるは猶及ばざるが如し、薬も転じて毒薬となるとはよく言ったものだ。事実、それで身の程を弁えずに結果無念の屍を晒した連中は昔からよくいた。今もそれは変わらんだろうからな……いい加減にしてほしいものだ」

 

 時刻はそろそろ夕方に差し掛かる頃。

 暮れかけた夕日が空を茜色に灼いて、深まった影を伸ばしながら二人はオラリオの中で第六区画と呼称される地帯に踏み入った。

 ここでのクレスの目的は、迷宮(ダンジョン)内では入手不可能な香辛料などの一部消耗品を入手すること。

 雲菓子(ハニークラウド)に代表されるように、過酷な迷宮(ダンジョン)環境に生息する動植物の中には生命力が強すぎて逆に身体に合わないものもある。そういった類の劇物を無理矢理活用しようとするくらいならば、クレスは素直に便利な既製品に頼って楽をする派だった。

 

 しかし、ここ暫く彼が「好みの品揃えをしている」として懇意にしていたとある商会の拠点だった巨館は――既に放棄されて久しい廃館となって、今年の彼らを出迎えたのだった。

 

「ここもついに潰れた、か。次は南方の珍しい乾物を取り揃える予定だというから、期待していたんだが……残念だな」

「というよりも、「潰された」の表現が正しいね。見なよほら、襲撃の跡がいくつも残ってる。可哀そうに」

 

 クレスの記憶にある、かつて店員が声を張り上げて活発に集客を行っていた商会の姿は影も形もない。

 そこにあるのは、賑やかな人だかりが消えて代わりに埃と瓦礫が辺りに散らばるばかりの廃墟。

 野晒しとなっている陳列用の木棚には焼け焦げた跡が散見され、また館の壁の至る所には穴が開いて、雨水が溜まり腐蝕している様子が伺える。

 恐らくは略奪目的の暴徒にでも襲われて、挙句焼き討ちの憂き目にまで遭わされたのか。

 そうして残された、ただひたすらに虚しさを感じさせる灰色味がかった夢の跡。

 闇派閥(イヴィルス)が頭角を現しているこの時代、このような光景はままよくあることだ。

 

 しかし今日この場所に限っては、建物を取り囲む周囲の様子が他とは異なっていた。

 

「……あれはガネーシャと、アストレアの所の子たち?」

 

 物陰に身を潜めながら廃館を取り囲む、なにやら物々しい雰囲気の冒険者集団。

 複数の眷属(ファミリア)が徒党を組んだ彼らが、鼠一匹すら逃さぬといった剣呑な瞳で館を睨みつけている。

 

 その光景を彼らに気取られない場所である近場の屋上に移って、クレスたちは見下ろした。

 

「なんだかいつにも増してピリピリしているみたいだけど、もしかして何かあったのかな」

「……そういえばロイマンのやつが、今日がちょうど『計画』の日だなんだと言っていたな。思い出したぞ、ここがその実行場所の一つだったのか」

 

 クレスは、年に一度の面会で必死に彼へと向けて叫んでいたギルド長の様子を思い出す。

 ギルドを中心とした秩序側の派閥連合(ファミリア・ユニオン)が一挙に悪派閥(イヴィルス)の拠点を攻め滅ぼす、一大計画。

 ロイマンの説明によれば、激戦になること必死のその計画は計三つの手に別れて行われ、それらの趨勢がオラリオの今後を決めるとのこと。故に「協力しろとは言わん、ただ決して邪魔だけはしてくれるなよ――神々(馬鹿ども)の如く暗にやれと言っているわけではないからなッ!」と、クレスは目を血走らせた彼から念入りに言い含められている。

 

 しかしそんな警告など我関せずとばかりに、彼は今ここに至るまでさっぱり忘れていた。

 そもそも今更言われるまでもない。自分(クレス)から何かを仕掛けるつもりなど無いのだから、と。

 

 こうして眼下の後輩たちが意気込む姿に遭遇しても、それは変わらない。

 クレスには彼らの邪魔をするつもりもないし、進んで協力を持ちかける意思もない。

 ただ自分の目的を果たすためだけに、彼は動く。

 

「その『計画』? について私は詳しくは知らないけどさ。こうなったらもう、買う場所を変えた方が良いんじゃないかな。どうやらこのままだと、私たちはお邪魔虫になってしまいそうだし」

「……いや。連中が突入する際に紛れて、俺たちも行くぞ」

「ええっ、正気かい!? いったい何しに行くのさ、まさか彼らに協力するような殊勝さを思い出したわけでもないだろう?」

 

 しばし逡巡するように顎に手を当てていたクレスによる思いがけない言葉に、カオスは彼に向けていた目をぱちぱちと瞬かせる。

 その失礼な疑問について、彼は裏切ることなく「もちろん」とさも当然のように頷く。

 

「貴女の読み通り、そんなつもりは更々ないさ。ただ、よく見てみろ。商会の連中、よほど慌てていたのかここを去る際に商品のいくつかを捨て置いていったようだ。壁に開いた穴の奥に、積み上がったままの木箱がいくつか見える。そこで運よく保存状態の良いものを見つけられれば、今回俺が欲しかった品を回収できる可能性がある」

「えぇ……火事場泥棒かい?」

 

 やはりか、とジト目を浮かべる彼女にクレスは今度は首を横に振った。

 

「違うな、無駄なき再利用と言え。なに、いずれまたここにいた連中もしくはその後継と出くわす時もやってくるだろう。その時にきっちりと耳を揃えて代金を支払うさ。本来ならば失うはずだった利益を上げられるのだから、向こうからしても悪くない話だろう? ――と、ちょうど突入する所らしい。準備しろカオス、漁る際には貴女の手も借りるからな」

「遠慮なく主神に手を汚させるねェ君は……はいはい、エスコートは丁寧によろしく頼むよ」

 

 差し出されたカオスの手を取り、素早くその腰に手を回して華奢な身体を胸元に抱え込む。

 それからクレスは眼下の冒険者たちが一斉に突入する瞬間(タイミング)に合わせて、立っていた高所から跳躍。高レベルの脚力によるひとっとびで、廃棄商館の上階側面に開いていた大きめの穴へと飛び込んだ。

 身体を襲う一瞬の浮遊感、そして着地。

 足元に散乱していた木片とガラス片を無音で踏みしめながら、クレス一行は内部への侵入に成功した。

 

「しかし、どうやってこの広い中を探すつもりなのかな? 外から見ただけでも地上部分は五階あるのに、ここは地下だってあったはずだけども」

「なに。大概どんな建物だろうと、大事なものを保管する部屋の場所はそう変わらん。その辺であたりをつけて回れば、そう時間もかからないだろう」

 

 クレスは最初に入った部屋にめぼしいものがなさそうだと踏んで、そのまま廊下へと進み出る。

 もちろん、闇派閥(イヴィルス)の拠点として改造された館の内部には彼らの手によって様々な罠が設置されている。

 警報を鳴り響かせるもの、侵入者を拘束するもの、通路を障害で塞ぐもの。

 それらを手早く解除しつつ、既に階下で乱戦を始めている連中に見つからないよう気を配りながら、クレスはカオスの安全を最優先にすいすいと進路を確保していく。

 

「……」

「――!?」

 

 その中で、気配を捉えた見回り役らしき悪派閥(イヴィルス)の背後へぬるりと回り。

 瞬時に悲鳴を漏らされないよう口を塞いで、そのままクレスは相手の懐から抜いた短刀で持ち主の延髄を躊躇なく断つ。

 相手は下手人(クレス)の顔を見ることも、その存在を味方に伝えようと声を上げることも許されず、自身の身に何が起きたのかすら分からないまま、糸の切れた人形のように脱力した。

 一瞬の無力化を終え、その場に抱きかかえた相手をゆっくりと下ろした彼は呟く。

 

この手に限る(不意打ち上等)

「うわぁ、エゲつない。これじゃどっちが悪派閥(イヴィルス)だか、傍から見れば分からないね」

「知るか。なんとでも言え。……さて、こいつを使って少しばかり楽をさせてもらうか」

 

 クレスは手早く相手の装備を剥ぎ、武装解除ついでにその上半身をはだけさせる。

 その過程で相手が女だったことが判明するが、彼が反応したのは身体の前方ではなく後方だった。

 女悪派閥(イヴィルス)の背中、そこには不吉な気配の漂う骸骨と鎌を基にした神の恩恵(ファルナ)が刻まれている。

 

「まだ恩恵は生きているな。主神との繋がりも保たれている、よし」

 

 クレスは彼女の首から短刀を引き抜いてそのまま拝借し、刃についた血を剥ぎ取った布で拭う。

 露になった刀身を指先で軽く撫でながら、目と並行においてその業物度合いを測った。

 

「レベルにして2から3用の代物か。ここで使い捨てる分にはちょうど良い。――カオス、神血(イコル)を一滴くれ」

「ン、なにかな唐突に。別に良いけれど……こんな所で何をするつもりなのさ?」

「こういった連中は俗に、一匹見れば百は居るという。ならば効率的に、大元から叩こうと思ってな」

 

 カオスから頂戴した神血(イコル)と『深々層』から持ってきていた素材の粉末を近くで見つけた皿の中で混ぜ合わせ、その中に指を浸す。

 そうして簡易的なペン先とした爪を用いて、彼は手に持った短刀の腹に呪紋を刻んで詠った。

 

「――【契約に応えよ、原初の呪よ。我が意の下に血鎖を穿ち、命脈を枯らせ】」

 

 刻まれた血紋が、焦げるように煙を上げながら紫に輝く。

 神の恩恵(ファルナ)に頼らない、古式の呪詛(カース)

 その呪われし刃を、クレスは無防備となった悪派閥(イヴィルス)の恩恵目掛けて振り下ろした。

 

「【ストライク・ブラッド】」

 

 その効果は――『連呪属性(チェインブラッド)』。

 

 恩恵越しに心臓を貫かれた女の身体が一度大きく跳ねたかと思えば、階下の冒険者たちから次々に困惑の声が響き始める。

 

「――なんなのこの人たち!? みんな、一様に心臓を抑えて……?」

「動きが悪くなった? ――構わん、これを好機として一気に畳みかけろ!」

 

 クレスは続けて、目前で苦悶に喘ぎ空呼吸を繰り返す女性の腱を切り裂く。

 その結果、今度は悪派閥(イヴィルス)の側から驚きと困惑の悲鳴があがる。

 

「ぐぅっ!? こ、これはいったい何が――!」

「手が、足が、思うように動かぬっ!? 何故だぁぁぁっ!!」

 

 ――【ストライク・ブラッド】。

 その効果は、『同じ神血(イコル)を受けた同胞(ファミリア)へ対象の苦痛を伝播させる』というもの。

 今、階下の悪派閥(イヴィルス)たちの多くが心臓と四肢を襲う謎の幻痛によって動きを鈍らせている。それは彼らとの戦いに心血を注ぐ冒険者たちにとって、あまりに致命的な隙に過ぎた。

 次々に捕縛されていく悪派閥(イヴィルス)の怨嗟の声と、それを上回る冒険者側からの歓声。

 それを一顧だにせず手元の作業を続けるクレスに、カオスは「おいおい」と目を見開いた。

 

「恩恵を介した共鳴りの呪詛(カース)? そんなもの、いつの間に身に着けていたんだい?」

「だいぶ昔の話だが、地上に戻るのが面倒くさくなって、迷宮(ダンジョン)の中で貴女の手に頼らず恩恵が更新できないかと試行錯誤したことがあってな。結局は最後の最後で、わざわざ背中に手を無理矢理伸ばしてまでするもんじゃないなと気づいたが……これは、その過程で得られた成果の一つだ」

 

 効力を発揮した短刀は、やがて呪詛の強さに刀身が耐え切れず砕け散る。

 しかし、その効果は既に大元の発生源――すなわち女の恩恵(ファルナ)全体に根付くように張り巡らされている。

 彼女が生きている限り、その仲間は暫く身体の低下(デバフ)に悩まされるだろう。

 

 そして、たとえ延髄を断たれようとも神の眷属はすぐには息絶えない。

 故に呪いを最大限活用しようと、クレスはあえて中途半端に彼女の傷を治したり栄養剤をその口に突っ込んだりして延命の処置を完了させた。それから彼は、彼女の身体を簡単に見つけることの出来ないように側にあった壁の割れ目に押し込んで、どこからか持ってきた大きめの絵画を以て全体を覆い隠した。

 

神聖文字(ヒエログリフ)からして、能力値(ステイタス)はレベル2の後半。こいつの気力にもよるが、これから先の三日間は死なんだろう――これで良し。さあ、探索を再開しようか」

 

 それらの外道を難なく済ませて手の汚れを打ち払ったクレス。

 その眷属の在り様に、カオスはもちろんドン引きしていた。

 

「……君さァ、もうちょっと手心とかないの?」

「加えたが? 本来想定していた使い道に従えば、さっきの女を公衆の面前で磔にして被害者に石を投げさせているところだぞ。きっと俺程度では想像もつかない凌辱の限りを尽くされて、尊厳を冒された連中はようやく自分たちの犯した罪の重さを知るだろうとな。そこまでしなかったことが、俺の手加減の証明だよ」

「……それって実は面倒くさかったからだったり?」

「そうだな」

「いやいやいや……えー? 本当にどこで教育を間違えちゃったかなぁ、私ってば……おっかしいなー?」

 

 悩むカオスをよそにクレスは新たな部屋の扉を開けて、その中を一通り物色していく。

 釘で封じられた箱の蓋を次から次へと素手で引っぺがし、内側を除いては無事そうなものを探すの繰り返し。

 下の騒がしい剣閃の響きを置いて、彼は呑気にがさごそと積み重なる木箱の中を漁るのだった。

 

「――ぐっ、くぅぅっ……! まだ終われるものかッ! 死ねぇ冒険者!」

「――死なないわ! だって伝説的に可憐な私の伝説は今後も美しき冒険者として続くもの!」

「むぅ、中々良い感じの物は見つからないな……」

 

 しかし残念なことに、中身があったとしてもその多くは消費期限が切れていたり、雨風の浸食を受けて腐っていたりと役に立たないものばかり。

 お目当ての希少な調味料なども中々見つからず、彼らは次第に商館の奥へと進んでいく。

 

 しかし秩序と悪の決着もまた、同じようにそちらへともつれ込んでいたのだった。

 

「おっと……まだ終わらないのか。相も変わらずしぶとい連中だ、この様子だと探せないな」

 

 彼らが最後に辿り着いた貯蔵庫では、一足先にこの商館における決戦が始められていた。

 冒険者と悪派閥(イヴィルス)が一堂に会した乱戦。

 複数の戦いが一度に行われている、元は商会の品々を補完することが存在意義であっただろう空間を覗き見てカオスは目を細める。

 

「うわぁ、流石にあそこには行けないかな? どう隠れようとしたって巻き込まれちゃいそうだし」

「そうだな。とは言えそれなりに手付かずの箱も見える、雨漏りもしていないようだし一切探さないのも惜しい。しかし他の所はもう粗方探し尽くしたし、ここは退散して後でまた――いや」

 

 突如言葉を区切ったクレス。

 その視線の先では、今まさに剣戟を繰り広げようとしていた一組の冒険者(少女)悪派閥(幼女)がいて――。

 

「クレス君?」

「何を呑気に手を伸ばして……いやまさか、連中、気づいていないのか……?」

 

 

 




《Tips》
 前書きの通りネタも尽きてきたので、今回は前々の話に乗せていたオリ設定をだだ流しにして誤魔化そうと思います。中二ノートを垂れ流してゴメンね☆

 『封神大戦(グノーシスマキア)』、通称:異端審問戦争。
 現代のラキア・テルスキュラに代表される国家系ファミリアが確立されつつあった(本二次創作上における)八百年前の地上にて、各神話体系を基軸に据えた国家連合・同盟の布教抗争を発端とした戦争。要するに世界規模の宗教戦争であり、「敵対する神々を全て天界に送還し、またその眷属を尽く鏖殺すべし」との主義主張が声高に叫ばれ、実際に虐〇・拷〇・〇奪が各地で行われていた。
 当然の如く複数の神話体系を有するオラリオも戦争に巻き込まれかけたが、当時既に頭角を現していたゼウス・ヘラの両ファミリアによる武力鎮圧とヘルメス・ファミリアによる政治工作を経て各国に終戦の機運が高まり、世界はとある一大ファミリアの崩壊を以て再び安寧を取り戻すに至るのだった。
 なお、終戦の直接的な引き金となった国家系ファミリアであるムー・ファミリアの大陸消滅事件は名前こそ明かされないもののオラリオのとある魔導士によるものとされており、それがかの英雄都市の名声と畏怖を決定づけた、神時代の転換点の一つと呼ばれている。
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