ダンジョンに英雄を、伴侶を、名声を、正義を、混沌を。果ては出会いなどを求めるのは間違っている   作:七海香波

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 お久しぶりです、作者です。
 通常の一週間から少し遅れての投稿ですが、これには海よりも高く山よりも深い訳があるんです……はい、数年前から流行の『名前を呼んではいけないあの病』のせいです。
 悪寒→汗がぶわっと滝のように滲み出る感覚とか、諸々滅多に体験できない症状を一通り体験させていただきました。死にはしなかったので結果的に良い経験になったと思います。
 皆さんは季節の変わり目、体調管理に気を付けてお過ごしくださいね。
 かかってからは遅いんだぞ☆


「――悪いな、気が変わった」

 

 一方、混乱する正義(アストレア)道化(ロキ)の眷属。

 

「ねぇ一体どうしちゃったのかしら!? 地面が爆発したと思ったらいきなりその奥から【静寂】が飛んできて、ズガーン!! って勢いで壁に埋まっちゃったんだけど!?」

「私に聞かれても困るぞ団長! こんなもの、誰が想像できるものかっ」

「本当に何が起こっとるんじゃ……?」

 

 数日前に観測された未知なる強大な怪物(テルピュネ)を討伐すべく送り込まれた彼ら地上(オラリオ)の精鋭は、地上で邪知暴虐の限りを尽くしている悪派閥(イヴィルス)の首魁のうち一人がいきなり満身創痍(ズタボロ)になって吹き飛んできた目の前の光景に開いた口が塞がらなかった。

 

 ――何故、迷宮(ここ)に侵入できないはずの【静寂】がいる?

 ――何故、その【静寂】が血と泥に塗れた情けない姿になっている?

 

 そんな彼らの、現状に追いつかない認識に更に追い打ちをかけるようにして。

 アルフィアの後から飛び出してきた人影ことクレスは、彼女へと親しみを込めて口を開く。

 

「……どうやら、目は完全に覚めたようだな」

「ああ。御身のおかげで、ようやくだがな」

 

 壁に体を埋める形で沈んでいたアルフィアに、クレスはそっと手を伸ばす。

 彼の手を取って立ち上がった彼女は、傷と土埃に塗れながらも、晴れやかな顔を浮かべていた。

 もはやそこに、先ほどまで彼らが互いに向けていた戦意は露ほども残ってはいなかった。

 端でただ様子を見守るしかなくなっていた派閥連合の顔ぶれを前に、二人は悠々と会話する。

 

「しかし、だ。その口ぶりからして、私をあえて煽ったな?」

「そうだ。将来有望そうな後輩が燻っている姿を見れば、それとなく手助けをしてやるのも先輩としての務めだからな」

「ちっ……おちょくられたのは腹立たしいが、原因はあくまでも私の未熟にあるか。悔しいが、感謝を伝えておこう」

 

 そう、先の戦闘そのものは、諦観を抱いていた彼女に発奮を促すためのクレスによる茶番(・・)

 その目的が達成されたと両者が納得した今、続ける理由はなかった。

 

 手を取り合ったクレスとアルフィアが、互いを認めたと示すように見つめ合う。

 ――己の壁を今一度見つめ直し、そして見事乗り越えた後輩への称賛を。

 ――迷い堕ちようとしていた自分にわざわざ労力を割いてくれた先達への感謝を。

 相互に無言の満足を示した二人の有様は正しく、短くも濃厚な(戦い)を共に過ごした戦友(冒険者)の姿であった……。

 

 ……とは言え。

 その事情を何一つ知る由のない派閥連合の側からはやはりと言うべきか、「いやいやいや!」と当然の突っ込みが上がって。

 

「なんだか一昔前に流行った青春モノの一頁みたいなのを見せつけられてるんだけど、これってどういうことなのかしら!?」

 

 派閥連合全員の心の声を代弁して叫んだアリーゼに、二人が顔を向ける。

 「また面倒臭そうなのが来たな」「騒がしい」と目配せで会話するクレスとアルフィアに、彼女は大げさな身振り手振りで以て状況説明を請うた。

 

迷宮(ダンジョン)にどデカいモンスターがいるらしいって言うから、倒しに来てみれば主役級の大悪役が地面から吹っ飛んできて!? それで後から出てきた男の人と手を取り合って、それで「全部、終わったんだ……」みたいな満足顔してて!? 私たちには何が起きたのか、さっぱりなんだけど!」

「相変わらずきゃんきゃんとよく叫ぶ娘だ。……そうだ、今お前の語った通り。この迷宮(ダンジョン)内で我々が企んでいたことは全て終わらされた。他でもないこの方の手によってな。つまり、貴様らもそれなりに覚悟をしてきていたようだが、それも無駄足に終わったということだ」

 

 アルフィアの返答によって、この場の全ての視線がクレスに集まる。

 ――これは俺が答えなければならない流れなのか、と彼は若干煩わしく思いつつも説明を引き継ぐ。

 

「あー、このアルフィアという女の言ったように、お前たちにとって喫緊の課題だったらしき【神獣の触手(テルピュネ)】――そもそもこいつの正式名称を今の冒険者(お前たち)が知ってるのか俺は知らないんだが――迷宮(ダンジョン)内において一定量の『神の力(アルカナム)』の発露を以て顕現するモンスターの一種だが、そいつなら既に俺が始末した」

「なっ……先遣隊の報告にはレベル6から7相当の能力値(アビリティ)を有しているとあったが、それを単独(ソロ)で討伐しただと? 俄かには信じがたいが……確かに、発見報告以来続いていた大地の震動が一切途絶えている……」

「リヴェリア様!? 確かにそうですが、あのような見知らぬ者の言葉をそう容易く信じるのですか!?」

 

 顎に手を当てて思考する素振りを見せるリヴェリアに、リューが声を上げる。

 その言葉にクレスは肯定を半分と、呆れを半分示した。

 

「信じるも何も、気配を感じないことが分かれば一目瞭然だろう。それに、お前たちとは一度会ったことがある。あの時も散々食って掛かってきたはずだ、一応は見知らぬ仲と呼べない仲じゃないのか?」

「……そう言えば、その声! まさかあの時、アーディを助けてくれたフードの人!?」

「気づかなかったのか」

「気づかなかったわ! ごめんなさい! でもちょっとだけ言い訳するならあの時は声がちょっとくぐもってたから、聞き取りづらかったの!」

「……まあ良い。俺の正体など、この場においては些事に過ぎんだろうからな」

 

 素直に頭を下げてきたアリーゼを許しつつ、クレスはさっさとこの場を終わらせるべく、彼らの先ほどから求めていた答えを口にしようとした。

 彼はあくまでもアルフィアという迷宮(ダンジョン)攻略に役立つ才能が歴史の塵と消えていくことを惜しんでいただけなのであって、それ以上のことに関わるつもりは微塵もないのだ。

 

 ――つまり、彼が行おうとしているのは、端的に言ってネタ晴らしであった。

 

「それで、お前たちが気になっているであろう残りの事情もさっさと説明してしまおうか。つまり、何故こいつがここまでボロボロになっているのか。何故俺がさっきまでこいつと戦っていたか、だが」

「――む、おい」

「それはこの後輩が、自分への失望を的外れにもお前たちにぶつけようとしていたからだ。それは筋が違うだろうという訳で、その勘違いを正していた」

「……なに? 自分への失望、だと?」

 

 クレスのあまりに端折った説明に、派閥連合一同の頭に「?」が浮かぶ。

 そんな彼女たちに、彼は仕方がないなと言った素振りで一から説明してやることにした――そう、他でもない本人(アルフィア)の目の前で。

 話の流れを敏感に察知した彼女がクレスの口を塞ごうとするが、もう止められそうもない。

 

「待て。何を言おうとしている?」

「何って、お前が先ほど俺に語っていたことをそのままこいつらにもう一度説明してやろうとしているだけだが。――安心しろ、後世の批評家よろしく適当に難癖をつけたりするつもりはない。先ほどの戦いの中でお前が吐露したもの、それを新鮮さそのままに伝えよう」

「違う、そうではない。私が憂慮している点はそこではない。今思えば、なんだ……急に以前の言動が恥ずかしくなってきた。それを大っぴらに話すというのはだな」

「知るか。恨みたければ浅慮のままに突っ走った過去の自分を恨め。それに、迷惑をかけられた連中にはお前の動機を知る大義名分があるはずだ。俺から話されるのが嫌なら、自分から話せ」

「うぐっ……それは、いやしかし……分かった。私から話す、話そう」

 

 結果、クレスに押し切られるような勢いで、根負けしたアルフィア。

 彼女は「もうこうなればやけくそだ」と言わんばかりに、派閥連合側に向けて自身の思うところの全てを詳らかに曝け出すのだった。

 

 ――もはや未来のない、自身へ向けた限りない絶望。

 

 ――ならば未来ある後進の贄となり、糧となって。彼ら(お前たち)に期待をかけようとして。

 

 ――そうして編み出された、英雄時代の再来を目指す『計画』の全貌を。

 

 余すことなく、包み隠さず。

 もういっそ恥の上塗りになろうと構うものかと、彼女は心中に抱えていた悩みやそれに由来する想いを全て吐き出した。

 

 そして。

 もちろん、そのあまりに身勝手な立ち振る舞いに派閥連合からは非難の嵐が轟々と巻き上がる。

 

「――聞けば、なんと身勝手ではた迷惑な! なんたる傲慢、なんたる理不尽!」

「――大義のために弱者を犠牲にしなければならないだど、絶対に間違っている!」

「――確かに私たちにも非があることは認めよう。しかしそれでも、民衆を巻き込む道理はない!」

 

 輝夜から、リューから、リヴェリアから。

 その他全ての正しき(・・・)眷属たちからの怒りを前にして……アルフィアは。

 

「――そうだ、お前たちの言う通りだ。私が悪かった」

 

 全て自分の非を認めると、素直に頭を下げた。

 腰を綺麗に垂直に折った、一切の歪みのない謝罪。

 その、これまでの彼女には有り得ない態度に思わず派閥連合の声が止む。

 

「私は切羽詰まり過ぎていたようだ。現実を勝手に諦め、いつか到来する暗黒を打倒するために更なる闇を産み出そうとしていた。――だが、それはとてつもなく卑怯で、また無責任な行為であると改めて思い知らされた」

 

 アルフィアがちらりと、横に立っていたクレスに目を向ける。

 その揺るぎのない立ち姿に、彼女は久方ぶりに思い出させられたのだ。

 ――『想い(ユメ)』とは、他ならぬ自分で叶えてこそ最も輝くものなのだと。

 

「もう、お前たちに無理矢理私たちの『想い』を委ねるようなことはしない。私の『想い』は、私が背負い続けなければならないのだから。故に今後はお前たちを巻き込むことなく、私自ら遺された最後の三大冒険者依頼(クエスト)の残り一つを達成すべく精進するつもりだ」

「……何を今更! 貴女たちの勝手のせいで、どれだけの人々が犠牲になったと――!」

「そうだな。無論、その前に罪は償おう。遺族への賠償は行うし、破損した街並みの修繕費用も耳を揃えて払う。招き入れた悪派閥(イヴィルス)も一匹残らず仕留めようとも。全てはそれら、贖罪の行脚を済ませてからだな……だが、その前に」

 

 殊勝な態度で謝罪の意を表明していたアルフィアの顔が、上がる。

 ――そこには、血を滴らせ、爪が剥がれようと変わらない覇者(レベル7)の威圧が浮かんでいた。

 その視線が、油断していた派閥連合の背筋を射抜いて心胆寒からしめる。

 

「このままここから、お前たちを挫折一つなく返すのも忍びない。当初の想定とは少々形が違うが、強者による洗礼(パワー・レベリング)――受けていくか? 後輩ども」

 

 そう、もはやアルフィアには彼女らに『想い』を託すつもりはなかった。

 ただ、それでも『計画』の上で与えようとしていた格上との実戦経験(エクセリア)――それくらいは分ける機会(チャンス)を与えようと、クレスとの戦いを経た彼女は思った。

 

 彼女が行うのは、これまでと違ってあくまでも選択肢を与えるまで。

 

 その決定権を握るのは派閥連合側だが――果たして、答えは。

 

「――いえ、それは後にしましょう! 皆、今すぐ地上に戻るわ!」

 

 この場の指揮官であるアリーゼが選んだのは、目の前の経験値(エサ)ではなく帰還だった。

 冒険者としてではなく、今オラリオに必要とされる『正義の使徒』としての勇気ある撤退。

 

「サラって娘のおかげでだいぶ楽になったけれど、まだまだ人手は足りてない! 迷宮(こっち)での用がなくなったなら、まずはそっちへの対処が優先! でしょ、ガレスのおじ様!」

「……うむ、それがこの場の最善手じゃろう。もはや【静寂】に敵意は無し、ならばこの場で斧を交わす必然性もなかろう」

「よーし皆! せっかくここまで潜ってきたところ残念だけど全力反転! 地上(オラリオ)へ向けて転換撤退後進(バック・バック・バック)!」

 

 ここが正念場だと気合を入れていた派閥連合の面々は一様に不満を浮かべたものの、アリーゼの判断とそれを後押しするガレスの声を受けて、すぐさま来た道の逆走を始めていく。

 颯爽と最前列から最後尾へ位置を入れ替えた彼女に続いて、彼らは胸に小さなしこりを残しながらも地上目掛けて駆けだす。

 

「――フ。そこは見誤らなかったか」

 

 潔いアリーゼの態度に僅かな微笑みを溢して、アルフィアもまた自身の後始末をつけるためにその後に続こうとする。

 だがその前に、クレスが「まあ待て」と彼女を押し留めた。

 

「その前に一つ、餞別をやろう。背中を出せ」

「……なんのつもりだ? 恩恵の更新の真似事でもするつもりか」

「ところがどっこい、その通りだ。……自慢じゃないが、(格上)との戦闘で割と良い感じに経験値(エクセリア)が溜まったはずだ。東方の諺に『鉄は熱いうちに打て』とあるように、経験値(エクセリア)は新鮮なうちに反映した方が数値の幅が大きい。だが確か今、女神ヘラは都市外でゼウスを追っかけて世界中を飛び回っていると聞く。それを捕まえるまでに今回の経験値を劣化させるのは勿体ないだろう?」

「それはそうだが、まさか下界の住人が恩恵を更新できるなど……いや、御身のここまでの埒外ぶりからして今更か。それよりも私たちの『神の恩恵(ファルナ)』には鍵が掛かっている……『更新薬(ステイタス・スニッチ)』か? そんな希少なものを、よくも……」

 

 アルフィアはすぐさま非合法の魔法薬の存在に思い至るも、クレスは首を横に振る。

 その手にはいつの間にか、二つの液体薬と一つの錠剤が指に挟まれていた。

 

「正確にはもう一つ上、『発現薬(ステイタス・ティラノス)』も用いる。特定の系統の『神の恩恵(ファルナ)』にしか効かない代わりに『魔法』と『スキル』の発現までが可能になる、超が十個くらいつく激レアな代物だぜ」

「なんだそれは。私たちのファミリアでも聞いたことがないぞ、そんな魔法薬は」

「素材が素材(深々層産)だからな。だが効果は間違いない、治験も済んでいるし俺の主神にもお墨付きをもらってる。だから、そら。早く背中を見せろ。なに、俺はゼウスと違って子供に欲情するほど餓えちゃあいない」

「別に今更そこに恥じらいを覚えることもない……それに私はもう二十四だ!」

「まだまだ青臭い年頃だな。せめて五百を超えてから出直してこい、がきんちょ」

 

 なんだかんだ言って渋々ドレスの紐を緩め、背中を露出させたアルフィアにクレスは素早く『解錠薬(ステイタス・シーフ)』『更新薬(ステイタス・スニッチ)』を垂らし、そして『発現薬(ステイタス・ティラノス)』を砕いて散らす。

 それから彼は己の背中にある『恩恵』に意識を連結(アクセス)させ、そこから滲ませた神カオスの神の力(アルカナム)を腕から指先へうまくインクのように制御して、彼女の恩恵に神妙な手つきで干渉していく。

 

 たった今積み重ねられたばかりの、量としては少なくとも質は極上の経験値(エクセリア)

 

 それを『神の恩恵(ファルナ)』が記録した(アルフィア)の願いに従って、能力値(アビリティ)、スキル、魔法にそれぞれ振り分ける――。

 

「……なるほど、良かったな。もう、女神ヘラさえいればレベルアップできる所まで来ているぞ」

「――は? いや、それも当然か……御身と戦ってレベルの一つも上がらない方が逆におかしいか」

「むっ……まあ、そうだな。これは未だ俺には不可能な芸当だから、そのお楽しみは次の機会にとっておけ。『昇華薬(ステイタス・カンキスタ)』の研究は魔法大国(アルガナ)の知り合いに譲ったしな……ふむ、その内そっちにも久々に顔を見せるか。……それよりほら、終わったぞ。新しい自分を確認してみろ」

 

 クレスがざっと書き留めたメモを、アルフィアは手に取って確認した。

 六つある基礎能力値(アビリティ)は既に全項目が限界を突破しており、評価値SSSに突入しているものさえ見受けられる。

 更には、魔法【ジェノス・アンジェラス】の一部詠唱追加。

 スキル【誓寂歌姫(アリア・アッシェンテス)】――クレスの【寡黙不語(カタラヌモノ)】と同系統の、無詠唱スキル――の発現。

 そして、最も大きな変化が、【才禍代償(ギフ・ブレッシング)】の進化だった。

 

 新たなる名は――【才禍絶奏(ギフテッド・オーバーロード)】。

 追加された一文は、以下の通り。

 

・『理想(おもい)』の響く限り命運突破。

 

「良かったな。さっきのお前の魂からの叫びは、運命の鎖という奴を見事引き千切ってみせたようだ」

「……どうやら、そのようだな」

 

 残念ながら、未だ完全に運命の女神が定めた『代償』が消失したわけではない。

 しかし、それを上書きするだけの意志を示し続ける限り、それは実質的に無力化されることだろう。

 

 明文化された『運命からの脱却』――その短くも力強い一文を自覚したアルフィアが、いずれ自我(エゴ)で世界の理屈を塗り潰してしまえる己の同輩になることを願って。

 

「そら、行ってこい。そして待っているぞ。迷宮(ダンジョン)の奥深くで、お前たちが追い付いてくることを」

「ああ。――その前に精々、孤独死しないことだ!」

 

 それ以上の言葉は不要と、アルフィアは颯爽と地上(オラリオ)目指して駆け昇っていった。

 

 

 

 

 

 

 日の当たる場所へ再び身を躍らせた子孫を見送ったクレスの後ろで、足音が複数。

 

「――なんだ、何がどうなっている?」

「我が神よ、この状況は……何故、叫喚の歌が聞こえていないのでしょう?」

 

 漸く配下を引き連れてご登場の遅刻神(エレボス)が、クレスただ一人を除いて誰も存在しない決戦の舞台に呆然と間抜け面を晒す。

 

 彼らに向き合ったクレスはただ一言――。

 

「――悪いな、気が変わった」

 

 そも、「手出ししない」などという悪神との約束を律儀に守る方がよほど間違っているだろう、と。

 彼は悪びれもせずに、のこのこと現れた残党たちへ後始末の剣を振るうのだった……アルフィアの再起に要した時間及び魔法薬など諸々のコストを、彼らという都合の良い実験素材(『恩恵』持ちの生物)で補うべく。

 




《Tips》
・『発現薬(ステイタス・ティラノス)
 クレスが魔法大国の知り合いと共同開発した『更新薬(ステイタス・スニッチ)』の上位薬。『魔法』と『スキル』の発現が可能となる。
 更に上位に『レベルアップ』を可能とする『昇華薬(ステイタス・カンキスタ)』の開発が計画されていたが、迷宮(ダンジョン)内にそこまでのものは必要ないということでクレスが研究を相方に譲渡(放り投げた)。そして相方も素材の提供なくしては開発不可能なため、研究を断念せざるを得なくなった。
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