ダンジョンに英雄を、伴侶を、名声を、正義を、混沌を。果ては出会いなどを求めるのは間違っている   作:七海香波

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 お久しぶりです、作者です。
 通常の一週間から少し早めの投稿ですが、これには海よりも浅く山よりも低い訳があるんです……はい、暗黒時代について大体書きたいことを書き切っちゃったせいです。
 という訳で今話の後ろに今後の展開についてのアンケートを設けてみたいと思いますので、よろしければポチッと押してみてください。
 設定うまく行ってなかったらゴメンね。


さあ謡え。彼らは今日も、明日を征く……

 

 そして、暗黒時代は急速に終焉を迎える。

 

 闇を乗り越えて光の側に帰還した英雄(アルフィア)

 弱者の食卓を守るために吹き荒んだ(サラ)

 その双極が台風の目となった『悪』への粛清の風は瞬く間に悪派閥(イヴィルス)の残党の首を狩り尽くし、戦局を『秩序』一強に塗り替えて。

 

 『老兵(ロートル)』は死なず、ただ時の流れに任せて静かに消え去るばかり。

 新たに生まれた『英雄の卵』たちは祝杯と共に、新たな冒険への誓いを立て。

 

 時は巡り巡って、本史へと続く――。

 

 

 

 

 

 オラリオ南東区画、『第一墓地』。

 街を支配する数多の祝声(・・・・・)に、ベルはようやく納得を得た。

 

「なるほど、そう言ったことがあったんですね」

「そうさベル君。七年前の今日この日、この英雄の都(オラリオ)からは一切の『悪』が駆逐された。しかも冒険者たちの犠牲はほぼ(ゼロ)に等しい、大快挙でね。俺たち神だって、こんなにもうまく事が運ばれるなんて誰も思っちゃいなかった……冒険者(彼ら)の明確な勝利さ」

 

 町中を行き交う、華々しい歓声の数々。

 冒険者の、英雄の都の勝利を謳う凱旋行列(パレード)

 道端にまで伸ばされた臨時の席で酒杯を煽る大人と、お菓子の詰め合わせを買い与えられ喜ぶ子供。

 誰も彼もが踊り浮かれ、今日という日を盛大に祝っている。

 

 オラリオに来て初めてこの日を迎えたベルは、街角で偶然遭遇したヘルメスに連れられて、それらとはかけ離れた墓地で祝日のいわれを聞かされていた。

 

「とはいえ、残念ながら誰もが生き残れたわけじゃない。少なからず、あの戦いに命を捧げた子供たちもいるんだ。そんな彼らのことを忘れるのも良くないからね、こうして観測者たる俺はこの日の午前中は墓参りをすることに決めているんだ」

 

 そう言って、ヘルメスは手元の花束から抜いた一つの花を目の前の墓に手向け、黙祷をささげる。

 そこに名を刻まれた者の顔を思い浮かべ、その業績に思いを馳せるように。

 

「――とはいえ、午後はもちろんいつも通りにアスフィたちと華々しく祭りに繰り出す予定だけどね! ベル君もそんな感じで誰かに誘われたりしてるんじゃないのかい?」

「え!? あっ、へっ!? い、いや、確かに神様やリリたちから色々誘われたりしていますけど……」

「くーっ、やっぱり隅に置けないねぇベル君は! っと、それならもしかして俺がこんなところに誘っちゃったりしたのも悪かったかな?」

「いいえ! そんなことはないです!」

 

 ヘルメスから事のあらましを聞かされたベルの中に去来するのは、過去の先達たちへの素直な尊敬だった。

 巨大な『悪』を前にして、それでも前のめりに倒れた冒険者(英雄)たち。

 彼らに感謝と誓いを捧げることもまた、この祭りの重要な目的の一つだと知ることが出来たことは、彼にとって間違いなく大切な収穫だった。

 

「そう言ってくれるなら良いんだが……っと。どうやら先客が来てたらしいな」

 

 ヘルメスに付き添う形のベルは、他とはまあまあ離れた場所に立つ三つの墓に案内される。

 そのうち真ん中の一つにだけ、既に二輪の花が添えられている。

 燃え盛るような深紅の花と、透き通るように純粋な白の花が。

 

「ヘルメス様。ここは……」

「あー、ここは当時、最後に天界に還った俺の神友とその仲間の墓さ。とはいえ、どれも形ばかりだけどね」

「形ばかり……?」

「実際には中に誰も入っていないからだよ。だけど誰かが死んだことを記録として現世の人間に認識させるために、必要な記号(シンボル)だとして設けられたんだ」

 

 ヘルメスはその、既に花の捧げられていた方へ先と同じように黙祷をささげる。

 そして残る二つへ、ベルに花を捧げるよう促した。

 

「そして、ベル君。ちょっとしたお願いなんだけど、君にはぜひそこの二つに花を飾ってやってほしい」

「僕が、ですか?」

「別に大した意味はないけどね。そっちの二つは君と同じ冒険者のものだ。それも、どちらも歴史に名を遺すくらいの傑物でね。どちらも()から鎮魂を祈るより、君からの方が良いと思うんだ」

「それなら……」

 

 ベルはヘルメスから受け取った花をそれぞれの前に添え、秘かに祈りを捧げる。

 ――どうか、安らかに。

 

「ありがとう。きっと彼らも喜んで……いや、怒られるかなぁ……」

「なんでですか!?」

「いやぁ、やっぱり君に余計なことをさせたって後で追いかけられるような気も……そう思うと急に寒気がしてきたな。よしベル君、今日ここでしたことは俺との永遠の秘密にしてくれよな☆ 絶対誰にも言っちゃダメだぜ!」

「別に言いふらしたりとかなんてしませんけど!? えっ、ちょっ、ヘルメス様!?」

 

 ばひゅーん、と手元の花を全て手向け終えたヘルメスが足早に去っていくのを、ベルは目を丸くしながら見送るしかなかった。

 やがてその姿が墓地の端で、金髪(・・)と水髪に捕まって両挟みになるのを見届けてから、彼は先ほど祈った墓地へと振り返る。

 

「……」

 

 その墓標に刻まれた意味を、ベルは知ることはない。

 ただ、そこに偉大なる先達が眠っているであろうことを彼はヘルメスの言葉から察していた。

 

 ――貴方たちに誇れる英雄に、なりたいと。

 もう一度、それだけを誓うように黙祷を捧げ、彼はその場を立ち去るのだった。

 

 その背中を、今日も燃えるような英雄願望(ねつ)が灼く。

 

 

 

 

 

「――さて、初披露だ」

 

 今日も今日とて、クレスは迷宮(ダンジョン)に潜る。

 祝宴も歓声も、彼には遠く。

 

 目の前にそそり立つは、雷鳴纏う凶犬型のモンスター。

 

 その群れを前に、彼は腰より引き抜いた双釘剣を逆手に握り交差させる。

 

「歌え【ヴァナ・ディース】。我が魔を縛り、膂を寄こせ」

 

 サラが毒血塗れの大男と一緒に持ち帰ってきた、かの暗黒時代の遺産の数々。

 そのうち二()を、生きながらに加工した能力値(アビリティ)操作の呪姉妹剣(カース・ツイン)

 刃より自ずと迸る鮮血に濡れる『()』しき双剣を構え、彼は今日も迷宮(ダンジョン)の『未知』に挑む。

 

 




 感想欄で先に聞かれそうなので書いておきますが、作者は↑の双剣が書きたいがためだけにこの暗黒期を書きました。許してちょ。

《Tips》
・『ヴァナ・ディース』
 《説明文》
 ヴェナとディナ。本能のままに殺戮を振り撒いた双子の姉妹の名を持つ双剣。
 理知なる種族の異端が刃となった、美しくも悍ましき破綻の剣。
 その刃は常に滲み出る自らの血に濡れている。

 《効果など》
 ・安楽剣(スティレット)タイプの双剣。
 ・素材は吸血鬼化して持ち帰られた『ディース姉妹』及び、
  その他エルフに関する『大聖樹の樹液』等の聖遺物(アーティファクト)
 ・作成者はクレス・カタストロフ。価格は現在のオラリオの運営予算五〇年分。
 ・奈落属性(モザイカ)。使用者の一部能力値(アビリティ)を奪い、その半分を別の能力値(アビリティ)に上乗せする。
  指定先はそれぞれ任意。

今後の展開どうするべ?(参考程度に)

  • ①本編にちまちま関わる
  • ②これまで通り『深々層』攻略
  • ③ファミリアクロニクル:クレス
  • ④カオス・レコード
  • ⑤迷宮神聖譚:『冥洞一灯伝』
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