ダンジョンに英雄を、伴侶を、名声を、正義を、混沌を。果ては出会いなどを求めるのは間違っている 作:七海香波
今回の本編は実質後書きにあります。何処かの誰かが以前に感想欄で「『なろう系』のタグが怪しいんじゃね?」などと言っていたので、癇癪のままに書き散らかしてみました。
たまにはこういうのも許して下さい、週明けが近いと考えると脳が耐えられないんです……。
-追記-
週明けちゃったけど三連休なのでセーフ! そう言うことにしといてください。
【
『
……もしくはその終結まで、あと6年。
「ただいま、神カオス。……『上級冒険者、謎の不審死!? 現場には抵抗の痕跡なし』? なんだ、またどこぞのファミリアが抗争でもやっているのか」
「やぁクレス君。お帰り。……うーん、そんなに表立っては聞いてないけどね。でもまぁ、水面下ではいっつも誰かがバチバチに闘りあってるし。いつものことだよ。そんなことより、せっかく帰ってきたんだ。つまらない新聞なんて放っておいてさ。パンケーキがちょうど焼けたよ、一緒に食べよう」
……『
「帰った。『バベル前大広場で
「おかえり。……人はいつだって自分に都合の良いことを信じたくなるものだろう? その他八百万の神が「楽園はない」と真実を伝えても、一柱の神が「楽園はある」と嘘を言えば、必ず嘘の方を信じる人間が出てくる。彼らにとっては優しい
……『
「ふぅ、疲れた。と、何々……『ラクシュミー・ファミリア消滅! ジャーンシー宮殿の跡地には太陽神を祀ると思わしき石碑が建立されたことを記者が確認……』か。ラクシュミー・ファミリアと言えば、それなりの国家系ファミリアだと記憶していたが……」
「ジャーンシー王国だけじゃないよ。近頃は小国系ファミリアがちょくちょく消滅しているって、ギルドも公式に警告を出してる。また危ない世の中が戻ってきたものだねェ……そう、あの空気だよ。戦争の時代の、鼻の奥が焦げ付くような嫌な空気だ」
「カオス……」
「風が告げてくれているよ――
……『
「戻った。『拡がるムー・ファミリアの凶行、戦乱の時代来たれりか――!?』 ……ムー・ファミリア? 聞き覚えがないが、どのようなファミリアだ?」
「そりゃまあ、オラリオ外のファミリアだから君が知らないのも無理はないか。この『異邦見聞録』に曰く、
……『
「また一年が経った……『封神時代、到来! 汝、神を愛さば異端の使徒を手にかけよ――!』だと? また随分とキナ臭い三流記事の
「だが、まさに時代を表すに相応しい資料だよ。人類の愚かさ、過ちを後世を遺そうと思うのなら、こういった一見下らない資料こそ取っておく価値があるというものなんだよ。因みに、その出版社は三日前にお取り潰しになったよ。君の読み通り、どうにもオラリオの外から資金が流れてきていたらしくてね。ウラノスから又聞きしたけれど、どうやら忍びが絡んでいたみたいなんだ」
「ほぅ、だからギルドの連中が慌ただしかったのか。しかし、シノビか……東方の連中か? 主君は誰なのだろうな」
……『
「帰宅なう、で使い方はあっているか? ……『フッキ・ファミリア消滅!』『テュール・ファミリア、獅子奮迅の活躍も主神送還!』『留まらぬムー・ファミリアによる戦禍、各地で暗躍する太陽神の眷属たち――!』だと、このところは帰るたび碌な報せが待ち構えていないな。それにこの名前、以前にも聞いたが随分と暴れ回っているらしい」
「ムーのところだね? 私もあれから情報を集めてみているんだけど……どうにもあそこの眷属は三つの部族に別れていて、『自分の部族が主神の愛を一番に得るため』に部族同士で競って色んな所に戦を吹っ掛けては、根こそぎ略奪して主神に捧げてを繰り返しているようなんだ。これまでにもよくあった、
「信心より生命が軽い狂信者どもの類か。あの手の輩は他人に迷惑をかけることを厭わず、自らこそが正義と信じて顧みることを知らん。そして『部族』となれば、集団化しているな。自浄作用が働かん集団は、たまにマトモな価値観を思い出した奴がいても内々で潰してなかったことにする。厄介だ」
「しかも元々ファミリア内で殺し合いを繰り広げてただけあって、オラリオ外じゃ珍しく平均でレベル3らしいし。止められる冒険者も限られてる……はてさて、ギルドはどうするんだか?」
……そして、『
もしくは、太陽神ムーが天界へ送還される当年――。
「で、今年は『ムー・ファミリア、ついにオラリオへ宣戦布告! ギルドはこれに対し遺憾の意を示すとともに、徹底抗戦の構え――!』……正気か? いくら外で敵なしと言えど蛮勇が過ぎるだろう」
「それがね、実は裏でギルドは既にムー・ファミリアに対して介入を始めていたらしいんだけど……その工作員が運悪くバレて殺害されたみたいでね。しかもお相手さんはそれを「オラリオ何するものぞ、我らが太陽神の前に敵はなし――!」なんて成功体験にして言いふらしちゃったものだから。アレスの所との
「……それで、俺に『ムー・ファミリアの本拠地を落とせ』と」
「然り。敵の幹部を捕えて尋問したところ、狙いは『オラリオに自らの
「
「敵艦は既にメレンの上空まで差し迫っている。バベルを出ればすぐにでも視認できよう。もはや猶予はない、一刻も早く撃墜せよ」
「了解した。では、疾く片付けてこよう」
――かくして、傲慢にも。
ギルド深奥部の『祭壇』にて、たった
もしもオラリオが墜ちることがあろうものなら、世界は再び渾沌と戦乱に包まれるだろう。
それ則ち、『破界』。
普段は地上でのすったもんだに一切関知しないクレスであっても、それだけは見過せない……そうすることを、許されない。
彼とウラノスの間に結ばれた『古の盟約』の履行によって、ムー・ファミリアは今日を以て歴史の塵と還るのだ。
面会が終わるや否や、クレスの俊足は颯爽とオラリオを飛び出す。
「……あれだな」
当時レベル13に達していた驚異の脚力によって、クレスはなんなく港湾都市メレンへと辿り着いた。
その上空に浮かぶは、大陸級のサイズを誇る飛行戦艦『アトランティス』。
地上からはオラリオから出動した
ただでさえ第10期リヴァイアサン攻略戦によって主力となる魔法砲台が失われた今、決定打に欠けるのは致し方ないことなのかもしれない。
だが、それらの事情を一切気にするつもりのないクレスは軽く彼らを一瞥しただけで、連携なぞ知ったことかと単身構わず敵の本拠地へ跳び乗る。
同時に、この事件を手っ取り早く解決できる魔法を記憶の底から引き揚げる。
詠唱、開始――、
「【契約に応えよ賢老の残響。我が命に従い天頂を穿て】――」
完成直前までもっていった魔法を『
いくらオラリオの外では敵無しとは言え、レベル13の超高速機動を精々がレベル4、5しかない神ムーの眷属たちは目で追う事すら敵わない。
護衛の隙を縫うように擦り抜けて、やがて神の座す『祭壇』へ辿り着いたクレス。
唯一
「何者――」
その時既に、先手にして返答となるクレスの
「【
――其れは防御不可にして回避不能、そして不可逆の重傷を対象に与える『禁呪』。
敵の
かつてのクレスが今は
なお、『神になら使ってもいいだろ。下界出身じゃないし』by
つまり、その魔法にムーの眷属たちが気づいた時――全ては
「ぐはっ……!?」
「ムー様!? 一体何が……っ!?」
突然胸を抑えるように前方に倒れ、腰掛けていた玉座からずり落ち、床に蹲る神ムー。
彼の口元からほぼ泥状と化した赤い臓物だったものがまろび出るのとほぼ同時に、その座標から天へと向かって眩い光の柱が立ち昇り始める。
天へ聳え立つ御柱……つまりは、神の送還。
「――!?」
「……っ!!」
「!?!?!?!?」
突如として『
メレンの建物で最も高いギルド支部の屋上に立ち、上空と地上でそれぞれ神の送還による騒ぎが起きていることをよそに、残った艦体をどう撃墜しようか軽く頭を捻って――そして。
「あれだけのサイズの
取り出したのは、現在の彼の
今やほぼ使われることのない、恩恵に依らない『
それらの内でも特に強力な、『
――使わない
目標は、主神が態々駆るほどの軍艦。
さぞ撃ち応えがあるだろう、などとらしくもないことを思いながら。
見る者によっては垂涎の的となる、神史以前の
「【契約に応えよ、凍晶の吐息よ。我が命に従い永柩を擁せよ。宿れ、厳冬の具現、深白の公女。凄寂なる挽歌をここに】――【ニブルヘイム】」
手始めにとムー・ファミリアの
白銀の豪雪風が瞬く間に『アトランティス』の上部、
「【契約に応えよ、暴虐の火露よ。我が命に従い壊滅へと遡行せよ。宿れ、灰燼の起源、理滅の魔王。彼の知ろしめす足跡をここに】――【エギル・グローネ・アングドロア】」
続いて解き放たれた終末の業火が、僅かに生き残っていた艦上の命の輝きを悉く呑み干し、
「【契約に応えよ、護国の信念よ。我が命に従い外憂を払え。宿れ、神風の嘶き、皇女の防人。報いし武威をここに】――【ヤスヨシ・ゴッドストーム】」
寒暖差で脆くなった表層と艦外周の装甲を神風にも例えられる旋風が軒並み吹き飛ばし、
「【契約に応えよ、聖樹の偽典よ。我が命に従い罪咎を断ぜよ。宿れ、魔槍の第九、禁獣の宿王。封ぜられし穢呪をここに】――【ノイン・ズァーリヴィネル】」
宙を裂いて顕れた無数の呪鎖と黒槍が露出した艦の
「【契約に応えよ、深淵の抱擁よ。我が命に従い夜天に廻れ。宿れ、奈落の禍星、無貌の隠卿。知られざる終曲をここに】――【コクテンキュウ・アビスゲート】」
艦の中央部に生み出された漆黒の重力球が崩壊までの
「【契約に応えよ、漆黒の狂気よ。我が命に従い理想に殉ぜよ。宿れ、覇道の模倣、鮮鋭の暗影。闇に共鳴せし狂奏をここに】――【アイ・アム・アトミック】」
トドメとばかりに放たれた超高密度に圧縮された魔力の波導が、天を割る爆発を以て『アトランティス』に残された一切合切をメレンの港から広がる外洋へ吹き飛ばした。
執拗に、かつ一切の容赦なく敵の全てを海の藻屑に変えたクレス。
しかし彼の眼が見つめる先には、未だ光の御柱が屹立を続けていた。
天上への送還の最中にある神ムーの玉体。
明滅するその輝きの奥から、なにやら怒りの意志が読み取れて――。
「ではついでに、こちらの詠唱省略も試しておくか。【
先を見据えて
『――我を殺めたことは許そう。愛するあまりに子供たちの暴走を止められなかった我が罪、この下界における仮初の生命で以て濯がん。されど愛しの
「お前はこれまで自分の
……弱肉強食の摂理を語る強者がいざ弱者の立場に回った時。
その時の言葉ほど、見苦しいものはない。
それは何時の時代も、神も人も変わらない。
クレスは他人事のように、ふと思った。
……ムー・ファミリアの面々は、いつか来る
神ムーは、その光で大切な眷属たちの目の曇りを晴らしてやるべきだったのだ。
それが出来ずに好き勝手に世の中に害意を振り撒いたから、このような悲惨な末路を迎えた。
それだけのこと。
たったそれだけの、簡単なこと……。
「それが出来なかったからお前は
『ならばいつか、貴様にも――!』
「俺は御身らほど厚顔無恥ではいられなくてな、生憎と自分の罪くらいきちんと数えてる。だから、たまには『
ムー・ファミリアの
ムー・ファミリアの
そしてムー・ファミリアの
――だから、ほら。
神ムーが地上に居る理由はもう無くなるのだから、安心して天へと還るが良い。
送還間際で鋭敏になった
『戯言を――我は太陽の真体。遍く此の世を照らす光なり!』
「戯言でもお前よりはよほどマシだよ――【
『崇め祀る者に至上の生を。軽んずる者に非業の死を』
「【
『宙翔ける天上の焔を知れ――』
「【破滅の烈火よ、創造の燎原へと至れ。我が名は『
『――【
「――【
衝突する二つの極焔。
されど、両者の間には明確な優劣が存在していた。
天上に還る
神々の御名において『英雄』の称号を(心底不本意ながら)宛がわれたクレス。
下界においてより優先され、尊ばれるべきは……神の怒りなどではなく、人の輝きこそである。
実験的な試みとして詠唱省略を行ったことにより威力が減衰していた【
次第にクレスの焔が神ムーの炎を呑みこみ、押し返して。
『貴様ッ――貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様ァァァァァァァッッッッッッッ!!!!!』
やがて、しぶとく下界に残った最後の未練を果たそうとしていた光の御柱を蒼穹の彼方へと押し返したのだった。
「さて、残るは後片付けだな」
機能を停止した『アトランティス』は浮遊能力を失い、メレンの港湾部へと激しい水飛沫を立てて落下した。
巨大な質量が墜ちたことによる衝撃は海面を大きく波立たせ、発生した一時的な津波が街を呑みこもうとする。
本来ならそこまで依頼されている訳ではないため、放っておいても良いのだが……積み重ねられる善行なら見逃すより積み重ねておくのが良いだろう、とクレスは魔杖を振った。
「【契約に応えよ、無毀の心象よ。我が命に従い不義に抗克せよ。宿れ、封魔の再臨、讐光の勇者。悪世照らす淨盾をここに】――【イル・アタラクシア】」
クレスの作り出した光の盾が、街に迫っていた大津波の第一波をなんなく弾き返す。
そのまま彼は巨大な光盾をゆっくりと、荒れる海面へ鍋蓋を重ねるように倒し、残りの衝撃を軒並み圧し潰してメレンの海を平定。
そうして、オラリオへ不可逆の破滅を齎そうとしたムー・ファミリアの凶行には完全な決着がつけられたのであった。
「これにて任務完了。帰投の時間だ……後は任せる」
誰が何をしたのかは分からず、されど差し迫っていた脅威が払われたことだけは確か。
その事実を理解したらしい冒険者たちが歓喜の声を上げる中、その内でクレスの存在にただ一人気付いたヘラ・ファミリアの次期団長――否、第10期リヴァイアサン攻略戦によって先達が死した今は現団長となった少女に目配せをして、クレスは独り秘かにオラリオへの帰還の路につくのだった。
――後に、ギルドはムー・ファミリアの壊滅を正式に宣言。
並びに、拠点艦『アトランティス』の脅威をオラリオ所属の魔法使いが打ち払ったと公表した。
戦争の余波で荒廃しかけていた世界に秩序を回復する切っ掛けを齎した、栄光あるオラリオの冒険者。
その名は、アマノ・磐人。
ムーの太陽を落とした偉大なる魔法使い、【
《注意書き》
※今回のクレス君はちょっとだけ性格が違います。なにしろ800年前のことなので、若気の至りというやつなのです。
《Tips》
・【
――防がれることへの対策を練るくらいなら、最初から防げない『攻撃』を撃てば良いのでは?
そんな無茶苦茶な
体の内側に盾を構えることなど通常は出来ず、ほぼ即死の傷を作るために回復も困難。誰が呼んだか、別名【生き物を肉袋に変える魔法】。
生み出される光景が余りに凄惨かつ非人道的なものであったため、「これは下界には早すぎる」として開発者らの連名で使用を禁じられている。ただし神は下界に属するものでないと(言い訳)して、割と使われている模様。
・【
別の神を殺すためのモンスターが使役した、【
由来となった魔法の強固な概念干渉をそのまま引き継いでいるため、これを使われたものは生物非生物を問わず
「お前……私を虚仮にしているのか? そんなに死にたいか、ン? 死にたいんだな、そうだろう?」
「そう怒るほどのことでもないだろう。案外似合っているぞ」
「――殺す」
・【ニブルヘイム】
『魔法科高校の劣等生』より。
・【エギル・グローネ・アングドロア】
『魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』より。
・【ヤスヨシ・ゴッドストーム】
『サラリーマン流 高貴な幼女の護りかた』より。
・【ノイン・ズァーリヴィネル】
『聖樹の国の禁呪使い』より。
・【コクテンキュウ・アビスゲート】
『ありふれた職業で世界最強』より。
・【アイ・アム・アトミック】
『陰の実力者になりたくて!』より。
・【イル・アタラクシア】
『再臨勇者の復讐譚 ~失望しました、勇者やめて元魔王と組みます~』より。
今後の展開どうするべ?(参考程度に)
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①本編にちまちま関わる
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②これまで通り『深々層』攻略
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③ファミリアクロニクル:クレス
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④カオス・レコード
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⑤迷宮神聖譚:『冥洞一灯伝』