PSYCHO-PASS _Orakel und Gesetz   作:鈴夢

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支える手

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――別日 午後18時過ぎ

公安局 88F 局長執務室にて――

 

 

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「敵の拠点を九州の"阿蘇"と特定。偵察ドローンで確認済みです。」

 

ブレのない真っ直ぐとした声色で話すのは常守。

その隣に並ぶのは霜月、花城――

 

公安局局長 禾生壌宗の前に招集された面々は真剣な顔付きだった。

 

 

「国防軍には軍用ドローンの提供を打診済みか。……問題は"犯罪係数"だな?」

 

「はい。脳内の特殊なチップによって犯罪係数を偽装していると推測されます。」

 

唐之杜の解析によって分かったこと。

敵は全員脳内にチップを埋め込まれており、犯罪係数を偽装していると考えていた。

 

だから"裁けない"。

ドミネーターはただの鉄の塊と化す。

まるで数年前のヘルメット事件のように。

 

「対処するには通常の刑法適用しかありません。」

 

常守は強く、はっきりと言い放つ。

そんな真剣な眼差しに禾生は少し間を置き、しばらくして溜息を漏らすと3人をじっと見据えた。

 

 

「……議論の余地は有るが……

違法武器の押収ということで出動を許可する。」

 

 

「「「了解」」」

 

 

 

 

 

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夜半の空気が濃く満ち、雲ひとつない澄んだ空には満月。

 

日付が変わるその瞬間。

常守朱は手首に装着されたデバイスにて時刻を確認すると皆に作戦決行の合図を送った。

 

 

「"これより 作戦を決行する"。」

 

 

彼女の指示を聞いた人間たちが一斉に動きだした。

 

待機していたヘリコプターは次々と空へと飛び立ち、後方支援に移る人間たちも真剣な面持ちで来る作戦の為に備える。

 

 

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「……」

「……」

「……」

 

 

 

作戦部隊の先頭を行く一機のヘリコプター。

そこには3人の精鋭の姿があった。

 

狡噛慎也

宜野座伸元

狡噛舞白

 

3人は互いに背を向け、銃をしっかりと抱きながら静かに待機していた。

誰も言葉を発さず、交わさず。ただただ次に起こるであろう戦闘に身構える。

 

 

「……」

 

 

そんな時、宜野座は横目で舞白の姿をとらえた。鼻筋の通った横顔。薄暗闇の中でも彼女の姿はハッキリと映る。

 

ヘリの振動でサラサラと揺れる白銀の髪。真っ直ぐと一点を見つめる美しい漆黒の瞳。

 

両手でしっかりと握りしめられたサブマシンガン。手馴れたような触れ方だった。ガンホルスターには拳銃。黒地のパンツの上から太腿辺りに巻かれた紐状の器具にはナイフが取り付けられている。

 

「……ッ……」

 

宜野座は思わず瞼を閉じた。

まるで傭兵のような姿の彼女に例えられない感情が湧き出る。

 

数年前までは学制服を纏う普通の女の子だった。兄に似て賢く、生意気で口達者。たまに仕事が早く終わった日、家に行って晩飯を作ってやった時の嬉しそうな笑顔。今は亡き"親友"との話、学校で男子生徒と口喧嘩をして圧勝したと自慢げに語る子供っぽい顔も―――

 

"ノブ兄"と呼ぶ声、俺をいつも実の兄のように慕ってくれていた行為も……

 

 

しかし今は別人のようだった。

 

今更だ。分かっている。

そんなこと……今更だろう。

 

"力をかして、ノブ兄"

―――その彼女に応えると決めただろう。

 

「……」

 

宜野座はゆっくりと瞼を持ち上げる。

舞白の背中へと視線を移し小さく息を漏らしたのだった、

 

 

 

『間もなく目標地点に到着します。ご準備を。』

 

 

その時、行動課の操縦士が3人に向けて指示を出す。

3人は目付きを変え次の行動に備えていた。

 

そして3人の鼓膜に衝撃音が飛び込む。

これから突入する砺波率いるピースブレイカーの拠点にミサイルが何発も打ち込まれたのだった、

 

突入の合図だ。

 

 

「……っ……!」

 

ヘリが地上に降り立つのを待たず、最初に飛び出したのは狡噛、受身を取りながら硬い地面に転がり先へと進む。

 

「私も行くよ。」

「ああ。」

 

それに続くように舞白も飛び出す。

一瞬宜野座に向けられた視線はどこか按じるような心配そうな瞳だった。

そして宜野座も同じく、狡噛と舞白を追うようにヘリから飛び出す。

 

 

 

 

 

「ッ……!」

 

 

飛び出した先は轟々と真っ赤な炎に包まれ始めていた。先行して打ち込んだミサイルは容赦なく拠点を破壊し、彼らが所有していた戦闘機などからも炎が上がる。

 

宜野座は必死に狡噛兄妹の背中を追いかける。

そんな彼らの身のこなしは"慣れている"ようにも見えた。

 

自分とは違い世界の危険な地域を股にかけてきた兄妹。彼らにとっては慣れ親しんだ光景なのかもしれない。そんな兄妹が恐ろしくも見えてしまった。

 

 

 

┈┈

 

 

敵の拠点はまさに地獄絵図。

別方向から侵攻している外務省行動課の死体も転がり始めていた。

 

前回と同様、装備を固めたピースブレイカー達。硬い鎧のような装甲は銃ごときで簡単には破壊できない。ある程度体術にも長けていなければ簡単には彼らを突破できないだろう。

 

┈┈

 

 

 

 

「――ッ!」

 

鋭い突風のように弾丸が飛び交う。舞白は銃を抱きしめるように体を丸め辺りを見回す。

 

広い倉庫のような場所で3人はそれぞれ物陰に隠れ、タイミングを計っては前へと突き進んでいく。

 

 

「舞白!ギノ!先にある出入口!目指すはあそこだ!」

 

広い通路を挟んで反対側の戦闘機の物陰に身を隠す狡噛が声を上げた。舞白と宜野座は100メートル程先の扉を目視すると目的地を確認する。

 

目的地へ辿り着くには四方八方に立ち塞がる武装集団。何十人もの規模の相手をたった3人で切り抜けなければならない。相当の覚悟が必要だった。

 

 

「――分かった!!道は開く!」

 

刹那、舞白は応えるように声を上げる。そして2人に目で合図を出すと集中するように息を吐き、弾丸が飛び交う広い通路へ飛び出そうと体勢を整え始めた。

 

「……ッ!?何する気だ舞白!」

「私が先に行く!2人は援護をお願いします!」

「お前!何考えてる!!今飛び出したら蜂の巣だぞ!他のチームの援護を待つべきだ!」

「待ってられないでしょ!砺波に逃げられたらこの作戦は失敗!」

「待て!!ましっ――」

 

舞白は宜野座に向けてふっと笑みを向けた。

そしてその瞬間再び目付きを変えると銃をしっかりと握りしめ一気に飛び出す。

 

まるで閃光のようなスピード。

弾丸は舞白を捉えることは出来ない。その前に舞白の打撃を食らえば次々と倒れていく。

 

 

「ギノ!左は頼んだ!」

「…どいつもこいつも無茶苦茶だ!」

 

仕方ないと言わんばかりに呆れを通り越す宜野座は狡噛と共に走り出す。前方を行く舞白の援護をしつつ、背後や両サイドからの攻撃を的確に制止していく。宜野座も様々な危険な場面を乗り越えてきた。それに、自分の先を行く舞白を見失う訳にはいかないと無意識に体が動いていたのだった。

 

 

 

「((あと30メートル……!ここを抜ければ目標位置はすぐそこ……))」

 

舞白たちの行先、目標地点まであと少し。

道を作るのは自分の役目だと一心不乱に駆け抜け――

 

「……ぅ!?」

 

通路を駆けていたその時、目の前に現れる大きな影が2つ。スタンバトンのような武器を手にしたピースブレイカーの兵士。しかし他の兵士よりもやけに重装備。この先の目的地に行かせないと言わんばかりの分かりやすい中ボスのような立ち位置の兵士に違いない。

 

「くっ…!」

 

避けようとしても彼らは必死に食らいつくように武器を振り回す。柔軟な体をなんとか生かし攻撃を避け続ける。

 

「((次から次へと兵士たちが……ッ!))」

 

今回は奇襲だ。しかし彼らも戦闘のプロ。

次から次へと兵士が姿を現すともちろんこちらの体力も消耗していく。

それに今更ながら舞白は怪我を負ったばかり。完全に治っていない傷が痛む度に表情を歪ませる。

 

「うっ!!ぐっ……!!」

 

振り下ろされるバトン。それを何とか義手である右腕で受け止める。体格も力も大きすぎる。上から抑え込まれるような馬鹿力。

 

「((まずい!!後ろ!!))」

 

もう1人の兵士の気配を背後に感じた時、舞白は思わず瞼を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はぁぁぁぁ!!!」

「っ!!」

 

身構えていたその時、背後から襲いかかって居たであろう兵士の巨体が吹き飛ぶ。舞白を押さえつけていた兵士もその様子に驚いたのか隙を見せた。それを彼女が見逃すわけがなかった。

 

「んんっ!!!!」

 

兵士のスタンバトンを蹴り上げ背負い投げるように床に叩きつける。そして銃口を重装備の隙間に差し込むように突きつけ引き金を引いたのだった。

 

息絶える兵士。

先程吹き飛ばされた兵士も強く壁に体を打ちつけたらしく気を失っていた。

 

 

 

 

「……"無事か!"」

「…う、うん!!」

 

息を切らしながら現れた助っ人。

それは宜野座だった。

 

きっと彼が居なければ自分は兵士たちに重症を負わされていたに違いない。

 

 

「1人で突っ走るな!」

「ッ……」

「力を貸せと言ったのはお前だ!」

 

その通りだ。

自分は彼に助けを求めた。

その言葉を投げたのに、自分は1人で……

 

「前の怪我も治りきってないだろ。顔を見たら分かる。無理をするんじゃない。」

「……」

「わかったな?」

「…はい。ごめんなさ――」

 

 

どこかしんみりとした空気の最中、

2人の背後から忙しない足音が飛び込む。

 

 

「舞白!ギノ!走れ!!」

 

「「!?」」

 

狡噛の大きな声と背中を押す大きな手。

2人はつられるように無意識に足を動かすと滑り込むように扉の先に飛び込んだ。

 

それと同時に狡噛は重厚な扉を閉める。

その数秒後、耳を塞いでも耐えられないような轟音が鼓膜に飛び込むと舞白と宜野座は呆気にとられた様子で目を見開いた。

 

先程まで居た倉庫。

恐らく今頃大きな爆発によって炎に覆われ、戦闘機に積まれていたであろう爆薬が激しく乱れ飛んでいる。

 

意図して狡噛が仕掛けた爆薬。そして行動課の後方支援による爆撃。恐らく少しでも遅れていたら舞白も宜野座も死んでいた。

 

 

「危なかったな。」

「待て狡噛!聞いてないぞ!」

 

「まあまあ、結果大丈夫だったし……ね?」

「……貴様ら……」

 

呑気な兄妹に怒りをおぼえる宜野座。

しかしあまりにもあっけらかんとしている2人を目の前にその怒りさえも直ぐに消滅してしまう。

怒りというより"呆れ"だ。

 

 

「……舞白。」

「何?」

 

狡噛を先頭に背後には舞白と宜野座。

休む間もなく次の目的地へと走り向かう道中にふと宜野座が舞白に問いかける。

 

 

「……お前達兄妹、いつもこうなのか?」

 

「うん。」「ああ。」

 

舞白にだけ問いかけたはずなのに狡噛さえも返答が返ってきた。

 

"本当に呆れた"

もはや怒りは湧かなくなってしまった。

戦闘慣れもここまで来たら笑えてくる。

 

恐ろしい兄妹だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ひたすら駆け抜ける3人。

かつて幼馴染として共にすごした3人。

 

あの頃はこんな未来を誰しも予想出来なかっただろう。海が見えるあの家で、3人と1匹で穏やかに過ごしていたあの時。"お兄ちゃん"、"ノブ兄"と可愛らしいあどけない姿の少女が彼らにひっついていた幸せな光景――

 

今は銃を片手に、薄闇の気味の悪い通路を駆け抜けている。人を殺め、傷を負うことも当たり前の現在。

 

 

そんなことを考えているのは宜野座だけでは無いはずだった。狡噛兄妹もまた、この現実を受け入れつつも時たまあの頃の平和な時間を脳裏にうかべることもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……"待て。"」

 

 

狡噛の指示に足を止める2人。

先程とは打って変わって兵士の姿一向に現れることなく、ただただ一本道を抜けていくのみ。

 

明らかにおかしい。

まるでこの先に誘われ、罠でもあるのでは無いかと。

 

 

 

「様子がおかしい。」

 

「……ああ。」「うん。」

 

狡噛の言葉に頷く2人。

3人は銃を構え、より警戒心を高めていく。

 

「罠か何か?」

「何かあってもおかしくない。あまりにも静かすぎる。」

 

"嵐の前の静けさ"

 

目的地まで残り僅か。

この任務において直接内部に侵入しているのは狡噛達3人のみ。後方支援のもの達は今頃外部で戦争中だ。常守達からも特に通信はない。そんな余裕も無いのだろう。

 

 

 

「とにかく気をつけろ。舞白、ギノ。」

 

 

狡噛は再び歩き始めた。

そして舞白と宜野座もゆっくりと歩みを進め始めたのであった。

 

 

 

 

 

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3人はそれぞれが警戒を強めたまま薄暗闇の細道を抜ける。結局それまで兵士の姿もなければ大きな物音ひとつもしなかった。

 

かなり内部まで来たらしい。

目的地はすぐそこだ。

 

 

「……何ここ……広い。」

「演習場か何かか?」

「みたいだな。銃痕がある。」

 

抜けた先に現れたのは広い空間。

数箇所に点在する太い大きな柱。平坦な空間だが戦場を真似て作られているような凸凹とした地面。壁は人工的なものではなく土壁で鉄網が所々覆われていた。

 

「……見つけた。あの先に道がある。」

 

舞白は一点を指さす。

この空間に出入口は今出てきた場所と舞白が指さす箇所しか見当たらない。またまた一方通行。距離で言うと150メートルほどは離れているだろう。

 

 

「まとまって動こう。罠があるかもしれない。」

「ああ、ギノの言う通りだ。」

「うん。わかった。」

 

 

3人は視線を合わせこくりと頷く。

そして広い空間に足を踏み出したその時、舞白がピクリと反応を見せた。

 

「……っ」

 

「舞白?」

「どうした?」

 

狡噛と宜野座は足を止める。

そして真ん中に立つ舞白を見下ろすと瞬時に何かを察した。

 

 

 

 

「……ッ!!隠れて!!」

「「!?」」

 

舞白の叫び声と同時に激しい銃撃音が鳴り響いた。豪雨のごとく、嵐のごとくこちらに放たれる銃弾の数からして"人間では無い"。

 

 

 

「ッ……!」

 

3人はそれぞれ物陰に隠れる。

顔の横スレスレに銃弾が飛び交う感覚はいつぶりだろう。

 

 

「((……凄い弾数。それに威力も……))」

 

機関銃が搭載された遠隔式自動式の兵器が2台。タイヤはキャタピラで移動も早くどんな段差もスムーズに動ける仕様らしい。人の操作はなく完全に自動で人を検知する優れた機能を搭載しているらしく延々と3人を狙い続ける。

 

撃たれたら即死だろう。

 

 

「((ここに隠れてても時間の問題。とにかく先へ行かないと!))」

 

物陰から3人がそれぞれ視線で会話をする。

なんとか隙を見つけ、物陰を上手く利用しつつ先に向かうしかない。

 

 

「「「――!」」」

 

リロードのタイミングを伺い3人は物陰から飛び出す。

 

 

「ッ……く」

 

走り抜けては隠れの繰り返し。

ギリギリのタイミングで少しでも隠れる場所を間違えれば死ぬ。

 

舞白は柱の裏に隠れ銃を抱きしめるように体を丸め猛攻撃を必死に耐える。

 

耳がおかしくなりそうだった。

柱に打ち込まれる弾丸の威力の振動が体に伝わる度に恐怖が押し寄せる。

 

「((……頭……痛い………))」

 

凄まじい発砲音に鼓膜が破れそうだ。

その反動で首に埋め込まれたチップの痛みが現れ始める。

 

「((気持ち悪い……まずい……っ))」

 

視界が霞んでいく。

ジクジクとした痛みが首から頭にかけて広がり始める。

 

 

 

「((……動かないと……次は……あの柱の裏――))」

 

移動タイミングが訪れる。しかし思うように足が踏み出せない。虚ろに色を失う瞳。その様子に気づいたのは兄の狡噛だった。

 

 

「まずい!!舞白!!」

「……ッ……」

「クソっ!……ぐっ!!」

 

別の物陰から飛び出そうとした瞬間、もう1台の兵器は狡噛へ攻撃を開始する。

 

 

「う…………く」

 

聞こえる機械音。

こちらを狙い始める1台の兵器。

 

「((……動け、……動け!!))」

 

銃口と目が合ったその時。

 

 

 

 

 

「舞白!」

「ぅっ!!」

 

一瞬で自分の体を引き上げる大きな体。

そしてそのまま別の柱裏へと駆け込む。

 

 

「離れるな!じっとしてろ!」

「っ……」

 

またもや宜野座の助けだった。

きっと彼はどんなときも舞白の姿を捉えているのだろう。

 

 

 

「……ッ……」

「動くな……!」

 

柱に打ち込まれる弾丸。

さらに威力を増していき柱が少しずつ削られていく。傍らの物陰からは狡噛が兵器を破壊しようと試みるが難航していた。

 

「……く……」

「………"ノブ兄"」

「大丈夫だ。……離れるんじゃない。」

 

宜野座に包まれるように胸の中に収まる舞白。

鳴り止まない銃声に恐怖さえ感じるが彼の優しい声と抱擁に瞼を閉じる。

 

 

今も昔も変わらない彼の抱擁。

"このままなら死んでも構わない"なんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

刹那、2台の兵器が動きを止める。

弾切れを起こした訳でも、システムエラーを起こしたわけでもない。

 

 

「……止まった?」

「何が起きた?」

「分からない。……なんで――」

 

宜野座、舞白。そして狡噛もゆっくりと柱から顔をのぞかせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

刹那、3人の視界に一人の男の姿が現れた。

その男は背にもう一人誰かを抱えており、片手には銃を手にしていた。

 

 

"顔に傷を負った金髪の男"

 

間違いない。ピースブレイカーの"あの男"だ。

 

 

 

「動くな!」

 

「……待って!撃たないで!ノブ兄!」

 

銃を構える宜野座を制止する舞白。

 

"何かがおかしい"

舞白が脳内で呟いた瞬間、男は手にしていた銃を投げ捨てると真っ直ぐとこちらに向かって声を上げた。

 

 

「俺は外務省海外調整局の潜入捜査官だ!ここに砺波は居ない!」

 

あの金髪の男が"自分は同じ仲間だ"と口にしたのだ。潜入捜査官。狡噛と舞白はその言葉を直ぐに理解すると男にゆっくりと詰め寄る。

 

 

「まずその人を降ろせ。」

「わかった。」

 

狡噛の指示に素直に従う男。

抱えていた人質をその場に下ろすと舞白が直ぐに駆け寄る。

 

「……!矢吹局長!」

 

暴行を加えられたであろう矢吹だった。

幸いにも息はある。意識も薄らだが戻っている様子だった。

 

 

「今すぐ俺を拘束しろ。砺波に気づかれたらまずい。」

「……あなたは?」

「詳細は後で話す。とにかく今は俺を拘束するんだ。」

 

男の曇りない真っ直ぐとした瞳。

舞白はじっとそれを見あげ、言われた通り従うのであった。

 

 

 

 

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