君を愛することはナイト   作:quiet

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03話 異状

 

 

 聖女アルセアが塔の中に入っていってから、すっかり十分が経っていて。

 それはつまり〈光継式〉が始まってから、あるいは聖女がくぐっていった扉の前にシグリオが立ってから、十分が経つということでもあった。

 

 何か特別なポーズでもあるのかと思ったが、何も決まっていないらしい。目安としての所要時間は三十分程度。足を軽く開いて、それほど身構えることもなく彼はそこに立っていた。

 

 観客はいない。

 ただ春の早朝の青い空だけが、この聖なる塔を見下ろしていた。

 

「…………」

 始まる前はあれだけ緊張していたのに、始まってしまえばひどく呆気ないもので。

 だからシグリオはぼんやりと、ついさっきの聖女とのやり取りのことを思い返していた。

 

 

 ――――最も騎士に相応しい能力を持っているのが、あなただったからです。

 

 

 何を以て彼女は、それを判断したのだろう?

 

『騎士に相応しい能力』と一口に言っても、それを聞いて思い浮かべる能力の類は人によってそれぞれ全く異なるはずだ。まして単なる騎士ではなく、聖騎士だ。一体彼女は自分のどこを見て、どのようにして判断をしたのか――思いを巡らすうち、最初の疑問は容易く姿を変えてしまう。

 

 一体彼女は、騎士に何を求めているのだろう。

 彼女にとっての聖騎士とは、一体どんなものなのだろう。

 

 

 そもそも彼女は、一体どんな人物なのだろう?

 

 

 その疑問を心の中で言葉にしてすぐに、シグリオは考えることをやめた。わかったからだ。この場では決して答えの出ない問いかけであると。本人のいないところで、ろくに交流も重ねていないままに結論に辿り着いたところで、それは妄想以外の何物でもなかろう、と。

 

 右足に、少しだけ重心を傾ける。

 

 もしも気になるなら、と自分を諭すように、ひとつの案を思う。

 

 彼女と言葉を交わしてみればいい。〈光継式〉は一年をかけて行われるのだ。互いの全てを知るには決して足りない期間だけれど、それでも真摯に接していれば彼女の思想の一端くらいには光を当てられるだろう。そうすれば、あの取りつく島のない彼女の物言いから、ひょっとしたら何かしら真実らしいものを掴み取ることだって叶うかもしれない。

 

 もっとも。

 この一年が終われば、お互い二度と会わぬ身であると、わかっているけれど。

 

「――?」

 右に傾けた重心を、左に戻す。

 その瞬間に、流れるような動きでシグリオは、剣柄に右の手で触れた。

 

 

 何かがいる、と気が付いた。

 

 

 

 

 

 思っていたほどの荘厳さは、ここにはなかった。

 

 塔のエントランス。地上階の広間から遠い天窓を眺めてなお、アルセアはそう思う。大聖堂に備え付けられていたあの聖塔の方が、ここより遥かに大きかった。

 

 けれどそこにもあるのだろう、と。

 窓の向こうを見ながら思う。主基が一、従基が三から成り立つ〈光玉・エルニマ〉。そのひとつめの、従たるそれが。

 

 いまだ、それは目には見えないけれど。

 あのときと同じように、最上階へと辿り着けば瞳にきらめくことだあろう。

 

 ひとつ息を吐いてアルセアは、ゆっくりと螺旋階段を登り始めた。

 

 

〈光玉・エルニマ〉は、賢者ロディエスが人類に与えた最も偉大な遺産のひとつだ。

 

 世界は、二層に分かれると考えられている。

 ひとつは〈現象層〉。今こうしてアルセアが一段一段と階段を上がる、塔の外で聖騎士が彼女の帰りを今かと待ちわびる、聖堂の中で聖職者たちが儀式の無事を祈り、その外で人々が水を汲み、荷を運び、小川へと散りゆく花びらを子どもたちが追いかけていく。そんな、目に見えるもののこと。

 

 もうひとつは、目に見えない。

〈魔法層〉、と呼ばれている。

 

 人々は、魔法を扱うことでふたつの層の間に道を作る。その道を通して〈魔法層〉に存在する様々な神秘は、〈現象層〉に姿を現す。

 

 賢者ロディエスすらもその全容を暴くことは能わず、それから千年が経っても、ほとんどのことはわかっていない。けれど、いくつかの仮説はある。そこにはきっと、人から見れば無限に等しい魔力があること。世界に溢れる神秘の多くは、〈現象層〉と〈魔法層〉の不意の交わりによって現れること。それから、

 

〈影獣〉。

 人にとって悪しき者もまた、そこから這い出てくるということ。

 

 彼らもまた、多くのことは知られていない。観察から得られた点は四つ。〈現象層〉における生物に類似して見えるが、実際にはそうではないということ。彼らは〈現象層〉において生物が宿す、いわゆる生体魔力の収奪を目的として動いているということ。けれど〈現象層〉に姿を現してからは〈現象層〉の習わしに則り、力によって打倒できること。

 

 それから最後。

 これが、もっとも重要で。

 

 

 光の魔力を嫌う。

 

 それはたとえば、今こうして塔の頂上でアルセアの瞳に映るような強烈な光であれば、もちろんのこと。

 

 

「…………」

 長く彼女は、息を吐いた。

 

 目安の時間は三十分。数えた限り、ここまでで七分がかかった。となれば儀式自体は十五分。その間に気力や集中を切らさないようにと、入念に呼吸を整える。

 

 目も眩むほどに、それは輝いている。

〈光玉・エルニマ〉――賢者ロディエスが、〈影獣〉を祓うために作り上げた、人類のための大結界。

 

 仕組みはひどく単純で、かつ壮大なものだ。大陸中の〈現象層〉と〈魔法層〉の間に、光の魔法を張り巡らせる。〈影獣〉の光を嫌う性質を利用して、それを結界とする。〈魔法層〉の中に設置しておけば、必要とされる膨大な魔力も半永久的に供給される。

 

 けれど、たったひとつ。

 賢者ロディエスは、後世の人類に課題を残した。

 

「……よし」

 覚悟を決めて、アルセアは呟く。塔の最上階、〈魔法層〉に現れる燦然と輝く光へ向けて膝を突く。

 

 

 祈れば。

 

 塔の最下層から空へと落ちる光の雨が、一斉に走り出す。

 

 

「…………」

 何も言わぬままで、アルセアはしかし、ひそかな手ごたえを感じていた。

 

 たったひとつの課題。

 それは、調律に近い。

 

 千年どころか、普通は十年だって人の手に余る。魔法はそんな風に、長く残るものではない。賢者ロディエスについてもそれは同じだったのか、あるいはそれとはまた別の意図があったのか。定かではないが、確かなことがひとつだけある。

 

〈光玉・エルニマ〉の力は、徐々に弱まっていく。

 ゆえに百年ごと、それを再び活性化させる必要がある。

 

 その役割を担うのが、聖女。

 魔力を帯びた強烈な光を放つ〈光玉・エルニマ〉に、それでも弾かれることなく近付ける、光の魔法の使い手。

 

 光は次々に昇り続けていた。冬の空に流星群が三つ重なってもこれほど多くの軌跡を残すことはないだろう。けれどアルセアは瞼を閉じて、それを見もしないままで注力する。そして、強く思う。

 

 この程度なら、問題はない。

 

 具体的な手順に関して、資料はそれほど多くを語らなかった。ただ傍にいて、力を込めるだけ。賢者の遺した大魔法は、たったそれだけで再び力を取り戻す。歴代の聖女の言には、少なくともそうあった。

 

 こうしてその光の魔法に触れる限り、それは一種の誇張で。

 実際にはそれなりの魔法操作技術を要求されている、と思いはしたけれど。

 

 それでもアルセアは思う。この程度なら。汎用大魔法の操作とそれほど変わりはない。自分なら問題なくこなすことができる。

 

 これなら。

 自分程度でも、と。

 

 

「え――」

 

 

 その瞬間。

 

 聖塔の全ての窓が、割れ落ちた。

 

 

 

 

 

 斬り伏せた三体の〈影獣〉を前に、しかしそれには目もくれず、ただシグリオは茫然と空を見ていた。

 

 ただの空ではない。

 朝の青色を塗りつぶすように白く光る――煌々と輝く、あまりにも眩いその球体が昇るその空を。

 

「なんだ、これは――」

「若!」

 

 声と、扉の開く音。

 聞き慣れたそれに、シグリオは瞬時に反応する。そして目に映ったものを見て、すぐさま状況を理解した。

 

 ふたりが、聖堂の中から顔を出していた。ひとりはニカ。もうひとりは聖職者。この聖堂の支部長を務める司祭。

 

「おお、なんという……聖なる儀式が、このような!」

 

 彼が。

 放心したように空を見上げるのを認めた途端、自分が何をするべきなのか、シグリオは理解した。

 

「聖堂の敷地に〈影獣〉が入り込んでいる!」

 

 司祭の表情が変わらなかったのは、何を言われたのか理解できなかったためだろう。代わりとばかりにニカの顔が強張って、けれどそれは、悪いことではない。

 

「街に出すのが最も危険だ! 陣を敷け! 一体たりとも逃すな!」

「承知しました! 余剰の人員は――」

「中庭に回せ! 聖騎士の名において、ここから先の責任は全て私が取る!」

 

 それでいいな、と司祭に問い掛けるよりも先に、もう一度剣を抜かなくてはならなかった。

 

 六体。音もなく現れた〈影獣〉。そのうち四体が、こちらの喉元目掛けて飛び掛かってくるから、

 

「〈氷針〉」

 剣を振って、魔法を唱えた。

 

〈魔法層〉から引き出した氷の神秘が、反対に〈影獣〉の喉元を刺し貫く。シグリオが得意とする魔法のひとつだ。優れた点としてすぐさま挙げられるのは、入力する魔力と出力される威力を比べたときの効率の良さ。それに伴う連射性なのだけれど――

 

「――ふッ!」

 残りの二体は、ただ剣を振るって斬り伏せる。

 

 その理由を大きく叫ぶのは、後方、早くもフランタール辺境伯領の誇る優秀な兵士たちが中庭に集い始めたのが、気配で知れたから。

 

「こいつら、相当硬いぞ! 魔法も剣も手数が要る! 注意して戦え!」

「承知しました、若!」

 

 一人、二人、と。少しずつ兵は集う。それと同じくして〈影獣〉も次から次へと現れる。どこから、と見極めることも叶わなかった。どこからでもないのだ。

 

 ただ、影の中から這い出るように。

 当然のような顔をして、〈影獣〉は聖塔を囲んで現れる。

 

 六体が十体。二十体。三十も五十も超えれば数えるのも馬鹿らしく、しかしフランタール辺境伯領の兵士たちほど〈影獣〉を迎え撃つのに優れた戦士もそうはいない。シグリオの手が空き始めた。指揮に専念する余裕がでてきた。やがて、その指揮すらもそれほど必要なくなったころ、

 

「弓兵隊、編成完了しました!」

 その声が聞こえて、とうとう決めた。

 

「剣兵隊はそのまま処理を続けて、引き時を作れ! 弓兵隊は合図を待って一斉掃射! イグル、ティエルタ! それぞれの指揮はお前たちが取れ!」

「了解! 必ずや!」

「若はどうされるおつもりですか!」

 

 すぐさまそう問いかけが来たのは、信用のなさか、それとも逆か。

 熟考する暇はなく、ただ思うところをシグリオは叫ぶ。

 

「塔の中に突入し、聖女様を保護する!」

「な、弓の――」

「安心しろ、私は弓では死なん!」

 

 そりゃそうでしょうけど、の先に続く言葉は、もう聞かない。

 塔の入り口に向けて、シグリオは駆け出した。

 

 獲物を求めた〈影獣〉が、幾体も飛び掛かってくる。余計な時間を取って前線深くで孤立する趣味はない。時には身を屈め、時には横に跳び、次々にそれを躱していく。塔の前、もう六歩。阻むようにして七体が一斉に宙を飛ぶから、

 

「はッ――!」

 

 雨よりも美しい弧線を、剣が描く。

 五体は引き裂き、残りの二体は矢に討たれる。完全な連携を背にして、入り込む。

 

 聖なる塔。

 割れた硝子の破片が、星よりも眩くきらめく、そのエントランスへ。

 

「聖女様――」

 見上げれば、驚くべきことにまだそこにいた。

 

 塔の最上階だ。天窓は割れている。塔の内壁には見た者に恐怖を植え付けるような致命的な亀裂が走り、螺旋階段に至ってはもはやその機能を有していない。幾ヶ所かは半ばで崩れ落ち、冬の枯れ枝のように垂れ下がっている。

 

 けれど、彼女はまだそこにいる。

 聖女アルセアはまだ、〈光玉・エルニマ〉に祈りを捧げている。

 

「今、」

 参ります、と。

 彼女の背中に駆け寄ろうとした瞬間、とうとうそれが、シグリオの身に降りかかった。

 

 ガクン、と大きくたたらを踏む。

 踏み込んだ右足が床に沈み込むかと思わせるような、信じがたい重さだった。

 

 これが、とそこでようやくシグリオは実感した。〈光継式〉において、聖女の他に誰ひとりとして聖塔の中に入場できない理由。それは千年を跨いだことによって生まれた奇妙な規則や儀礼の変形ではない。明確で単純で、実際的な理由がある。

 

〈光玉・エルニマ〉の放つ光は、強すぎる。

 聖女として選ばれた者でなければ――その放たれる光の波長に適合した者でなければ、とても身動きも取れないほどに。

 

 そしてそれは人のみならず、物体に対しても同じ影響を及ぼすらしい。

 

 聖なる塔が、光の中で真っ二つに圧し折れた。

 

 耳をつんざくような大轟音だった。聞いた者の寿命をそれだけで数年は縮めるような、恐ろしい音。下層ではもはやこれまでとばかりに塔が崩れていく。上層からは足場を失くした内壁が、瓦礫となって降り注ぐ。馬鹿な、と思う。これまでの千年を耐えてきたのになぜ今更。けれどそのことを熟考するに足る時間はここにない。

 

 聖女アルセアも、また。

 最上階の崩壊とともに、宙へと投げ出されたから。

 

「〈水、泡〉」

 苦痛の中で、シグリオはその魔法を唱えた。

 

 シグリオの周囲から、次々と泡が浮かんでいく。しかしそれは湯を沸かすときに生じるような小さなものではない。鯨が海原で水面を叩いたときに現れるような、人ひとりだって呑み込めてしまいそうな、大きな泡。

 

 浮かんでいく。

 落ちてくる瓦礫と重なれば、その勢いを吸い込んで、やわらかく減速させていく。

 

 ひとつでは足りなかった。シグリオは出し惜しまない。どうせ自分の魔力が底を尽くまでの時間はここにはない。とにかく泡を出し続けて、瓦礫の勢いを殺して、それで、

 

 聖女の身体に触れたなら。

 彼女もどうにか着地できるはず、と――

 

「――――!」

 それだけでは足りない。

 シグリオはそれを、見て取った。

 

 泡の数が足りないわけではなかった。単純に、落ちてくる瓦礫の数が多すぎる。百を超える泡を出して、聖女の身体に触れたのはわずかに三つ四つだけ。それも周囲の瓦礫との緩衝に消費して、完全に彼女の落下を止めるには至らない。

 

 だから、

 

「く、ォ、お――」

 シグリオは、左の足を一歩踏み出した。

 

 それだけで腿の血管が何本も破裂したような心地がする。どうにかして上を向こうとすれば首の骨が、身体を持ち上げようとすれば背骨が、ミシミシと音を立てて今にも真っ二つに圧し折れそうになる。もう一度だ。自分に言い聞かせる。次は右だ。本当にやるのか。やる。嘘だろ。嘘じゃない。たった一歩でこんなに辛い思いをしているのに、本当に?

 

 本当に。

 彼は、彼女の元へと駆け出した。

 

 最後の最後で、泡のふたつが間に合った。落下速度が落ちる。腕が間に合う。だから抱え込むようにして、倒れ込むようにして、シグリオはアルセアを腕に抱いて床の上に倒れ込む。

 

 彼女の上に覆い被さるように、ぐるりと身体を入れ替えて、

 

「――〈流盾〉!」

 

 瓦礫の雨が、遅れて降り注ぐ。

 

 最後の正念場だ。シグリオは強く魔力を込める。流れ出る水の盾。勢いを増せば、あの両手で抱え切れないような瓦礫すらも触れた途端に押し流す。遠くで弓鳴りが聞こえる。問題ない。飛び道具の類も含めて全て対処できる。逸らし切れない分があれば身体で受け止めてやればいい。向こうも大詰めだ。後は、これを――

 

 いつまで、続ければいい?

 

 その疑問が浮かんで心が凍り付く、そのほんの寸前のことだった。

 

「――?」

 

 不意に、浮き上がってしまうのではないかと思うほど身体が軽くなった。

 

 静かだった。何の音もない。ようやくシグリオは顔を上げる。塔の全ては崩れ落ち、もはや天より降り注ぐものは何もない。水の盾を解く。遠く駆け寄る人々を見れば、弓の音が聞こえなくなったのは全ての〈影獣〉の討伐が終わったからだとわかる。

 

 もう一度、空を見た。

 

 

〈光玉・エルニマ〉の姿が、〈現象層〉から消えている。

 

 

「どう、にか」

 消え入りそうな声が聞こえて、視線を下げる。

 

 そこには、固く両手を組んだままの彼女の姿があった。

 息も絶え絶えで、今にも意識を失ってしまいそうで、だというのに。

 

「収め、ました。申し、訳――」

「無理に話さないで! 誰か治療を! ひどく消耗されている!」

「司祭様! こちらへ!」

「おお、おお……何という……」

 

 慌ただしく人の行き来が始まる。事態の収束を感じ取ったのか、聖堂の中からも喧騒が聞こえ始め、けれど遠く、街はあの一連の出来事に怯えるかのように竦んでいる。

 

 小さく、腕の中の少女が譫言のように呟くのが聞こえる。

 

「こ、れじゃ……姉、さん……」

「若、お怪我は!?」

 

 その言葉を最後に、とうとう周りの者が追い付いた。

 もはやそれ以上言葉を発する気力がないのだろう。黙りこくったアルセアをシグリオは丁寧に抱き上げて、やって来た担架に預け渡す。ニカが自分の背中を見て「うわあっ!」と声を上げるから一気に憂鬱な気持ちになって、ズキズキと遅れて痛みがやってくる。

 

「ち、血が――誰か! 若にも担架を! 歩いていい状態じゃない!」

「あんまり言わないでくれ。気が遠くなる」

「言わなかったらなかったことになるわけじゃないでしょうが! 大人しく気絶しててください!」

 

 それでも。

 遠ざかる担架を見送りながら、ひとまずの応急処置を、と兵たちに囲まれながら、ひとつのことをずっと、シグリオは考えている。

 

 

 彼女――聖女、アルセアは。

 塔が崩れても、宙に放り出されても、降り注ぐ瓦礫の雨の中に、その身を晒しても。

 

 

 それでも、決して。

 

 決して最後まで儀式の手を止めていなかった、ということを。

 

 

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