「ですがもちろんフルパワーであなたと戦う気はありませんからご心配なく…」
「…!」
ナメック星人の戦士ネイルは、目の前に相対する宇宙の帝王がフルパワーの自分を10000以上も上回る戦闘力を備えていることを知り、冷や汗をかいた。
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地球に襲来したサイヤ人との激闘の末にその命を散らしてしまった仲間たちを蘇らせるため、地球から見て方位はSU83、距離は9045YXの地点にある惑星『ナメック星』に赴いた孫悟飯とクリリン。しかしナメック星はドラゴンボールのうわさを聞き付けた宇宙最強の軍団フリーザ軍によって侵略を受けていた。
「あっちの方角に強い気を感じる…たぶんそいつがフリーザだろう」
「「え!?」」
ナメック星人、悟飯、クリリンの健闘むなしくドラゴンボールは既に七つともフリーザ軍の手に渡り、100倍の重力を克服した孫悟空と利害の一致したサイヤ人ベジータによってギニュー特戦隊を撃退したものの、予断を許さない状況にあった。
「あっちの方角は…!」
「たっ大変だ!最長老さんのところだぞ…!」
「!」
「そ、そうか…フリーザの奴願いが叶わないから直接ナメック星人にどうするか聞きだしに行ったんだ…!」
「あ、あいつ願いの叶え方を聞き出したら…ぜ、絶対に最長老さんたちを殺しちゃうよ!最長老さんが死んじゃったらドラゴンボールもなくなっちゃうのを知らないんだ!」
「なっ、なんだと!?」
驚きを露わにし、内心で少しだけ安堵するベジータ。自分が最初に向かったナメック星人の村落がもしそこだったなら、そのサイチョーローとやらを殺してしまっていただろう。そうすれば何もかもが水の泡だった。
「!!!」
「くっ…戻ってきやがったか…」
「さっきオラが倒しそこねたのともう一人…誰かが近づいてくる!」
ベジータと悟空が感付いた数秒後、彼らの目の前にギニュー特戦隊残りの二名、ジースとギニューが降り立った。
「さっきはよくもなめたマネをしてくれたな…ギニュー隊長みずからがきさまに制裁を加えてくださるぞ…!」
「…」
「きやがったな…どうだ悟空、こんども勝てそうか…!?」
「やってみなくちゃ分かんねぇさ…」
…
一方で、孫悟空の戦闘力を60000と見積もったギニューの発言にジースは顔を青くした。なにせスカウターの数値には5000としか表示されていないのだ。
「戦闘力60000!?や、ヤツはサイヤ人なんですよ!!60000なんてサイヤ人はきいたことが…!!ふ、フリーザ様を凌駕する戦闘力なんて…!!」
「ありえんことではない。我々やフリーザ様と同じく突然変異で生まれた超天才戦士なんだろう…」
自身を圧倒する戦闘力を耳にして震えあがるジースと、それとは対照的に口角を上げるギニュー。
「こいつはかつてないほどのおもしろい戦いになりそうだ…このギニューさまの真の力を見せる時がやってくるのはかつてフリーザ様に勧誘されたとき以来だな…」
「…」
最長老のもとへ向かう悟飯とクリリン、隙を見て脱出したベジータの三人をあえて見逃し、悟空とギニュー、ジースの戦闘が幕を開けた。
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「そんなに怖い顔をしないでください。驚きました…素晴らしい戦闘力です!流石は戦士
「…!」
「そうだ、わたしはこの左手だ…いや、左手以外で戦ってあげましょう。なかなか楽しめると思いますよ…」
「ちっ!!!」
「どうしました?まさかハンデも付けて怖気づいたんじゃないでしょうね?」
「ほざけーーーーーっ!!!!」
フリーザの挑発に乗って勢いよく飛び出したネイル。左手でフリーザの首筋に痛烈なチョップを繰り出す。
「!!!」
フリーザはネイルの手刀を避けきれずにくらって少しよろめいた。
「ぐ…ぅ…でやあっっ!!」
しかしフリーザは反撃の前蹴りを食らわせ、ネイルを岸壁へと吹っ飛ばす。
「ぐあっ!!」
「…」
「く…!!」
「ごほっごほっ、や、やはり42000ではこの程度でしょうね…」
「(い、今のはオレのフルパワーの一撃だった…!くそ…っ!)」
「さ、続けましょうか?今度はさっきのようにはいかないですよ…!」
「うおおおっ!でりゃりゃりゃりゃりゃっ!!!」
肉弾戦は分が悪いと判断したネイルはエネルギー波を次々と放つ。気の弾を撃ちだしながらもネイルは少し冷静さを取り戻していった。元来、自分の目的は目の前の相手に勝利することではなく時間を稼ぐことなのだ。何故か左手を使わないサービスをしてくれているフリーザだが、この機を逃す手はない。
「ふう…ふう…」
何発もの気弾がフリーザに命中し、もうもうと砂煙が上がる。
「(…!来るっ!)」
「ずああああっっ!」
ガガッ!ドガガッ!ズガッ!
「これでどうだっ!!」
バキッ!!
「ぬうっ…ですが、捕らえましたよ…!」
「うっ!!」
ネイルの右腕をフリーザの右腕ががっちりと掴んでおり、簡単には動かせそうもない。
「うがっ…!うわああああっーーー!!」
ボギッ!!
「ぐ…ぐぅ…!」
「ハァ…ハァ…おやおや、これは失礼しましたね…」
フリーザの手が万力の様に挟み込み、ネイルの腕は肘から先の骨が折れてしまっていた。
「(折れたままでは再生ができず、片手でどうにかなる相手ではない…し、仕方あるまい…)」
「はっ!!」
ブヂィッ!
「いっ!?!?」
「はあっ、はあっ…」
「な、何を…!?」
ズッ…
「まだ戦えるぞ…!」
なんと、ネイルは自分で折れた腕を引きちぎり、その上欠損した腕を再生してみせた。ナメック星人が持つ驚異的な再生能力の為せる業である。
「こ、こいつは驚きました、再生できるとは…ですが元に戻っても同じことですよ…!」
「やってみなくちゃ分からないさ…!はあっ!」
ガガッ! バキッ! ズガガッ!
「(なんだ…?このナメック星人、パワーがさっきよりも…!)」
「出し惜しみは無しだっ!一気に行くぞ!!」
バキィッ!
「この…でやっ!!!」
「ぐああっ!!」
「!」
腹に強烈な一撃を叩きこまれ思わずよろめくネイル。しかし、その攻撃を放った本人はさらに動揺を隠せないでいた。
「はあ…はあ……"左手"は使わないんじゃなかったのか…?」
「…サービス期間は終わったんですよ」
ネイルは笑った。これで相手と自分の土俵は同じ。絶望の中に光が見えた気がした。
「さあ!仕切り直しですよ!!」
「はああああっ!!!」
…
「はあ…はあ…」
「(くそ、まさかこんな辺境の星の原住民にここまで手こずるとは…ちっ、癪だが仕方ない…)」
「どうした…もう終わりか…!」
戦闘開始から十数分。ネイルはフリーザとの実力差をナメック星の地の利、戦略、気を高めることによるパワーの前借りをもって埋め、なんとかフリーザと戦っていた。対するフリーザはベジータを始めとする他勢力の動向への危惧による集中力の欠如や、腕を伸ばす相手との戦闘に慣れないこともあって予想外の苦戦を強いられていた。
「…ふん、やりますね。流石は『戦士』
「(なんだ、こいつの落ち着きようは…!?)くだらんな、オレがそんなものになるとでも思うか!!」
「…それは残念。ではわたしの運動に付き合ってくれたせめてものお礼として、いいものを見せてあげましょう…」
「な、なんだ…?」
フリーザは戦闘ジャケットを自ら破壊し、集中力を高める。気を読み取るのが得意ではないネイルにも、フリーザの練る邪のオーラがどんどん増幅していくのが感じ取れた。
「ほああ…ああ…あ…!!!」
「!!!気が大きく…!」
まず最初に胸部が大きく隆起し、続けて脚、腕が膨張する。しかし膨れ上がるわけではなく、そこには見るだけで圧倒的暴力を感じさせる筋肉が圧縮されている。最後に首が大きく伸び、フリーザは第二形態への移行を完了させた。
「な、なんだと…!?」
「はあっ、はあっ、へ…へへ…気をつけろよ……こうなってしまったら今度は前ほどは優しくないぞ…」
「ま…まさか変身するとは…!」
「なにしろ力が有り余っているんだ、ちょっとやりすぎてしまうかもしれん…くっくっく、ちなみに戦闘力にしたら10万以上は確実か…」
「く、くそぉっ!!」
「貴様にはさっさと願いの叶え方を吐いてもらうんだ!簡単に死んでくれるなよ!!!」
ズガガガッ! ドドドッ! バキィッ! ガガッ!
そこからはフリーザによる一方的な蹂躙だった。その巨躯に似合ったパワーと似合わない俊敏さで、前借りしたパワーも切れてしまったネイルが敵うはずはなく、善戦空しく遂に地に伏してしまう。
「ぐ…ぁ…」
倒れたネイルの頭を踏みつけにし、フリーザは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「いい加減に喋ったらどうだ?そんなザマではオレに勝てるわけがないだろう?オレの気が変わる前に言うんだな、ドラゴンボールの願いの叶え方を!!!」
「ふ…くっくっく…も、もう…お前がそれを知ってもムダだ…」
「何だと?」
フリーザは頭にのせていた足を退け、代わりにネイルの左腕を踏みつぶした。
「ぐああっ!!」
「どういうことだ…言え…!」
「そろそろデンデが…地球人たちの所につくころだ…おまえが知りたがっている合言葉を伝えにな…」
「なっ、何!?!?」
瞬間、フリーザの脳裏に浮かび上がったのは自身とすれ違うナメック星人の子ども。あの時はたかがチリ一つと気にもかけていなかったが…
「(あ、あいつか……!)お、おのれ!ただの時間稼ぎだったのか!!」
「ふん…そ、そういうことだ…」
「くっ!!!」
フリーザはネイルを殺す時間すら惜しいという風に全力で飛び出した。
「はあ…最長老様…ご無事で…今参ります」
ネイルはふらふらと立ち上がると、死期の近い最長老の元へ向かった。
…
ごうごうと風を切り、驚異的なスピードでスカウターの示すポイントへ向かうフリーザ。最早その顔からは余裕は消え失せていた。
「ぎ、ギニュー特戦隊の反応がない…!まさか…5人共だ…!や、やられたというのか…!?と、とにかくベジータや地球人とギニュー特戦隊の間に何かが起こった…!そ、そしてドラゴンボールは…」
「お、おのれぇーーーっ!!!」
遊んでなどおらず最初からあのナメック星人を全力で叩きのめすべきだった。いや、あのナメック星人のガキを見逃さず消し飛ばすべきだったのだ。そんな考えがぐるぐる巡るも後悔先立たず。フリーザは屈辱に身を焦がしながらドラゴンボールのある母艦へと急いだ。
ナメック星編におけるフリーザの絶望感をもう少しマイルドにしてやろうと思って突発的に考えた小説です。もし気に入ってくださればお気に入り登録、評価よろしくお願いします。