たくさん評価頂きました…!
本当にありがとうございます!
「あー、その何だ。せっかく集まってもらった所悪いんだが、まずは俺一人で説得してくるよ。それが一番正攻法で確実で、何より文明的で平和的だからな」
視線を宰相に合わせながら言う事で、“毒殺よりは”と暗に伝える。
だが。
「ミスル様……そんなに見つめられると照れてしまいます。いくら私が国一番の美貌の持ち主だからって……」
両の頬に手を当てて可愛らしく「キャッ」とか宣いやがる。
めちゃくちゃ腹立つな、こいつ。絶対俺の言わんとするところを理解していて、その上でこういう態度で返している。
顔は美人の癖に、性格が国一番のド畜生だ。
「駄目だった時の案は幾つか考えておいてくれ。それじゃ」
「仮に死んでしまっても、アンデッドにして馬車馬のように使い潰してあげますからね」
「ふざけんな。何が何でも絶対生還してやる」
確かに妹も勇者も難敵だが、このクズ共に任せて何か事態が好転するとは微塵も思えない。なので、自己紹介やら会議やら一通りの事を一切せずに足早に切り上げた。
もう俺だけで何とかした方が数百倍マシだと腹を括ったのだ。
あ、クローンショタ勇者くんだけは連れて行く。このクズ共の傍にいたら、間違いなく純粋無垢な心が汚染されるからな。
◇◇◇
勇者夫婦が住まう、国外れのポツリと一軒家に向かう道中のこと。
俺はクローンくんから色々と事情を聞き出す事にしたのだが。
「んで、お前名前は?」
「名前、ですか?」
もうこの時点で嫌な予感しかしなかったよね。
「他の人から呼ばれるやつだよ。お前に何か言ったり頼んだりするときにさ」
「……? サードと呼ばれていましたが」
はいクソ。
サード。つまり3番目。数字でしか読んでないのも論外だが、これってつまりセカンドがいるってことじゃん。失敗作で廃棄されたとか無いよね? もうそれ普通に滅亡フラグなんだが。『廃棄処分されたクローン勇者なので世界を滅ぼす魔王になりました。』みたいな追放モノの英雄譚が始まっちゃうよ??
とりあえず帰ったら王様タコ殴りにして、そんでセカンドを探す。ファーストはオリジナルであるディン自身の事を指すと信じたい。
「よし。じゃあ、俺がお前の名前を考えてやる」
「……え?」
「嫌か? 嫌ならやめるが」
「……えっと。その…」
何やら言い淀む“サード(仮名)”くん。
急かさず発言を待っていると、驚愕の言葉が飛び出した。
「嫌かどうかなんて聞かれたの初めてで、どう答えれば良いのか分からないんです」
おーけー。この国、俺が滅ぼして良い?
「……そんな時は、自分の感じたままを言って良いんだ。悲しいとか痛いとか苦しいとかムカつくとか、そういう感情が少しでもあるなら断れ。そういうのが無いんなら受け取っておけ。それだけだよ」
「…………。それ、なら。お願いします。名前、欲しいです」
「良く言えたな。引き受けたぜ」
「わわっ…!」
彼の頭をワシャワシャしながら考える。
この子に相応しい名前……相応しい名前……。
ディンから取ってディナム。……いや、駄目だ。クローンだからといって同じ道を歩む必要は無い。ディンとは別個の存在として名付けるべきだろう。
そうだな。じゃあ……
「デュナン、でどうだ?」
可能性を意味する植物の名から取った。俺の本職は農民だし。仕方ないよね。
「デュナン…デュナン……デュナン………あれ、何だろうコレ」
与えられた名を呟きながら、少年は流れる涙を不思議そうに拭った。
……どうやら、気に入ってもらえたらしいな。
***
そして、旅路を続けること暫し。
遂に目的地へと着いた俺は――
「さて、兄さん。何か言い残す言葉はありますか?」
あ、オワタ。