ちょっとコメディ要素控えめ。
次回からは再びコメディ。
あのあと、妹と親友と他愛無い話をしながら過ごした。
とても。とても、幸せな時間だった。――同時に、少しだけ悲しい時間だった。
昔から、ずっと一緒だった3人。何は無くとも、俺たちは一緒にいた。“隣り合う”という言葉は俺たちにとっては2人ではなく、3人が並んでいる状態を指す言葉だった。
妹は確かにヤバイ奴で、ディンが絡むと暴走する。俺を半殺しにしてきたことも一度や二度ではない。だけど、俺が今も五体満足でピンピンしているのが証拠で、本当に息の根を止めた事はないのだ。
俺たちは多分、3人で1つだった。
今は2人と1人になった。それだけ。
別に、妹が口にした寝取り云々なんて与太話を真に受けている訳では無い。無いが、俺もそろそろ良い人を見つけなければならないというのは同意だった。
「もう帰るのかい? 泊っていけば良いじゃないか」
「ばっっっか、お前。新婚の家に図々しく泊まるなんてことが出来るわけねぇだろ。……妹を頼むぞ」
「…………うん。勿論だよ。勇者の名に誓って守り抜く」
「ざけんな。そうじゃねぇだろ、
「…っ! そうだね。……うん。親友として誓う。絶対に彼女を幸せにしてみせるから」
あぁ、そうそう。
「分かっているとは思いますが。もしもハーレム計画なんてものを続行させるようなら」
「………………はい。勿論です」
「お体に気を付けてくださいね! またいつでも来てください、兄さん!」
妹には当然たっぷりと脅された。背中に包丁を突き付けられて。
***
僕とフリカが並んでいる姿を見て幸せそうに笑っていた彼は、そのまま一度も振り返ることなく帰って行った。
途中で妙な気配の誰かと合流したみたいだけど、彼が心を許しているのなら問題は無いのだろう。
だって彼は――この世界の誰より早く、世界を救う勇者を見つけ出した男なんだから。
「…………良いのかい?」
「ええ。私が枷になってたら、兄さんはいつまでたっても自分の幸せを掴めないから」
彼は絶対に自覚なんてしていないけれど。
いつだって、僕たちの中心は彼だった。彼が真ん中にいて、その両隣に僕とフリカがいる。そういう関係性だった。
でも。僕は男で、フリカは妹。彼の伴侶足りえない。
「本当に、僕たちは昔から変わらないね」
「そうね、変わらない。私もダーリンも、兄さんも」
そう。彼は変わらない
自分の幸せより、妹と…そして親友である僕の幸せを願う。僕たち2人が幸せなら自分も幸せだと心の底から思っている。そういう人。
彼は常に一本揺らがぬ芯を持っていた。世界中を旅したけれど、彼以上に真っ直ぐな存在に出逢った事は終ぞなかった。
王様だろうが、神様だろうが、悪魔だろうが、彼には関係ない。それが間違っている事だと思えば、非力な拳を握りしめて殴りかかる。……初めて会った時もそうだった。初めて会った時から、ずっとそうだった。
彼はどんな時も善悪の判断を躊躇わない。己の道を踏み外さない。それがどれだけ稀有な資質なのか、きっと彼は生涯気付かないだろう。彼は自分をどこにでもいる“ド平民”だと思っているから。それが彼の揺らがぬ“己”そのものだから。
「兄さんは大丈夫でしょうか」
「はは、そんなの当たり前だよ。それは僕たちが一番知っている事だろう?」
僕は確かに世界を救った勇者だけれど、そもそも僕は世界なんて救うつもりは無かった。彼が生きていく世界を守りたいと思っていただけだった。本当に、それだけだった。
世界を救った勇者が僕なら、それを生み出したのは彼だ。彼がいたから世界は救われた。それを僕は良く知っている。僕らが誰より知っている。
だから、絶対に大丈夫。
それに。万が一の保険は用意してある。もしもの時は彼を絶対に守ってくれるはずだから。
***
勇者夫妻の愛の巣を後にし、馬車に揺られて一日。
再び王宮に着いた俺は、何はともあれ王の胸倉を掴んだ。
「おい、クソ王。クローン全部出しやがれ」
「…………………………なんのことじゃ?」
「今のあからさまに怪しい間で確信したよ。さっさと出せ、出さないと殴る」
「不敬罪って知ってる?」
「少なくとも、命に対する敬意を忘れた奴が言って良い台詞じゃねぇな」
「ぐぅの音も出ない正論じゃな……ヘルニシオネよ、連れて参れ!」
そうして、宰相様に連れられて入って来た幼子は……
「は? おいおい、なんで――」
「ボクはセカンドです! よろしくお願いします!」
「――なんで、女の子??」
……何故かショタじゃなくてロリでした。
〈お知らせ〉
いくつか考えて悩んでいたルートがようやく定まったのでタグを追加しました。