「どういうことか説明しろ、クソ王」
「クローン魔術は生まれるまで女か男か分からんのじゃ」
「おい、まさかとは思うが。男が生まれなかったら何十体も作り続けるつもりだったのか?」
「…………はい」
「良いこと思いついた。お前は牢屋に入ってクローンと入れ替えるってどう? 脅迫状からも逃れられるぜ」
「おお、素晴らしい名案じゃな」
「皮肉のつもりだったんだが」
「もう逃げられるのなら何でも良いんじゃ」
「冗談じゃなくて一度休め。俺の村に良い温泉があるから入ってこいよ」
「それも良いのぅ……」
「この状況下で仕事放り投げて息抜き温泉旅行。別に構いませんが、その場合は温泉で老人の変死体が発見される事でしょうね」
「ひぇ…」
やっば。この宰相怖すぎだろ。
とりあえず、こんな殺伐とした場所に幼子は置いておけないわな。
「この子も引き取るけど構わないよな?」
「無論じゃ」
うーん。
今更だけど、親友のクローンを2人も引き取って育てる俺って倫理的にどうなの?
「童貞の癖に子供が2人ですか。結婚とか永遠に無理そうですね」
「俺が童貞だなんて誰が言った?」
「…………違うんですか?」
「いや、童貞だけども」
「そうですか。それは良かったです」
「何も良くないんだが」
妹にも言われたが、そろそろ俺だって所帯を持って身を固めたいんだ。
別に子供たちが足枷だなんて微塵も考えちゃいないし、そんな理由で断るような女はこっちから願い下げだけども。それはそれとして、結婚が凄い勢いで遠ざかっていくのを感じる。
「大丈夫ですよ。私は子持ちでもウェルカムです」
「うるせぇ毒喪女。アンタと寝るくらいならカピバラと寝る」
「それはそれで興味深いですね。観察したいです」
「たとえ話だ馬鹿」
宰相ヘルニシオネが何を考えているのかサッパリ分からん。正直めちゃくちゃ苦手だ。
まぁ、毒を盛ってくる女に好感を持てというのが無理な話なのだが。
……あれ? 俺の妹も茶に毒入れようとしてなかったか? …………深く考えないようにしよう。
「何はともあれ。とりあえず、皆さんと合流しましょう。ミスル様の言いつけ通り、皆さんそれぞれ解決法を考えてありますよ」
「皆さん……あぁ、あいつらか」
それ絶対、ロクな方法じゃないんだろうなぁ……。
「……っと。その前に。どうせ、このロリも名前とかないんだろ。何か考えなきゃな」
「なまえ、ですか……?」
「うーん……? 名前名前…女の子……」
さて困った。
勇者夫婦の家から此処まで、馬車に揺られながら名前をたくさん考えていた。3番目で終わりじゃなくて10人とか出てくる可能性もあったから。その辺り、俺はもう王様を信用しちゃいない。
けれど完全に男の子が出てくる前提で考えていたせいで何も思い浮かばない。どうしよう。
「それでは、ヨルニシオネとかどうですか?」
なんでアンタの名前から取るんだよ。この子を毒殺上等の鬼畜にしてたまるか。
……でも、腹立たしいけど響きは良いんだよな。聞いた瞬間、セカンド(仮)の眼が少し輝いたの見えたし。
でもなぁ……。この毒女の言いなりになるのは癪だしなぁ……。
「ならヨルニで」
「一緒に子供の名前を考えるなんて夫婦みたいですね」
「なに、アンタ俺のこと好きなの?」
「いえ、全く。これっぽっちも。異性としての興味なんて微塵も無いですよ。自分のことを客観視してみてくださいな。ハッキリ言って経済力も戦闘力もゴミですよ。自意識過剰なのではないですか? 恥ずかしい人ですね」
「聞かなきゃよかった」
完全に藪蛇だった。即死級のトラップだった。俺はまんまと魔女の話術で誘導され、弄ばれたのだ。
こうなりゃ意地だ。絶対に最高の嫁さん見つける。そんで、この宰相に結婚式の招待状送り付けて悔しがらせてやる。
……まぁ、でも。
「ヨルニ…ヨルニ……ヨルニ………ふふっ」
与えられた名前を嬉しそうに呟く少女を見て、結果オーライだなと思う。
あと、やっぱりクローンだからデュナンと反応が似てるなーなんて感想を抱いた。
***
その後。
「というわけで、この天下の名宰相へルニシオネが提案する稀代の大作戦がこちらになります」
何やかんやあって作戦会議みたいなものに突入したんだけども。
「名付けて、“ハーレムは2人目が一番難しいけど、2度あることは3度あるよね大作戦”です」
「作戦名に知性が微塵も感じられないんだが? あと単純に意味が分からん」
「まぁ、ミスル様の知性でも分かるよう簡単に言いますと。ミスル様が性転換して女の子になるんです」
「は?」
「それで勇者を篭絡して二人目のハーレムメンバーになれば良いんです」
「は??」
「勇者夫婦の性格を熟知しているミスル様だからこそ可能な大博打……じゃなくて特攻……でもなくて、一発大逆転の大作戦です」
「は???」
どうしてこうなった??