性別不詳両声類系Vtuberなんだが、現実でも性別不詳でいてくれって言われた 作:甘朔八夏
高校卒業後の春休み。無事大学受験に合格し、入学まで怠惰を謳歌するつもりだった俺の部屋に、突然妹が入ってきた。
彼女の手には、何かのサイトを開いているスマホ。
「これ見て」
妹のスマホを覗き込む。ふむふむ。Vtuber事務所『Virtual Box』が3期生を募集中。一次審査締切は3月10日まで。今日じゃん。
「これがどうしたんだ?」
「これ受けるなら駅前の喫茶店のパフェ奢ったげる」
「よし受けよう」
甘いものには勝てなかったよ……
どうやら妹は俺のプロフィールをすでに準備していたらしく、とんとん拍子に申し込みが終わった。
その後約束通り妹がパフェを奢ってくれた。すごく美味しかった。
…で。なんか受かった。
「なんでぇ?」
「まぁ受かると思ったから応募させた訳だしね」
妹の自信がどこから来るのか全くわからん。うんうん唸っていると、妹が突然何枚かの紙の束を渡してきた。ぴらぴらとめくってみる。面接の台本だった。
「お兄ちゃんの性格的に、面接の時点でキャラ作るのは無理だろうしスペックだけで推したほうがいいよ。ってことで、これ暗記してね」
なんでこんなに準備万端なの…?こわ…
…で、デビュー決まりました。
「なんでぇ?」
「お兄ちゃん、天丼は面白くないよ」
「えっ厳しっ。でも俺面接で、約束通りここに応募して妹にパフェを奢ってもらえたのでもう満足です!って言ったよ?」
面接官の人なんともいえない顔してたな。って痛い!妹が頭を叩いてくる。暴力反対!!
「——このモデルはもともと女性Vに使ってもらう予定だったんです。しかしこれは中性的なキャラクターの需要を捉えたものなので、女声も自在に操れる貴方にぴったりかと」
1週間後。俺は事務所に出向いて、いわゆる
そのモデルの名前は
マネージャーさんの説明に、自身のガワの見た目。ぶっちゃけると俺は性別不詳系としての活動を求められていた。まぁ一次試験の書類でも二次試験の面接でも、俺の声域が広いのと声真似が得意なことばっかり推してたし、予想通りっちゃ予想通り。
とりあえず、配信中にころころと声を変えまくって視聴者さんを混乱させたらいいのかな?
え?それでいいんですか?ちょっとふざけたつもりだったんですけど…
そして迎えた初配信の日。3期生3人のうち、俺はトップバッターらしい。先達がいない状態での配信なのでやっぱり緊張する。マネージャーさんは、思うがままにのびのび配信してくださいって言ってた。保護者か?
おっと、もうすぐだ。意識を切り替える。そうして俺は———いや、僕は配信開始をクリックした。
【初配信】初めまして!僕が天津周で、私が天津周で、俺が天津周です!【天津 周】
「こんまね〜!初めまして!」
:こんまね〜
:ショタきちゃ
:キャラデザすこすこ侍
:僕っ子いいぞ〜
:こんあま〜にしろ
:そのビジュで男なのか…
「…そういえば初配信でなにすればいいかわかんないです。僕は何をすればいいんですか?」
:えぇ…(困惑)
:無知敬語ショタ助かる
:緊張してる?
:まずは自己紹介でしょ
:プロフィール見せて
:どんな配信するん?
:きょとん顔かわいい
「あっそうか。コメントさんありがとうこざいます〜。僕は、virtual box 3期生の
:甘いもの好きなの解釈一致
:見た目通りかなり小柄だな
:性別欄どこ…?ここ…?
:趣味欄に変なのがありますね…
:早速ぶちかましてきたな
趣味…
「ねぇこれ私誰にも言ってないんだけど!!!」
:ファッ!?
:草
:え、ボイチェン使った?
:やっぱり女の子だったのか(歓喜)
:こっちが素?
:女の子バージョンの声かわいっ
:声で誤魔化そうとしてもお前がASMRで発狂していた事実は消えんぞ
「なんかめちゃくちゃ鋭い人がいるよぉ…そのまま誤魔化されてよぉ… 」
:草
:自分から事実だと認めるんだな…
:まああの人イケボだしね…
:というか同じ箱の先輩じゃねーか!
:晶先輩、まさか後輩にも限界オタクを作るとは…
:隠してたのに何でプロフに載せられてんの?
:家族からのリークです < virtual box公式 >
「おい妹ォ!」
:!?
:次は男声かよ
:あらイケボ
:自然すぎてどれが素かわからなさすぎ
:妹ちゃん鬼畜で草
:素敵な妹さんですね
:周君と晶先輩の┌(┌^o^)┐ホモォ…ってコト!?
:汚い
:は?綺麗だろ
「はぁ…妹はあとで鉄槌を下しておくとして、これからの展望に移るか。このチャンネルでは雑談とマシュマロ返信をメインに、ゲーム実況や歌ってみたなど幅広くやる予定だぞー」
:ASMRから逃げるな
:マシュマロ読みもやって
:男の声が1番自然な気がする…
:雑談いいね
:いろんな声をころころ使い分けてく感じか
:結局性別どっち?
「あ?性別?……… ひみつだよっ」
:アッ(昇天)
:囁き声で耳が溶ける…
:ネタじゃなくてマジでASMR配信やってほしい
:もう性別とかどっちでもいいや…
:ショタボでもう一回やって…おねがい…
:お前みたいに発狂しそうになったじゃん
「ねぇ最後のコメ主名前覚えたからね」
:発言が小物
:ご褒美やんけ
:つまり覚えて欲しければ周ちゃんをいじり倒せばいい…ってコト!?
:やーいやーい限界オタク〜
:また今度発狂ボイス俺に聞かせてね <玉響 晶>
:ふぁっ!?
:本人登場はさすがに草
「……うぇっ!?たたたたたまゆら先輩ぃ!?…あっいつも配信みてますえー楽しませてもらってますはい」
:一体何を楽しんだんでしょうねぇ…
:晶先輩のガチ恋勢がキレそう
:ゆーて2人ともネタ枠やし大丈夫
:またコラボしようね <玉響 晶>
「…はぃぃ」
:急に声を変えるな
:こいつ意外と余裕あるな
:お?おにショタか?
:これにはガチ恋勢もにっこり
「さっきからずっと分が悪いので、この話はおしまいにしましょう!ほら、みんなー!戻ってきてください!」
:は〜い
:ショタママとかいう新ジャンル
:お前が始めた物語だろ
:幼稚園の先生かな?
:言うこと聞いてほしいなら、誠意…見せてよね
「えぇー、しょうがないにゃあ… おにぃちゃん、おねぇちゃん。僕とお喋り…しませんか?」
:する〜!
:お姉ちゃんだよー!
:どけ!私がお姉ちゃんだ!
:犯罪臭がすごい
:コメ欄が自称姉の動物園になってますね…
その後は驚くほどスムーズに進行していく。コメントくんたち、それができるなら最初からしてよ…
「明日と明後日は後続の初配信を見るので、次回の配信は
:初っ端からなかなかの癖だったな
:ばいまね〜
:後半ショタボメインで嬉しかった
:残りの3期生の期待値も上がるわ
:ばいあま〜にしろ
配信は終了しました