性別不詳両声類系Vtuberなんだが、現実でも性別不詳でいてくれって言われた   作:甘朔八夏

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13話 オフコラボ配信をしよう 中編

 

 

「それじゃあ、お楽しみの暴露ターイム!」

 

もうやってられんわこんなクソゲー。ウッキウキで俺のプライベート脱衣BOXを漁る泉さんを恨みがましげな目で見つめる。軽く受け流された。

なんで「はいはい、わかりましたよ」みたいな感じで肩すくめてんの?非は全面的に泉さんにあると思うんだが!

 

「何かなー……これ!なになに、周は先日耳舐め動画を前に5分間唸ったあと、動画を閉じ、ため息をついて耳かきASMRを聞いていた———」

 

ああああああああ!!!!!!!

 

なんで!?なんでバレてるんだ!?履歴は消したしあの時は誰もいなかったはずなのに!!!

 

「…はずれかぁ」

 

それを見た泉さんは少し肩を落として、何事もなかったかのように秘密が書かれた紙を懐にしまった。

 

十分過ぎるほど大ダメージなんだけど!?

 

「いや…なんかASMR関連は粗方想像つくかな」

 

消えたい

 

そんなに前の全員コラボの時のASMR語り酷かった?この話題になると常時はっちゃけてる泉さんが決まって遠い目をする。そんな目で俺を見ないでくれ。

 

:草

:普通に耳舐め動画見ようか迷ってるのバレたら死ぬと思うが

:慣れてきてる気持ちは分かる

:あれ?前に耳舐めASMRレビューツイートしてなかったっけ?

:それ以上はいけない

:それは言わないお約束

 

うごご…コメントも俺の痴態を華麗にスルーしていく…そりゃあ大袈裟に取り上げられて語られるよりは断然マシだろうけど、スルーされるとそれはそれで傷つく…いや、いじって欲しいわけではない。でも、もはや笑ってくれた方がこちらも成仏できるので……

 

 

「…泉さん今使ったキャラ禁止ね

 

「えぇ〜。ハンデ重くない?…まぁガチキャラじゃないしいっか」

 

やっぱりおまかせ選択で!

 

まじか、あれでガチキャラじゃないのか。俺普通に一番自信あるキャラでいったんだけどな…(泣)

 

悲しいが泉さんと俺の実力差ならおまかせ選択でいい勝負になるだろう。流石の彼女も全キャラを達者に使えるということはないはず———

 

んひっ!?いや、どこ触ってるの!?

 

「え?何って、太ももだが?」

 

うわ、その言い方やれやれ系主人公みたいでむかつく!あとすごいテンプレな返答しちゃった自分にもむかつく!!

 

泉さんを睨むと、彼女は無垢な目でこちらをきょとん、と見つめ返す。なんでそんなに平然としてるの?…これ俺がおかしいのか?

 

いやそんなことないわ!触るにしても今なんの文脈もなかったよね!?せめてこう…なんか、流れみたいなのは無いの!?

 

俺の言葉に泉さんは顎に手を当てて少し考えた後。

 

「ふむ、周ちゃんは触られる時はムードが大事なんだ。覚えておくね」

 

一回口を閉じろ!!

 

:もうめちゃくちゃだよ

:しっかりめのセクハラでは?

:異性ならアウト

:待てよ…場合によって周くんとして接するか周ちゃんとして接するかを変えれば何をしてもセクハラにならないのでは…?

:男がセクハラしたい時は「周くん」にセクハラすればセーフ…ってコト!?

:天才か?

:変態の間違いだろ

:同性でもアウトな気がする

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「…げ。このキャラか」

 

ということで2回戦。俺はさっきと同じくピンクの悪魔、泉さんは裸ネクタイのゴリラ。

おまかせによって選ばれたそのキャラを見た瞬間、泉さんの口から悪態が漏れた。

 

しめしめ。どうやら重量級キャラは苦手と見た。俺のキャラは軽量なので隙を見せると一気に不利になってしまうが、ここは持ち前のスキルを使って華麗に泉さんを翻弄してやるぜ。

 

……と、思ってたんだけど。

 

普通に上手いじゃん!!!

 

「このキャラのお持ち帰り、品がないんだよねぇ。お姫様抱っことかしたらいいのに」

 

掴み攻撃のことを「お持ち帰り」って言うな!!

 

もちろんさっき使ってたキャラよりは隙があるし、泉さんにもダメージをしっかり与えてなんとか1キルは成功させた。しかしこの人、存外掴み攻撃が上手い。小技は全部当たるのに、吹っ飛ばそうと思って大技のモーションをした瞬間だけはきまって完璧に掴みを成功させてくる。

 

大技を決めようとした瞬間だけ、掴んでくるのだ。もうイライラが溜まってさぁ…!

 

「見えた!隙の糸!」

 

ゴリラがそれ言ってもかっこよくない…って、あああ!!!!

 

ゴリラ'sローリングアタックに轢かれてそのまま場外へ。これで両者の残機は共に1になった。ゴリラにはちびちびダメージを与えているので未だこちらの方が有利ではあるが、重量級キャラの攻撃は小アタックでもめっちゃ吹き飛ぶから油断できない。

 

:うわぁ…なんてやらしい戦法

:今やらしいって言った!?

:中学生はお帰り下さい

:周ちゃんイライラで草

:これは俺でもムカつくわ

:泉の連勝あるぞこれは

 

ハンデをもらった直後に負けるのはすごく嫌だ…!なんとしてでも勝たなければ。自分のキャラのリスポーン待ち時間に泉さんの顔をちらりと見る。発言はふざけていても相当集中しているのだろう。目線が画面からぴくりとも動かない。

この状態でトークもできるのは普通にすごいな。しかし、その分他の事に頭が回っていないはず。

 

…やりますか。

 

コントローラーを持ったままそっと泉さんの後ろへまわる。昼食時の約束を果たしてあげようではないか。

 

彼女の頭に手を伸ばし、髪を梳くように優しく撫でながら。

 

…いつも頑張ってえらいね。そんな泉が大好きだよ

 

瞬間、泉さんの体が面白いほどに固まる。そのままコントローラーを床に落としたことにすら無反応。

チャンスだ。

 

心置きなくハンマーに炎を溜めて…一撃!

 

やったー!私の勝ち〜。いえ〜い

 

:うわ

:これはひどい

:盤外戦術は反則では?

:これは悪女

:これは悪ロリ

:やっぱりロリボ出せるんじゃねえか!

 

ふはは。俺がやった事といえば泉さんの頭を撫でながら耳元で囁いただけ。いやー急に泉さんがされたいって言ってたの思い出してさー。まさかここまで反応するとは思わなかったなー。うん。

 

勝てばよかろうなのだぁ!

 

「周ちゃん」

 

っ!?

 

泉さんの小さな声が、やけに明瞭に聞こえた。彼女の声色からは不思議となんの感情も見えない。錆びついた音を鳴らすように振り向くと、真顔の泉さんと目が合った。

 

……流石にライン越え?怒られる?

自身の行動を客観的に振り返ってみる。戦闘ゲームでプレイヤーにダイレクトアタック。コントローラーを持っていない相手をボコ殴り。うーん、これは有罪。

 

…あの、ね?

……何も言い訳が思いつかない。今すぐ土下座の準備を———

 

「今のもう一回お願いします」

 

あっ、大丈夫そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

目がガチすぎて怖かったので「後で」って言って泉さんを宥めた後、彼女の秘密暴露BOXをガサゴソする。泉さんの秘密かぁ。この人バラされて恥ずかしがるような秘密ほぼ無いのでは?…あっ、ぬいぐるみか。個人的にはロリコン趣味の方が恥ずべき秘密だと思うけど。

 

んー…じゃあ、これ!

 

ぴらり。四つ折りにされた紙を開く。

 

泉は一度成人向けの同人誌を描いたことがある

 

「……えっ?

 

「うぅ…怖いなぁ。お手柔らかなやつだったらいいんだけど…なんだった?」

 

「……あの

 

これ大丈夫?いやBOXに入ってたから多分言っていいやつなんだろうけど…

 

:めっちゃ言い淀んでない?

:周ちゃんが躊躇うほどか…

:周もやばい奴認定食らってて草

:え?初配信の時から周くんは変人だが?

:わろた

:暴露して、どうぞ

 

おずおずとその紙を泉さんに手渡した。

 

「読み上げてくれたらいいのに〜。どれどれ………はっ?」

 

想定外。その言葉をそのまま表したかのような素っ頓狂な顔で、彼女は固まった。

 

……だから言ったじゃん…この企画に配信者側のメリット一個も無いって…

 

「…泉さん、同人誌書いたことあるらしいです……しかも、えっちなやつ

 

またもやフリーズしてしまった泉さんに代わって、マイクに向かって囁く。

これを大声で言うのはなんとなく恥ずかしいし、何より泉さんがかわいそう。まぁ、たった今全世界に暴露されてしまったが。

 

:!?

:想像以上に衝撃だった

:ロリモノなのか!?!?!?

:今の録音しました

:周ちゃんの囁き「えっち」エッッッ!!!!

:ごめん、ちょっと席外すね。何、5分もかからないさ

:早くて草

:汚い

:何が汚いんだい?彼のセリフは上手(意味深)だよ

:あーもうめちゃくちゃだよ

 

コメント欄も阿鼻叫喚である。…もういいや。さっきセクハラされた恨みも兼ねて散々いじり回してやろう。視聴者の年齢層?収益剥奪?そんなのもうしーらね。……あっ、収益だけはダメだわ。程よく配慮しながらいじるか。

 

フリーズが解除され、若干青い顔の泉さんにまくし立てる。

 

なにかの二次創作ですか?誰を主人公にしたんですか?

 

「いや…その…」

 

もしかして他の方の同人誌で歪まされちゃって、自分でも創りたくなったんですか?

 

「ぎくっ!…そんなことはないよ?」

 

やっぱり小さな女の子に甘える奴なんですか——」

 

「ストップ」

 

ガッ、と。頭を鷲掴みにされた。

小さめであるのに、確かな握力を感じるその手。俺はこの手を、知っている。…あまりにも。

 

「——っ!?なんでここに!?

 

仁王立ちのよく似合う、我が妹であった。

 

 

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