[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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11話 ブレーメンの音楽隊

 懐中時計を見ながら裏路地を歩く。

 

 裏路地とは一つ一つの巣と巣の間にある各指が管理する区域の事だ。

 治安の悪さはまちまちだがどこも巣より命が軽いのは確かだろう。

 

 アレを見れば分かる。

 

 4人それぞれが動物の面を被り、死にかけの人を使い楽器のように演奏し奏でる、狂気的な音楽隊だ。

 

「……それ、辞める気は無さそうか?」

 

 その特異な格好をした奴らに話しかけると、全員がこちらを見る。

 

「あぁ、お客さんかい?残念だけどもうすぐ終わるよ」

 

リーダーと思われる猫の面を被った女が答え、演奏を続ける。

 

「……なら良いんだ。じゃ、邪魔して悪かった」

 

 私は輝く剣を抜いて鶏の面を被った男の首を切り落とす。

 焼けた血と肉の臭いが立ち込める。

首を切り落とされた男は(まさ)しく鶏の様に身体を震わせながら、息絶えた。

 

 

「出来るならその演奏は死んだ後にしてくれると嬉しいな……死ぬほど反吐が出る」

 

 ピアニストの真似事を辞めるなら良いけれど。其の気が無ければ私は断つ。

 

 そう言いながら血塗れた地面に剣の切先を突き立て待ちの姿勢を取る。

 

「いつでも来るといい」

 

 驕らずただ淡々と言い、待つ。

 

「私達は…あの演奏を再現する為に全て投げ打って音楽隊を結成した。情熱なら誰にも負けないんだから!」

 

「な、なぁ、彼奴もしかしてピアニストとやり合ってた奴じゃないか?」

 

「おい、ヒーホー……」

 

 リーダーのネコの仮面を被った女がこちらを見て怯える仲間に声をかける。

 

「お前ら、やるぞ……!」

 

 犬の面を被った男がそう言って、楽器を構えた3匹の狂った音楽隊が私に向かって"演奏"を始めた。

 

「私達は、大きくなるのっ!」

 

 そう言いながら女が私の懐に入り込んでくる。

 私はその動きに合わせるように数歩下がりながら剣で軽く押し返す。

 

 間髪入れず馬……ロバ?の面を被った男がハンマーを振り下ろす。

 それを半身になって避けつつ蹴り飛ばす。

 

 そのまま男に剣を突き刺そうと踏み込むと、猫の面の女の投げたナイフが飛んでくる。

 

 剣で弾き、流れで犬の面の男に突きを放つが、しかし男は手に持った槍の柄の部分を使ってそれを受け流された。

 

「っぶねー」

 

 お互いにひとまず距離を置く

 

「ふぅーっ……少し上げよう」

 

 

 

 私は剣を構え直し、今度はこちらから斬りかかる。

 

 犬男は私の剣を避け、槍の穂先を突き出すが、それを剣の腹で滑らせるようにしていなし、そのまま男の首を跳ねる。

 

「2人目……」

 

「ワン!」

 

 猫女が細剣を構えて突っ込んでくる。

 

 それを剣の柄頭を使って叩き落とす。そのまま猫女が体勢を立て直す前に鳩尾へ蹴り込む。

 

「か……!」

 

「…この、足癖悪ぃな!」

 

 猫女が吹き飛び、ロバ男がハンマーを振りかぶる。

 

「よっ、」

 

 私はそれを剣で受け止め、ロバ男の脇腹に蹴りを入れる。

 

「ぐぅっ……!」

 

 ロバ男が怯んだ隙に猫女の方を見る。

 

 猫女は既に体勢を整えており、私に向かって細剣を突き出す。

 それを半歩で避け、猫女の顎に掌底を叩き込む。

 

「ミ゚ッ!」

 

 猫女はそのまま脳震盪を起こして倒れた。

 

「……あと一人」

 

「おい、お前何級だ……!」

 

 ロバ男はハンマーを構えながらこちらに問いかけてくる。

 

「……4級だよ」

 

 ロバ男はそれを聞いて一瞬笑みを浮かべるが、すぐに顔を歪める。

 

「嘘つけ!お前みたいな奴が4級の筈ないだろ!」

 

 ロバ男はハンマーを振り上げてこちらに突っ込んでくる。

 私はそれを避けながらロバ男に剣を突き立てた。

 

「がぁっ!」

 

ロバ男が倒れ、動かなくなった。

 

「……ふぅ」

 

 大分と慣れてきたな……。

 胴から剣を抜き、首を断ち切る。

 

「ぅ……ぁ……ぁ……」

 

 楽器になってしまった男が、まだ辛うじて声帯を動かして何かを言おうとしている。

 

 ……辛かったな……。

 

 剣を突き立て、苦しみから解放させた。

 

「……さてと、セブン協会に報告しなければな」

 

 そう、このブレーメンの音楽隊。本当はセブン協会のフィクサーが対処する予定だったらしいのだが、唐突に他の任務が入ったとかで私に回ってきたのだ。

 

 他の事務所を持っている人等に任せればいいものを……

 

「……まぁ、仕方ないか」

 

 私は死体を背に歩き出す。

 

「……ん?」

 

 私は振り返る。

 

「……」

 

 何処かで影が揺らいだ様に見えた。気のせいか……? 私はそのまま歩き出す。

 

「……」

 

 私は歩みを止める。

 

 やっぱりおかしい。

 

 さっきからずっと視線を感じる。

 

 私は周囲を見渡す。

 

 誰もいない。

 

「……」

 

 いや、いる。

 

「血鬼か」

 

「……」

 

 返事はない。ただ生き長らえようと必死に血を吸う音だけが聞こえてくる。

 

「……お前は生きたいか?……死にたいか?」

 

 私は剣を鞘に収める。

 

 飽くまでも、対象は今転がっている奴等だ。

 

 関係も無い弱った血鬼にトドメを刺す程、私は落ちぶれてはいない。

 

「……ん?」

 

 血鬼が何かを呟いた。

 

「……ぃ……き……だ……」

 

「……そうか、お前は生きたいのか」

 

「……ぅ……ぁ……」

 

「……連絡するといい、血鬼だろうが私は拒まないからな」

 

 汚れていない地面に作った名刺を置いて私はその裏路地から去った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

「ただいま」

 

 剣を壁に立て掛け、私はリビングに向かうと、美味しそうな匂いと楽しげな声が聞こえてきた。

 

 父はキッチンで料理をしていた。

 

「おかえりなさい、早かったですね」

 

 母は椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。

 

「ご飯もうすぐできるからな」

 

 父がこちらに振り向く。

 

「はい」

 

 返事をして、母の対面に座る。

 

「突然の仕事お疲れ様です。どうでしたか?」

 

 コーヒーを置いた母が話しかけてくる。

 

「……まぁ、ピアニストよりは卸しやすかったと思いました」

 

「……まぁあれと比べては殆どの人は楽でしょうね……」

 

「さぁさぁ、出来たぞ〜特製パジョンだ」

 

 上機嫌な父が皿を運んでくる。

 

「マッコリも必要ですよね?」

 

 母が立ち上がり、冷蔵庫から取り出して持ってきた。

 

「さぁ食べようか!」

 

 父が席に着く。

 

「……」

 

 私は黙々と食べ始める

 なかなか……美味しい……。

 

「ふふ、なんだか昔を思い出しますね……?」

 

 母は懐かしむような顔をしながら私を見る。

 

「……そうだな」

 

 父も少し恥ずかしそうにしながらこちらを見ていた。

 

「……何かあったのですか?」

 

 私が聞くと、少し酔い始めたのか顔を赤くした母が口を開く。

 

「ローランはですね、私が飲みに誘ってもいつも、仕事仲間を連れて来るんですが……その日はローランから誘って来たんですよ、しかも二人きりで!」

 

 母が楽しそうに言う。

 

「……そうなんですか、父さん?」

 

 私は父の方を向いて尋ねる。

 

「あぁ〜……まぁちょっとな」

 

 誤魔化すような返事だ。

 

「それでですね、初デートが寒空の下1時間も歩かされて、居酒屋に連れて行かれましてね!……アルトリア?聞いてますか?」

 

……酒癖が良くないのは知っているが……まだ1杯目でここまでとは……。

 

「はい、ちゃんと聞いていますよ」

 

「そうですか……それでですね、飲んでたんですが、急に任務が入って、出なきゃ行けなくなったんですけど、いつまでも言わないものですから焦れったくなってしまって、私から告白したんですよ〜?」

 

 

 ……あぁ、なんか叔父様が言ってたな……この事だったのか……

 父を見ると恥ずかしそうな、少しだけ不服そうな表情をしていた。

 

「母さん、もう終わりにしましょう、妊婦なのですからお酒を飲むのはあまり良くないですよ」

 

 私はそう言いながら母からグラスを取り上げ、水を注ぐ。

 

「……あら、そうですね、アルトリアも私に似てしっかりしてきましたね……」

 

 母は感慨深げに言う。

 

 少しツッコミたくなるが無視しつつ、水を飲ませて、ベットに運ぶ。

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

 

「悪いな、アルトリア、あいつは久々の酒で舞い上がっただけだ……」

 

「えぇ、はい……」

 

 もう何も言うまい。

 

「……さっきの話を掘り返すようで悪いのですが、どうして父さんから言わなかったんですか?」

 

 頬を掻きながらポツポツと父は話し出す。

 

「いや……本当はアイツのムク工房の高級品壊してな……謝る為に誘ったんだがな……先に言われたんだ……本当はもっといい所が良かったんだがな……」

 

「……まぁ、大方そんなところかななんて思ってはいましだが……」

 

 なんともダサい。流石に父さん、擁護出来ないです。まぁ口には出しませんが……

 

 母が口をつけたマッコリを呷る。

 

「おい、おまえっ」

 

「ふぅ……意外といけますね……」

 

 ちょっとした酸味と、発泡感が心地よい。

 これはなかなか飲みやすい。

 

 そう思いながら飲んでいると父は何だか複雑な顔をしてこちらを見ている。

 

 なんですか? 何か言いたいことでもあるんですか?

 

「程々にしとけよ?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ」

 

「なら良いんだがな……」

 

 父の忠告もそこそこに私はマッコリを飲み干す。……なんだか少し体が熱くなってきた気がする。

 

「あぁ、そういえば父さん、帰り道に血鬼を見つけました……」

 

「おいおい、それ本当か?血染めの夜は殺したが、吸血鬼なんてヤバいやつだぞ?噛まれてないか?」

 

「えぇ、問題ありません。弱っていましたから……見逃しました」

 

「おいおい、それはヤバいぞ、もし血染めの夜みたいになったらどうすんだよ……」

 

「……私が倒しますよ、ええ」

 

 ……少し眠たくなってきた。

 

 歯を磨きますか……

 

「あぁ、アルトリア……大丈夫か?」

 

 父が心配そうな顔をして私に声をかける。

 

「えぇ、問題ないですよ」

 

 鏡を見ながら私は言う。

 確かに顔は赤いだろうが、だが別に酔ったわけではない。

 これは、アレだ。

 お酒のせいではないのだ。

 私は酔ってなんかいない!

 

「いや、おまえ……完全に呑まれてるぞ……」

 

 父さんが呆れた様子で言う。……反論出来ない……だが認めたくない。

 

「……シャワー浴びる……」

 

「おい、気を付けろよ?転けるんじゃないぞ?」

 

「大丈夫、大丈夫だから……」

 

 少しあたまを冷やしてこよう……。風呂場に向かう途中でふと窓の方を見るといつの間にか日が沈み始めていた。

 

 ……もうそんな時間か……

 

 パジョン美味しかったなぁ……

 

 明日はハムハムパンパンでも食べようかなぁ……

 

 べディ……逢いたいなぁ……

 

 シャワー浴びて早く寝よう……

 

「ぁ!猫!トドメ刺してない!」

 

 ……まぁいいか……。




4000文字に届かず……面目ない……

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