[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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お待たせしてしまい申し訳ない……
今回も新たなる原作キャラとの絡みが……

あ、リンバスカンパニーのくじメイトA賞B賞当たって嬉しかったです。



13話 夜明事務所

 

エレナを迎えて半月経った。少しづつ仕事をこなし、金が溜まり、気付けば巣の中の半地下に家兼事務所が出来た。

 

 

 流石に何時までも親の実家ではなかなか困るというか、まぁ……うむ。

 

 半地下で激安物件で税金も安い。女2人で過ごすには丁度いい位だ。

 

 難点は雨ぐらいだろうか……

 

「……熱がこもって暑いな、アルトリア」

 

 ダンボールの上に寝転び、文句を垂れるエレナ。

 

「そんな事言ってないでダンボールを開けろ、エレナ」

 

 私はダンボール箱を開封しながらそう言った。

 

 全く、買った家財も使わなければ意味が無いと言うのにな……

 

「もっといい所を事務所にしたらどうだ? こんな狭い所で良いのか?」

 

「金と仕事を集めるだけの事務所なら、こんなに狭くても問題ないだろう、嫌なら仕事や依頼を持ってくるんだな」

 

 エレナは私の言葉を聞いて少しムスッとして、箱を開け始めた。

 

 やはり人付き合いは苦手か。

 

「まぁ、いいだろう。さっさと片付けるぞ」

 

 エレナはそう言いながら、引越し作業を進めた。

 

 ん、吊り下げ看板が出てきた。作った覚えは無いのだが……

 

「『円卓事務所』か……ふっ」

 

 ネーミングセンス的に母だろうか……まぁこれはこれでいいか。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 膵臓バーガーがどうもきな臭いという噂が流れた。

 

 ……正直信用この都市でまともな飲食店は多いイメージが無い、グルメ通りと呼ばれる23区のせいで。

 

 あそこは人食を許容し、それを商売にしているような所だ。人を攫い、生きたままミキサーにかけるとかな……まぁ、それはさておき……今回はある事務所と合同で深夜に工場を襲撃、制圧するという依頼だ。

 

「ふふ……新鮮な血は有るだろうか……」

 

 ……エレナは上機嫌の様だ。血鬼らしいと言えば、そうなのだが。

 

「……あぁ、エレナ、あまりはやり過ぎるなよ、今回は夜明事務所との合同だ。……ただでさえ元都市の星は悪い意味で注目されるからお利口にな」

 

「……あぁ、分かったよ」

 

 エレナは少し不満げな表情でそう言った。

 私達は待ち合わせ場所の夜明事務所にたどり着いた。

 

 事務所の扉を開けるとベルが鳴り、漢方の様な独特な香りが迎え入れてくれる。

 

「失礼します。サルヴァドールさんはいらっしゃいますでしょうか」

 

 中に入り、声を掛けるとメガネを掛けた灰色髪の少年が顔を出す。

 

「……誰ですか? こんな時間に、今は忙しいんです」

 

「なんだ此奴、辛気臭い顔してるな」

 

出会って一言目がそれはどうかと思うぞ……エレナ……まぁ、私もそう思うが……

 

「……エレナ、あまり相手を困らせるなよ……失礼しました。私は円卓事務所所属、アルトリアです」

 

「同じく、エレナ」

 

「あぁ、そういえば、師匠が……」

 

「ふむ……君達が噂の元都市脅威のフィクサー達か……フィリップ君、通してあげなさい」

 

 そう言いながら、彼の後ろから白髪に白髭、糸目の爺さんが事務所の奥から現れた。

 

 この男がサルヴァドールだろう。かなりの手練れだ……立ち姿に隙がない、雰囲気だけで分かる。

 

「はい、分かりました師匠。双和茶(サンファチャ)はいかがですか?」

 

 私達に双和茶を勧めてくる……フィリップ君だったか。

 

「いや、大丈夫だ、ありがとう」

 

「あぁ、この匂いは茶の香りか、貰おう」

 

 私は断る……流石に紅茶の方がいい。失礼と分かっていても少しな……エレナは頂くらしい。

 

「……えぇ、そうですよ。師匠はいつもこれを飲んでいるんです」

 

 そう言って彼は私達をソファに座らせ、お茶を入れ始めた。

 サルヴァドールは私と対面する様に座り、話し始める。

 

「まずは、こんな夜更けに来させてしまってすまないね」

 

「いえ、構いません。むしろ夜明事務所の支援をさせて頂けるなんて光栄です」

 

「ふむ、建前はいいよ、アルトリア君。背中を預ける以上、腹の内を見せ合おうじゃないか」

 

「……そうですね」

 

「……おまたせしました、アルトリアさん、紅茶で良かったでしょうか」

 

 そう言ってフィリップ君が双和茶と紅茶を持って来てくれた。

 

「済まない、わざわざありがとう。気が利くね」

 

「ミルクと砂糖はこちらに置いておきますね」

 

 そう言って彼は私の横に置いてくれた。

 

「あぁ、助かるよ」

 

 しばらく私達はのんびりとお茶を飲む。

 

「……微妙だな」

 

「ハハハ……だ、そうだ。まだフィリップ君は修行が必要だな」

 

「すいません……精進します……」

 

 ……何のための時間だ……? 

 

 そう思いながら漢方の様な香りが漂う事務所で紅茶を飲んでいたら事務所の玄関のベルが鳴った。

 

「うぇ、なんか今日いつもより双和茶の匂いが酷いね……」

 

 そう言いながら入ってくるギターケースの様な武器を背負った両手義手の女性が入ってきた。

 

「あぁ、すまないね、ユナ君。今日は少し客が多いんだ」

 

 サルヴァドールはそう言って彼女を迎える。

 

「……楔事務所の面子では無いようですね?」

 

「初めまして。円卓事務所、アルトリアという者です。以後お見知り置きを」

 

 立ち上がり、そう言って私は握手を求める。

 

 彼女はそれに応じる。

 

 手は機械の様に冷たく、無機質だった。

 だが、握る力は強く、まるで虎が噛み付いているような感覚を覚える。

 

「……何級?少なくとも私と同じには見えないけど」

 

 そう言って私の手を離す。

 

 彼女の目には興味の色が見える。

 

「まぁ級なんてどうでもいいだろう? エレナだ、よろしく頼むよ」

 

 そう言ってエレナは手を差し出し握手を交わす。

 

「あぁ、よろしく」

 

「さて、ようやく本題に入れそうだな……」

 

 サルヴァドールはお茶を一口飲んでそう言った。

 

「確か、膵臓バーガーの工場を合同で襲撃調査だったか、建物の図面はあるのか?」

 

 私はサルヴァドールに尋ねるが、彼は首を振る

 

 まぁそれそうか……。

 

「……そうか、じゃあとりあえず、私とエレナは前へ出て、3人は後ろから状況確認を頼む。掛かってくる者は私達が相手する」

 

 確実にこの依頼をこなすには、私達円卓事務所が前衛で総てを潰す前提で動いた方が楽だ。勿論その分の金は上げなくて良いとも伝えるが……

 

「……なに、こんな老耄でも、守られるだけの存在じゃない事を覚えておくんだぞ? 私も君達と共に先陣を切ろうじゃないか……」

 

 サルヴァドールはそう言って立ち上がる。

 

 ……腐っても2級。プライドは有るようだ。

 

 正直足を引っ張るだけだろうが、まぁ……仕方ない

 

「エレナ……」

 

「あぁ、わかっているさ」

 

 エレナはそう言って双和茶を飲み干した。

 

「じゃあ、行こうか」

 

 私達は席を立ち、夜明事務所の事務所を出た。

 

 ◇◇◇

 

 円卓事務所と言う事務所と仕事をすることになった。

 師匠が言うには、最近ぽっと出で現れた4級の事務所らしい。

 

 先輩と同じぐらいだろうか……

でも師匠は元都市脅威だと言っていた……それらにはたしか、都市災害ランクがあって……上から『都市の星』『都市悪夢』『都市疾病』『都市伝説』だったか……。少なくとも先輩と師匠でギリギリ都市伝説を倒せる位だから……

 

「どうかした? フィリップ。悩み事とかあった?」

 

「あ、いえ……円卓事務所の方々が気になって……」

 

 僕の言葉を聞いて先輩はチラリとアルトリアさん達の方を見た。

 

「……2人とも美人だもんね? フィリップもああいう女性が好み?」

 

「え!? いや、そういうわけじゃ……!」

 

 僕は慌てて否定した。

 

 先輩よりも少し背が高くすらりとした体躯の女性。出る所は出てる……。

 確かに綺麗だけど……! 

 

「あはは、まぁ冗談はさて置いて……あの人達、私が知ってる誰よりも強いと思うよ。私よりも師匠よりも……」

 

「……そうなんですか?」

 

 いったいどれだけ金を積めばそんなに強くなるのだろうか……もう少し僕も強ければ…………

 

「まぁお手並み拝見ってところだね。早く行こう、私達も遅れを取る訳にはいかないよ」

 

「そうですね……」

 

 少し駆け足で師匠の背中を追いかけ、僕らも円卓事務所の後ろについていった




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