[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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お待たせしてしまい申し訳ございません……


15話 真っ直ぐ立てる意思。

「……よし、これでいいかな」

 

 調査結果を書き出し、誤字脱字が無いかを確認する。

 

「ふぁ……」

 

 相変わらずエレナは暇そうに寝転んでいるだけだ。肥るよ、それ……まぁ血鬼にそんな概念があるかは分からないが……

 

 資料を纏め、紐付き茶封筒に入れて閉じる

 

「エレナ、暇そうなら一緒外に出ようか」

 

 私はエレナに提案するが鼻で笑われた。

 

「あんた私が夜しか行動出来ないって忘れてるでしょ」

 

「……あぁ、そう言えばそうだったか……」

 

 すっかり失念していた。そうか、彼女は吸血鬼なのだから日が出ている間に出歩くのは難しいだろうな。

 

「……裏路地の子供達にも会いに行ってくるよ」

 

「……そ、好きにすればいい。どうせ私は付いて行けないからな」

 

「うん、じゃあ留守番よろしく」

 

 はぁ、とため息が聞こえたが気にせず扉を閉め、フードを被り事務所を出た。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 カランカランとドアベルが鳴り、私は中に入る。

 

「サルヴァドールさん、いらっしゃいますか?」

 

「……あぁ、アルトリアさん、師匠は今出先で……」

 

 対応してくれたのはフィリップ君だった。

 

「そうか……連絡をいれてからこれば良かったな……フィリップ君。これ、サルヴァドールさんに渡しておいてくれ、この前の資料と纏めだ。あと、何かあったらまた教えて欲しいとも言っておいてくれないか」

 

 私は茶封筒を彼に渡しながらそう伝える。

 

「あっ、はい……わかりました」

 

 何時にも増してなにか辛そうな面持ちだ。

 

 全く……従業員を管理はあの爺さんの役目だろうに……少し肩入れするか……

 

「……フィリップ君、少し私とお出かけしようか」

 

「え、でも、事務所が」

 

「そんなの鍵を締めれば良いさ、置き手紙位書いていけばいい」

 

「うーん……」

 

「ほら、早く準備するんだ」

 

「ち、ちょっと、押さないで下さいよ……!」

 

 私はフィリップ君に急かしながら準備を手伝った。

 

 ◇◇◇

 

 昼の裏路地はまぁ大変だ……。何せ臓器売りのネズミが居るからな。

 

「ふっ……!」

 

 エクスカリバーを振る。なるべく傷付けないよう、鞘で刃を固定してぶん殴る。

 

 少し鞘が可哀想だが、とりあえずぶん殴る。

 

 彼らも生きる為に私たちを襲うのだから、仕方ないと割り切って拳で顔を凹ませる。

 

 

 父や母、叔父様やイオリ叔母さんとの特訓を思い出すな……。

 基礎は相手に攻撃させない事だが、大体は後手に回る。だから的確に……相手の持つ刃を受け流し、顎、鳩尾を殴り金的を確り蹴る。

 

「む、加減を間違えたか……」

 

 気絶したが多分子孫は残せるだろう。

 

 少しフィリップ君を様子見しつつ……まぁ大丈夫そうだ。

 

「おいおい、やべぇよ此奴ら! ずらかるぞ! 俺達じゃ無理だ!!」

 

 負傷者を引き摺り、逃げて行くネズミ達を眺めながら一息ついた。

 

「大丈夫か? フィリップ君」

 

「あっ……はい……大丈夫です……」

 

 私を見て何故か引いていたフィリップ君に声を掛けると元気の無い声で返事をされた。

 

「あの、こんな裏路地にまで出て、何処に行くんですか……?」

 

「あぁ、ちょっと子供達に会いに行くんだ」

 

「子供ですか……」

 

 彼は不思議そうに首を傾げた。

 

 もう少し先の曲がり角に……以前私の財布を抜いた子供達がたむろしていた。

 

「やぁ、ドンキ。元気そうかな?」

 

 私が声を掛けると皆ビクリとして此方を見た。

 

「アルトリアさん!」

 

 黄色髪の明朗快活な女の子。ドンキホーテが私の胸に飛び込んできた。

 

「アルトリア様、ご機嫌麗しゅう……」

 

 白髪を後ろに流したインテリそうな少年。ランスロットも頭を下げた。

 

「っス、元気っス」

 

 茶髪を三つ編みにしたアイラが気だるげそうに会釈をした。

 

 3人とも相変わらず元気そうで何よりだ……。

 

 

 

「アルトリアさん、その横の御仁は?」

 

 隣を見ると呆然としているフィリップ君がいた。

 

「ん? 私の友達、フィリップ君だ」

 

「はぁ……初めまして……僕は……」

 

「知っていますよ。アルトリア様の仲間なのでしょう?」

 

 ランスロットがフィリップ君を見つめていた。

 

「あぁ、一昨日位に一緒に仕事をしてね。ちょっと落ち込んでいるところを拾ってきたんだ」

 

「ふーん……」

 

 ドンキは私に引っ付いて離そうとしない。

 

 可愛いが……少しだけ鬱陶しいな。

 

「食べに行こうか、何処が良い? 私の奢りだぞ?」

 

 私がそういうとドンキ達は歓声を上げて喜び、フィリップ君は申し訳なさそうにした。

 

「あの……僕もいいんですか?」

 

「あぁ勿論。なんの為に連れて来たと? ……さぁ行こうか」

 

 私は4人を引き連れて繁華街に歩き出した。

 

「串とか良いですね!」

 

「タッカッジョン等どうでしょうか……? 最近流行ってるらしいですよ」

 

「小籠包がイイッスね!」

 

 ドンキ達が屋台を見ながら楽しそうにしている。

 

「フィリップ様は如何ですか?」

 

 ランスロットがそう言うとフィリップ君も恥ずかしそうにして答えた。

 

「じゃあ僕は……小龍包で……」

 

「じゃあ小籠包で決まりっスね〜♪」

 

 アイラは嬉しそうに笑い、フィリップ君の手を引いて屋台に向かった。

 

「あっ! 待ってくださいよー!」

 

 ドンキも慌ててその後を追う。

 

「……馴染んでくれれば任せられるというものだが……」

 

「アルトリア様……?」

 

「……ん? あぁ、すまない。行こうか、ランスロット」

 

「はい」

 

 私はランスロットを連れて後を追うように向かった。

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

「アルトリアさん! これ美味しいですよ!」

 

 ドンキが小籠包を食べて嬉しそうにしている。

 

「ん、はふっ、んん、熱つ……」

 

 髪を耳にかけ、口の中を火傷しないように冷ましながら食べる。

 

 ジュワリと肉汁が溢れ、熱いけれど美味しい。

 

 店内が暑く、少し汗が出る。

 

「アルトリアさん、ラーメンもいいっスか?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

 ドンキが嬉しそうに笑う。

 

「やった! フィリップさんは如何ですか?」

 

「えっと……じゃあ僕も……」

 

 フィリップ君が少し遠慮がちに答えるとアイラが嬉しそうに笑った。

 

「おい、ちゃんと口元を拭くんだ、ドンキ」

 

「やめ、むぅ〜……ありがとうございます……」

 

 ランスロットとドンキホーテがわちゃわちゃしてる間に、店員を呼び全員分のラーメンも頼んだ。

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

「小籠包美味しかったですね!」

 

 ドンキが満足げに言う。

 

「しばらくは何も食べなくてもイイっスね……」

 

 アイラもご満悦のようだ。

 

「そうは言ってもきちんと栄養補給も大切だ、ちゃんと摂るんだぞ」

 

「はーいっス!」

 

「わかりました」

 

「……わかった」

 

 三人はそれぞれ素直に返事をしてくれた。

 

「じゃあ、帰ろうか」

 

 ◇◇◇

 

 僕はアルトリアさんと一緒に3人の子供達を見送った。

 

「……どうだい? 楽しかったか?」

 

 唐突に振られた質問、少し返答に困った。

 

「……はい。とても」

 

「そうか」

 

 アルトリアさんは満足そうに微笑んだ。

 

「フィリップ君の不安が何から来るのかは分からないけれど……辛い時は彼奴らと遊んでみるといい。悩みなんてどうでも良くなっただろう? ……あぁ、そうだ。またいつかは私の事務所にも遊びに来てくれて構わない。ユナさんもサルヴァドールさんも是非連れて来てくれ」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

 僕はぺこりと頭を下げてからその場を離れた。

 

「さようなら、お元気で」

 

「あぁ、次会うときは、明るい顔でね」

 

「えぇ、きっと」

 

 そう言って、僕達は別れた。

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました……」

 

 僕は事務所に戻り、そう言った。玄関の鍵は空いていたから、誰かは帰って来ているだろうと中に入る

 

「おぉ、帰ってきたか、フィリップ君」

 

「お帰りフィリップ、お出かけなんて珍しいね?」

 

「……ぁ、はい、円卓事務所のアルトリアさんに連れられて……」

 

 師匠も先輩も帰ってきていた様で、二人はいつも通りにソファや椅子に座ってくつろいでいた。

 

「そうか、逢い引きとはもうそんな関係になっていたのか」

 

「違います! 何言ってるんですか!」

 

 僕も席に着きつつ否定する。

 

 そう、逢引なんてしていない……どうせならもっとこう……ちゃんとしたい。

 

「そうは言ってもアルトリアさんはその気かも知れませんよ? ね? 師匠」

 

「ははは、そうかもしれん。フィリップ君はモテるからな。私としては少し複雑だ」

 

 師匠が冗談めいた笑みを浮かべてそう言う。

 

「そもそも僕は……先輩……ですし……」

 

 しりすぼみになりながらも否定する。

 

 恥かしさで暑く赤くなってしまうが、目は逸らさず、きちんと伝える。

 

「だから……その、先輩に見合う様に……強くなります……僕」

 

 そう言うと、先輩は一瞬きょとんとしてから優しく微笑んだ。

 

「うん、仕方ないな……待っててあげるよ、言葉に出したんだから、先ずは稼ぎ頭になってよ〜?」

 

「っ、はい!」

 

 今、僕の世界は広がった気がした。




こんな甘酸っぱい青春をフィリップに送らせるのが楽しいんだ……(ただ強化しただけ)


ドン・キホーテに関してはリンバスカンパニーの7章前に書き上げた為、キャラクターや、設定に乱れがございます……どうかお許しを

if、若しくは補填が必要か

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