[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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おまたせ……


16話 残響の青は自由の青

 特にやることも無く、私達は事務所でカフェオレとミルクティーを飲み比べ、どの茶葉、豆が良いかと考えていた。

 ふとエレナを見ると髪が腰まで伸びている事に気付いた。

 

「エレナ、髪伸びたな……」

 

「そうだな、老いは遅いが代謝はどうしようもないからな……しかし、お前は変わらないな、アルトリア。髪の毛すら落ちないとは……」

 

む、髪の毛も落ちてはいなかったか……

 

「あぁ、まぁ……あれのせいだ……」

 

 壁に掛けかけた剣に目を向ける。

 

「ほう、あれは蛍光灯みたいに光るだけでは無いのか?」

 

「刃の方は本当に折れなかったり熱源になるただの刃だ。問題は柄にある……」

 

カップを置いて立ち上がり、剣を手に取る。

 

「これは……私の姿形を固定し、私が変形すれば元に戻ろうとする。死のうが、骨が折れようが、内臓が出ていようが、だ。汗なんかはあまり関係は無かったがな」

 

「ふむ……便利そうで不便なものだな……ん、苦いな、もう少し甘く出来ないか?」

 

 これは……ハナから興味無さそうだな。

 

「砂糖なら自分で入れてくれ……あと、私の分も頼む」

 

「分かった」

 

 エレナはカップを持って立ち上がるとキッチンへ歩いて行った。

 私は剣を掛け直すと再びカフェオレを口に含んだ。

 

「……」

 

 言うほど苦くは無いが……? 

 

 立ち上がり、ちらりとエレナの様子を見る。

 

 エレナが手に持っていたのは大さじ。

 砂糖を掬って……1杯、2杯……3杯……

 

「ちょ、ちょっと待て、エレナ! 多い! 多いから! それは! 高いんだから!」

 

 慌てて駆け寄り大さじを取り上げようとするがエレナはひょいとかわす。

 

「ん? あぁ、悪い。そうか、砂糖は貴重品だものな」

 

「甘党でも限度があるよ……ただの砂糖水じゃないんだ……」

 

「ん、まぁこれぐらいでいいか」

 

 沢山砂糖を入れたカフェオレはエレナの口にはあったらしい。私はため息を吐きながらソファに座り直し、時計を開く。

 

 ……いくら切り取られようが、元に戻ろうとする身体。人の体を保ってはいるが……ピアニスト等のバケモノと何処が違うのだろうな……

 

 この身体に流れているのは珈琲か、牛乳か……はたまたあのカフェオレか……

 

「はぁ……」

 

 エレナは満足げにカップに口を付けるとカップを置いた。

 次何か飲ませる時は普通にジュース買って来てやろう……私はそう決意した。

 

 

 

 

 

 唐突にドアベルが鳴る。

 

 誰が来た。

 

 私は掛けた剣を手に取っておく。

 

「やぁー、アルトリア〜、ボクだよ。元気にしてるかい〜?」

 

 何処が間延びした声。母と同じ様な髪と瞳をしているが、顔は似ても似つかない。

 

 青色を携えた男

 

「叔父様……何しにいらしたんですか……?」

 

 私はため息混じりに言う。

 

 尊敬は出来るが信頼は出来ない人がきた。

 二度と見るようなら殺すと釘を刺したにも関わらずこれで3回目だ。

 

「あははぁ、つれないねぇ……まぁいいかぁ……」

 

 叔父……アルガリアは肩をすくめてみせる。

 

 叔父は私にとって苦手な人だ。何を考えているのかわからない。母によく似た顔をしているが中身はまるで違う。

 

「それで何の用だ? 青い残響」

 

 エレナが血を纏いながら叔父を睨みながら言う。

 

「落ち着け、エレナ……私の身内だ」

 

 私はそう言って矛を下ろす様に促す。叔父はいつも通りニコニコと笑いながら言った。

 

「引越し祝いしに来たんだ、新しい武器とか施術とか、沢山我儘を言ってくれていい。それが姪の為になるならね」

 

「……叔父様。引越し祝いというか、ここに引越したの随分前ですけど」

 

「本当についさっき知ったからね〜、だからお土産も持ってこれなかったよ〜」

 

 叔父は頭を掻いてみせる。

 

 ……めんどくさいな……

 

「とりあえず珈琲か紅茶でも飲みますか?」

 

「じゃあ紅茶を貰おうかな〜」

 

 叔父はソファに座りながら言った。

 

 私は台所へ向かい、ティーカップを2つ取り出してポット茶葉を入れお湯を注ぐ。

 

 

 

 叔父の向かい側に座り、お茶を出した。

 

 叔父は紅茶を飲んで言った。

 

「美味しいねぇ〜、良い茶葉使ってるんだねぇ〜……それで、引っ越し祝いは何が良い? やっぱり新しい施術かな? それとも銃? アンジェリカのロジックアトリエと同じ物が良いな。違いない。税金も弾もまるまる出してあげるよ」

 

 叔父はそう言って手を広げながら言う。

 

 私は叔父を睨みながら言った。

 

「叔父様、私は子供じゃないんですよ?」

 

「え〜? そうかなぁ? 養子とはいえまだ18歳じゃないか」

 

 

 

「叔父様は私を何だと思ってるんですか……」

 

「可愛くて強い姪っ子だと思っているよ〜?」

 

 叔父はそう言って首を傾げる。

 

 

 

 ミルクを必要かと聞くと、叔父は大丈夫だよ〜と返した。

 

「で、何を企んで? 誰かの口添えですか?」

 

「なにも企んでは無いよ? でも師匠には言われたかな〜、『忘れないうちに姪と会ってくるがいいさね』ってさ……?」

 

 イオリ叔母さんが……なにかある

 

「……では好き放題買い物するので領収書お願いします」

 

「良いよ〜、あとアンジェリカも呼ぼうか」

 

「いえ、そろそろ出産も近いでしょう。私達2人で大丈夫です」

 

「そうかい? じゃあまたいつか受け取りに来るよ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 叔父はそう言って紅茶を飲み干し去って行った。

 

 私は叔父の後ろ姿を見つめる。

 

「……『忘れないうちに……』ね……」

 

 叔父さんの言うことだ……きっと何かあるだろう……まぁ、とりあえず叔父様は搾れるだけ搾っておきましょう。

 

 事務所を変えるのもやぶさかではないか……

 

「さぁて……どうしようか、エレナ」

 

「好きにするといい……私はお前に着いていかなければマトモには生きてられないからな……」

 

 そう言って彼女は苦笑した。

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