[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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おまたせ致しました。


19話 外郭 紫の涙方式合宿!

「はぁ……お前は人遣いが荒いね?」

 

「申し訳ありませんイオリ叔母さん……私も強くならなければいけないので……」

 

 私と話しているのは紫の涙。最も強いフィクサー、紫の特色を付与されたイオリに頼み込む

 

「あんた、それ以上を求めても何も返ってこないのを解ってやってるんだろう? 舞台で踊るにはかなり愚かでデカすぎるよ……」

 

「舞台が何かは存じ上げませんが……えぇ、私はきっと愚かでしょうね……ランスロット」

 

 

 私がランスロットに声を掛けると、彼はこちらを振り返った。

 彼の瞳は蒼く煌めいていた。

 随分とやる気はある様だ。

 

 

 まぁ外郭だからやる気はあるに越したことはない……何せ出るのも戻るのが難しい場所なのだから。

 

 

 しっかりと高級品のスーツを身にまとい、手には革製の黒い手袋をしている。髪は綺麗に整えられており、オールバックになっていた。顔は美男子と形容できるほどの造形であった。

 

 

「いい拾い物をした様だね? あいつにゾッコンだったお前が浮気か?」

 

「……うるさいですね、べディは付き人です……それにどうせ今は会えないですから……」

 

 

 茶化すイオリさんにムカつきつつ、認識阻害のフードを被り直す。

 

「あぁ……そうだねぇ……じゃあ行こうか」

 

 私とランスロットは紫の涙の後を追う様に外郭へと足を運ぶ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 外郭。わざわざ足を運ぶのも大変な都市の外。

 頭に拒否され、沢山の技術や怪物、人らの廃棄場。

 拒絶するかのように都市の周りを囲む高速列車の線路。

 

 

「……いつもここは血腥いな……ランスロット、まずは湖をゆっくり迂回していこう、中に入るなよ? 呑み込まれて死んでも文句は言えないからな」

 

「は、はい。わかりました」

 

 

 目の前に広がる広大な大海原……そう言うべきだろう。湖と呼ぶにはあまりに巨大すぎるそれ。底が見えない。そして水底から現れる異形の数々。巨大な魚、鮫やシャチ、鯨等。聞くには脳圧嵐なんてのもあるらしい。

 

 

そんな事を考えながら暫く歩いていると無数の吸盤付き触手が私達を引きずり込む為、水面を割きながら飛びかかってきた。

 

 

「気を付けろ? ランスロット」

 

 私はひらりと交わしランスロットの対処を見守る。

 

「出来るか?」

 

「っ!」

 

 彼は抜剣し───────振る。

 

 

 

 剣に振り回されてはいないが、未だ荒削りだ。

 

 彼が選んだ武器は茶褐色のロングソード。工房は秘密だとさ。まぁ彼の趣味だろう。

 

 

「お前はまだ身体が小さい、剣の重みや重心をしっかりと意識するんだ」

 

 私が教えれるのは基礎と実践だけ、実戦経験は積んでも無駄にはならない……まぁ死ねば無駄だが。

 

 

「はいっ! アルトリアさん!」

 

 ランスロット、剣は両手で構えろと言ったろう。そんな力任せじゃすぐに息が上がるぞ。

 

 

「うっ、くぅ……」

 

 剣先がブレてる。しっかり相手を見て呼吸を合わせろ。

 

 

「ふー……はぁ……はぁ」

 

 

 

 適当に指示しつつ見守っていたらどうやら終わった様だ。

 身体の使い方は悪くない。後は筋力や体幹をつけることが重要かもな……。

 

 

「その触手……食えそうだな?」

 

「えぇ……?た、食べるんですか?……コレ」

 

「嫌か? まぁ……お前は好きにしろ。だが……私の腹は減る。意外と美味しいかもだぞ?」

 

「そ……そうですか……ね」

 

 

 引き気味だが食い物なんて無いからな……ここは。

 現状保存技術を使って美味いものを持ってくるのも手だろうが、高い。金が無いんだ。

 

 

「早速飯の宛が出来た」

 

 

 エクスカリバーを引き抜いて地面に寝かせ刀身の上に切られた触手を置いた。

 

 触手が輝く刀身によって焼かれる音と海産物の焼ける香り。

 中々に良いものだ。

 

「……美味しいんですかね? これ」

 

「さぁな。食えばわかる」

 

 

 私は焼き上がった触手にかぶりつく。

 

 うん。やはり魚介系特有の塩味。中々イケるな。だが粘り気は取るべきだったな。次食う時に塩が確保出来ていれば塩揉みも大事だな……。

 

私の様子を見るランスロットも少し迷った後口に含んだ。

 

 

「ん……!? これは……蛸ですね……? ……まぁまぁ美味しい……?」

 

「あぁ、見つけ次第狩っておこうか……」

 

 

 剣をしまい金串に刺して二人でモグモグしながら歩いた。しばらく歩くと何かの気配を感じた。少し息を殺しながら進んで行くと、無骨な人工物が地面に埋まっているのを見つけた。

 

「これは……ハッチか……」

 

 明らかに誰かの家、ないし住居スペースだろう。

 

開くとかなりの汗の臭いと、少し熱のある湿気を感じた。弱々しい吐息も聞こえる。

 

「入るぞ」

 

「アルトリアさん?! 不法侵入では?!」

 

 ランスロットを無視し声を掛ける

 外郭に不法侵入なんてあったら随分と余裕だろう……

 

「生きてますか? 食糧は大丈夫ですか?」

「ひぃっ!」

 

 

 女は尻餅をつく。私を見た後自分の周りを見回した。

 彼女が着ていたのはボロボロのキャミソールにパンツのみ。

 

 暗い。生活感はあるが……酷い有様だ。酒瓶は転がってベッドは、体液か何かで汚れていた。

 

 

「ふむ……1人だけですか……安心してください。フィクサーです。危害を加えるつもりはありません」

 

 

 フードを外しながら言うが女は未だ怯えた様子だ。

 

「……ランスロット。今から食糧を確保して来る、彼女の保護をしてくれ」

 

「分かりました。もし何かあれば通信機を」

 

「了解」

 

食糧の確保なんて言う体で出てきたが、私の感じた気配は彼女のでは無い。

 

もっと、欲をもった獣では無く下衆の気配。

 

 

「うぉ! すげーペッピンがいるぜ!」

 

「食いどきだなぁありゃあ!」

 

 

 どの場所でも下衆は転がって居るのだな。全く、吐き気がする。

 

 

「────力ずくかかってくるといい。慣れない武器ですまないが……相手になろう」

 

 私は身の丈程の槍を取り出し。下衆共を串刺した。




電話の電子音楽が鳴る。
…………あぁ、そういえばアルトリアは居ないのか。
私はとぼとぼと受話器を取り、決まった文言を言う。
「はい、円卓事務所。エレナだ。ん?あぁ……報酬は?…………契約書は其方か?あぁ、そうか。承った。」
受話器を置いて電話を切る。

「はぁ……面倒だな。ドンキは繭で管理するか……すまないな、良い子にしているんだぞ」

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