[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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親指終止符構成でシャオ倒すの難しいのって私の実力不足だったりするのか…


23話 対価は記憶。報酬は力

 晩鐘は鳴る。

 

 入相で死した彼等に祈りを捧げる為に自らを透かしながら。

 

 

 

 遮るは星の楔。消えることを許さず、我を照らすが故に。

 

 ならばこそ、我は消えるが為に丘にて多大な屍を築き、じきに星を落とすだろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「────私の魂が深淵の底を彷徨うときにも。苦痛はいつもそばに座り私を守ってくれた故どうして苦痛を恨むことができましょう」

 

 声が聞こえる。

 

 優しい子守唄のように耳を撫ぜるのは、あの母の声だ。

 私の髪に櫛を入れながら難しい詩を口ずさんでいた。

 

 

「アンジェリカ……それは、アルトリアには早すぎるんじゃないのか……? こう、もっと……良いのが有るだろ?」

 

「ローラン……こういうのはですね、言葉では無く心で感じるものですよ」

 

「……そうか? ま、まぁ、そうだよな……」

 

「子育てに何が良いか聞いてみるか……」

 

 

 

 

 大きな不幸も、小さな幸せも無く、

 巣の人々と同じようにただ日々を生きていた。

 

 

 

 ある時、家族でとある巣の大きなビーチに行った時のこと。

 

 

 私は1人で巣と裏路地の境目に座って裏路地の方の子供達を見ていた。

 巣の人達よりも楽しそうに笑う姿は羨ましく思えた。

 

 

 

 彼等は私に気付くと、唐突に手を振りながら駆け寄ってくる。

 

 

 きっと寂しそうな私を気遣ってか話し掛けてこようとしたんだろう。

きっと、まだ都市を知らない無垢な子だったのだろう。

 

 

「ダメ! それ以上は来ないで!」

 

 私の警告など聞こえる筈もなく、巣と裏路地を区切る不可視の壁。

 其れを過ぎると彼等は声も上げず、生きたままビーチの砂に変わってしまった。

 

 

 

 周りの人々は其れを見て悲鳴を上げることもなく、 嗤いながら「何時ものことだ」と呟いた。

 

 

 

「あ、あぁ……なんでっ……」

 

 

 怖かった。訳も分からず、人は死ぬのだろうか。

 

 思い知った。無知はああいう風にあっさり死に向かうのだろう。

 

 力が無ければ誰も守れず、知識が無ければ自らが死ぬ。

 

 

「アルトリア〜! っと! 居た、なんだ? 泣いてるのか? そんなに怖かったら迷子になるなよ〜?」

 

 父は先程起こったこと等知らず、私を抱え上げながらあやす様に話しかけてくる。

 私が見たものが一体何なのか、あれは何なのか聞きたかった。怖かった。悲しかった。悔しかった。

 

 だけど言葉が出てこなくて、「おとうさん」と呼ぶだけで精一杯で、疲れ果てた。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 冬の都市。水色の雪のような物が舞う。

 

 身体に張り付いて、黴のように広がり全身を被って、身体を痩けさせる。

 

 意識が遠のく……皆安らかに眠り、今までで1番の静かな都市になった。

 

 誰も嗤う事はせず、誰も怯えることはない。

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 

「っはぁ……はぁ……」

 

 何処だ……ここは……

 

 

 

「おはようございます。アルトリアさん、大丈夫ですか……?随分と魘されてましたね……」

 

 

 透き通る様な少年の声が私を呼ぶ。

 顔を見ると白い髪をオールバックにした男の子、確か……ランスロット。

 

 あぁ……そういえば……外郭に来ていたのだったな……

 

「ん……水を頼む……」

 

「はい、ゆっくりしてて下さい」

 

「あぁ」

 

 ……なんだか、とても長い夢を見た気がする。どんな内容だったのか思い出せないが、ただなんだか胸騒ぎがする……

 

「お待たせしました、アルトリアさん」

 

 ランスロットが白湯を注いで持ってきたようだ。礼を言いながら受け取り一口飲む。

 

「……ふぅ……結局、あれはどうなった?」

 

 依頼を受けてから外に出た覚えは無いが、終わっているのだろうか。

 

「えぇ、アルトリアさんのお陰で全て捌き切りましたよ」

「そうなのか……」

 

 素晴らしいと思う。カヴァス、2人で何とか出来るならこれ以上私が鍛えても意味は無いだろう。

 

 

「……ランスロット、強化なんちゃらは一旦終わりだ。今すぐ戻る」

 

 これ以上ここでのんびりしていたら、良くない気がする。

 本能がそう訴え掛けてくる。

 

 

 

「え? でも……」

 

 ランスロットの言葉を遮るように私は続けた。

 

「……キミはここに残れ、カヴァスと一緒にな。私の所にキミの名が届く迄生き延びてここを守ってみせてくれ。いいね?」

 

 私の言葉にランスロットは戸惑いを隠せない様子で口籠る。

 

 

 不安そうに眉を下げるランスロットを安心させる為に笑いかけるが、ランスロットの表情は変わらなかった。……まぁ、そうだな。

 

 

「……そうだね……ドンキが起きたら共に迎えに来てあげる。

……これは約束では無く契約だ。わかったかい?

じゃぁ、頼むよ。カヴァスも元気でね、ランスロットを鍛えてやってくれ」

 

「ワフ!」

 

「はい……」

 

 

 私は身支度を整え、街の爺さんにランスロットを置いていくと一方的に伝えて外に出た。

 

 

 

「待ちかねたよ、お前さん」

 

「あぁ、すまないね、紫の涙(イオリ)。待たせたようだ」

 

 外に出た瞬間、紫の涙が私を待っていた。予測で此処を突き止めたのだろうか。

 

 時空移動の体質は相変わらずのようだ。

 

「私を迎えに来たのかい?」

 

「そうだ。どうやら一皮剥けたようだね? やっとマトモな奴に会えた気分だ……これから何が起こるか分かってんだろう?」

 

「……えぇ、早く助け無いと、ね」

 

 私は、紫の涙の手を握ると私たちはその場から消えた。





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