……黒い沈黙が中指を半壊させたという記事が、都市の新聞を飾っていた。
「……」
私は事務所のデスクで頭を抱えていた。
裏路地を牛耳る五本指のうちの一本。
其れが恐らく私の親族であろう黒い沈黙に潰された。
困惑だ……母は死んだ、となれば黒い沈黙を騙るのは父しか居ない。
中指に怨恨向けたのは謎だが、報復による返り討ちが多分正解なんだろう……。
父と会いたいが……父は私など覚えて居ないだろう。
……止めようにも難しい。
どうしようかと長考していると、電話のベルが鳴る。
「もしもし、円卓事務所」
『あ、アルトリアさん!』
急に耳元で顔を顰める程の音量
で大声が聞こえ一瞬受話器を取り落としそうになる。
「……フィリップか……? 私の事を覚えてるのか……?」
『はい、夜明事務所のフィリップです。お久しぶりですね、その節はお世話になりました』
「ああ、こちらこそ世話をかけた……いや、そんな事どうだって良かったな」
彼は私の事を憶えているらしい。
『はい、巣のエンバーマーが発生した後、皆がアルトリアさんを忘れてしまったんです! でも僕だけは憶えてて、何が何だか……アルトリアさんがちゃんと生きててほっとしました……』
受話器の奥からフィリップの安堵の声が聞こえた。
エンバーマーの名前を聞き、憎悪と怒りが込み上げてくる。
……だが、それを表には出さず、抑えつけて話を続ける。
「……あぁ、そうか、私は……問題ない。ありがとう、私を覚えて居てくれて……また何かあれば連絡してくれ」
「はい……また遊びに行きますね。それでは失礼します」
電話が切られた。
…………私を憶えている人はまだいるらしい。憶えている者と憶えてい無い者の差が気になる。『自分の心』と言っても鞘が無ければ自然に消えるだけの約立たず。
何が作用して私を憶えているのだろうか。
「ぅー……」
ベビーベットで寝ていたローズが目を覚まし、不快そうな声を上げていた。
纏まらず散らかった考察を切り上げ、ローズの元に寄る。
「ん? どうした?」
「……ぅっ、ぅっ〜……」
如何にも泣き出しそうという感じなので、抱き上げ、軽く揺すり、宥める。
そうするとすぐ機嫌を取り戻して笑い始めたのでほっと息を吐く。
泣かれてもエレナとドンキは出払って居るから別に幾ら泣いても良いが、それはそれとして泣かれた時は心臓に悪い。
「よしよし、ミルク作るからね、待っててよ」
哺乳ビンに粉ミルクを入れ、沸かした湯を入れて粉を溶かし、人肌まで冷まして、温度に気を付けながらゆっくりミルクをあげる。
まだ首の座ってない小さな身体。少しでも力を入れてしまえば壊れてしまいそうで、私の護るべき命。
動ける様になったら何をしようか。立てるようになったら何をして遊ぼうか? この様な無垢なる存在が健やかな生を過ごせるまで護るのが私の使命だ
もっと、もっと、強くならなければ……。
「ん、ゲップしような……」
ローズの口を背中を優しく擦るとけぷっという音がした。
お乳も飲んだしお腹いっぱいになったようだね……と私は呟く。
再び電話のベルが鳴る。
「はい、円卓事務所 アルトリアです」
言い慣れた台詞を言い、電話に出ては、片手に妹。片手ペンを持ち、契約書を書き始める。
「えぇ、問題ありません、私達にお任せ下さい」
我が円卓事務所では主に戦闘、護衛を主要として、それぞれの特性に合ったフィクサーを割り当てる。
と言っても私とエレナとランスロット位しか居ないが、ランスロットは外郭に置いていった為基本的に私かエレナが担当し、依頼をこなす少数精鋭の事務所だ。
「はい、かしこまりました。また明日、お伺い致します」
正直言うともう少し人手が欲しい。妹の世話で精一杯で手が回らない。けど3人分の食費も養わなければ生きては行けないので断る事は無い。
「それでは、失礼致します」
そっと受話器を置いて、サラサラと契約書を書き上げる。
今回は護衛の様だ。契約事務所は彼処の方に専属が居るらしい。
ある程度適当に書いて、向こうで調整させればまぁ良いだろう。
……4級程度の事務所なのにそんな偉い所が私とエレナを名指しで指名とは……何か訳ありかもしれない。
「はぁ……ローズ。ちょっと忙しくなりそうだ……」
まだ言葉も分からぬ妹に、愚痴りながら、ベビーベットに寝かせた。
流石に凄い間延びしそうだから護衛はカットしても良いと思ってしまう
if、若しくは補填が必要か
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必要
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不必要