カタカタと、やかんが揺れ、湯が沸騰する音が聞こえる。
「んぅ……」
瞼を擦りながらソファから起き上がり、掛けられていたブランケットを畳む。身体の様子を見ると、傷は無くなっており、痛みも消えていた。
「ふぅ……」
「おや、お目覚めかい?」
声の方向へ振り向くと、そこには
「はい、匿って頂きありがとうございます」
「全く、世話が焼けるよ……クソガキが……しかし、お前のお陰で流れが変わったからね……礼を言っといてやるさ……」
「…………」
しっかりと悪態をつきつつ、ちゃんと匿ってくれるのは有難い。親も死んで裏路地の捨て子になる所だったから助かった。
「しかし、アンタのその時計、何処で手に入れたんだい?アンタが此処に居ること自体珍しい事だが……」
そう言われ、銀の懐中時計を取り出し、じっくりと眺める。
「あぁ、親が誕生日に繕ってくれた物だ」
「……お前がこうして来てるのも、彼奴らの技術なんだがね……その代物は何処で?」
「……本人に聞こうにもピアノの1部にされましたから……」
「そうか……」
「…………」
「…………」
しばしの静寂の後、私が先に口を開く。
「あ〜、じゃぁ……イオリ叔母さん、ありがとうございました……」
逃げるようにソファから立ち上がって出口へ向かおうと歩き出した瞬間、イオリ叔母さんに手を掴まれる。
「待ちな……いつか言った事、覚えてるか?」
「あ〜……」
「この世にタダはねぇって話さ……」
やだな……もう何も持ってないのに何を求めるというのだ……。
「……こんなか弱い小娘が貴女様に御礼が出来るのならば……」
「言ったね?」
正直嫌な予感しかない。幾ら息子を助けるとは言え、バタフライ・エフェクトが起きかねないだろうに。
「アンタが居る時点でもうめちゃくちゃだよ」
「……心を読まないでくれ……」
そう言うとイオリ叔母さんはニヤリと笑う。
あぁ、本当にこの人は……
まぁ、仕方ない。やれるだけやるさ……
そう心の中で呟きつつ、私はイオリ叔母さんに向き直った。
「さて……じゃぁ、イオリ叔母さん、何すればいいんですかね?」
「そうだねぇ……」
イオリ叔母さんは顎に手を当て考える素振をしつつ、口元には笑みを浮かべていた。
「1級フィクサーを名乗れる位までは身体が馴染むまで鍛え直してやろう、なぁに『緑の閃光』様なら楽勝さね?」
「……お手柔らかに頼む……」
「あぁ、ローランやアンジェリカに泣きついても無駄だからね、分かったかい?」
「……あぁ」
父さん、母さん、私は間違えたかもしれません……。
◇◇◇
それからというもの、夜の裏路地に連れて行かれては、掃除屋耐久をし、休めると思いきや、外郭に放り出されては、サバイバルを強要された。
…………済まない掃除屋の皆。わたしは逆らえなかった………
topic 紫の涙
フィクサーの中でも突出して強く特徴のある者は1級の更に上、最上級の『特色』が付与される。
彼女は複数の特色フィクサーを生みだし、都市に貢献している。
また、彼女の持つ異能か、先の事を知っている様な話し方をする。
if、若しくは補填が必要か
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必要
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不必要