[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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お久しぶりです。少しの休息と、シナリオを見てました。




30 夢の帳

「……アルトリアさん、起きて下さい」

 

 

 

「ん……ベディヴィエールか……」

 

 

 

 目を開けると、漆黒の髪を持った隻腕の青年が私を起こそうと揺らす。

 ふわふわとした現実感の中、ベッドからのっそりと起き上がり、目を擦る。

 

「相変わらずの寝起きですね」

 

 寝癖で跳ねに跳ねまくった髪をベディの片手で梳かれる。

 

「……ん、おはよう」

 

「おはようございます」

 

 

 

「ふぁ〜っ……」

 

 大きく欠伸し、ベッドから降りる。

 

「今日の予定は……」

 

 私が欠伸をしている最中、ベディが今日の予定を読み上げてくれる。

 

 ベディは円卓事務所が設立して以降、私と行動している。

 

 私の身の回りの世話をしたり、依頼を持ってくるのが仕事だ。

 

「はぁ、お偉い方と会合するのか……あれらは回りくどくて面倒だ……うん。ガウェインに丸投げしよう、それがいい」

 

「残念ながら、今回は貴女が名指しで指名されています。代役は難しいかと……」

 

「……大きくなってしまったばっかりの弊害か。直ぐにカタをつけよう……」

 

「その後に立食パーティーも御座います。リウ協会のロウェル、シャオ夫妻もご出席なされるとか」

 

「ん……そうか、それは行かねばな……クリーニングに出してあるパーティードレスを出しておいてくれ……」

 

「はい、承知致しました」

 

 私がベッドから下りると、ベディは着替えの服を持って私の後ろに控える。

 

「でもまぁ、まずは始末書かな……トリスタンとイゾルデの痴話喧嘩には困ったものだ……店を荒すなんて……弁償代は彼等から引いておくか……」

 

「はは……全くです……そういえばガウェイン、ガラハッド、パーシヴァルが新たな遺跡を攻略してきたそうです」

 

「ん、そうか、あのトリオは優秀だな……仕事始めるか……」

 

「その前に顔を洗った方が良いと思いますがね」

 

「ん……」

 

 とぼとぼと寝室を出てフラフラと歩くが、ペディに其方ではありませんと、首元を持たれ、猫のように洗面所まで運ばれた。

 

「そろそろ目を覚ます時間です……何時まで夢を見てらっしゃるのですか?」

 

 ベディらしくない少しトゲのある言い方に、私は寝ぼけた声で返す。

 

「ん……もうちょっと……」

 

「……少しくらい自分のことを大切にしてください……貴女は私達の希望なのですから、さ……起きて下さい」

 

「ん……」

 

 私は冷水を顔に浴びせて、やっと目を覚ます。

 視界が白黒になり、まるで幽体離脱したかのように自身の身体が透けて見えた。

 

「……ベディヴィエール」

 

「はい。私は、此処にいます」

 

 私が手を伸ばすと、直ぐにベディヴィエールは優しくその手を包み込み引き寄せられる。

 

「済まない……済まなかった……ベディ……」

 

 彼に抱き着き、細々とした声でベディヴィエールに謝る。

 そっと背中を撫でられ、落ち着く様に促される。

 

「はい、そのジャケットは大切になさって下さい……」

 

 そこで途切れ、私はベットの上で目を覚ました。

 

 

 

「……らしくない夢を見た……」

 

 ベットから降りて、部屋にある姿見に自身を写す。

 

 そこにはげっそりと痩せこけた私が写っていた。

 

「本当に……らしくない……」

 

 自分を大切にしてくださいか……。

 

 それは……無理そうだ……

 

「ローズの世話の準備をしなきゃな……」

 

 妹のことを思い出し、顔を洗って支度を始めた。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「アルトリア殿! エレナ殿! 図書館なるものが都市伝説に指定されたようでござる!」

 

 何時も元気なドンキホーテの声が事務所に響く。

 

「……そんなもの、何処にでもあるだろう……」

 

 少し呆れ声のエレナはローズを愛でながら答える。

 

「図書館か……また珍しいものが都市脅威として認定された様だね……」

 

 そんな事を言いつつ、そうなるだろうとは思っていた。何せあの紫の涙も確認しに来たぐらいだ。粗悪な義体施術をしていた彼らも、図書館の招待状と言ってよく分からない技術で消えたし、遅かれ早かれ都市脅威には指定されていたはずだ。

 

「い、いやいや、それがそれだけではござらぬよ! なんとL社跡地に建った巨大な塔が図書館だと……!!」

 

「……L社か……」

 

 あまり縁起の良くない場所に建ったものだな。あの塔は。

 

「L社? そんな企業があったのか?」

 

 どうやらエレナは知らなかったようだな……

 

「光の柱。知らないか?」

 

「ん〜……あぁ、あの白夜とかいう事象か?」

 

「はい! あの光のを出してから急に倒産したL社! あそこが図書館になったという噂が! それにどれだけ図書館へ向かって歩こうにも、霧に阻まれて辿り着けぬと!」

 

 ドンキホーテは興奮した様子で語る。

 

「……らしいぞ? アルトリア」

 

 ローズを抱えながらエレナは私に話を振った。

 

「ん……しばらく様子を見よう。恐らくこれから大きな渦になる……今のうちに備えておいた方が得策だろう」

 

「そうか……お前がそう言うのならそうなのだろうな……」

 

 エレナはそれ以上は何も聞かなかった。

 

「そろそろ人員も増やした方がいいか……? 悩ましいな……翼や事務所の差し金が来ても厄介だ……な〜ローズ」

 

「う〜」

 

 私はローズの元まで行き、頬で遊ぶと、彼女は楽しそうに声をあげた。

 

「むむ、難しいのですな……私も一緒に案を考え致します!」

 

「あぁ、ありがとうな、ドンキ」

 

 近付いてきたドンキの頭をポンポンと軽く叩く。

 

 今日の昼は出前でも頼んで過ごそうか。ふと机に散らばった新聞を見ると見出しには『湖のフィクサーまたも活躍か』と書かれていた。

 

「湖、か……」

 

 少し頬が緩んだ。

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