1本の電話が掛かった。
アルトリアは受話器を手に取り耳に当てる。
「円卓事務所、アルトリアだ」
『はい、お久しぶりです。アルトリアさん。夜明事務所のフィリップです』
受話器の向こうから聞こえてくる男の声。
その声の主は円卓事務所の新しい仲間、フィリップだった。
「どうした、何かあったか?」
『いえ、その……実はですね……』
アルトリアが聞くと、彼は少し言いづらそうに口を開く。
そして告げられた内容に──
「……そうか、行くのか、図書館に」
『すぐではありません、都市脅威度が上がれば行きます。それでなんですが、兄弟事務所の楔事務所が都市悪夢級の仕事の合同要請に応じれず、代わりに信頼出来る円卓事務所に頼れないかな……と』
「……そうか、良いだろう。先に顔合わせだけする。此方の事務所に呼んでくれ」
彼女は二つ返事でフィリップの依頼を聞き入れた。
信頼出来るとまで言われてしまえば、断る理由も無いらしい。
『承知しました。アルトリアさん、助かります』
「いや、大丈夫だ。助け合いも必要だからな」
『はい、ありがとうございます! それではまた後日、伺う時に連絡を入れます』
「わかった、待っている」
そう言って彼は電話を切った。アルトリアも受話器をそっと置き、机を2回、コンコンと指先で鳴らす……が特に何も起きなかった。
彼女は懐かしむ様な困った様な表情で少しため息をついた後、引き出しから契約書を取り出し、スラスラと書き始めた。
「誰からだ?」
ロンズデールを抱っこしてあやしているエレナが聞いてくる。
アルトリアは先程あった事を説明した。
「ん、仕事か。夜ならば私も行こう」
「あぁ、助かる。何人来るかわからんが、もてなす為の準備をせねばな……ドンキ! 買い出しに行くぞ」
契約書を書き終わったアルトリアはドンキホーテを呼びつけ、共に事務所から出ていった。
事務所に残ったのはエレナと、小さなロンズデールだけだった。
部屋に秒針を刻む時計の音と、外から聞こえる鳥の囀りだけが静かに響いていた。
ローズ残が水晶の様なまん丸な瞳がじっとエレナを見つめる。
「…………」
「……」
見つめ合う二人。
エレナは何となく自分の血を操って見せてみた。
鳥やら蝶やら、見覚えのある動物を手のひらで器用に象ると、ローズは不思議な物をみる様な目で凝視していた。
「フフッ」
その様子が可笑しくて、つい笑ってしまう。
「いいか? これが鳥だ」
どうせ喋れないだろうが、なんとなく動く様に鳥を宙に浮かべてみせてみる。
ローズは目を輝かせて私の指先を見ていた。
ちなみにロンズデールも興味津々の様子で見つめている。
私は次に蝶を数匹出してみる事にした。
指を細かく動かすとそれに合わせて蝶々が動くので、ローズはそれをじっと見つめている。
(……可愛いな)
そんな様子を見ていたらついつい頬が緩んでしまうのだった。
あんなに人を沢山殺しておきながら、なぜこんな母性という物が未だにある
のだろうかと自分でも不思議に思う。
一時は人と血鬼の差に葛藤があった……血の渇望、吸血衝動、止まれなかった。文字通り私の手は人の血に染まり、沢山の死体を操って人を殺した。だが今は……アルトリアに拾われてからだろうか、不思議な事に人を喰いたいという衝動は起きない。
昔は何も感じていなかったが、今は食べるのも飲むのも楽しいと感じる。
吸血衝動は彼女の血を飲むと何故か力が湧く。数週間は血も要らない位、余裕が出る。人として人間として居られる……そんな気がした。
そんな事を考えながら、ローズが寝た後、私は少し昼寝をした。
◇◆◇
「ただいま、エレナ、ローズ」
「ただいま戻りましたー!」
私達が買い物を済ませて事務所に戻ると返事は無く、電気も点いていなかった。
買い物袋を置いて部屋を探索すると、二人はソファで仲良く眠っていた。
「……」
(……まぁ、別に良いか)
もう日は暮れているが。
机に少し大きめの木箱をそっと置き、冷蔵庫に買ってきた物をしまっていく。
「ドンキ、夕飯を作ろう、下ごしらえを手伝っておくれ」
「承知いたした……しかし、何を作るんですか?」
「ふむ……串とかどうだろうか……?」
「それでは肉を捌かねばならぬな……!」
「あぁ、此方はタレを用意しておこう」
私達は静かに、しかし騒がしめに手際よく串の準備を始めた。
次は唐突に殺陣から
if、若しくは補填が必要か
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必要
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不必要