[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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微細に超振動し残響を残す鎌VS折れない太陽と謳われる熱を持った剣

ファイっ!


32話 赤子を抱えた謎のフィクサー

 人気の無い道を子供と其れを抱えたフードの人物が歩く。

 

 歯車の教団と言う組織が目立つ事をしているなんて風の噂で聞いた。

 

 エレナに少しはローズを外に出させろと、ローズを抱っこさせられ、事務所を追い出された。

 

「散歩程度に見にきたが……何も無いな……」

 

 ローズを抱っこしたまま歯車の教団の奥に入っていく。

 

 

 

 そこまで潜入という程隠れず、怪しまれずに来た。組織としてはかなりザルというか、人が居ない。

 

 祭壇の様な場所まで来たが、複数の人の息遣いに気付き、カルンウェナンで床に突き刺し、文字通り影に隠れる。

 

 中央には機械仕掛けの椅子。その隣にエイリーンと名乗る金髪でベール越しからも分かる美しい女性が教祖だろうか、周りには何人も信者らしき者が座っている。

 

 聞き耳を立てると、どうやら新しい信者を説いているらしい。

 

 

 

「さぁ、此方へあなたに人生の意味を与えますよ」

 

「この椅子に座れば良いんですか?」

 

「はい、楽に座ってください。この椅子は、あなたがどのような歯車か教えてくれるのです」

 

 新しい信者に何やらヘッドギアをつけられ困惑してる様だ。

 

「あら、あなたは『考えの歯車』ですね」

 

「『考えの歯車』ですか?」

 

 聞いて行くと歯車には相性があり、肉の歯車には考えの歯車が必須だとか。

 彼女の頭に刺さっているのも父が歯車になった物らしい。

 

 

 

 ……恐らく次は……

 

「ま……まさか私が文字通り歯車になるんですか……?」

 

「痛みはほんの一瞬です。無垢な充実感が伴いますから。

 みなさん 今日はとても希少で貴重な『考えの歯車』の方が新しくいらっしゃいました」

 

「ま……待って! こんなのだって知らなかったんです!」

 

 周りにいた信者達が椅子を囲む様に立ち上がる。

 

「歯車が回るよう」

 

「人生は廻る」

 

 エイレーンが説き、信者が続く。

 

 

 椅子に座った信者は歯車に替えられてしまった。

 聞くに堪えない音から守る為、ローズの耳を塞ぐ。

 

 エイレーンは恍惚とした表情を浮かべ綺麗に仕上がったらしい歯車を自分の頭に差し込んだ。

 

 

 

 その時殺気を感じ取った。

 

 反対の奥の影に3人のフィクサー。

 乾いた発砲音が響き、次々に信者達を撃ち殺している。

 

 

 流石にローズが泣くって……! 

 

 なかなか教祖に当たらないのか、銃撃は止まらない。

 

 

 

 影の中に居るからまだマシだが、外に出た途端ギャン泣きする……。

 

 少しローズを宥めながら外の様子を窺っていると、フィクサー3人による一方的な虐殺に異分子が現れる。

 

 甲高い震える様な金属音が木霊する。

 馴染みのあるあのゾッとする鎌の残響だ。

 

 "アレ"を察知したフィクサー達は逃走を始めた。

 

 ◇◇◇

 

 来た道を戻る。唯ひたすら走る。

 

「何がどうなってんだよ? 青い残響がどうしてここに居るんだよ?」

 

 ステファンが悪態をつき始める。

 

「オレも知らないって、クソッ。見た感じ俺たちの事殺しに来るだろうな」

 

「この仕事が失敗すればカネを稼ぐどころか弾丸代で全部パーだぞ!」

 

 分かってる! 肆協会のユジン部長の頼みだから奮発したが……

 

「さっき見ただろ。青い残響が弾丸弾いてたの」

 

「俺たちがどうにか出来る相手じゃない。このまま逃げて命だけでも守らないと」

 

 必死で逃げる。追い付かれたら死。

 

 銃を捨てても破産だ。

 

「そろそろ入口だ」

 

 タマキが息を切らして言う。顔を上げる。白い髪。青い外套を纏った男。

 

「やぁ、みんな。一体誰がこんな可愛らしい依頼をしたんだろうね?」

 

 でかい鎌をもった青い残響が悠々と立っていた。

 

「クソッ、左に走れ!」

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 ステファンも息を切らしてきた……

 

 流石に……

 

「あ〜ぁ、こんな遅いんじゃ使い物にならなくないか? どこからかお前を助けてくれる救いの手でも差し述べられてくれないかなぁ……?」

 

 随分と余裕をかましてるな……

 

「クソッ! 銃を捨てるべきか……」

 

「正気か? いくらしたと思ってんだ!」

 

「捨てるのは絶対に無理」

 

「いつまでも隠れてるわけにはいかない」

 

 どうするべきか……活路は何処かに……

 

「リーウェイ、これ……」

 

 タマキが渡してきたのは黒い高級感のある招待状。

 

「それって確か……」

 

 ステファンが何かを言おうとしたその時、青い残響が歩みを止めた。

 

「ふっ!」

 

 閃光が目の前を覆った。

 

 金属音が響く、熱が振動によって膨張し、突然の熱波が俺らを襲う。

 

 

「なんだっ!」

「ぐっ」

「あっつ!」

 

 目を開けると顔まで覆った黒い外套。金や蛍光緑ラインがハッキリとしない輪郭を鮮明に彩っていた。その人物は太陽の様に黄金に輝く武器を持ち、片手に赤子を抱えていた。

 

「偶然通っただけだが、義によって助太刀する」

「お前は誰だ?」

 

 ステファンが叫ぶ。

 

「お〜……驚いたよ、本当に助けが来たとは……どうやって隠れてたのかな〜?」

 

「…私は…灰色だ」

 

 青い残響を全スルーしてその人物は名乗った。

 

 ……灰色。

 

 唐突に現れた人物は『灰色』と名乗ったと共に、片手で剣を振った。

 

「お? おっと……とと……? おかしいな……」

 

「早く逃げるなりなんなりしてくれ、帰ってくれた方が楽だ!」

 

「はぁ……少し遊んで帰ろうと思ったけど……その武器の振り方。誰に学んだんだい?」

 

 お前に語る事は無い。と言い切る様に剣を向けていた。

 

「あぁ、そうそう、君達の依頼。どこの誰が任せたのか、教えてよっ!」

 

 言い終わるや否や、青い残響に剣が振られる。

 鎌で受け止めた瞬間に先程同じ様な熱波が髪を少し焦がす。

 

「あつっ!」

「このままじゃみんな丸焦げだ! 早くしろリーウェイ!」

 

「ペン持ってるか?」

「ほらこれで良いだろ、早く、銃が暑いっ」

 

 急いで皆が署名した、その時。

景色が変わった。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

「行ったか……」

 

 フィクサー達が消えた。招待状を受け取り図書館へ向かったのだろう。

 

「行ったねぇ……これからが本番かな? プルート、ダメだよ」

 

「……」

 

 頭蓋骨頭の男が援護しに来たか……

 

「聞きたいことは山ほどあるけど……その構え、師匠のだ……。なかなか面白いね、写鏡みたいだ」

 

 時間を稼がれる前に退散だ……

 

「……さようなら、叔父様。また何処かで」

 

「プルート」

 

「えぇ」

 

 私が速いか、相手が速いか。

 

 カルンウェナンを自分の影に突き立てて、沈み込ように退散した。

 

 

 

<図書館>

 

「青い残響、灰の陽光……」

 

「赤い霧と似た名前ね」

 

「あぁ、全員『ハナ協会』から色を授かったフィクサーだな、1級フィクサーよりも実力は上だ」

 

「そんなフィクサー達がもう現れるなんて不思議ね」

 

「灰の陽光は最近ぽっと出でよく分からんが、イカレ具合で青い残響の右に出る者は居ないな」

 

「結構有名なのね」

 

「有名だな。頭のネジは外れてるけど実力は確かなんだ。赤子を連れてくる辺り、灰の陽光もだいぶイカレてるかもな?」

 

 アンジェラとそんな事を話ながら接待の準備を進める。

 

 ……灰の陽光……あの武器の振り方。立ち姿。どうにもアンジェリカがチラついてならない。

 

 溜息をつきながら、心の上から仮面で押さえつけた。

 

 




結果。
熱が振動によって増幅拡散。

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