[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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本当にすいません。

色々と私事があったので……


34話 8時のサーカス

 手元の懐中時計を眺めつつ、楔事務所の面々を待つ。

 

 灰色としての顔は(ハナ協会以外には)割れてない様なので、母の形見。預かっていた仕事服を着た。

 セーターもちょうどいいフィット感だ。少し胸のあたりはキツめだろうか……。

 

 

「ローズ、調子は大丈夫そうかな?」

 

 まぁまだ赤子だから喃語レベルの言葉しか発さないし、理解も出来ないだろうが……だが赤子特有の活力に満ちた目で私を見ると「あーうー」と喋って、アピールしてくる辺り非常に愛らしい。

 

ここには父親代わりも居ないから将来が大変そうだ、なんて思ってしまう。

 

 

父親……ね……父は何をしているのだろうか。飲んだくれて居てくれれば安心だが新聞での様子じゃ、復讐鬼として戦いに明け暮れていそうだ。ぶん殴ってでも止めたい。無垢な人も巻き込んでいるだろうから。

 

 

 しかし居場所も分からぬ、行方も分からぬ相手に、どうやってぶん殴ってでも止めるというのだろうか。

 

 

「……はぁ」

 

 ため息も出るだろう。憧れ、強くあった父親が発狂の末暴走するなんて……まぁ中指の半壊については慈善として見てもいいのか……?

 

 

「大丈夫だよ、ローズ」

 

 彼女を抱えて語りかける。彼女には何が分かったのだろうか。笑って私の頬を撫でると大人しく寝てしまった。

 

 

 ……私は正義の味方ではないし、全ての人が平等幸福に生きる世界を作る理想主義者でもない。

 

 

「出来るだけ、救ってみせるよ」

 

 その為に、手段を選ばない。どれだけ邪悪になろう。愛する家族や、無垢なる人々の為なら……

 

 

 

 ドアベルが来客を知らせる。私はローズをゆっくりと寝かせ、迎えに玄関に向かう。

 

 

「済まない、またせたな。漸く根城を見つけた。早めに行かないとまた見失う」

 

 お洒落なハット、片目に眼帯を付け、身の丈程の槍を持った年長者の男。その後ろには同じように槍を携えた金髪と銀髪の少女等がいた。

 

 

 前に契約を結んだ楔事務所の3人、オスカー、パメリ、パメラだ。

 

 

「いや、問題無い。此方も漸く調整が済んだ処だ」

 

 私はいつかに買ったガントレットや、エレナへの装備を調整し終え、テスト動作を終えた所だ。

 

 

「……本当にこれを使って良いのか?」

 

 丁度よくエレナも来た。

腕に着けているのは溶血式噴煙機。彼女の特性、血鬼に合わせ、自らの血液を煙に含ませ体内に摂取させる。

 

 元々彼女の為に作った物なのに使わずにしまってあるのは勿体ない。最終調整も済ませたので出来れば使って欲しい物ではある。

 

「あぁ、好きに使ってくれ、……エレナ」

「そうか……フフフ……」

 

 私が笑うとエレナも帽子で目元を隠して笑う。その笑みはかつて、生き抜いていた時の本能が剥き出しになったような表情だ。

 

「その顔は辞めておけ……イメージが悪くなる」

 

 エレナはハッとし、帽子をもっと深く被って、顔を隠した。

 

「わ、忘れてくれ……」

 

 

 ……中々珍しいモノを見た気がするが、本人の矜に傷がつくだけだろう。私は無言で頷くだけにする。

 

「そろそろ、行こうか……ドンキ! ローズを頼むよ」

「はい! 事務所もロンズデール殿も私にお任せあれ!」

 

 ドンキホーテは走って来ては、敬礼する。

 

「よし、オスカーさん」

「あぁ、行くぞ」

 

 少しだけ緩んだ空気を引き締め、ねじれ『8時のサーカス』の根城へと歩を進める。

 

 

 

 

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━━━━━

 

 

 

 

「おやぁおやぁ? 可笑しいですねぇ? 誰ですかこんなに煙を焚いたのは……」

 サーカステントの中は煙塗れ。きっと人魚さんがお遊びで出したのだろう。

「ダメですよぉ、勝手に遊ぶなんて……これはお仕置きですねぇ〜?」

 

 

 煙の発生源に向かうと何時もの光源がふたつ……

「ん? ふたっ━━━━」

 

 

 グシャリと肉を潰すような音と共に顔面に鈍痛が走り、勢いよく体が投げ出される。

 

「うっ、グゥ……?」

 

 顔があつい……鑢に掛けられたようにとても熱い!

ふらつきながら立ち上がり、煙の方を見ると、5人の影が煙から出てきた。

 

 

 その先頭の女がガントレットから光を漏らし煙やら噴き出しながら一歩、また一歩と近付いてくる。その度に炎が、熱源が近付いて来るような錯覚に陥る。都市の人間とは違う明らかに異質な雰囲気の人間。人間なのか……?それはどうでもいいか。是非ともウチに加えたい。

 

 

「お、おやおやぁ、これは力自慢の大会ですかぁ? 急に殴るなんてお母さん(・・・・)に道徳は習ったのでしょう〜か? お父さんも叱咤してくれなかったのですねぇ〜? 私の所にいるゴリラより猛獣だぁ……はははは!!」

 

それを言った途端威圧感がより増す。感じるのは圧倒的な怒り。

そう、その人間性が弱みなんですねぇ〜

 同じように後退りながら、ゴリラやその他諸々を呼び出した。

 

 

「……エレナ」

「嗚呼、わかった」

 

 煙が急に赤く染まり、意思を持ったかのように動き出す。

 駆け付けた仲間たちがそれらに包まれ絶叫する。

 

ふむ。あの霧には気を付けなければならない。ライオンや象も瞬殺されてしまうのがわかった。

 

「刃さん! 切って下さい!」

 

 まずは後ろを狙う。前に出てきたコイツらよりも弱い筈だ。それからこれらを……殺す。

 

 

 

「フッ……」

 

 バキッと金属に鋭い何かが刺さった音。その後追撃する様にグサグサと突き刺さる。

 

 

「考え方がそもそも悪役らしい。これ以上の切り札は無い、アルトリア」

「頼もしいですね」

 

 奇襲を狙ったはずの刃さんも反撃され、再起不能迄に。

 

 

「これは……なかなか……さぞかし期待に溢れた人なのでしょーね! クソ喰らえ!建て直しますよぉ!」

「逃がさない」

 

 

 私が逃げようとした瞬間。小さなナイフが地面突き刺さる。何故そんな所に飛んだのか。この土壇場での失敗だと思い必死に逃げることを優先し━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……、お疲れ様です、オスカーさん」

何とか動きを留め、このピエロを張り倒すことが出来た。拮抗すると思ったが本体が弱いせいか、そんなにも苦しくはなかったな……

 

 

「……これ、俺らは要らなかったんじゃないか?」

「いえ、彼らの行動から割り出した物や奇襲の対応は助かりました。結果的にも怪我はありませんが我々の落ち度です」

 

 謝りながら、一旦ピエロ男を拘束した。

 

 

「ねぇ、その気持ち悪いの殺さないの?」

「……外に3人。人間が居ます。恐らく依頼がバッティングしたフィクサーですが……これが目的なんだと思います。エレナが援護に行ったので大丈夫でしょう。」

 

 

 血の着いたガントレットを拭きつつ、地面に刺さったままのカルンウェナンを仕舞う。

 

「危険人物の可能性もある。中の調査は頼みました。」

 

 血煙の塊が停滞していた。

 その中から鮮血を浴びたエレナが不機嫌な顔で出てきた

 

「アルトリア、どうにもコイツらの血は不味いな……」

「そうか……エレナ、バッティングしたフィクサーが━━━━━」

「うーん? その小手、その煙はもしかして木の葉工房だったりしますか? カタログにはそんなモノはなかった気が……」

 

 どうやら私の隣でジロジロとガントレットを眺める人がそのうちの1人だろう。

 

「エズラ、仕事の邪魔をしては駄目だろう」

「はい! 先生」

 

 気だるげそうな女性が後ろからのんびりとやってくる。私の隣に居た子もぴょこぴょこと彼女の隣に戻って行った。

 

「私はモーゼス事務所のモーゼスだ……」

「円卓事務所のアルトリアとエレナだ。後ろには楔事務所の面々が居る」

 

 お互いに何となくの挨拶を交わす。

 私をじっと見て、次にエレナをぼんやりと見つめる。

 おもむろに煙管に火を付け、煙を反対方向に吹く。

 

 暫くの沈黙。

 長考。

 …………

 

 

「……ここの団長を知ってるか?」

 

 やっとこさ口を開く。

 

「そいつなら中で伸びてるよ」

「では、8時のサーカスの団長はもう確保済みなのですね」

 

 モーゼスと名乗る人物の更に後ろから可愛らしい女の子もでてきた。

 

 

 仕事のバッティングはどうも慣れない。相手が何をしたいかなども読み取りながらしなければ行けないのだから。

 エレナは空気を読んですすすとこちらの隣にやって来た。

 

 

 

「アイツの事は楔事務所と話を付けてくれると助かるよ、モーゼスさん」

「なるほどな……ではそうしよう。まぁそれはそれはして個人的に話したい……その間エズラの相手をしてやってくれ」

 

 そう言ってテントの奥へと二人は入っていった。

 キラキラと目を輝かせたエズラと目線を合う。

 

「その武器なんなんですか?」

 

 少しだけため息をつき、私の持つ工房武器や、エレナの持っている道具などの話に花を咲かせた。




あといつの間にか色がついてて嬉しかです!
頑張ります!(っ ‘ᾥ’ c)クワッ

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