[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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37話 円卓 集結

 取ってきた財布や諸々を腕輪にしまい込み、フラフラとローズを抱えて放浪していた。まぁ放浪と言うより散歩に近いだろうが。

 

 

「息災かい?」

 

 

蛇の様にじっとりとした視線、嘲笑うかのような声。

 

 突然現れた紫の涙(イオリ)。恐らく事の顛末を全て知っていて私に接触してきた。

 

 本当に息子の為ならなんでもする。

 人の死にざまをヘラヘラとしながら眺める

性格の悪い老害……は流石に言い過ぎか……。

 

 

「イオリ叔母さん……相変わらずだ。

事務所を襲ったシ協会のは貴女だろう?」

「さぁね、なんの事だ?」

 

 

恰も知らない風に。けれど何でも知ってる体でいる。

そんな如何にもな風体で人を煽る。

 

 

「じゃあ叔父様か……全く……子供も居るのに……ここに来たってことは私の頼み事はもう折込済みかな?」

「……目はあの兄弟のように綺麗なのに目つきは腹黒小僧まんまだね……。あのガキは狼と別れを告げてる所だ。血鬼は……私の後ろにいる様だ」

 

ぉぉぉぉおおおおおおお!? まさか! まさかァ?! 紫の涙殿ではぁ?!!

 

 

 この特有のやかましい高音域はドンキホーテだ。

 思ったよりも早く合流出来てしまったか。

 

 

「ローズの匂いを辿ってきたらまさかこれが居るとは……」

 

 

 溜息が一つ。やって来たエレナから漏れるのは落胆。

 

 

サインを! サインを!

 

 

 ドンキホーテは目を輝かせ、紫の涙にずんずんと近づいてくる。

 それに引き気味の顔で応じる紫の涙。

 鞄に書いてもらったらしい。

 

 

「おおぉぉぉ! 一生大事に致しまする!!」

「……はあ、まったく……」

 

 

 勝手に盛り上がられてドン引きしている紫の涙と、恍惚としているドンキホーテ。

 

 

「話を戻しましょう。ランスロットの諸々の許可書は書いてはあるんですか?」

「ほらこれ持ってきな」

 

 

 渋々という訳でも無く、あっさりと紙を差し出す紫の涙。

 サッと開くと、直感的に正式な許可書であることが解った。

 

 

「流石……仕事が早いと言うか……都合が良いと言うか……」

「そっちのご要望に応えてるだけさ、ただし一つ貸しだよ」

 

 

 ニコニコとした表情を崩さずに腹の底では何を考えているか解らない。

 まだ叔父を相手している方がマシだろうか。

 エレナも睨むように紫の涙を見るが、当の本人はどこ吹く風。

 

 

「あとは回収して……これからどうしようか……考えなしだったな……はぁ……いや、もう戻るか……いや、ローズに危険が及ぶ可能性は残したくないな」

 

 

 考えが纏まらずどんどんとやるべき事が頭の中で散らかっていくようだ。

 眉根を寄せて、頭をガシガシと掻く。

 エレナとドンキの2人を見て、今ある手駒でどうすべきか。

 シ協会を殲滅した所で、いい未来がそもそも見えない。

 

 

「……よし、歩こう。先ずはランスロットを拾ってご飯でも食べよう……うん。ありがとう、イオリ叔母さんまた」

「はっ、後でしっかり役立って貰うからね」

「其れは其の時に。では……行くぞエレナ、ドンキ」

 

 

 イオリ叔母さんに別れを告げ、2人を連れて外郭と都市の境界に向かった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「おい、アイツ、よかったのか? ほおって置いて」

 

 

 エレナはドンキに聞こえないよう、耳打ちしてくる。

 

 

「あの人は……ああいうのだよ。いちいち気にしていたら身が持たない」

 

 

 と言うか、父と母以外の知り合いは割と碌な人間がいない。

 ドンキの方を見るとニッコニコで紫の涙のサインを拝んでいる。

 

 

「事務所から離れた時はどうなるかと思いましたが、グッズよりもいいものを頂けました! 損して得取ると言いましょうか!」

 

 

 出来れば彼女にはこのまま汚れず真っ直ぐであっていて欲しい。

 こんな事務所なんかに居ずとも良いはずだ。そう、翼とかに就職すれば良いか。私がコネとして動けば問題は無い。

 

 

「ドンキ、就職したい翼とかはないのか?」

 

 

 都市の誰もが翼に入れるなら人生を投げ打ってでもそれを願う。だが、彼女は違う様だ。

 

 

「ありませぬ! 私の人生はアルトリア殿のもとで働き、使われることで御座る!!」

 

 

 ハキハキと答える彼女だが、少し心配にはなる。

 

 

「そうか……じゃあ、身を守る為の武器が必要か……これ、あげるよ」

 

 

 次元腕輪の中から少し使い慣らした槍をドンキに手渡す。

 

 

「良いのでござるか? よぅし! この槍に恥じぬよう、正義のフィクサーとしてこの名を轟かせて見せますぞ!」

 

 

 正義のフィクサーか……そんなの居れば良いのだけど……。

 

 

「解った解った。くれぐれも無茶はしないでくれよ」

「うむ!」

 

 

 ドンキは受け取った槍をブンブンと振り回しながら嬉しそうにする。

 

 

「さぁ、行くぞ」

 

 

 私達は都市の外、外郭近くまで行きランスロットを拾いに行った。

 手続きを踏まえ、書類を提出すれば正式に出入りが出来る。

 先に私は妹を託して外郭まで出ては、彼と対面した。

 

 

 

「待たせた、ランスロット。見違える程強く、大きくなったな。まさに男子3日合わざればなんとやらだね」

 

 

 オールバックにした髪は変わらず、より筋肉質に、より大きくなった。

 

 

「はい。お待たせしました……アルトリアさん。強くなってきました」

「ホントに大きくなった……私と目線が同じには……まぁそれはいい。カヴァスも連れて来れれば良かったが……」

「えぇ、まぁ彼奴は納得してくれました」

 

 

 対話も出来るようになったのか……

 

 

「そうか……」

「そういえば、ドンキは何処に居るんでしょうか……」

「……うん、居るには居るよ、エレナ、ローズと一緒に待っている……けれど彼女は前とは違うよ。別人として扱った方がいい」

「それは……」

「ショックで記憶が飛んで行ったんだ。現状戻る気配も無い。君の事も、アイラの事も知らない事になっている。済まない」

「……いえ、謝っても仕方ありません。過去は変えられませんから……私が弱かったのが原因ですから。それよりも先を見ましょう」

 

 

 彼は真っ直ぐ見つめてくる。

 私もそうする様に、目を逸らさずに彼と向き合って頷く。

 思い出なんてこれから作れば済む事じゃないか。

 

 

「先ずはご飯を食べに行こう。パジョンの美味しい店を知ってるんだ。積もる話もあるだろう。特にドンキは興味津々でな」

 




◇ランスロットが再び仲間に加わった。

円卓という名の総勢4(5)名

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