図書館は燃えるように熱い。
熱い、リウから来たシャオの比ではないほど。
対面には特色 灰の陽光。
陽光の名に相応しく、その手には太陽のように黄金に輝く剣が握られていた。
彼女は走り出す。光を置き去りにしながら。
確実に1人、また1人と、眼前にいる司書補達を切り裂いて行く。
司書補達から飛んだ血飛沫は、床に落ちる前に蒸発し、煤のように吹かれて消えた。
圧倒的なのにも関わらずまだ本気ですらない事が分かる。まるで型に嵌められた様な振り方で感情を揺らさず機械の様に、淡々と潰して行く。
気付けば……アイツとオレの二人きりになっていた。
「……後は父さんだけだ。」
カーリー程の力押しは無く、ビナー程の特殊さもない。
殺して行く。唯堅実に、唯確実に、唯効率的に。
実に特色らしくない普通のフィクサー。
けれど何故かアンジェリカを彷彿とさせる。
「……ったく、誰に似たんだか!」
デュランダルで攻撃を弾く、弾く。
蛇のようにヌルりと差し込むようなある突き。
身体の軸を丁寧に使い筋力に物を言わせた加速。
どれもこれもが見た事のある動き。
「ふっ!」
出来た隙を見逃さず、切り込むがヒラリと躱され、いつの間にか元の場所に。
「っ……」
息を吸うだけでも喉が焼けるように痛い。
こちらが息を切らしているというのに、向こうは疲れた様子も見せない。
互いに武器を構える。
ゴーンと図書館には似つかわしくない、鐘のような音が響いた。
「っ、ばっ、ぐぅ!?」
何が起こったか分からない。目の中にはあの眩しい剣の輝きがチラついて、身体に衝撃が走った事しか理解できなかった。
ただ分かる事はオレが壁に叩き付けられ、床を転がった事。
「……父さんを止めるには……」
ゴト、ゴト、と熱源が近づいてきた。
目が痛い。瞑っていても蒸発していく水分。
肌を刺激し、髪が焼けた臭いがする。
瞼の裏からでも見えるほど眩しい剣を振り上げた。
「ごめんなさい……」
「ぅっ!」
本能によって、間一髪で避けた
その一撃を掠め、頬が焼け、つぅと赤い血が流れる。
「……っあぁ!!」
勢いのまま体当たりするかのように刃を突き立てた。
なんの抵抗も無く、ザクリと手袋越しに肉を裂く感触が伝わる。
赤い血が刃を伝い、黒い手袋を汚した。
すっぽりと抜け、煙掛かった記憶が晴れていく。
「……ぁ、……な、アルトリア……」
今、俺は……施術すらない綺麗な娘の身体に、剣を突き刺した。
アルトリアの血が滴る。
記憶を封じた箱が開いていくように、記憶が鮮明になっていく。
「……父さんはいつも……一足遅いですね……」
彼女は微笑んだ、アンジェリカのように。
「っ……あぁぁ!!」
力いっぱいに剣を振り、俺の手で……娘を殺した……。
光が霧散し本が落ちた。その本は深く焼け焦げていた。
あっさりと決着が付いた。着いてしまった。
驚く程呆気なかった。
妻を助けられず……娘をこの手で殺した……。
家族にまで手を掛けた俺に……何が残った……。
いや、それはそれ、これはこれ……だな……。
今ではなんの効果も無い魔法の言葉を頭の中で繰り返した。
「……アンジェラ……全部終わったぞ……」
「えぇ、そうね」
俺は平然とアンジェラに話しかけた。
内心は平静を装っているだけで、悲しみや虚しさで今にも叫びだしそうだ。
これで……やっと終わるんだ。
if、若しくは補填が必要か
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必要
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不必要