私は光の中に居た。
意識は有るのに動けない。
海の上を漂っているような浮遊感がなんだか心地いい。
どうやら私は父の一撃で私は死んだらしい。
……あれで父さんが復讐を辞めてくれると良いなぁなんて。
思いながら光を漂っていた。
「……本当にあれで良かったの?」
何処かで聞いた美しい女性の声。
この光の中では彼女が主人なのだろうと伝わってきた。
私はその彼女の名前を呼び、答える。
「……良いんです。カルメン女史」
あやふやな問いかけに対して、これでいいと、真っ直ぐ彼女を見据えた。
彼女は朗らかに笑ったようだった。あの惨状を見て、私の答えは愉快だったのだろう。
「……そう、けれど彼は辛そうに泣いていたわ」
「……私の父は立ち直れます。それに私のする事はもうありません……妹もドンキも託しました」
「本当にそれで満足なの? 護る為に動いたけれど……アルトリア。あなたは誰も護れなかったじゃない。差し伸べた手は全てすり抜けていったのに」
その美しい声から、唐突に事実を突き付けられた。
フラッシュバックする。
裏路地で身を呈して守った人達は皆泣きながら殺さないでくれと懇願していた。数日後にはもう……。
母の救出も間に合わず、ねじれによって都市の翼が焼け落ちかけた……。
信じて送り出したフィリップ君や、負ける事のないと思っていた叔母さんも図書館の前に伏した……。
目の前で……アイラが死んでいった……。
あぁ、間違いない。私は誰も護れなかった。救えなかった……此処の人だけでなく、仲間も恋人も友人も。総て灰になっていった。
「そして、向こうでは、 八つ当たりで都市の五指を次々と、襲撃、掌握した」
私の心を手繰り寄せる様に続けた。
鏡にヒビが入るとその向う側には復讐の終えた私が狂気の笑みで佇んでいた。
それを見て私は思う。あんなにも壊れているのに……羨ましい。
「勿論救われた命はごまんと居たようだけど……何もかもが怨めしいって心がそう言ってるわ。何もかも壊したくて、から指を一本一本落としていった……そこでで知ったのよね、自分の生は誰かの命で補填されていたって」
「……皮肉なものだ、この力は他人の為にあると思ってやって来たのに……その命を蔑ろにしてきたのは私だった」
あれの言葉は毒だと分かっているのに。
直感で耳を傾け手は行けないと分かっているのに、此処で座り込みたくなった……ここで休憩すべきだと思ってしまう。
「他人の為? それは自分本位の行動でしょう? 貴方が貴方自身の為にした事でしょう?」
……間違いない。彼女の声を聞く度に毒はじわじわと私の足を引っ張っていく。
もう戦えないと体の全てが叫んで居るのに。
ふと胸に小さな振動を感じた。
「……まだお前はいたんだね」
まさぐると内ポケットから銀の時計が出てきた。
「綺麗な時計ね」
「ああ、本当にな……」
私の依代になった女の子。
親の死に相対し、自分が死にかけても尚
皆の幸せを願い、静けさを勝ち取り、 強大なねじれに立ち向かった小さな少女。
私を信じて託していった勇敢な子。
「……この子の願いを叶える迄は死ねないか……父と母だけでも……」
浮遊感からゆっくりと立ち上がった。
「……もう辛い事はしなくていいの。貴方が都市を護る為に傷ついても、きっと都市の誰もが貴方を忘れてしまうんだから。……冷たい世界じゃなくて、自分自身を愛してあげて」
甘く堕ちそうなほどの言葉。ここで停滞しても悪くないと思えてしまう。
けれどわたしの行き先は決まった。
「……いいや、忘れ去られようと……私は私の為に都市を守る。少しでもこの子や妹みたいな子が出ないように……私の快・不快で……この都市を決める。どうせ人間で無いのだから、私の想いのまま進む」
形見のジャケットが翠色の微光を放つ。その色は陽射しのように心地よい光だった。
「……また戻る」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の方を一瞥し、歩き始めた。
徐々に光の幕が上がる。
ベディは此処には居ない。けれど、このジャケットを通して想いが伝わってくる……。
「行こう、ベディヴィエール。これが最後の旅だ」
私は進む。己の為に
if、若しくは補填が必要か
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必要
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不必要