[完]黒い沈黙の娘   作:こまごめピペット

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平和な鏡の世界


 自然と朝には目が開く。

 ダブルベッドのはずなのに、毎朝隣にある温もりはなくて少し寒い。

 きっと今日も珈琲の匂いを纏わせて私は朝を迎えるのだろう。

 

 手を擦り合わせ、しょぼしょぼと着替えを始め、髪を整えリビングに入ると、やはり珈琲の匂いがした。

「おはよう。ベディ」

 

「あぁ、おはようございます。アルトリア」

 黒い髪を携え私より少し小さい片腕が義手のベディヴィエール。

 彼は私より1時間は早く起きて、いつも朝食の支度をする。

 

 私は顔を洗ってから手伝いをするのだが、今日はまだ眠たいのか、頭が上手く回らない。

「珈琲は飲みますか?」

「……ん」

「では淹れてきます」

 私の返事に満足したのかベディヴィエールがキッチンへと消えていく。

 まだ睡魔が抜けきらず、ボーッとしながらソファに座るとキッチンの方から微かに良い香りがする。

 

 トーストやベーコンエッグだろうか? マッシュポテトがあるとより良い。

 まだかまだかと待っていると、ベディが2人分の朝食をダイニングテーブルへと運んできた。

「お待たせしました……さ、座ってください」

「うん」

 私がテーブルの前の席に着席すると、ベディが私の対面に座る。

 ベディに感謝を述べつつ、三角に切ったトーストへサクリと齧り付く。

 ふわりと香る小麦。

 近場のパン屋では味わえない歯切れのいい焼き加減とグルテンのふわふわした食感、それだけでより半日分の時間かけた事がわかる。

 

 目玉焼きは両面ともしっかり焼き上げられているのに黄身はトロリとしている。

 ベーコンもカリカリで、塩コショウが程よく効いている。ベーコンの塩味に風味の良い目玉焼きをパン一緒に食べれば、朝の栄養補給は完璧だ。

 

コーヒーは香り豊かで苦味が良い。

「ごちそうさま、美味しかったよ」

「はい、お粗末様でした」

 私が食べ終わると、ベディは当たり前かのように皿を下げて洗い始める。

「あ、私もやるよ」

「いえ、貴女は座っていて下さい」

「……わかった」

 

 まだ少し眠く、ボーッとしてベディが皿を洗うのをただ見ていた。

 彼は私より1時間は早く起きて、いつも朝ご飯と昼ご飯を作ってくれている。

 

 まるで専業主夫だ。

 そのおかげで私はこうしてゆっくりと朝を過ごすことが出来るのだ……感謝しなくてはな。

 そうこうしているうちに皿洗いを終えたベディは珈琲を片手に私の向かいの席に座りボーッとしている私を見ながら微笑んでいる。

 

「今日……何がある? ベディ」

「そうですね……今日は」

 ベディは珈琲を1口飲み、私の問いに答えた。

「特に何もなく、ゆっくり過ごせます。何かしたいことはありますか?」

「……ない」

「そうですか……では、ゆっくり過ごしましょう」

「……うん」

 

 朝食を終えた私達二人は歯を磨き、その日はダラダラと過ごした。

 昼はステーキを焼いたり、夜は酌み交わし平和に二人で過ごした。

 

 

 …………叛乱がある迄は。

if、若しくは補填が必要か

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