肉体は「赤い霧」に並び、精神は「頭」に匹敵すると讃えられた。
あらゆる翼が特許と技術を差し出し、私の存在という一点に注ぎ込んだ。
私は、都市の意志が結晶化した「最高傑作」という名の偶像として形造られた。
「アルトリア……お前……」
……応える声は、もう持っていない。
ただ、その男の震える声だけが、私の背に虚しく弾けた。
「なんで……なんで、そんな姿に……」
見下ろした先にいたのは、かつて見覚えのあったはずの「黒い影」。
彼もまた、この巣という名のゆりかごに揺られる住人の一人に過ぎない。
私は「妖精」を使わなかった。思い出す必要のない記憶を、わざわざ抉り出すほど私は饒舌ではない。
私は剣で空間を裂き、その深淵へと片足を踏み入れた。
喉の奥に、覚えてもいないはずの言葉が熱く込み上げる。
けれど、それは一瞬の不協和音に過ぎない。
私は割り切って、裂け目の向こう側へと身を投じた。
私を見た者は、口々にこう語る。
赤い霧の再来。
巣が生み出した、唯一無二の最高傑作。
都市を遍く照らす、守護天使。
そんな呼び名に、何の意味がある。 なんの必要性がある。
私はただ、委ねられた仕事を完遂する。そこに期待も、ましてや感傷など必要ない。
視界が開ければ、そこにはいつもの調律者が佇んでいた。
「おや、想定よりも早く日が落ちたようだね。都市の理を濁す不純物を払うのに、君の振るう輝きは些か過剰だったかな……アルトリア」
ジェナは、想定通りと言わんばかりの平然とした声で私を迎えた。彼女の纏う空気は凪いでいるが、同時に逃れられない法のような重圧を孕んでいる。
「ちょうど、茶葉が開ききったところだ。その手に残る不協和音の残滓を、この芳香で均すといい」
差し出されたティーカップを一瞥し、私は無言で椅子に腰掛けた。
立ち昇る湯気の向こうで、ジェナの瞳が熱を帯びて私を射抜く。
「君を見ていると、かつての調律がいかに非効率な重奏であったかを痛感させられるよ。
ガリオンの残響は、いつまでも耳に残る湿ったノイズのようだった。けれど、君がもたらす『緑の閃光』は、都市の旋律を一点の曇りもなく均してみせる」
ジェナは優雅な所作で自らのカップを傾け、どこか遠く……かつての同僚が残した影を嘲笑うように目を細めた。
「私たちが求めていたのは、あのような不透明な闇ではなく──君という、透き通った残酷さだったのかもしれないね」
「……」
何も語らず、私はゆっくりと香り立つ紅茶を喉に流し込んだ。
ぁ、そういえば何時ぞやの感想の奴も書いてみようかなぁ……と思っている所存
if、若しくは補填が必要か
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必要
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不必要