「ふぅー……」
午前3時10分裏路地にて懐中時計を片手に深呼吸をする影があった。認識阻害の黒いフードジャケットを羽織り、蛍光緑に光る腕輪と鞘を着けた人物。光り輝く剣を地面に突き立て、何かを待っていた。
「行くぞ、そろそろだ」
そう呟くと呼応するかの様に剣はより輝きを増し、死体や血の散らばる暗い裏路地を照らす。
人物は剣を引き抜き、構える。
霧の奥からガスマスクを着け、何かのタンクを背負い、その何かを注入する為の橙色の鉤爪を両手に着けた
が、人物はその場から動く事は無く、
襲いかかった彼らは既に事切れていた。
それはまるで糸の解れた操り人形の力無く倒れていった。
「ふぅー……ごめんなさい……」
息をつきながら人物は第二波に警戒していた。
「おやおや、君が噂の……」
突如声をかけられ人物は驚く。霧の奥からコツコツと何かがやって来る。目を凝らすとその奥に人影があった。
「君に聞きたいことが有るんだ〜、ちょっと付き合ってくれよ?」
そう言うと霧の奥から青い残響が優雅に歩いてきた。
「……申し訳ない、叔父様。それに応える事は出来ない……わたしにはやらなければならない事がある。だから」
人物は地面に差した剣に手をかける。
すると男は手を振り上げ
「おっとストップストップ!とりあえず移動しようか、後ろの奴らが面倒だからさ?」
「……1度だけですよ」
そう言って人物は男と共に霧の奥へ消えた。
◇◇◇
温かい紅茶が出てくる。
「待たせたね。あ〜、一応自己紹介だ、俺はアルガリア、知っての通り特色だよ。よろしくね、ロンズデーラ」
そう言って指揮者の様な格好をした青白い長髪の男、アルガリアは手をヒラヒラさせる。
偽名を知っているという事は誰かから聞いたのだろう。
「……いつまでもその姿形、在り方は変わりませんね、叔父様」
私は男に微笑む。
「ん〜?ありがとう〜、……さっきから叔父と言ってはいるが……あのクソと俺の美しいアンジェリカの子供はまだ産まれてすらいないはずだろぅ?」
男はそう言って首を傾げる。
「そうですね、青い残響……それはそれとして、私の父を侮辱するのはやめて頂きたい」
ピリッと辺りに殺気が漂う。
「……あのクソが浮気してるって事か?」
「そう言うことではありません、これには深い事情が有るのです」
私は認識阻害のフードを脱ぎ素顔を晒す。
「ぁ……ぇ?アンジェリカ……?」
アルガリア叔父様の目は動揺して見開かれる。
「……私は名はアルトリア。お初お目にかかります。アルガリア叔父様」
叔父様の目からは驚きが消える。
「……ああそうか、そうか、そうだよな?その髪は間違いない……その目も。君はアンジェリカの娘なんだな……」
叔父様の顔には諦めにも近い笑顔が張り付いていた。
「落ち着いて下さい。現在は唯の他人です。血の繋がりも、実際の戸籍も。貴方と同じように、都市の技術によって翻弄されただけに過ぎません。この体がたった一つしかない小さな奇跡を起こし、私がそれに引っ張られてしまい、こうなってしまいました……私は本来、ここの不純物なのです。分かりますか?叔父様」
私は男の手を取ってそう言った。
「ぁあ、分かるとも……アンジェリカの事だからね」
叔父様は相変わらずだ。だが、少し安心する。
私の母の事は誰よりも知っているし、誰よりも理解しているからだ。
「……叔父様。私は誰かを守るために、フィクサーになります。今はイオリ叔母さんの元で訓練をさせて頂いております。……そうですね、いずれは叔父様と共に仕事をしてみたいです」
私はそう言って頭を下げる。
「ぁあ、そうか。そうなんだな……なんだか……子供か孫を持った気分だ……」
紅茶を飲み、溜め息をついてから叔父様はそう言った。
「失礼致します、叔父様また何処かで」
私が席から立ち上がると、懐中時計を取り出し、自分と向き合う。私の守れなかった人々を追悼し、ただただ謝る。ぺディ……私は……
時を刻む音が消える。世界から硝子のようにヒビが入る音が聞こえ、固まった。私はフードを被り、自分の呼吸と心臓の音以外聞こえない都市を歩く。
すっかり夜も更けていた。水平線から見えるグリーンフラッシュがとても眩しかった。
「なかなか……叔父様の相手は疲れる……」
母と似ているからこそ、同じ程の愛情と、父の子供だからこそ、殺したい程の憎悪が両立していた。
その感情が同居してるからこそ、恐ろしいものは無い。
次会う時は刃を向けて来るだろうか……青い残響に会う度にヒヤヒヤしなければいけなかった。
明日には設定はりはりしておきます。
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題名を変更しようか悩んでいます。どうしよう……
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