「タブー判定はピアニストの方に何とか押し付けられたな……」
オリヴィエは安心しながら、次の項目へ目をやった。
「通称『ロンズデーライト』を都市伝説に指定する……か」
ピアニストの件で警戒度が一気に上がってしまい、ローランの言ってたヤツも都市伝説にされてしまったか……
眉間を抑えながらどうしたものかと考える。
これまで人的被害は無いものの、ピアニストと一緒に現れたせいで指定され、注目されてしまった。
これによって事務所やフィクサーに狙われる可能性もあるし、そもそも自分が直接手を下すのも避けたい。
かと言ってこのまま放置する訳にもいかない。
「……ローラン、早めに見つけてくれれば楽なんだがな……」
ボヤきながら次のページを捲った。
◇◇◇
巣の中の新居
嘆く男とそれを見守る女が居た。
「はぁ〜……ったく、なんでこんなにも掴めねえもんかねぇ……」
ローランはそう言いながらガシガシと頭を掻いた。
「弱気な貴方も珍しいですね、兄さんと一緒に張り込んで見たらどうですか?案外、見つかるかもしれませんよ?」
「そうは言ってもなぁ……アンジェリカ……」
隣のソファに座る妻のアンジェリカに、ローランは情けない顔で言った。
「あいつのことはお前が一番よく知っているはずだろ?」
アンジェリカはそんな夫の顔を見て苦笑しながら答える。
「仕方ありませんね、私も一緒に行きますよ。でももし兄さんと会えたとしても喧嘩はしないでくださいね?」
「アンジェリカぁ〜……俺の味方はおまえだけだぁ……」
ローランはそう言いながら彼女の胸に顔を押し付けて抱きついた。
アンジェリカはそれを受け入れ、優しく抱きしめ返した。そして彼の頭を撫で、背中をさすった。
そんな事をしているとチャイムがなった。
「アンジェリカ〜入るよ〜」
陽気な声で入って来たのは、アンジェリカの兄、アルガリアだった。
「ちょ、待てっ」
「ぁ、にいさ……」
「……はぁ……」
先程までルンルン気分だったのが嘘のように静まった。
「……ちょっと裏路地行こうか、ローラン?」
「……はぁ……」
「ちょっと、ローラン!兄さん!」
こうして2人は裏路地へと消えた。
「はぁ、私もついていかないと……」
・
・
・
カツカツと、アルガリアと俺は裏路地を歩く。未だかつてないほどの緊張感に
俺の身体が押しつぶされそうになる。
今俺が歩いている裏路地には誰もいない。いるとすればネズミかゴキブリくらいなものだ。
だが、そんな静寂の中だからこそ、奴の声は良く響いた。
「……なぁ、ローラン、俺はアンジェリカと結婚するって聞いた時から思ってたんだ……浮気して絶縁してしまえば良いのにっ!」
「ぐぅっ!」
彼奴は急に振り返ってぶん殴って来た。咄嗟のことに俺はまともに受けた。しかも顔面にストレートだ。
芯が良いだけにアンジェリカより痛ぇ……涙が出てくる。
「はぁ……これはお前が浮気しない安心してと分かった分だ……」
「いつっ……はぁ……?」
何言ってんだこいつは……いきなり殴ってきやがって……口の中切っちまったじゃねぇか……
「ふん!」
「ぐぇっ!」
今度は腹に真っ直ぐ入れられた。
「コレは、お前の子供への愛情がしっかり有ってムカついた分だ!」
いや理不尽!ってかなんの話だよ……!
「ちょっと!兄さん!辞めてよ!」
「あぁ〜アンジェリカ、大丈夫だ、これで最後だからな、そこで見ててくれ」
「はぁ、ったく、なんなんだよお前は!」
「ふぅ〜……そしてこれが……父親のお前より先に娘がアンジェリカを庇ってムカついた分だ!」
「ぅぐっ?!」
また殴られた。さっきのパンチとは威力が違う。身体が浮き上がりふわりと地面から浮いた。俺は腹を押さえながら倒れた。
「まじで……何の話だよ……おぇ……」
まだ産まれてねぇのに娘の話して頭でもイカれたか……?
「あの子が居なきゃアンジェリカは死んでたろうな……お腹の子と一緒に……はぁ……」
「……マジでなんなんだよ……急に来て殴ったり意味が分からない事をほざきやがる!」
ぶん殴ろうと立ち上がるが軽く避け、足を掛けられて無様にすっ転んだ。
「お前はいつも一足遅いんだよ……」
アルガリアは拳を痛めたのか手を振りながらそんなことを言てきた。
ああ、クソ……油断した……
「……おい、何が言いたいんだよ……」
「全く……本当に鈍感だな。そんなんだから告白もアンジェリカに先を越されるんだよ……ヘタレ」
「兄さん……!」
「それは言うなよ……」
言っていいことと悪いことがあるんだぞお前、それはちょっと傷ついたぞ、それは。ちょっとご機嫌取りして謝ろうって思った所に急に言ってきたんだ……俺はヘタレてない!
「はぁ〜……平和ボケも良いところだな……明日準備しておけ、都市伝説に指定された『ロンズデーライト』に会いに行く」
「あぁ……え?」
「アンジェリカはじっとしててくれ?大丈夫、まずは自分の体を労るんだ」
勝手に話が進んでいく。全部あいつのペースだ。
だが、コレには乗らなきゃダメだ。コレを逃すと
「……っ……!……わかった……」
「ああ、いい子だ。明日の昼に迎えに来るよ」
「兄さん……」
「またね、愛しのアンジェリカ、今度は君の娘を連れてくるよ……」
「え……?」
サラリとアンジェリカの髪を撫でながらクソ野郎は去っていった。
「……ローラン」
「……あぁ?」
「……やられっぱなしは腹が立ちますね、わたし1発やってきても良いですか?」
「仲裁するお前が喧嘩ふっかけてどうすんだよ……」
「でもですね!」
「あー、分かったわかった、とりあえず家に帰ろうな?手当してくれれば良いから」
「むぅ……」
不満そうに頬を膨らませるアンジェリカを宥めながら帰路につく。
まじで痛いな……
◇◇◇
暗い裏路地に私は佇む。
いつも通りの訓練。というか試練。
叔母さんから聞いたが、都市伝説として、指定されてしまったらしい。まぁ、私の行動時間が掃除屋がやってくる時間帯なので誰かが来る訳もなく……
……別に脅威になりたい訳じゃ無いから、早くフィクサー申請しないと……ツヴァイ協会にもトレス協会にも睨まれてしまう……
早く許可出してくれないものか……叔母さん……
if、若しくは補填が必要か
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必要
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不必要