B(バラドル)小町と引き立て役B   作:ボンコッツ

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前回のあらすじ

イバラ「くっそー、あのクソプロデューサー!」(かきかき)

いーちゃん「? なんでダンベルの箱にサインしてるの、イバラちゃん?」

イバラ「このダンベル、基本は通信販売なんだけど、ライブで売る分だけはサイン入りにするんだってよ!しかも物販コーナーに置く数は『ライブ会場までアタシが運んだ数』まで!それ以外は全部通販!」

アイ「完全にブランド化狙って射幸心煽ってるね!」

イバラ「今回だって道中歩き多そうだから7セット持ってくるのが精いっぱいだぞ!ライブ前にこんな事やらせやがって!体力的には余裕だけど!」

いーちゃん「いやそれでも70㎏以上なんじゃ……」

アイ「あ、いいこと思いついた!」

二人「「???」」


この時の7セットのみ、時間があったから!という理由で【B小町全員のサイン】が書かれたことで盛大にプレミア化。

7つあるので実質ドラゴンボールなどとファンに言われながらも、本当に実在するのかまで含めてウワサが根強く残る事になる。

十数年後、とある覆面筋トレ系YouTuberが、自分のチャンネル動画で現物(ちなみに私物である)を配信するその日まで……。





バラドルとお買い物

 

 

米金 イバラにとって、日々の生活で最も消費するのは食費である。

 

テレビゲームや映画等も嗜むし、そうでない時間はもっぱら外国語の勉強やトレーニングと、オフの日も非常に色々やることがあるのが彼女だ。

 

必然それらの経費も嵩むが、それを上回ってなお日々の家計を圧迫してくるのが、彼女の旺盛な食欲による食費である。

 

【イケ緬無罪!】の放送前はそれほど仕事もみっちみちじゃ無かったので県を跨いで大食いメニューをマラソンできたが、売れてしまった今はそうもいかない。

 

一週間の予定はみっちみち、アニメやラジオの収録に、イケ緬無罪のロケに、バサラの撮影、当然アイドルとしてのレッスンもある。

 

ここに不定期で海外ロケやライブ等も加われば、下手なブラック企業よりえげつないスケジュールの完成だ。*1

 

特に彼女の場合、物理的にそこらの成人男性ではこなせない内容がちらほら混ぜられている。

 

もちろん仕事が多いという事は手取りもハンパじゃないので、デビュー直後の月収20万前後だった頃とは比べものにならない。

 

……が、いくら彼女が無限のスタミナお化け&鋼メンタルであろうと、物理的に時間が無ければどうしようもない。

 

となれば近所の外食で済ますか、あるいは料理もできるので自炊となるのだが……。

 

 

(前者は本気で食ったら割とマジで店側に迷惑がかかる!後者はアタシの食う量作ったら材料費だけでハンパないことになる!っていうかンな量の材料入る冷蔵庫あるかぁ!!)

 

 

という切実な問題があった。

 

業務用の大型冷蔵庫も発注してはいるが、彼女が元々住んでいたマンションでは到底入らないので引っ越しを決意。

 

近所に業務スーパーがある上に大型の冷蔵庫やら大型炊飯器やらを並べられるマンションを見繕い、そこに入居が決まったのが一週間ほど前になる。

 

引っ越し完了の当日、念願の業務用冷蔵庫(約40万円)と業務用四升炊き炊飯器(約20万円)を並べ、んふー!と満足げな顔をするイバラ。

 

何LDKだのベランダがどうだの駅がどうこうだのロフトがどーだの、そんなアレコレはすべて度外視。

 

自分が理想とする家電(主に食品関係)を並べる事が出来、なおかつキッチンが多機能な部屋を最優先で選んだ結果がコレである。

 

まあ値段相応に部屋も広いので、トレーニング器具を置ける場所も困らないのはイバラにとって良い事ではあったが。

 

 

「あ、そーだ。調味料も揃え直さないとなぁ。

 ちゃんとIHじゃなくてガスが使える所選んだし、ホーロー鍋でも買ってみようか!

 IHは火力がイマイチなのがダメなんだよな!煮込み料理はいいが炒め物がなー!」

 

ウッキウキで荷解きを終え、さて今晩は何にしようかな、と思ったところで調味料が料理のさしすせそしか残ってない事に気づく。

 

引っ越しの荷物を減らすため、細々とした調味料は片っ端から使い切った後だったのだ。

 

もちろんそれらだけでも十分料理は作れる。得意なのが家庭中華というだけで、一般的なレベルの料理は一通り作れるのだから。

 

 

(だがしかし今日のアタシは中華の口!これを裏切ると明日の午前中までは確実に引きずる!*2

 豆板醤も甜面醤も使い切ってるし、鶏がらスープはあるから買いに行くか。

 麻婆豆腐……いや、青椒肉絲かな。辛いのよりしょっぱいのが欲しい)

 

 

夕飯のメニューを考えつつ、買ったばかりのバイク用インナースーツ*3に着替える。

 

黒一色のソレの上から赤いレザージャケットを羽織る、とある店で見つけた『AKIRA』の金田と同じジャケットだ。*4

 

ロングヘアでもしっかり収まるレディース用ヘルメットを手に取り、しっかり部屋を施錠してから駐車場へ。

 

 

(せっかく大型二輪の免許取ったんだし、乗れるだけ乗って慣れないとな!)

 

 

正直、下手な電動自転車より本人が本気で走った方が(ショートカット込みで)早いのがイバラだ。

 

となると、それより早い移動手段はバイクか車となるが『車は最悪ミヤコちゃんに出してもらえばいーや!』という最悪な発想によりバイクとなった。

 

もっというと、ただ単にカッコいいバイクを乗り回したい、という男子高校生じみた欲求に従っただけとも言う。

 

意外と形から入るタイプなので、免許取得のアレコレを進めながらライダースーツやバイクの購入準備も並行して進めていた。

 

 

マンションの駐車場*5に佇んでいるのは、『YAMAHA・VMAX (RP22J)』

 

身長180㎝以上となると、バイクもそれなりに大型のモノを選ばなければアンバランス……そんなうたい文句に誘われて、大枚はたいて購入してしまった。

 

本人的には『クウガのゴウラム*6になったアレじゃーん』ぐらいの気持ちだが、売れ始めてから入って来たボーナスを吹っ飛ばした甲斐があるぐらいには気に入ったらしい。

 

リアボックス*7までつけて、足で走れば済む買い物にもわざわざコレを乗り回している。

 

今回も、近所の業務スーパーでも済む買い物を『ちょっと遠出した方が調味料の品ぞろえがいい店があるし』という理由を取ってつけて、少しでも長く乗るつもりのようだ。

 

彼女の体格にぴったりの大型二輪バイクに乗り込み、ヘルメットもしっかりと被る。

 

残念ながらこのジャケットに見合う健康優良不良少年とはいかないのだ。

 

というか、ノーヘルでこんなモンスターマシン乗り回すほうがどうかしている。

 

同じVMAXに乗っていたどこぞの無免許騎士王ではないのだ、よいこは交通ルールを守らなければ。

 

 

(バイクに詳しくないけど、超高かったからなコレ!まあ、ドーム公演が終われば仕事も増えるし、なんとかなるさ)

 

 

ちなみにメーカー希望小売価格は2,376,000円。文句なしの高級車に分類される。*8

 

こういうモノでも買えるようになったあたり、今の彼女は文句なしでの売れっ子タレントなのだろう。

 

しばらく気分よく公道を走らせて、お目当てのスーパーマーケットに到着すれば、二重三重にロックをかけてから店に入る。

 

ライダースーツ+赤ジャケットとか超目立つのだが、ぶっちゃけアイ達と違って変装しても身長186㎝以上の巨女の時点でクソ目立つので、斎藤社長も色々諦めたらしい。

 

セキュリティがしっかりした物件に移れ、という指示は貰っていたので、今回の引っ越しは渡りに船だったようだ。

 

業務スーパーより調味料の品ぞろえがいいのは公式サイトやチラシで確認済み、お目当てのモノをすぐに見つけた。

 

慣れた手つきで数種類の調味料を手に取り、ぽいぽいっとカゴに放り込む。「豆豉*9まであるじゃん!」とウキウキ顔だ。

 

さーて帰って飯にしようと踵を返した所で、見慣れた人影を見つけた。

 

 

 

「このほんのり心労でくたびれた背中は……ミヤコちゃん!」

 

誰がくたびれた背中よっ!って、イバラ?」

 

 

斎藤ミヤコ……斎藤壱護こと斎藤社長の妻であり、斎藤社長と年の差婚をした美人妻である。

 

アイのマネージャー担当でもあり、イバラも割と頻繁に事務所やスタジオ等で会っている縁深い相手だ。

 

斎藤社長と同じくアイや鬼瓦から無茶ぶりされる側というのもあって、苺プロダクションの中では苦労人かつツッコミ枠だ。

 

つまり、心労でくたびれた背中が穏当だとするなら、心労与えてるのはコイツってことになる。

 

実に人格も精神も太腿もずぶとい女だ。

 

 

「あれ、こっちのほうってミヤコちゃんの家から近かったっけ?」

 

「え゛っ、あー、ちょっと野暮用があって、うん、野暮用」

 

「野暮用?……あれ?」

 

 

よくよく見れば、ミヤコの足元に小さな影が二つ。

 

金髪の少年少女が一人ずつ、どちらもバツグンに顔が良い。

 

 

(イバラちゃん!?え、なんでここに!?)

 

(どんな確率だよこれ……お前がアイス食べたいとか言うから!ミヤコさんに買ってきてもらえば良かったろ!?)

 

(自分で選びたいのが人情じゃない!あと、家にはママが好きなダッツしかないんだもん!アレばっかり食べてたら舌が肥えるよ!)

 

(冷凍庫の氷でも齧ってろ!)

 

 

アイコンタクトだけで妙に複雑な会話をこなしている双子、内容を知ればイバラが「お前らニュータイプかイノベイターかよ」とツッコみたくなるような情報量だ。

 

これ以上目立つのはマズい!と判断したミヤコが「とりあえずお会計済ませましょっか!続きは家で!!」と場所を移すことを促す。

 

計算もあった、元々現在のアイの住居はドーム公演の前に引っ越す予定。イバラに知られても問題はない。

 

それよりも、一度SNSでバズったこともある上に映画にまで出てるこの双子が、イバラと共にいる所を拡散されるほうがマズいと判断したのだ。

 

なんせイバラは目立つ、盛大に目立つ、今もスーパーのどこかでファンに『米金 イバラが買い物してた!』なんてツイートされててもおかしくない。

 

それならまだ、家に連れて行ってごまかした方が被害は小さい……斎藤ミヤコが3秒ではじき出した算段である。

 

 

なんにせよ、一つだけ言えることがある。

 

 

連載開始から11話、ようやく米金 イバラと主人公達が邂逅した。

 

 

*1
本人曰く『アタシのブラックっぷりは北海道でヒグマと遭遇した挙句、最初の一撃をなんとか避けつつ高台に上がってから眉間に跳び膝蹴り叩き込んで追っ払う事が出来て初めて対等』。当然大半の人間はンな事したら普通に死ぬ。過労死かヒグマのランチになるかの差?そうだね。

*2
なお昼食の選択に失敗すると延長する。

*3
俗にいうライダースーツ。ルパン三世の不二子とかデュラララのセルティが着てるアレ。

*4
赤い生地に薬のカプセルのような柄のアレ。ちなみにこれ着てもボディラインがだいぶ見えるワガママボディ。

*5
ちなみに高級マンションに該当する物件なので、セキュリティはガチである。

*6
ゴウラムというクワガタのような『馬の鎧』と、トライチェイサー/ビートチェイサーと呼ばれるバイクと合体することで完成するバイク。撮影用のソレは、YAMAHA・VMAXを元に改造されている。

*7
バイクの後部に取り付けて荷物を収納できるアイテム。

*8
ただし2017年に生産終了している。元々受注生産方式なので、いずれ復活するのを待とう。

*9
トウチ、あるいはトウチー。大豆や黒豆に塩etc.を加えて発酵させたモノ。様々な中華料理に使うが、日本ではあまり売ってない。

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