B(バラドル)小町と引き立て役B   作:ボンコッツ

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前回のあらすじ

イバラ「たった一つの真実見抜く、名探偵イバラ!」

アクア「体はアマゾネスで頭脳は大人とかあいだだだだだだだ!?」

ルビー「で、出たー!イバラちゃんの必殺技、頬っぺた七福神抓りだー!」

ミヤコ「主な被害者はアイね」



バラドルと真実

 

「赤ん坊がオタ芸やる動画がバズった時期を考えると、引き取ったのは3~4年前?

 多分だけど、アタシがB小町に入った前後か……アイちゃんの復帰あたりかな」

 

「……ええ、そうね。丁度その頃よ(アイが出産したのは)」

 

「で、アイの兄弟姉妹がいるってことを世間に秘密にしてるのは……マスコミ対策?

 アタシが入るきっかけになった長期休養って、多分この子らの事でゴタゴタしてたんだろ。

 弁護士でも挟んで、アイとこの子らの毒親と裁判か調停でもしてた?

 

 ……ま、いいか。流石にそこまで踏み込んだら個人情報の範疇だろうし」

 

「まあ、実際流石にこれ以上は話せないわよ。アイのプライベートだもの。

 本人に聞くのも避けて頂戴ね?デリケートな問題だから」

 

 

だろーなー、と言いながら青椒肉絲をどんぶりにのせて「お手製青椒肉絲丼ー!」とかやってるイバラだが、ミヤコと双子は気が気ではない。

 

確かに最後のツメ……推理のラストの部分は間違っているが、彼女は『アイの部屋』と『双子』を見てここまで迫って来たのだ。

 

しかも目に見える情報だけでなく、ミヤコが『双子の名前をツッコまれた時の反応』まで加味した上で、だ。

 

 

(……もうちょっと正体隠す工夫した方がいいのか、これ?)

 

(イバラちゃんがまたナルホド君*1みたいな感じになる前に、何か手を打った方がいい、かも?)

 

(兄弟姉妹設定は使えそうだし、ミヤコさんの子供に加えてソレ用のカバーストーリーでも考えておくか……)

 

 

食事を勧めながら、水面下で謎の暗躍が発生している星野家のテーブル。

 

アイコンタクトの精度がよくわからない領域に達している双子と、緊張したぁー、という顔で食事に戻ったミヤコ。

 

そんな面々を、イバラはお手製青椒肉絲丼をかっこみながら見ていた。

 

 

(……さぁ、て。なんていうか、マジかぁ……)

 

 

そう、見るだけではなく、『観ていた』。

 

主に神経をとがらせたのは、先ほどの推理の終盤だ。

 

理詰め10割で考えるのなら、先ほどイバラが語った『真相』が最も現実的だ。

 

アイが施設育ちということはファンでも知ってる程度の情報で、しかし、流石に親とどういう関係だったのかまではイバラも知らない。

 

とはいえ、子供を施設に置いて行って迎えにも来ない時点で、どんな理由があろうと世間一般では『よくない親』の範疇に入る。

 

やむにやまれぬ事情がー、とかは考慮しない。そんな例外まで考慮していったらキリがない。

 

出そろっている情報だけを客観的に整理したのなら、アイの親はアイを施設に置き去りにした『毒親』カテゴリーの人間だ。

 

 

(で、なーぜかそういう毒親は、ヨソで別のガキをこさえる可能性がそれなりにある……理性か教養か常識か、何が足りないのかは言わないでおくか)

 

 

そして、以前と全く同じように生活に困窮する。ここから犯罪等に走る者や、子供を遺棄したり虐待したり、という最悪なパターンへ踏み込んでいく者もいる。

 

が、アイと双子の場合は事情が特殊だ。面倒なことに新たな選択肢が生えてくる。

 

 

(万が一、その毒親がテレビに映るアイを自分の娘だと気付いてしまった場合……まあ、タカりに来るわな、高確率で)

 

 

自分が捨てた子供だという事実も忘れ、厚顔無恥の忘八者としてアイの前に現れるのだ。

 

産んでやった恩を忘れたか!お前の弟や妹が可哀そうじゃないのか!子供なら親の役に立て!

 

そんな身勝手極まる持論を振り回し、アイドルとして急成長中のアイに金の無心……という名の寄生に来る。

 

高校球児がドラフトに受かった後に告白されまくったり、宝くじが当たったとたんに知らない親戚が増えまくるのと同じ現象だ。

 

 

(だから、毒親から赤ん坊の弟と妹だけでも引きはがすために、腕のいい弁護士雇って法廷バトルしてた……って理屈はつくんだよな。この手の裁判、当事者が出廷するかどうかで裁判長の印象が変化する事例もあるし)*2

 

 

そう、本当にここまでは裏はない。場に出ている情報から、イバラが最もあり得そうな可能性をロジックとして組み上げただけだ。

 

加えて、自分が加入するきっかけになった長期休暇、その直後に赤ん坊二人を引き取ったなんて事が知れれば、まず間違いなくイエロージャーナリズムの権化のような連中が好き勝手書き立てる。

 

それを防止するために双子の事を隠していた……そう、『常識的に』考えれば、この答えこそが最もあり得るのだ。

 

彼女は確かにカンが鋭い方ではあるが、そのカンもとんっでもなくムラっけがあるので本人はあんまり頼っていない。

 

基本的には持って生まれたセンスと、今まで培ってきた教養と経験による理詰め。それらが2割。

 

後の8割はその場のノリと勢いなのだが、まあ、それはともかくとして。

 

逆に言えば、その理詰めに『新たな要素』が放り込まれれば、ロジックを組みなおす事もするわけで。

 

 

(『安堵』したよな、コイツら。アタシが答えを言った瞬間に)

 

 

前述通り、イバラは『観た』。三人の反応をつぶさに観続けた。

 

しまったバレたか!……という反応ならまだわかる。

 

だが、このタイミングで『安堵』の表情を浮かべるのはどう考えてもおかしい。

 

まるで『ギリギリのところで首の皮一枚繋がった』ような安堵の顔、そこにイバラは違和感を覚えた。

 

 

(……なら、真相は『もう1つ』の方かもしれない。この二人はアイの兄弟姉妹じゃなく……)

 

 

なるべく違和感を持たせないように、自然と会話を続けながら思考を回す。

 

一年近い活動休止、その後の体形の変化、突然向上したパフォーマンス、隠す理由。

 

それら全部を満たす答えは、既に彼女の中に生まれていた。

 

はっきり言って、あの安堵の表情を見るまでは99%兄弟姉妹の方だと思っていた。

 

が、今は【兄弟姉妹の可能性】と【アイの子供の可能性】が彼女の中で釣り合ってしまっている。

 

 

……しかし、それを口に出して真実を追及することは、ついぞなかった。

 

 

(ただなぁ、言っちゃなんだけど……だから何?って感じなんだよな!

 

 

元々、彼女は探偵でも記者でもなんでもない。

 

殆ど偶然この家に招かれ、感じた違和感を払拭するためにいくつか質問したに過ぎない。

 

無理やり真実を暴き立て、この双子や苺プロダクションの皆に迷惑をかけるような愉快犯になる気も無かった。

 

 

「なあ、アクアにルビー。ちょっといいか?」

 

 

だからこそ、自分がこの問題にどう対処すべきかを確定させるため、最後の質問を飛ばす。

 

 

「アイちゃん……いや、【お姉ちゃん】の事、好きか?」

 

「うん!」「はい!」

 

「お、おう。元気いっぱいだな」

 

「いや、既にあの山もり青椒肉絲の五割以上食べつくしてるそっちほどじゃない」

 

「会話しながらスゴイ勢いで山が消えていくもんね……」

 

 

予想以上のテンションで肯定の返事が飛んできた時点で、イバラの取る選択肢は決まった。

 

イバラがアイドルをやっているのは、自分を見て笑顔になる人を一人でも多く増やすためだ。

 

無理やり真実を追求し、暴き立てて白日の下にさらすのは、その笑顔を消すことに他ならない。

 

この二人はアイと幸せに暮らしている……それだけで、イバラにとっては十分だった。

 

 

「ミヤコちゃん、たまーにこの家来てもいいかな?ちゃんと変装するからさ」

 

「えっ……? いや、どういう風の吹きまわし?」

 

「いや、別に深い意味は無いんだ。ミヤコちゃんが育児疲れでヤケ起こすのも怖いし。

 手伝えることは『事情知ってる』人間が手伝った方がいいんじゃないか、と思ってさ。

 コイツらの事を文〇に売り飛ばしてやるー!とかなる前に、サポートぐらいいるだろ?」

 

「かふぅっ! ……そ、そうね、ええ」*3

 

「なんで机に突っ伏したの???」

 

 

最終的に『このことを社長に相談してから決める』という方向性で話は纏まる。

 

勿論、イバラにも自分の仕事があるので頻繁にはこれないし、そもそも来すぎるとそれはそれで目立つ。

 

とはいえ、今日この日から、苺プロダクションの中に【共犯者】が一人増えた。

 

 

(ドーム公演まで、あと一ヵ月と少し、か)

 

 

そして、【その時】もまた、じわじわと近づきつつあった。

 

 

*1
ゲーム『逆転裁判』の主人公、成歩堂龍一(なるほどう りゅういち)の事。

*2
浮気・不倫等が原因の離婚裁判等で、浮気『された側』が出廷したか否かで判例が変わる例もある……らしい。ウワサ程度だが。

*3
すでに一回やらかしかけた後である。




※イバラの脳内

「まあ常識的に考えたら種違いか腹違いか年の差ありまくりの弟と妹だよな。
 スキャンダル対策に隠すのも当然だわ。流石のアイちゃんもそこまで破天荒じゃあるめぇ」



「……99%そうだけど、残り1%があるから観察しとこ」



「あれ、なんかバレた時の反応おかしくね?え、ウソでしょ?どっちかわかんなくなったんだけど!?」



「まあこの子たちが笑顔だしいっか!」
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