前回のあらすじ
プロデューサー「ヤツにコモドドラゴンの群れを放て!」
イバラ「チィッなんだってコモドドラゴンなんか向かってくるんだよ!」
プロデューサー「あ、カッカッは禁止な」
(アイツが【B小町】のオーディションに来た時の事は、今でも思い出せる)
苺プロダクションの社長、『斉藤壱護』にとって、米金 イバラは星野アイと並ぶ二枚看板だ。
ゴールデンタイムのドラマやラジオパーソナリティなどがメインの仕事であるアイに対し、
体当たりの海外ロケがあるバラエティ番組をメインにマルチタレント化しているイバラは同グループ内でも仕事の差別化ができている。
同時期に雇った鬼畜外道……もとい、プロデューサーとのデコボココンビも上手くハマったようで、現在では番組レギュラーすら獲得するに至った『売れっ子バラドル』だ。
だが、そんな彼女に対し、彼は元々大した期待をしていなかった。
(アイの『活動休止』中も、B小町が世間から忘れ去られないための『延命策』……それが、あのオーディションの実態だ)
どうやっても一年近くの離脱が確定する『裏事情』を鑑みれば、何らかのテコ入れは必須。
当時のB小町は、決してアイドル界のトップを独走するようなトンデモ一強グループではない。
結成四年目でようやく安定して仕事が取れてきて、これからもっと上を目指すぞ!……という段階だったのだ。
そのタイミングで、絶対的センターであるアイの長期離脱。
新陳代謝が激しい芸能界で、アイを欠いたB小町が一年近く生き残れるビジョンが、彼にはまるで見えなかった。
新メンバー加入という話題性を押し出し、細々とでも仕事を続けてアイの復帰を待つ。
アイの代わりとまではいかないまでも、数ヵ月程度でいいから話題を作れる個性を持った人間が来ればいい。
B小町という『アイが輝くための土台』を維持するための苦肉の策……だったはずが。
『ういっす!米金 茨です!トシは16で、身長182cm、体重80㎏!特技はベンチプレスと短距離走!あと七ヶ国語話せます!!』*1
なんか個性の二郎系ラーメンみたいなヤツが来た。
が、当時色々と精神的に追いつめられていた斎藤が「あれ、でもこれならいけるんじゃないか?」と思ってしまったのも無理はない。
別にトップアイドルになれというわけではない、B小町の個性派新人として、数ヵ月程度話題を維持してくれればいいのだ。
盛大にアイドルというモノを根本から勘違いしている感じのルックスではあるが、間違いなく顔はいい。スタイルも(アイドルに求められてる感じとは方向性が違うけど)いい。
受け答えもハキハキしていて元気が良く、プロフィールを見た感じ運動神経もバツグン。
ダンスとボーカルのトレーニングをスパルタで突っ込めば、一か月程度でギリギリモノになる、と彼の中でソロバンが弾き終わった。
そう、米金 茨のアイドル道は、元々『アイがいない間の代役』として始まったのだ……。
『ずるるるっ!!じゅるるるっ!!うんまっ!牛骨メインの醤油スープで箸がとっまんね!!』
『いいぞぉ!【ジャンボモーモーチャーシューメン10玉チャレンジ】!まだ制限時間の三分の一も経過してねぇのに麺が7割消えてるぞぉ!!』
『はふっ、あふっ!へっへっへ、こんぐらいなら軽いもんよ!先週やった【ギガント焼きそば3㎏10分以内】の方がキツかった!!』
(でもやっぱりちょっとだけあの時の決断は早まったかもしれない!!)
『イケ麺無罪(いけめんむざい)!』……某テレビ系にて放送されているグルメバラエティ番組であり、イバラがメインを務めている人気番組だ。
日本各地のおいしい『麺料理』を食べて取材する……という王道ストロングスタイルのグルメ番組だが、一貫して『大盛り・大食いメニューだけを取り扱う』のが特徴である。
もっと言えば『味の宣伝もする』のが縛りとして設けられているため、大食いチャレンジを余裕でクリアしつつ語彙力まで求められる、まさに麺の無間地獄。
必然的にメインを務める人間には鉄の胃袋が求められ、元は大食いタレントとフードファイターを兼任していた『大原 ミツル』*2がメインを務めていた。
とはいえ、流石に加齢とともにロケで強いられる大食いチャレンジがキツくなっていったようで、大原ミツルの引退と共にこの番組も最終回を迎える……ハズだった。
(まさか、その最終回予定だったロケの店でイバラがプライベートで飯食ってる所をスカウトされてくるとは……)
当時はイバラも月収20万ちょっとの下積みアイドル勢だったので、都内で生活するためには何かしらの副業なり節約術が必要だった。
そのため、彼女の健脚を生かして休日は大食いチャレンジメニューを食べ歩き、時には隣の県まで徒歩で移動し大食いだけやって帰る、という日々を過ごしていたらしい。
それ移動だけで食事分のカロリー使い切って意味なくないか?と思わなくもないが、完食すると食事券や賞金がもらえるメニューもあり、なおかつトレーニング代わりに丁度良かったそうだ。
そんな大食いチャレンジの食べ歩き先で、前述通り『イケ麺無罪!』のロケに遭遇。
大原ミツル以上のタイムでチャレンジメニューだった【特大冷やし中華15分以内】を啜りこんでいるところを、大原ミツル本人が狂喜乱舞でスカウト。
下手すれば自分の所属しているタレント事務所で自分の後継ぎとしてデビューさせるつもりだったようだ。
その後、イバラとの会話で苺プロダクションに所属している事が判明し、『イケ麺無罪!』の二代目メインとして選ばれた。
元々他の事務所も『あんだけ食いながら味レポまでできる人間所属してるわけねーだろ!』と二の足どころか三の足まで踏んでいたため、するっとイバラの二代目襲名が決まってしまったのである。
『かーんーしょーくー!はーっ、いっつもこんな仕事ばっかりならいいんだけどな!ウチの事務所ギャラ安いし!』
(地上波で何言ってんだコイツぅ!?)
『割と長い間アイちゃんも月収20万だったんだ、イロモノ枠のお前も我慢しろ』
(お前も止めるんじゃなく何言っちゃってんだよぉ!?)
……バラエティ番組に強いプロデューサーということで雇った『彼』も、今ではイバラのいる番組の実質的な名物だ。
出るのが許される番組ではイバラと毒舌トークを繰り広げ、そうじゃないときは徹底的に裏方に徹する。
ついでに割と頻繁にイバラが命の危機を感じるようなロケを引っ張ってくるが、そういうのはだいたい現地で『謎の引き』を見せるイバラが原因だ。
とりあえずこの二人をバラエティ番組に放り込んでおけば仕事をこなしてきてくれる……というのはプロダクション的にひじょーに楽なのだが、オンエアを見ると色々心配になる。
なんせ海外ロケは放送事故半歩手前のイベント乱舞、こういうマトモ(?)なバラエティでも普通ならカットされる部分が垂れ流し。
こうして自宅でオンエアを見ていても、内部事情や人となりをちゃんと知っているはずの彼ですらハラハラしっぱなしな番組になってしまうのだ。
『視聴者が求めている刺激をとにかく過剰供給する女』……それが、米金 イバラの本質だ。
『にゃにをぅ!どこがイロモノ枠だ!もう頭の天辺から足の先まで王道美少女じゃろがい!あ、オジさん替え玉で。2玉ぐらい纏めていれて』
『お前を王道美少女にするとドロンジョ様*3まで王道美女に入るからアウト。あと替え玉は自腹だぞ』
『よっぽど2次元好きじゃないとアタシの同年代は知らねーだろドロンジョ様!あといいじゃん替え玉ぐらい経費で落としてよ!』
『ウチの社長もといドケチパツキングラサンがダメっていうからダメ』
「公共の電波で俺をディスらないでくんない!?」
テレビの前でついついツッコミを入れながら、やっぱりあの二人雇ったのは早計だったかなぁ……と思い悩む斎藤社長なのであった。
続き希望が予想以上に来たので続きだオラァ!