B(バラドル)小町と引き立て役B   作:ボンコッツ

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前回のあらすじ

イバラ「プロデューサー!ハシもう一本!」

店主「あ、あの技は!?」

客A「ハンター錠二の!?」

客B「二丁食いじゃねーか!?」

プロデューサー「こいつら食いしん坊と大食い甲子園読んだな?」


バラドルと番宣ラジオ

 

 

(まさか、B小町にアニメとのタイアップが来るとは思わなかったなぁ。男の子が好きそうなロボットアニメだし、【アクア】も好きになれるかな?)

 

 

彼女の名は【アイ】……本名【星野アイ】。

 

人気アイドルグループ【B小町】の不動のセンターであり、アイドルとしての天性の才能を過積載して生まれてきた少女だ。

 

斎藤社長の手によってスカウトされ、一年近く『体調不良』で表舞台に出てこなかった彼女は現在、ドラマの撮影のために出張中である。

 

……『体調不良』の真相である双子の出産を終えてアイドルに復帰してからは、活動休止する前以上のパフォーマンスを発揮していた。

 

弱小事務所である苺プロダクションの給与では、自分が生んだ子供……兄の【アクア】と妹の【ルビー】の将来に差し支えると判断したのが大きい。

 

ドラマ出演にラジオパーソナリティ、歌番組等のアイドルと縁の深いバラエティの仕事も増えた。

 

ただし、アイドルとして順調に仕事が増えたのはアイ一人、盛大にアイドルとして向かう先を間違えているアレを除けば、他のB小町のメンバーは伸び悩んでいる

 

……そんな現実もあり、『B小町はアイドルグループとしてはアイのワンマンチームである』と言うのがファンと関係者の暗黙の認識なのだ。

 

 

なにはともあれ、B小町の新たな仕事は『アニメ作品とのタイアップ』。

 

あまりアニメを見ないアイにとっては馴染みの薄い業界であるが、アクアとルビーが今後触れる分野として考えれば悪くない。

 

 

(えーっと、名前なんていったかな。ガン、ガンダ……ガンダモ?)

 

 

アイ本人は本当に興味が無いようで、エンディング曲を担当することになったアニメのタイトルすらうろ覚えである。

 

ややスローテンポの、普段のB小町には珍しい曲調のタイアップ曲であったが、こういった空気の曲が似合うアニメではある、らしい。

 

スタジオに張られていた番宣ポスターで、カラフルな髪の色をした少年少女とロボットが写っていることが印象的だった。

 

え?こいつらの髪の色も十分カラフルだろって?知らんな、そんなことは作者の管轄外だ。

 

 

(あ、そういえば今日は番宣ラジオがあるんだっけ……確か、ゲストにイバラちゃんが呼ばれてるんだよね)

 

 

この手のアニメ番組では、一般ラジオやネットラジオ等で声優や主題歌の担当歌手を招いた特番を組むことが多い。

 

声優同士の番組への感想やら、プライベートの赤裸々トークやら、制作の裏話やら、コアなファンほど必聴の番組だ。

 

ドラマの撮影で相応に疲労し、シャワーも食事も済ませ、あとはベッドでぐっすり眠るだけだったアイ。

 

『とはいえ眠気が来るまで少しかかりそうだし、丁度放映中だし、聞いてみようかな?』と、ネットラジオアプリを起動する。

 

事前に聞いていたラジオ番組を、無線イヤホンをつけて視聴し始めて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どぅーわぁーかぁーるぁー!!コズミック・イラで最強のパイロットは覚悟キメた時のアスランだっつってんだろうがよぉ!!』

 

『覚悟キメても兵士として返り忠しかねない上にテンションで戦力が増減しまくる人間を最強パイロットに押せるかぁ!最終回で種割れ演出無しでSEED使った時のキラ・ヤマトが最強です!!』

 

『盛大にストレス貯めさせてPTSD状態に追いこんでから敵が友人や恋人ぶっ殺してようやく覚醒できるフルパワーなんぞアスランのメンタリティ以上に不安定じゃねーか!』

 

『あの、すいません、スポンサーから頼まれてる番宣を……』

 

『『だぁってろい!!』』

 

『はい……』

 

 

(ナニコレ……???)

 

ラジオパーソナリティの経験もあるアイだからこそ、ラジオから流れて来たカオス極まる会話内容にクエスチョンマークしか出てこない。

 

これは放送開始前の番宣ラジオ……言っては何だが、視聴を迷っているファンを引っ張り込んだり、視聴を決めたファンに情報を発信するためのCM代わりの番組だ。

 

それなのに肝心の情報発信らしき部分をぶん投げて、イバラとラジオのレギュラーらしき女性が激論を交わしている。

 

出演者欄を見てみれば、どうやら相手の女性はヒロイン役の声優らしい。

 

去年の『声優アワード』*1で主演声優賞を獲得し、三年前に新人声優賞も受賞している売れっ子だ。

 

なんとか番宣ラジオの本筋に戻そうとして盛大に押されているのは、主人公役の男性声優。

 

期待の新人という肩書がついて回る若手のホープらしく、同じく声優アワードで『助演声優賞』を獲得している。

 

メンバーだけ見れば、売れっ子声優二人に躍進中のアイドルグループのメンバーと、結構花のあるラジオ番組なのだが……。

 

 

 

『こうなったら今日は朝まで徹底ガンダム生討論だ!放送時間いっぱい使ってやらぁ!』

 

『フッ……こう見えて冬コミで種*2の合同誌も出してた女よ!甘く見ないことね!』

 

「え、イバラちゃん番宣そっちのけでトーク(?)してるの?大丈夫?」

 

『あのぉ!?さっきからスタッフが『本筋に戻って!』ってカンペ出しまくってるんですけどぉ!?』

 

「だいじょばなかった!?」

 

 

一応はグループの代表でゲスト出演してる事とか、モロにスポンサーの影響がある番宣ラジオ内での出来事って事とか。

 

番組表を見る感じ、このノリで既に放送予定時間の3割近くを消費している事になる。

 

アニメ本編に関する情報開示やら、本来予定していたコーナーやら、当然のごとく全部すっ飛ばしてる状態だ。

 

炎上とか大丈夫かな?とガラにもなく心配になり、某SNSで検索をかけてみるが……。

 

 

【いいぞやれやれー!】

【アイドルのゴリ押しとかクソだわと思ってたけど結構なガノタじゃねぇか!】

【あこちー*3いつも通りで草】

【ガンダムとショタが絡むといつも暴走すっからな……なんでこのアイドルついていけてんの?】

【アイドルじゃなくてバラドルだからだぞ】

【というかカケル君*4が右往左往してるのが声だけでわかって笑う】

 

 

(……あれ?否定的な書き込みがあんまり無い……?)

 

 

説明しよう!

 

ガノタも含めて、アニメ・ゲームスキーの二次元オタクが嫌うモノの1つが【アイドル枠のゴリ押し】である!

 

好きなマンガやラノベがアニメ化・ゲーム化したり、大人気シリーズの続編が来るときに、話題性を呼ぶために男女問わずアイドルが声優として当てられる!

 

そして高確率でクソみたいな棒読みを披露し、視聴中・プレイ中にげんなりする……という経験を一度ぐらいは経験しているモノなのだ!

 

今回の場合、B小町は基本的にエンディングとしてタイアップ曲を1クール目だけ提供するごくごくあり触れた範疇の出演だ。

 

……が、実はイバラだけは以前の無茶ぶりの一環で舞台経験があるという理由で、一話のちょい役で声優初挑戦が決まっていたのだ。

 

今回のゲストに呼ばれたのもその関係であり、本来なら声優初挑戦の感想だの無難な事を話して終わる手はずであった。

 

しかし、オタクにとっては【アイドル枠】かつ【声優初挑戦】とかいうW地雷がツインマキシマムドライブ!

 

本来ならば無難に済ませた方がプチ炎上するとかいうクソみたいなトラップだったのだ!!

 

え、なのになんで今もこの手のゴリ押しが減らないのかって?芸能界の関係者に聞いてください。

 

 

(寧ろ、どんどん肯定的な書き込みが増えてる?!)

 

 

だがしかし、オタクというのは割とチョロい所もある生物。

 

最初はゴリ押しかー、と思っていても、演技が結構良かったり本人に作品愛があったりすると割と受け入れられる。

 

特に遊〇王やアイ〇ールド21は『芸能人枠を主役やレギュラーキャラに配置して何百話も声優やらせてパワーレベリングさせる』とかいうマネをやったことで有名だ。

 

今回のラジオは後者、すなわち作品愛をアピールすることによる炎上対策の荒療治としては効果抜群。

 

キャラ談義だけでなく設定談義やシナリオへの言及等、作品愛に溢れすぎて床がびちゃびちゃになってるような内容を放送しているのが大きい。

 

特にヒロイン役の『あこちー』はこの手のラジオでの暴走が名物になっている声優界のイバラ枠なのが功を奏した。

 

主役の声優も割と苦労人キャラで売っているタイプなのもあり、イバラとあこちーの大暴走に盛大に巻き込まれるのがピタリとハマっている。

 

 

結果、SNSやネット掲示板は祭りと化した。それもだいぶ良い方向に。

 

 

(いつもながらもってるなぁ、イバラちゃん……)

 

アイにとって、米金 イバラはB小町の後輩であるのと同時に『ほんのりとした憧れの対象』だ。

 

ダンスは互角、歌とルックスはアイが上手、トークでは少し負けているが、彼女のトークはクセが強すぎる。

 

人の目と心を引き付ける力については……彼女のソレはやっぱりクセが強いので、若干評価しづらい。

 

だいぶハジけたバラエティにしか出せないキャラクター性もあり、アイドルとしてはアイの圧勝だろう。

 

 

だがしかし、彼女の囁き歌う愛に『嘘』は無い。

 

彼女の太陽のように輝く笑顔に『嘘』は無い。

 

彼女のアイドルとしての在り方にも『嘘』は無い。

 

嘘こそが完璧な愛であり、それを積み重ねるのがアイなりの『愛』だった。

 

そうして積み重ねた嘘がいつか、本物の『愛』に届くかもしれない……そんなことを想いながら、今もアイドルを続けている。

 

それに対し、イバラは常に『本物の愛』だけで全てをなぎ倒していく、極まった脳筋パワープレイをぶん回しているのだ。

 

アイドルとして競えば、アイはイバラに負けることはない、ないが。

 

『多くの人々に与えられるほど溢れた本物の愛』……それだけは、アイの持ちえないイバラの才能に他ならない。

 

だから、憧憬と親愛……そしてほんのわずかな嫉妬。

 

 

それが、完璧で究極のアイドルである【星野 アイ】が、最強で無敵のバラドルである【米金 イバラ】に抱いている感情だ。

 

 

 

 

『あの、ところでなんでコズミック・イラ限定なんですか?ガンダムで一番強いパイロットじゃなくて……』

 

『『ぜってぇ炎上するだろライン考えろよバカ』』

 

『ねぇこれ僕が悪いんですか?本当に僕が悪いんですか?!』

 

 

「イバラちゃんはブーメラン投げ大会でもやってるのかな?」

 

 

それはそれとして、普段はボケ寄りなアイがツッコミに回らざるをえない異常事態を引き起こすのがイバラなのであった。

 

*1
年に一度、その年特に活躍した声優を選出する賞。

*2
ガンダムSEEDのファンからの略称

*3
ヒロイン役の声優のあだ名

*4
主人公役の声優

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