B(バラドル)小町と引き立て役B   作:ボンコッツ

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前回のあらすじ

溜め回 3/4。


バラドルとアク坊

 

 

(ま、アタシは別に天才でもなんでもないんだ。こういう時は正面突破に限る)

「アク坊、ちょっと話あるんだけどいいか?今日はフリーなんだろ?」

 

「……いいけど、最近妙にウチに入り浸ってないか?」

 

「知ってるかアク坊、陽キャと陰キャはどっちが上とか下とかないんだ。

 陰キャは光を浴びるのがダメで、陽キャは光が無いとダメなんだ。

 ものすごい伝染病でパンデミックとか起きたらその辺が浮き彫りになるぞ」*1

 

「シャレにならない未来を想定して話すな。*2

 後、要はソレ『一人で家にいるのが寂しい』ってだけじゃないか?」

 

「そうだが?」

 

「開き直るな」

 

 

斎藤家にイバラが押しかけてくるのも、もはや日課になりつつあった。

 

朝から押しかけてきて一日中ダラーっとしてる事もあれば、ルビーと一緒にダンスの練習してたり。

 

あるいはミヤコや斎藤社長をイジり倒してたり、アイといちゃついてたり。

 

当然、五反田監督の所に行ってないときのアクアも盛大に絡まれ続ける。

 

 

(いろんな意味でこの体でよかった……あと数年遅かったら色々マズかった……!)

 

 

流石に幼稚園ボディならば『反応』もしない。いろんな意味でアクアにとっては幸運だった。

 

イバラは子供への距離感がひじょーに近い。とんでもなく近い。寧ろ距離が0だ。

 

アクアもルビーも抱き上げられるわ抱き着かれるわ頭撫でられるわ振り回されるわ。

 

普通の子供にされるようなアレやコレやをしてくるのだが……。

 

 

(あの体でソレをやられると非常にマズい!男としてッ!!!)

 

 

身長188㎝ 体重89㎏。スリーサイズもさらに成長して、上から104/70/92

 

この体で上記のスキンシップを悪意0で押し付けてくるのである。

 

これが下心の1つでもあれば、前世で医者として『迫られる』事もあった雨宮吾郎としての経験で押しのけられた。

 

が、イバラは純粋に「かまえー!アク坊ー!」ってノリでじゃれついてくる。

 

以前、他のB小町のメンバーをチワワ、イバラをグレートデンに喩えた事があった。

 

世界最大級の犬種であるグレートデンだが、その性格は温和で人懐っこい。

 

それを連想するような言動と行動……即ち、イバラのスキンシップはめちゃくちゃ懐いて絡んで来る大型犬のソレだ。

 

顔とか舐めてこないだけギリギリマシ、程度しか差が無い。

 

 

……で、だ。読者諸君、特にでかいおっぱいが好きな読者諸君。

 

推しの子見ててついつい寿みなみちゃんの胸に視線が行ってしまった諸君。

 

ルビーと一緒に「わっ!凄い子おるっ!」してしまった諸君。*3

 

高身長!距離感0!バストサイズはFカップ!*4

 

そんな日焼け褐色美女に悪意も下心も無しでベッタベタに絡まれて悪い気分になるだろうか?ムラムラしないだろうか?性欲を抑えられるだろうか?

 

それができる男は極度の貧乳派か生粋のゲイぐらいである。

 

当然、アクアはどちらでもない。一話からロリコン疑惑かけられてるけどそれはそれ。

 

アイもスタイルは良い美乳タイプだし、少なくとも人並みに女体は好きなはず。

 

つまり、あの体でベタベタしたら『アクアのアクアが』元気になるのが隠せなくなる。

 

 

「まあとりあえず、粗茶ですが」

 

「それウチの冷蔵庫にあった麦茶じゃねーか、粗茶言うな」

 

「薄めに入れたよく冷えた麦茶、分かっておる候……常備するなら濃い目だと量が飲みづらいからな」

 

「いやなんで麦茶ソムリエを始めたんだいきなり」

 

 

氷を入れたグラスを1つ、中に麦茶を注いでアクアの前に出した。

 

なぜかイバラの前には麦茶が並々と注がれた、キンキンに冷えたジョッキが置いてある。

 

あんなジョッキ家にあったか?とか、そもそもなんで麦茶をジョッキに?とか、そもそも未成年がなんでジョッキの使い方知ってんだ?とか。

 

色々ツッコみたい事はあるが、ラチがあかないのでアクアはツッコむのをやめた。

 

ともあれ、何か話があるようなので、とりあえず舌を湿らせようと麦茶を一口飲み……。

 

 

 

「で、アク坊の前世はドルオタのゴローセンセーってことでいいんだな?」

 

「ブ ーーーーーー ッ!?!?!」

 

 

その一言で、飲んでいた麦茶を盛大に噴き出すハメになった。

 

それはもう、恩人の娘に事務所立ち退きを宣告されたどこぞのハーフボイルド探偵のように。

 

初手から切り札、そりゃあもう大魔王の第二形態に対して初手ギガストラッシュを選択した某勇者のように。

 

あるいは1ターン目からブルーアイズ出してくる某社長のように。

 

え、某社長は序盤はブラッドヴォルスとかミノタウロスとかXYZ使うから、1ターン目からブルーアイズ出してくるのはカイバーマンの方?

 

知らん、そんなことは俺の管轄外だ。

 

 

「げほっ、ごほっ……はぁ!?」

 

「おお、やっぱそうなのか。半分カマかけだったけど正解か」

 

「か、カマかけって……」

 

(そもそもどこで転生の事を知った?ルビーか!?いや仮にルビーから俺が転生者だと知ったとして、どうやって前世にたどり着いたんだ!?)

 

 

完全な不意打ちでブチこまれた真実に、アクアの思考がまとまらない。

 

どう考えても、ここまででイバラが手に入る可能性がある情報で、前世が雨宮吾郎だと行きつくには無理がある、と。

 

まあ実際は『アクアの想定以上に情報集めまくってる』だけなのだが。

 

 

「久しぶりだな、ドルオタのセンセー?何年振りだっけ。えーっと、最後に会ったのが中学の時だからー……」

 

「……多分、6年ぶりぐらいだ。なあ、何で気づいたんだ?」

 

「大体状況証拠かな。刺された時の応急処置の的確さとか、雨宮吾郎が死んだ時期とか。

 転生だの前世の記憶だの、そういう要素が手元に揃ったらだいたい詰め切れた」

 

「シャーロック・ホームズかよ……」

 

「どっちかというと金田一耕助派だよ、アタシは。

 それとも元医者だしワトスン枠狙ってる?」

 

「俺は軍医になった経験は無い」

 

 

はぁー、と大きく息を吐き出し、目の前で噴き出した麦茶を布巾で拭いてるイバラを見ながら思考を回す。

 

正体がバレたことは割り切るとして、彼が役者を目指し始めた『目的』まで悟られるわけにはいかない。

 

イバラはエスパーでもなんでもないのだ、ボロさえ出さなければ誤魔化しは利く。

 

 

(どう誤魔化すべきかな……いや、そもそもどこまでたどり着いてるんだ?)

 

「で、役者目指し始めたのは、やっぱ例の事件の『黒幕』からアイやルビーを守るためか?」

 

「お前実はエスパーじゃないだろうな!?」

 

「舞薗さやか*5ちゃん似なのはどっちかってーとアイちゃんじゃね?

 アタシは大神さくら*6と終里赤音*7足して二で割った外見じゃん」

 

 

何の話だよ!とツッコむものの、流石にアクアの顔色は良くない。

 

ただでさえ転生なんてオカルトかファンタジーな現象に遭遇したのだ。

 

本気で目の前の女がエスパーか何かなんじゃないか?と思ってしまうほどに内心を見透かされていればこうもなろう。

 

が、イバラとしては集めて回った証拠からの推察でしかない。本人の悪運故か、証拠がホイホイ集まるだけで。

 

 

「五反田監督が言ってたけど、元は役者にそこまでノリ気じゃなかったんだろ?

 なのに最近は監督のトコに入り浸ったり、レッスンや仕事の紹介も頼んでる。

 心変わりのタイミングは、アタシが刺される事件があった日のすぐ後。

 となると、アタシが刺されたあの事件か、ドーム公演が心変わりの原因だ」

 

(ぐ……合ってる……!)

 

「で、言っちゃなんだがアク坊は『ドーム公演に感動してママと同じ世界を目指します』なんて純粋な性格じゃない」

 

「ほっとけ!」

 

「じゃ、アク坊が役者を目指す原因になったのは、アタシが刺されたからってことになる」

 

 

ここまでは10割正解、聞いているアクアもツッコミを入れながら顔色が悪くなってきた。

 

心の中を覗き込まれるような錯覚を覚えながらも、目を離すことができない。

 

イバラのキレ目気味な視線が、まっすぐにアクアの目を捉えている。

 

 

「あの事件は色々と不可解だ、犯人はただの大学生、探偵でも何でもない。

 なのに引っ越したばかりのアイの新居を知ることができた。

 オマケに襲撃に使ったのは、タダのナイフじゃなくてハンティングナイフ。

 アイを刺し殺すだけなら、家にある包丁だって十分なハズなのにな? 

 

 ……アイを襲うように仕向けた黒幕がいる。

 それも新居の場所や、アタシが家にいる事を知ってるヤツだ

 

「……そこまで気づいてたのか?」

 

「まあな。とはいえ基本は警察に任せるつもりだったよ、犯人捕まってるし。

 そのうち証言から特定されるかと思ったんだが……その気配もない。

 かなり念入りに正体隠して接触してたんだろうな、捕まるのは望み薄だ。

 ハンティングナイフも黒幕が自分で用意するんじゃなく、犯人に買わせたんだろ。

 指紋も購入履歴も残らないから、マジで犯人の証言しか証拠が無い……」

 

 

あの事件からそれなりの日数が経過し、素直に取り調べに応じてるらしい犯人の証言も出そろっている。

 

恐らく警察も『犯人にアイの家の住所等を流した黒幕がいる』事までは掴んでいるが、それが誰かまではたどり着いていない。

 

相当用心深く計画を練ったのか、あるいは芸能界の闇に踏み込むから手が出せないのか、超常的なナニカが絡んでいるのか。*8

 

だがしかし、1つだけ黒幕に繋がるヒントがあった。

 

 

「だが、アク坊も気づいてるよな?黒幕はどうやってアイの住所を知ったのか」

 

「……ああ、仮説程度だけど、気づいたよ」

 

「黒幕が個人情報保護なんて無視できる政財界の超大物かスーパーハッカー!

 ……みたいな特例は一端置いとくぜ。そこまで考えたらキリがないしな。

 んで次が星野家の皆と斎藤夫妻だが……ここは外す。私情込みだけどな。

 何の得もないし、『そうあってほしくない』のもある」

 

「そうなると、他にアイの家を知っている可能性があるのは……」

 

 

「「双子(オレたち/アンタたち)の父親」」

 

 

アクアは冷静に、イバラも笑みを消し、まったく同じ答えにたどり着いた。

 

 

「教えたのは……多分アイちゃんだな。ヨリを戻そうとでも言ったのか?」

 

「さぁな。ただ、どこかのタイミングで家の場所を教えた可能性があるのはアイだけだ。

 斎藤社長もミヤコさんも、俺たちの父親については知らないから」

 

 

その実態はルビーが自分の父親について「え、ママに男なんていないよ?処女受胎だよ?」とかいうヤバい結論に至ってしまい、

 

それを見たアイが「やっぱり父親も必要なんじゃ……」というしごく真っ当な気を回してしまったのが原因なのだが、

 

基礎スペックがおかしい以外は一般人な二人では、流石にそこまでは推察できなかった。

 

 

「で、アク坊が自分で犯人を追おうとしてるのは、

 色々抱えがちなアイが『私が父親に住所教えたせいで』

 みたいなアレコレを悟らせて背負い込む前にケリつけるためか」

 

「なあ、ホントにエスパーでもなんでもないんだよな!?

 俺たちみたいな転生者でもないんだよな!?おかしいだろ色々!!」

 

「フッ……アイドルは無敵だぜ!」

 

「バラドルのくせにあいだだだだだ!?

 

 

恒例のゲンコツグリグリをカマしながら、両者の思惑はおおよそ出そろった。

 

共通しているのは『これ以上黒幕に何かさせるまえに対処する事』。

 

『隠し通す』アクアと『二度とこんなこと起こさせないように伝える』イバラで微妙に分かれているが、その点についてはすり合わせと妥協も可能だ。

 

アクアをゲンコツグリグリから解放しつつ、イバラは立ち上がる。

 

 

「問題は、アク坊。その黒幕が次に動くのはいつか、だ」

 

「……しばらくは大人しくするんじゃないか?」

 

「いや、無いな、多分黒幕は快楽殺人者の類だ、利益主義じゃない。

 アイを殺して何らかの得があるってタイプなら、もっと確実に殺(や)る。

 吉良吉影がいつまでも手首蒐集せずに我慢できると思うか?」

 

「いや、分かりやすいけど例えが……」

 

「つまり、次に狙われるのはアタシかアイだ。

 アタシって障害を排除してからアイを狙うか、あくまで本命狙いか。

 どちらにせよ、今度はもっと派手に来る。悠長な事はしてられない」

 

「ああ、それはそうだな。ルビーやアイが巻き込まれる前に何とかしないと……。

 って、何やってるんだ?そこウチのクローゼットだろ」

 

 

リビングに併設されたクローゼットに歩いていき、それに手をかけ、開く。

 

そこにあった、いや、『いた』のは……。

 

 

 

 

「む゛ーッ!む゛ぅーッ!!?」

 

「ちょっ、なっ、ルビーッ?!」

 

「いやー、会話内容を静かに聞かせるならこれぐらいしか思いつかなくってさ!」

 

「法律とかさぁ!人の心とかさぁ!!」

 

 

猿ぐつわをかまされてビニール紐で縛られたルビーがクローゼットに安置されていた。

 

どうやらアクアとの会話をこっそり聞かせるためにこんなことをしでかしたらしい。

 

え、盗聴器なりスマホの通話モード押しっぱなしなり使えよって?

 

イバラちゃんは頭いいけど正面突破以外あんまり考えない子です。

 

ともあれ、イバラがサクっと手刀でビニール紐を切断し、猿ぐつわを外す。

 

 

「ルビー!だいじょ「ぜんぜえええええぇぇぇぇぇっ!!」おわっぷ!?」

 

「ふっ、勘違いしているようだがアク坊。猿ぐつわとビニール紐は合意の上だ!

 ルビーちゃんがギャン泣きしてるのは10割お前のせいだゾ」

 

「はぁ!?っていうか、え、先生?」

 

「こちら、星野ルビー改め、君にお世話になった天童寺さりなちゃんでございます」

 

「……はああっ!!?」

 

「やだあああぁぁぁ!ぜんぜぇがあぶないことするのやだあああぁぁぁ!!」

 

「よし、勝ったな。泣く子供を振り払って無茶はできまい!」

 

「お前いつか地獄に堕ちるぞ!?」

 

 

ルビーの復讐を思いとどまらせつつ、アクアに無茶をさせない一石二鳥の妙手。

 

すなわち『アクアの正体と本心を暴露させつつ、アクアの枷としてルビーをけしかける』。

 

イバラちゃんは正面突破以外あんまり考えない子だ、だから一発でカタがつく手段を取った。

 

法律違反であるという事に目をつぶれば完璧である。

 

 

「というわけで、後は任せな『アク坊』。今のアンタは、雨宮吾郎じゃなくてアク坊なんだから」

 

「! ……お前、ずっと俺を『アク坊』って呼び続けてたのは……!?」

 

 

しがみついて来るルビー/さりなをなだめながら、ここにきてアクアは真実に気づく。

 

生まれ変わっても前世の記憶があっても、イバラはアクアを『子供』として扱っている。

 

だから『ドルオタのセンセー』とも『雨宮吾郎』とも呼ばないし、アク坊という子供のような呼び方をブレさせない。

 

最初から、この問題を大人として解決するために。

 

 

 

(さ、あとは星野家を斎藤社長あたりに頼んでガードしてもらえばいい。

 アイが狙いづらいとなったら、次に狙いに来るのはアタシだろう?黒幕さんよ)

 

 

『返り討ちにしてやるぜ』。

 

肉食獣じみた笑みで、ぎゃん泣きしているルビーをBGMに、されるがままのアクアを背景に。

 

米金イバラは、最終ラウンドのゴングを鳴らした。

 

 

 

*1
コロナの大流行中にワクチンもまだ出回ってないのにバーベュキューやらキャンプやら一切自重しない陽キャがいたのは、個人レベルでアホなだけでなく、彼ら彼女らにとってそういうイベントは酸素と同じだからと考えられる。酸素を得てないと生きられないのが陽キャで、酸素が毒になるのが陰キャというだけで優劣はない。

*2
この世界ではコロナパンデミックは起きていない模様。

*3
ちなみに作者もです。

*4
身長・体重・3サイズからの推定値。100㎝超えだけど腹筋のせいでウェスト&アンダーバストが盛られるのでこのぐらいで収まる。え、みなみちゃん(Gカップ)よりは小さいけど十分デカい?それはそう。

*5
『ダンガンロンパ』に登場する『超高校級のアイドル』。声がカービィ。エスパーだから、が持ちネタ。

*6
超高校級の格闘家。大天使さくらちゃん。

*7
超高校級の体操部。声がニーサン。

*8
『推しの子』原作の今後の流れ次第だが、下手するとコレ全部の可能性がある。右京さんか銭形のとっつぁんかコナン君か名探偵の孫でもいない限りたどり着けそうにない。





今回が溜め回(4/4)なのでよーやくラスト。

さあ、溜めた分次回ではっちゃけるぞー!!
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