前回のあらすじ
溜め回 4/4
グッピー「!? プレッシャー!?」
「ようは、ギブアンドテイクの関係を結ぼう、ってことなんですよ」
都内某所、高級料亭の一室。
有名人や権力者の密談には、ホテルのスイートか料亭の一室がいい、とよく言われる。
それは、こういった高級趣向の店ほど『店の格』というモノを大事にしているため、客のプライバシーや個人情報を漏らさないよう気を使っているからだ。
だからこそ、真っ当『ではない』談合もまた、この手の店で行われる。
「僕は近々、自分の芸能事務所を立ち上げ、そこの代表取締役に収まります。
既に資本金は集まってますし、スカウトも好調。既に土台はできている。
そこで、事務所の建設や『後処理』の担当を、そちらにお願いしたいんです。
……指定暴力団『集英組』の皆さん」
彼の名は『カミキヒカル』。
アクアとルビーの実の父親であり、実力派揃いの『劇団ララライ』に所属していたOBでもある役者だ。
現在は劇団ララライを卒業し、芸能プロダクションを立ち上げようと計画中。
物腰穏やかな好青年といった風貌で、一見すればお人好しな美青年である。
……だが、しかし、その本性は。
(ああ、これでやっと。米金イバラとアイが力尽きる所を見ることができる)
己が価値を見出したモノが破滅するのを見届けることで、己の命の重みを実感できる異常者だ。
オマケに下半身事情も相当に終わっており、アクアとルビーを孕ませた当初は15歳の中学生。
さらには11歳の時に、とある人妻との間にアクアとルビーの異母兄まで作っている。
芸能界の闇を一人で体現しているようなこのサイコパスは、米金イバラと星野アイにターゲットを向けていた。
輝きの化身のような完璧で究極のアイドル、星野アイ。
その命の灯を摘み取ることが、彼の『性癖』に随分と合致したらしい。
そして、その対象はアイだけに収まらなくなった。
「僕のコネで『仕事』の紹介、さらに夢破れたタレントへの『新しい職場』の斡旋。
大阪の方じゃ『闇営業』なんかもあるみたいですし……そちらも考えておきます」
「ほぉー? ……ずいぶん美味い話をするじゃねーか、小僧。
他の事務所よか『羽振り』がいいのは悪い事じゃねぇ、悪い事じゃねぇが……」
テーブルをはさんで座っているのは、関東を中心として活動している大規模指定暴力団『集英組』の若頭だ。
暴対法が制定された後もあの手この手で生き残り、規模をじわじわと縮小しながらも、関東圏でも五指に入る組織を維持し続けている。
現在も(ギリギリとはいえ)1000人を超える構成員を保持し、マスコミと不動産業に根を張ることで間接的に影響力を伸ばしてきた。
文字通り、必要悪という名の社会の癌である。
「こっちに仕事振ってもらう条件が……この女一人『カニの餌にしろ』ってだけかい。
テレビでたまーに見た顔だがね。クセはあるが美人なのにもったいねぇ」
「ええ。はっきりいってそれさえこなしてくれれば、僕は先ほどの条件を丸のみします」
テーブルの上に置かれた写真は、事務所のプロフィールにも使われている『米金イバラ』のバストアップ写真だ。
ストーカーに武装までさせて嗾けたのに、負傷を押してライブまでやり切った時点で、カミキヒカルは片手間での排除を諦めた。
仮に自分がナイフどころか拳銃もって襲い掛かったとしても確実に勝てるとは言い切れない、そういう相手だと認識した。
彼は性癖と性格こそサイコパスだが、頭脳は決して鈍くない。
寧ろ、『本来の流れでは』最低でも2人の人間を殺害し、あちこちで子供まで作っているのに正体が露呈していない。
狡猾さと保身の上手さ、そして悪運の良さで言えば、間違いなくヴィランとしてふさわしい男なのである。
「……ま、受けてもいいぜ、だが手付金は……」
「『とりあえず』5000万円用意しました」
「ハハ、話が速いじゃねーか」
若頭とカミキヒカルが、料亭の一室にてほの暗い笑みを浮かべて握手する。
この瞬間、米金イバラの平穏な日常は終わりを告げた。
(僕の本命はアイだけど……米金イバラ、君も最近は、邪魔ものってだけじゃないんだよ。
あれほど生命力に溢れている、アイとは違う輝きを持った君が……)
『無慈悲な銃弾に撃ち抜かれて死ぬのは、どれだけ気持ちがいいだろう』
『あれほど輝く命が落花する様は、どれだけ自分の命を重くしてくれるだろう』
『親友を亡くしたアイが、その手配をしたのが自分だと知れば、どれだけ絶望するだろう』
そんな身勝手極まる欲望が吹き出し、無意識にカミキヒカルの口角を吊り上げる。
この先に待つ『悲劇』を想像し、しばしの愉悦に浸っていた。
速 報
あの大人気暴露小説が!
ついに実写映画化!
薄暗いオフィスで、【カミキヒカルを演じる誰か】が不敵な笑みを浮かべる。
「米金イバラを排除する……その為に大金を支払って、あのようなやくざモノまで雇ったんですよ、僕は」
【歪んだ憎愛を持つヴィラン】
【 カミキヒカル 】*1
「オヤジにゃ言うな、そろそろ後進に道を譲る時なんだからよぉ」
【その思惑に乗り、非合法な暴力をもって事を為そうとする若頭】
【島 鳥馬(シマ チョウマ)】
『芸能界の闇を体現した男と、社会の闇を体現した男がタッグを組んで狙う相手とは……』
「……え、アタシ?」
最強で無敵の、バラドルアイドルだった!!
【現代の巴御前・不死身のアイドル】
【米金 イバラ】*2
※主題歌『なんといおうがアイドル』*3が流れ始める。
さらに『原作:アイドル奮闘記(著:米金イバラ)』というテロップも流れる。
所謂『ヤクザの事務所』というイメージに合う建物の中で、いきなりドア蹴破って突っ込んでくるイバラ。
ドスやらポン刀持ったヤクザ達が一斉に振り向き、次々と襲い掛かる。
「人んチで大騒ぎしやがって!近所迷惑でクレーム入れにきてやったぞオラァ!!」
突き出されたドスをたやすく避け、腕ごと掴んで投げ飛ばす。
振り回しにきたポン刀にいたっては、どこぞの山育ちが騎士王にやったようにヒジとヒザで受け止め、へし折ってから顔面をぶん殴る。
そこらに置いてあった来客用ソファを持ち上げ投げ飛ばし、他の部屋や階下から増援が来る気配を察すれば……。
「脱出!!」
事務所(ビルの三階)の窓から躊躇なく外へ飛び出し、黒塗りの車の上に五点着地で落下して脱出成功。
【次々と襲い掛かる、集英組の刺客達!】
次に場面が切り替わると、地下駐車場らしき場所でついに銃(チャカ)まで持ち出してきたヤクザ相手に奮戦中。
常備してあった消火器を放り投げて銃弾で破裂させ、怯んだところに突入。
同士討ちを恐れて撃てなくなったヤクザを次々叩きのめしていると、そのうち一人が黒塗りの車に飛び込み、イバラ目掛けて突っ込んできた。
「いい加減に、しろっ!!!」
【ノースタント、ノーワイヤー!これが本気のアクションだ!!】
それに対し、あえて車の方に全力疾走することで加速が乗りきる前に接近。
衝突直前に跳躍し、ドロップキックでフロントガラスを突き破り、運転手の顔面へ蹴りを叩き込んだ。
またも場面が切り替わり、恐らく首都高のトンネルと思わしき場所をカメラが映す。
YAMAHA VMAXがそこを全速力で駆け抜けていき、それを追って来た数台の車を一気に振り切る。
リミッター付きでも時速180㎞に到達するモンスターマシンを一切ブレーキせずに操り、夜の首都高を駆け抜けていく。
先回りして道を塞いでいた黒塗りの車のバリケードに対し、ウィリー走行で車の一台に乗り上げることで大ジャンプ。
着地後に金田ブレーキをキメて、戦々恐々としているヤクザ達と向かい合う。
【劇場版 アイドルVSヤクザ 東京大決戦!】
「しょ、正気か、テメェ!?」
「やっとモーターのコイルがあったまって来た所だぜ!」
【20XX年 〇月×日 公開!】
「いやー、あんときは大変だったなぁ」
「この内容で九割ぐらい事実ってウソでしょぉ!?」
「っていうかその一言で済ませないでよ!!」
「え、私達【B小町】としてコレに挑むの?マジで???」
新生B小町の面々を前に、自分の新作主役映画(なお原作も自分)の先行公開PVを見るイバラ(3X歳)がそこにいた。
前回でも十分はっちゃけてると思った諸君。
これが俺の本気のはっちゃけだー!!!