前回のあらすじ
イバラ「明日もう一話上げるつもりがテンションのままに書きあがっちゃったから一日二話投稿だってさ」
いーちゃん「何の話!?」
イバラ「感想&高評価ヨロシクぅ!」
いーちゃん「だからなんの話!?」
「……っていうか、本当にいるの?そんなお医者さん……」
「おう、マジだよマジ。しかも常習犯っぽくて看護師さんも呆れてた」
「えぇ……」
その病院大丈夫?と言う感想が真っ先にくるいーちゃんだったが、
これにツッコみ過ぎると世界観的なナニカに引っかかりそうなので一端言葉を引っ込める。
両親が死んで色々とふさぎ込んで、持ち前のフィジカル(未完成)で隣県まで歩いて、なんだかんだで入院することになって。
そこに熱烈なB小町推しドルオタなお医者さんがいた、と。
……ちなみにイバラとアイは同い年で、入院当時中学三年生(15歳)だったのがイバラ。
さりなが死んだのはこの三年前、アイが妊娠してせんせの所に来るのはこの一年後となる。
イバラ12歳(さりな死亡)→15歳(イバラとせんせが遭遇)→16歳(アイが妊娠&出産)→16~17歳(イバラがデビュー)→19歳(現在)、というわけだ。
看護師が呆れてるってことは原作では常習犯とまでは行かないようだが、あの手慣れ具合からすると一度や二度ではない。
「え、待って、それでなにがどうなってアイドル目指すの???」
寧ろ思春期の少女ならトラウマになりそうなイベントである。
『そのお医者さんがすごいイケメンだったとか?』と聞けば
『いや、全然タイプじゃないなー。顔は……60点ぐらい?』*1と割と厳しい評価。
いやまあ、点数については周囲にいるのが芸能人だらけだから基準がイカれてる可能性もあるが。
なお、とある雑誌のインタビューで判明したイバラの好みだが、
端的に言えば『性格はトキで外見はラオウ』もしくは『女装が似合いそうなレベルの低身長美少年』*2である。
「せっかちだなぁー、いーちゃんは。そんな事だと彼氏もできないぞ♪」
「大丈夫、イバラちゃんよりは可能性あるから」
「言うじゃねぇかこのアマ後で覚えとけよ」
「イバラちゃんが希望する男の人は核戦争の後じゃないといないでしょ!?後者に至っては犯罪じゃない!」
「合法ショタ狙いだからセーフ!実際はちょっとミヤコちゃんと美少年談義してる程度だからセーフ!!」
アイドルとしてはアウトだよ!といういーちゃんのツッコミで一端漫才が打ち切られ、ぜーぜーと息を切らしながらも続きが促される。
この二人を二人だけにすると会話が毎回明後日の方に暴走しては本筋に戻る……を繰り返し続けるので、いーちゃん以外のツッコミ兼進行役が必須だ。
ただしアイあたりを混ぜるとマイペース×2でさらに収集がつかなくなるので素直に斎藤夫妻のどっちかを呼びましょう。
なんだかんだ真面目なので胃痛役にピッタリです。
【鬼畜プロデューサー著 米金 イバラの取扱説明書(苺プロダクション) より】
「で、そのドルオタの医者に聞いたわけよ。『病室でなにやってんスか?』って」
「まあ、うん、常識的な質問だね……それで?」
「メガネをクイってしながら『美しいモノを見ると健康にいい。こんな田舎じゃアイドルのライブなんてやらんからな、医療行為の一環だ』ってさ」
「うーんもう1から10までアウト」
「しかも何故か消灯時間でもないのにいつの間にか電気消えてたからな、ライブの雰囲気だけでも味わいたかったみたい」
「訂正、10どころか15ぐらいアウト!」
※注 ゴローせんせが推しの子本編第一話でやってたことそのまんまです。
「え、まって!?そんな人と出会ってアイドル目指そうと思ったの?!ホントなんで!?」
「せっかちだなぁー、いーちゃんは。ってこれ二度目だぞ!」
こほん、と一つ咳払い。今度こそアイドルを目指した本質に踏み込んだ。
「いや、バカな大人だなーとか、15歳にあの目向けてるのは若干キモいなーとか、
そう思ったんだけどさ……笑顔が、本物だったんだよねぇ。それはもう清々しいぐらいに」
「……『笑顔』?」
うん!と笑顔で返すイバラは、既にさっきまで見せていた口元引き締めたヅカ系スマイルではない。
いつものように、少女というよりは少年じみた……お茶目さと無鉄砲さをまぜこぜした笑みになっていた。
『そうした』のではない、『そうなった』。
嘘が武器になるこの世界で、自分をさらけ出してぶつかっていく事しかできない彼女が、
嘘の代わりに身に着けた……あるいは生来身についていた武器が、タフな心身と『コレ』だ。
「あの時のアタシはさ、もう生きてるって言える状態じゃなかったんだよ。
心臓動いてるだけ、息をしてるだけ、まだ死んでないだけ……そんな感じだった。
だけど、それじゃあダメなんだ。だってそれは、アタシも周りも幸せにならない」
アイが放つ光と熱が、惹きつけた者を焼き焦がしながらも近づくのを止められない灼熱なら。
イバラの放つ光と熱は、遠くにいる誰かまで届く、夏の日差しと春の風を混ぜたような日輪だ。
「ふさぎ込んだアタシを見て、おじいちゃんとおばあちゃんはいっつも悲しそうにしてた。
先生も友達もそうだし、きっと死んだパパとママだって喜ばない。アタシはそう信じてる。
……アタシだってそうだ、落ち込んだ人やふさぎ込んでる人を見るとさ、笑顔にしたくなる」
思い出させたのがドルオタの医者ってのがアレだけど、と一言付け加えつつ、ニッ!という効果音が似合いそうな笑顔を向ける。
大きく緩んだ口元に白い歯を見せる、アイドルがステージの上で見せる笑顔と言うにはあまりにも可憐さが足りていない。
アイの笑顔ほど『惹かれる』力もない、だが、この笑顔に『救われた』人間がどれだけいるのかわからないほどに、温かい。
「知ってるよ、アタシがB小町に入った時、元居たファンから散々言われてたのはさ」
「それはっ!……その、ごめん」
「いーちゃんが謝ることじゃないって。実際、アイちゃんの代わりなんて一万歩譲っても務まらないし」
【顔がいいだけのデカ女】
【アイドルらしくなさすぎる】
【アイの代役とかふざけてんのか】
【女子プロレスと勘違いしてる】
エトセトラ、エトセトラ……イバラへのバッシングは、決して軽いモノではなかった。
ともすれば炎上商法一歩手前ともいえる奇策、それが成功したと言えるのは、伝説となったスペインでのロケを待たねばならない。
だが、デビューからロケまで約一ヵ月……イバラの加入発表から考えれば、もっと長い期間があった。
その間のイバラの心境を、いーちゃんは推し量る事すらできない。だが……。
「アタシはアレでいいと思ってる。今でもな」
「……え?な、なんで!?だって、アンチのカキコミとかも結構あって……!?」
「だからさ。 なあ、いーちゃん。世の中って基本的にクソなんだよ。
思い通りになることなんて滅多にないくせに、クソイベントは次から次へとやってくる。
神様ってやつがいるなら、そいつはきっと残酷で、ロクデナシで、性悪のサディストだ。
……だけどさ。笑顔でいる間は、ほんのちょっとだけ……そのクソ具合を忘れられる」
医者という職業が、高給に見合った……あるいは『高給でも釣り合わない』ハードな仕事でも。
イバラが見たあのドルオタの医者は、B小町を……アイを推している間は、この世界で本物の笑顔を浮かべられた。
その笑顔を見て、イバラは心底からこう思ったのだ。
「笑われたっていい、嘲笑されたっていい、バカにされたっていい!
アタシを見て、この世界のクソっぷりを一時でも忘れられるんなら、それでいい!
アイドル向いてないってのはとっくに分かってるよ。デカいし、ゴツいし、可愛くないし。
誰かを笑顔にできるんなら、芸人でもプロレスラーでもなんにでもなったさ!
バラドルだろうがなんだろうが好きに呼べばいい、それでも……」
ベンチから立ち上がり、夕暮れから夜に変わりつつある公園で一歩前に出る。
振り向いた彼女が、黄昏時の夕焼けと夜闇が混じりあった世界で、一人だけ太陽となる。
強すぎる意志を秘めた瞳、どんな苦難も試練も、彼女の心を折ることはできない。
決して沈まない太陽ではない、雲や夜によって陰る事もあるだろう。
しかし……夜の闇に沈んでも、陽はまた昇る。
「『皆を愛する太陽でありたい』。これは、絶対に嘘じゃない」
「それを無くさない限り、アタシはどこまでいっても太陽(アイドル)だ」
ぽかん、とかわいらしく口を開けて、いーちゃんはその宣言を受け止める事しかできない。
言葉だけを聞けば、根性論で開き直った強がりだ、と言う者もいるだろう。
だが、相対して言われたからこそ彼女は何も言えなくなる。
『この女ならできるかもしれない』……そう思わせる『凄味』が、空間を支配しているのだ。
「……ねえ、イバラちゃん」
「ん?」
「……私も、なれるかなぁ……イバラちゃんみたいに、そんな風にっ……」
目の奥が熱くなる、演技で泣くのとはわけが違う。
感情が雫となり、抑えきれない発露となって零れ落ちそうになった。
そして、「なーにいってんだか」とイバラが呆れたように言い放ち。
「とっくに太陽(そう)だろ、いーちゃんは」
「……ぅえ?」
「そら、アイちゃんみたいな一番星と競えるか、っていうとまだまだ厳しいけどさ。
いーちゃんを推してるファンにとっては、いーちゃんが太陽なんだよ。
クソみたいな世界を、いーちゃんに照らされてるおかげで生きてるヤツだっているんだ。
そいつらにとっては、アイちゃんでもアタシでもない。いーちゃんが太陽なんだよ」
あ……と、いーちゃんの口から小さく吐息が漏れる。
それが、決壊の合図だった。
思わずベンチを飛び出して、衝動のままにイバラに抱き着く。
うぉう!?と驚愕の声を上げたイバラだが、すぐに彼女の様子を見て困惑を収めた。
イバラの胸に顔をうずめて、しゃくりあげながら涙を流す。
アイドルの仮面をひっぺがした、年相応の『女の子』がそこにいた。
(……泣かせちゃったけど、これでいーのかなぁ。ドルオタのセンセー?)
胸に顔を押し当てて泣いているいーちゃんの背中を撫でたり頭を撫でたりしながら、ちょっとだけ困惑を残した頭で空を見上げた。
『なあ、ドルオタのセンセー』
『いや、そこはせめて医者の先生とか……で、なんだい?』
『アタシさ、アイドルになれると思う?』
『(……俳優とか女子プロレスラーじゃなく?)』
『おい、今何考えたロリコンのオッサン』
『ロリコンじゃない! ……あー、そうだな。
なれるかどうかは分からん、俺は別にプロデューサーじゃないしな』
『……そーだよなぁ……』
『(やべ、年頃の女の子に返していい返答じゃねーな今の……)
……だけど、まあ、目指すのは自由だと思うぞ。
見た感じ身長も高いし、意外とモデル方面でも売れるんじゃないか?』*3
『……そっか。じゃあ、ちょっと調子乗ってみよっかな』
米金 イバラのオリジンは、それほど複雑なモノではない。
ドン底に落ちて、ちょっとした出会いで立ち上がって、ガムシャラに突っ走った。
『陽はまた昇る』、それだけを座右の銘にして、今日もバラドルは生きている。
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これが俺の勝利の方程式だ!