キレイナカミキヒカル   作:ハッピーエンド

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久々にハーメルンで投稿しますが、よろしくお願いします。


第1話 そんな話聞いてませんよアイさん!!

 

 

 

「あのーアイさんが今、持っていらっしゃるその棒は一体なんですかね?」

 

「妊娠検査薬だね」

 

「判定と書かれた部分に赤線が引いてありますが?」

 

「妊娠したってことだね」

 

「御懐妊おめでとうございます……少々申しづらいですが、あえてお聞きしますね。誰とのお子様でいらっしゃいますか?」

 

「君との子供だね」

 

「……そもそも僕とアイさんは……えっと、そう! 子供ができるような行為はしてませんよね?」

 

「したよ?」

 

「したの!?」

 

「ヒカルが無防備に寝てるときにパクッと」

 

 

 天国のお父さん、お母さん。ヒカルはいけない子です。まだ僕は15歳の中学生だというのに1つ年上のアイドルに知らぬ間に襲われて、子供を作ってしまいました。

 

 

「ってええええぇぇぇぇ!? な、な、なんてことしてくれたんですかアイさん!? 人の童貞を予告宣言もなく、なに奪ってるんですか!!」

 

「私も処女だったからおあいこじゃない?」

 

「過去形が重い……」

 

「私は物理的に重いよ。私の中に別の命があるんだから」

 

「やかましいわ!!」

 

 相変わらずツッコミの速度凄いねー、なんて笑っている頭お花畑のポンコツは放っておいてこれからの未来を考える。

 

 もし、15歳の舞台俳優と16歳のアイドルが子供を作ったという話が外部に漏れたらとんでもないことになる。

 少なくともアイさんはアイドル業を畳まないといけなくなるし、僕の仕事も多大な影響が及ぶだろう。

 最悪の場合、二人揃って芸能界から去る必要まで出てくるかもしれないのだ。

 

 そうなった場合、僕たちは終わりだ。お腹にいる子供を育てるためには金は必須だ。だからこそ、稼ぐための手段をここで失うわけにはいかない。

 

 つまり、僕たちは

 

 

 

 

 

 

 

 

「この秘密を隠し通さなければならない」

 

「なにカッコつけてるのヒカル?」

 

「だまらっしゃい! 誰のために頭悩ませてると思ってるの!!」

 

「はーい!」

 

 アイさんは返事だけはやたら一丁前だ。それでも惚れた弱みを握られている以上、彼女に足らない頭脳面では僕が頑張らないといけない。

 

「えーまずは現状把握をしたいのですが、このことを僕以外に告げたりとかは?」

 

「それはないよ。もちろんヒカルだけにしか伝えてない」

 

 よかった。さすがのアイさんもそこまで考えなしではなかった。

 

「……ヒカルは私の妊娠を隠すべきだと思ってるんだよね?」

 

「はい。絶対にこの秘密は死ぬまで墓まで持っていくべきです」

 

 被害が僕たちだけに及ぶのなら構わない。だが、話はそう単純に済むわけがない。

 アイさんが所属している苺プロダクション、僕が所属している劇団ララライの経営、その他関係者の生活にまでヒビが入りかねない核弾頭を抱えているような状態だ。

 

 それに生まれてくる子供が後ろ指を指されることになるかもしれない。それだけは絶対に許容できない。

 子供には僕とアイさんの愛をたっぷり注いで幸せな生活を送ってもらう。

 

「アイさんはアイドルを続けたいですよね?」

 

「……うん。母親としての幸せとアイドルとしての幸せ、どっちも両立したい」

 

 そう、僕の彼女はいつだって欲張りなのだ。よくことわざで二兎を追うものは一兎をも得ずというが、アイさんは例外だ。

 複数の選択肢を提示されている状況でも、アイさんはその選択肢の結果全てを得ようとする。

 

 生半可な道ではない。覚悟が必要だ。

 

 だから僕も不退転の決意をしなければならない。全てを欺き、悲劇を喜劇に変える。

 目指すのはハッピーエンド、バッドエンドなんてお求めじゃない。

 家族全員揃って笑い合える未来しか僕には要らない。

 

「やっぱり迷惑だよね……お腹の子はおろ「産みましょう、アイさん」え?」

 

 彼女に今のような曇り顔は似合わない。

 

 太陽のように燦々と輝く笑顔、他者の介入を許さない完璧なパフォーマンス、完全無欠に思える言動、吸い寄せられる透き通った天性の瞳。

 

 それを僕の意志ごときで失わせていけない。

 

 だって、僕が好きになったアイさんは完璧で究極のアイドルなんだから。

 

「外部に一切の情報を流さず、出産しましょう。そして、アイさんがアイドルを続けられるようにしましょう。僕やアイさんが経験した地獄のような家庭ではなくて愛に満ちた家族を作りましょう。子供が独り立ちするまで子育てに四苦八苦しながら頑張って、夫婦二人でしわくちゃになって死ぬまで寄り添い合いましょう。そのために僕がアイさんのために道を切り拓きます」

 

 

 

───ついて来れますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、大筋は理解した。理解は、な。それにしてもうちのアイを妊娠させた上に出産させて欲しいってねぇ」

 

 その後、僕たちはアイさんが籍を置く苺プロダクションの事務所に足を運んでいた。

 というのもさすがにアイさんの出産を二人だけで隠し通すのは到底不可能なことだったからだ。

 

 これから時間が経てば経つほどアイさんのお腹は大きくなる。

 そんな状態でアイドル活動をするのは現実的ではない。

 

 つまり、一旦活動自体を休止する必要があるということだ。

 そうなれば、事務所側から声明を出して貰わなければならない。

 その旨を含めた事のあらましをプロダクションの経営者とアイさんのマネージャーに申し伝えに来たのだ。

 

「はい、まずは佐藤(・・)社長にお話を通すのが礼儀だと思いました……いえ、このような事態になってしまった時点で社長の顔に泥を塗ってしまっていますが、それでも私にできることは精一杯やらせていただきたいと思って、ここにいます」

 

「当たり前だ! お前がアイを誑かさなければこんなことにはなってないんだからな!! それに俺の名前は佐藤じゃねえ、斉藤だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 え? 斉藤、社長……?

 ねえ、アイさん。なんで間違った社長の名前を僕に教えてるんですか!?

 あっ、やっちゃったみたいな顔してないでこの事態をどうにかしてくださいよ。

 

 斉藤社長の風貌怖過ぎてチビりそうなんです。アイさんが言っていたような面白い人じゃなくて怖い人なんです。ヤ◯ザにしか見えないんです!!

 

「大体そもそもガキ同士が子供を作るような行為をするな! いやするな、とは言わねえ。だけどせめて避妊具をつけるとかやりようはあったはずだ」

 

「え、ゴムってどこで買えるの?」

 

「そりゃあ今時は薬局とかコンビニで買えるだろ……ってかアイ、なんでお前がそんなこと言うんだ。この小僧が責任を持って買うべきだった、違うか?」

 

「違うよ? だって、私がヒカルの寝込み襲ったからね」

 

 サングラスの奥に見える斉藤社長の瞳が点になる。

 あれ、この展開どこかで見たことがある気がする。まさか斉藤社長って僕と同じ……?

 

「いやいや待て待て! 寝込みを襲うなんてあり得ないだろう! もし仮にお前の言う通りだとしたら小僧が目を覚まして抵抗するに決まってる」

 

「うん。だからヒカルの飲み物に睡眠薬入れたよ! いやあこの発想は我ながら天才だと思ったね」

 

「え? アイさん、そんなこと僕も聞いてないんだけど!?」

 

「そりゃあ言ってないからね!」

 

 場が凍り付く。ここまで事態を静観していたアイさんのマネージャーが大きな溜め息を吐き出した瞬間、斉藤社長が土下座した。

 

「も、申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「いえ、こちらこそ的中率?が高くてごめんなさいぃぃぃ!!」

 

 気が付けば、僕もソファーから飛び降りるような勢いで斉藤社長に土下座をしてお互いに謝り合っていた。

 

 その光景を見たアイさんが「カブトムシが縄張り争いしてるみたい〜」と言って、思わず斉藤社長は渾身のデコピンを彼女にお見舞いしていた。

 アイさんは軽く泣き顔になっていたけど、こればかりは自業自得なので擁護はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、事情は全て理解した。だが二人共分かっているな? お前らが進む道は決して生半可なものじゃないんだぞ。子育てにしても仕事のことにしても、だ」

 

「分かっています。それでも僕はアイさんとなら乗り越えてみせます」

「私もヒカルとなら大丈夫。子供もアイドルも両立してみせるから」

 

「……そうか、覚悟は決まったようだな。なら、苺プロダクション総出で! というわけにはいかないが、俺とミヤコがお前らのサポートをしてやる」

 

「本当ですか!?」

 

「ただし、条件がある!」

 

 

 

 

 

───カミキヒカル、今の所属事務所を辞めてうちに入れ。

 

 

 

 

 

 はい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勢いに身を任せて書いてみましたが、この作品どうでしたでしょうか。
あらすじにも記載しておりますが、感想欄の反応がぼちぼち良ければ続きを書いていきたいと思っております。

2023/6/5追記
読者の方にミスを指摘されたので、修正しました。ご指摘、誠にありがとうございます。
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