銀髪美少女にTSして適当に生きる。 作:キンカク
適当に生きると言ったって、世の中には柵ってやつが多い。
私の場合は自分の容姿と、Aランク冒険者っていうのが人生の柵になることがほとんどだ。
故郷にいた頃は、やたらと顔がいいせいで周囲の男子から変に意識されていた。
そのせいで女子からも何かと遠巻きにされ、私は浮いていたと言って良い。
魔術に傾倒し、同年代どころか村の誰よりも強い神童として扱われていたから、攻撃の対象になることはなかったけれど。
故郷を出て、冒険者になってからは一層それに拍車がかかった。
腕のいい美少女冒険者なんて、目立たないはずがないのだ。
それを避けるなら、普段から顔を隠して、実力も隠して生きていくしかない。
でも、その生き方は流石に窮屈すぎる。
私はもう少し肩の力を抜いて生きたいのだ。
そうすると、むしろこういうやっかみは逆に私の立場を守る防波堤にもなった。
考えても見てほしい、周囲からしてみれば私はどうやっても目に入る注目度の高い存在だ。
変に絡みに行って相手にされなければ、そいつはとても滑稽な存在に見える。
それでプライドを傷つけられ逆上する輩もいるが、そういうのは直接ボコしていい相手なので、気が楽だ。
おかげで、私の評価はお高く止まった美人の冒険者という感じに落ち着いているだろう。
適当に生きるとは、多少の厄介事を天秤にかけて、ある程度は受容しつつも譲れない部分は譲らず適当に済ませるということだ。
今回の件に関してもそれは変わらない。
私が適当にやった結果、変なところから問題が発生したけれど。
それを適当に解決してしまえば、むしろ感謝されるなんて。
特に今回は、本来なら発生していた未曾有の大事件を、瀬戸際で阻止できるかもしれない。
私の生き方が誰かを救うこともある。
そう考えれば、むしろこういう厄介事は歓迎すべきこと……なのかもしれない。
そもそも起きないのが、一番なのはもちろんだけどもね。
◯
「んで、原因はこれか……」
調査という形でダンジョンに潜ってしまえば、原因の究明はさほど難しくなかった。
そもそも、どういう理由で呪具が上層のダンジョンの宝箱に交じるのか。
その理屈は、ある程度幾つかの可能性で説明がつくのだ。
ダンジョンは神々が作り、魔物を封じ込めたというのは最初に説明したけれど。
封じ込めた魔物の中には、武器を持つ魔物もいる。
そういう魔物の武器ってのは、魔物の魔力や何かで呪われていて、そしてそれが周囲に影響を与えることがあるのだ。
「“
それが骸将軍。
アンデッド系のモンスターで、人馬一体のケンタウロスが、全身骨になったような姿をしている。
手には一振りの大剣。
全長が私の身長の二倍くらいはあるデカブツで、迷宮タイプのダンジョンだと場所によってはそもそも振ることすら困難な代物だ。
ちなみに私の身長は百五十そこら。
胸はやたらと育ったのに、こっちはあまり育たなかったのが個人的な不満だ。
だったらいっそ貧乳のままちんちくりんに育つか、もう何から何までボンキュッボンがよかった。
いや後者は更に目立つから微妙だな。
ただでさえ、今でも視線と肩こりがきついのに。
……話がそれた。
「とりあえず、下層をざっと探索して、これ以外に原因と思えるものがないってことは……まぁこれで当たりってことだよな」
もしくは、見てわからない程度には複雑な要因が隠されている。
後者だった場合は厄介だが、逆に話は楽だ。
私個人にはお手上げなのだから、それをギルドに報告して丸投げしてしまえばいい。
多分、もっと大きな冒険者パーティによる人海戦術の調査が始まるだろう。
その頃には私の手からこの件は離れているので、対処は適当でいいってこと。
「だから私のするべきことは……こいつを倒してギルドに報告して様子見、これしかないな……!」
いいながら、さっさとこいつを討伐してしまうことにした。
討伐するだけなら簡単とは言わないが、無理な相手ではない。
さっさと私の手からこの件を切り離すなら、それは避けては通れない道であった。
「“光よ、死者を導け”」
魔力を言葉に込めながら、私は骸将軍に向かって飛び出す。
不意打ちは、そもそも最初に使う魔術のせいであまり意味をなさなかった。
「“光よ、我が身を守れ”」
この世界では魔術というのは魔力を外に形を伴って放出する技術のことを指す。
その方法はおもに二つ。
魔力を言葉に込める、いわゆる“詠唱”による魔術。
そして、魔力を文字に込める“魔法陣”による魔術。
この二つだ。
私は主に前者の魔術を好むのだが、その理由は扱いやすさだ。
今、私が起動した二つの魔術は、それぞれ光属性の浄化魔術と防御魔術。
アンデッドに対しては聖なる光が有効という、ファンタジーもののイメージにピッタリな魔術だ。
魔術を詠唱で発動する場合、体内の魔力を言葉に乗せる必要がある。
言霊という概念が前世にもあったが、アレを物理的にしたような感じだ。
肝心なのはその言霊に、しっかりとしたイメージを与えること。
私の場合は、魔術に対するイメージが前世のオタク知識によって予めある程度できていた。
前に魔術の才能があるといったのはこれが理由。
逆にこの世界の人は、魔術の発動をイメージするために、学習と体験を繰り返し、少しずつ魔術を体に馴染ませていくしかない。
学習の段階で、素養に違いが出てしまうのだ。
なので、普通の魔術師は詠唱だけで魔術を使わず、魔法陣を併用して魔術を使う。
魔法陣の良いところは、一度描いてしまえば魔術の“イメージ”も魔法陣に記録されるため使いまわしたきくところだ。
つまり、何度でも使える。
だいぶ話が長くなってしまったけれど、詠唱だけで自在に魔術を操り、敵を屠る。
これが私の転生チートというわけ。
今回は、それを遺憾なく発揮して、強敵“骸将軍”を討伐しようというわけだ。
本来なら、Aランク冒険者が二人くらいはいないと、安全に倒せない相手なんだぞ?
Bランク冒険者のパーティだと、きちんと準備した上で挑んでも、最悪死者が出るくらいには被害を被る相手だ。
それに対し、私は魔術で生み出した光弾をぶっ放し、当てる。
この光ってのがそれはもう暗闇のダンジョンには眩しくて、光った時点で相手は気がつく。
当たるかどうかは賭けだったが、私は賭けに勝ったようだ。
「“オオオオオオオオ”!!」
骸将軍はどこにあるんだか解らない発声器官で雄叫びを上げると、こちらに突っ込んでくる。
ここは比較的広い空間で、その入口に立っている私と骸将軍の間にはだいぶ距離があるのだが、それを一瞬で詰めてくる速度だ。
だから、予め準備していた魔術で迎撃する。
「“光よ、三度死者を導け”!」
今度は無数の光弾が出現し、射出される。
それらは骸将軍に一目散で向かっていくが、骸将軍は機敏な動きで左右に避けてしまう。
四肢を巧く使い、三次元的な機動でどんどんこちらに近づいてくるのだ。
それでも、一直線に真正面から迫られるよりは全然マシだ。
「“グオオオ”!」
何より、相手は躱しきれていない。
最初の一発目が効いているんだ。
アレで思ったよりも消耗してしまったせいで、本来の動きに体が追いつけていない。
お陰で少しずつこちらの攻撃を掠めたりして更に消耗する悪循環。
じわじわと骸将軍は追い詰められていた。
それでも、自分の消耗より相手に接近するほうが早いとやつは解っている。
暫くの攻防の後、ついに骸将軍はこちらに到達した。
大剣を振り上げ、一撃でこちらをすり潰そうとしていた。
が、残念ながらこの戦闘は、
そもそも、アレが当たらなければ骸将軍はこちらの攻撃をすべて回避して接近していただろう。
そうなれば、棒立ちで光弾連射なんて戦術は愚策もいいところ。
だが逆に最初の一発が当たったことで、こうも良いように消耗させられている。
そして、これだけ消耗させてしまえば。
もう一度距離を取られたら、こいつは私に二度と接近することはできない。
「“光よ、彼方まで我が身を飛ばせ”!」
そして私は、部屋の反対側まで
もちろん、生身でそんなことをすれば私の体はミンチより酷いことになるが。
最初に使った光の防護魔術がそれを防ぐ。
何故、一発目の光弾を放ってからわざわざ防御魔術を間に挟んだのか。
理由はこれだ。
万が一初弾が命中しなかった場合は、その後の戦闘で骸将軍の攻撃を防げるように。
初弾が命中した場合は、この光速移動で身体を保護できるように。
だからわざわざ、防御魔術を使ってから光弾の連打し始めたのである。
骸将軍の攻撃は空振りに終わり、地面に叩きつけられ迷宮を揺るがした。
土煙が上がる中で、私は手に光を浮かべる。
「さて」
土煙の中から、アンデッドの瞳が怪しく光、こちらを見る。
なかなかに壮観な光景だろう。
恐怖を覚えるような、威圧的な視線だ。
だが、もはや今の私にとって。
「蹂躙してあげよう、骸将軍」
今のそいつは、適当にやっても勝てる雑魚と、何ら変わらないのであった。
適当に生きると言っている割に、割とカッコつけなところのある銀髪TS美少女です。
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