自称最強チート転生者と忘却された勇者   作:ユフたんマン

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まさか1話で評価されるとは思ってもみなかった…ありがてぇありがてぇ…


警戒

「貴方…大丈夫?」

 

血塗れの、穢れた俺を拾ってくれた彼女。

温もりを与えてくれた恩人。

 

「ほら、この仮面作ってあげたわよ。外に出る時はこれを付けなさい」

 

手渡された仮面をギュッと抱きしめる。

 

「ウォル、こっちに来て」

 

こちらに手を差し出された。それに手を伸ばすと…

 

 

彼女の手が紅く染まった。

 

 

 

 

 

日の出と共に鶏のけたたましい鳴き声で目を覚ました。夢を見た。最悪の夢だ。

 

けど、久しぶりに彼女の顔を見れたのは良かったかもしれない。

いや、やっぱ辛ぇわ。こんな夢を見たのも全部あいつのせいだ、勇者テラシアのせいだ。

 

一応昨日に奴の境遇は聞いた。

勇者の力の代償は、魔王討伐と同時に彼女がいた痕跡が全て消え去るというとんでもないもの。

世界が平和になってもそこに彼女の居場所は無い。

本来ならこの世界の生物は記憶を改竄され、勇者の記憶は消え失せるらしい。

 

だが俺は覚えている。勇者には適当に誤魔化したが理由は簡単。俺が転生者であり、魂がこの世界由来のものでは無かったが故に記憶の改竄の対象にならなかったのだろう。

まぁ同情はする。

 

いや、覚えているという話は置いといて俺たちは殺しあった仲だぞ?味方でもなく普通に敵だし聖剣ない勇者じゃ…もう勇者じゃないのか…。

聖剣がないテラシアじゃ俺に敵わんだろうに何故その本拠地であるこの家に泊まれる?

俺ってそんなに信頼されてるのか?

断ったのに強引に家に入って来て勝手に泊まったしなんだコイツ?俺を舐めているのか?

 

なんて悪態を付きながらベッドから降りる。

適当に着替えて四天王の時に付けていた仮面を付けて外に出る。

 

何故人間に変装せずに仮面なのかって?疲れるんだよ普通に。前世の感覚で言うとコンタクトレンズを毎日ずっと付けてるようなものだ。

それに寝てる間に奴が部屋に入ってきた場合素顔を見られる可能性があるから寝てる間は魔法を使い続けてたんだ。

まぁ人間はこの痣のことを知らないだろうからそこまで気にする必要は無いかもしれないが念には念を入れてだ。

 

 

家の外に出て家畜の面倒を見る。家畜周辺の清掃と餌やり、ついでに素早く乳しぼりを済ませて鶏の卵を回収する。

魔法はやはり便利だ。清掃も全て一瞬で出来てしまう。牛糞は肥料に使う為、離れた場所で発酵させる。

 

ある程度掃除が終わればそこから畑に移動する。

 

「“水飴”」

 

空へ撃ち出した粘度の高い水の塊が畑へと降り注ぐ。落ちる直前に弾けて粘度は元通りただの水のものに戻る。栄養たっぷりの特別な水だ。

勿論畑用に威力や規模は抑えているため、全てに均一に水やりが出来る。魔法を使えば水やりも一瞬なのだ。

植えているのは基本的に野菜ばかり。少しだけ果物も植えているがそっちはおまけ程度だ。

 

適当に野菜を収穫して小屋周辺を回る。

見て回るのは俺が付けたマーキング付近。俺の縄張りの印のようなものだ。

俺の魔力を込めた水を含んだ木が家、家畜小屋、畑を囲むように並んでいる。

この山の主の魔物の群れの目の前で魔力を全力で解放したため、この山に棲む魔物達は俺の魔力に怯えてここに近付かない。

 

が、コロニーを追い出されたり潰されたりした『流れ』と呼ばれる他の地域から訪れるゴブリンやオーク等の知能が低い、もしくは魔力感知が鈍い種族が時たま侵入して家畜や畑を荒らすことがある。1度やられたよ畜生。

 

だから近くに流れの反応が無いか軽く見回りをしているのである。足跡やゴブリン達特有の悪臭、普段と何か変わって居ないかを確認する。

 

異常無し、ヨシ!(現場猫並感)

 

 

 

 

家に戻ると何やら取り乱したように周りをキョロキョロと挙動不審に見渡すテラシアがいた。

何やってんだと近づくと、急に駆け寄ってきた。

 

「何処に行ってたッ!?」

 

鬼気迫った表情で問い詰めてくるテラシアに少しだけ距離を取る。

 

「私の名前を覚えてるかッ!?」

 

一瞬某伝承者の兄の顔が思い浮かぶがすぐに雑念を吹き飛ばす。

ここで忘れたと言えばどんな反応をするのだろうか。何て頭の片隅で考える。

 

…流石に俺にも人の心は残っているからそんなことはしないが考えるだけならね。

 

「……勇者テラシア」

 

そう答えるとテラシアはホッと安堵のため息を吐いて落ち着きを取り戻す。

 

「良かった…夢じゃなかった…」

「……起きたならさっさと下山しろ」

「え?あ、先にお腹空いたから何か作ってくれないか?金なら払うから」

 

テラシアが差し出して来た金はおよそ100ゲル硬貨。ゲルとはここの通貨の名前なのだが、1ゲル=1円と日本円と大して変わらない。

 

「……ガキの小遣い程度の金額で朝食を作らせる気か?」

「も、持ち合わせが今無いのだ…」

「……話にならん。道は教える、さっさと下山するんだな」

「駄目か…?」

「……無論駄目だ」

「もしや料理に自信が無いのか?」

「ほう…?」

 

は?何でそうなる?

 

「苦手なら苦手と言ってくれれば私もこうしつこく言わなかったのだが…すまない、誰にでも苦手なことはある。気を落とさないでくれ。

私でよければ1泊泊めてくれたお礼に料理を教えてやっても…」

 

舐めるなクソガキッ!!(腹を)満たせオラッ!!

 

 

 

 

 

 

「もにゅもにゅ…うま、うま、滅茶苦茶美味い…!」

 

ふと、目の前で採れたて素材のオムレツを美味しそうに頬張っているテラシアを見ながら冷静さを取り戻す。

何やってんだろうな俺は。

スローライフ系のなろうは勇者とかが訪れるのは話の転換点、ここから何らかの揉め事に巻き込まれてスローライフとは程遠い展開になるんだ。俺は詳しいんだ。

 

だから早く追い出したいんだが…

 

まぁほんのちょっとだけ、蟻の糞にも満たない程だが彼女の境遇に同情している自分が居るのも事実。

少しだけ重なるものもある…

 

だからといって長居させる訳では無いが。

 

「…食べ終わったら出て行け」

「ちょっ、もうちょっとだけ…!」

「…この水球が村までの道を案内する。ついて行け」

 

魔法で練られた水球を手渡しドアを閉める。

水球を生み出した魔法の名は“水導感(すいどうかん)”。水で屈折した日光が指定の場所までの道のりを示してくれる晴れ限定のナビゲーション魔法である。これがあれば村まで迷うことはないだろう。

 

もう会うこともないだろう。さらば勇者テラシア。

お前は俺みたいに忌み子でもないからすぐに居場所が出来るだろうさ。多分、きっと、メイビー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様が人間に危害を加えないか監視するためにここに居候する事に決めたぞ!ちなみに拒否権は…ない!」

「…………」

 

間に合ってます。俺は扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

つい、ウォルボルクに秘密を話してしまった。奴は私が力を失ったことに気づいていなかった。

だが私が話してしまったことで勇者であるというハッタリが通用しなくなった。

今の私が彼と戦えば殆ど抵抗出来ずに殺されるだろう。

 

初めて私を覚えている者に会えた興奮からか自分でも浮かれているのが分かる。それほどまでに、一人の時間が長過ぎた。

 

だが、彼は私を殺さなかった。宿敵であったはずの勇者、魔王を亡き者にした魔王軍にとっては最大の仇のはずなのに何故?

寝込みの最中も警戒していたが何も無さすぎて爆睡してしまった。昔から朝に弱いのだ。

 

目を覚ますと家の中で彼を探し回った。何処にもいない。普通に考えれば昨日の夜に見た家畜の世話をしていると分かったはずだが、私はそこで度重なる孤独感から幻想を見ていたのではないかと思い急に不安になった。家の中を隅から隅まで探し回った。何処だ何処だと不安に駆られながら走り回った。

外から物音がした。

バッと直ぐに外に出ればウォルボルクが丁度帰ってきた所で、私の名を発したことでこれが幻影では、夢ではないと安堵した。

 

それと共にハッと思い直す。どうして奴を見て安堵しなければならないのか。奴は宿敵だ。

奴が何を企んでいるか私の目で見極めなければならない。

こんな辺境であのウォルボルクが何もせずに暮らすなど考えられない。

ウォルボルクは無益、無駄なことをしない。捕えた人間の捕虜達も、他の四天王達と違い、愉悦のままに嬲ったり殺しもせず労働力として扱っていたり、降伏した人間には危害を加えなかった。

 

私をここで殺さなかったのはきっと何か不都合なことになるからに違いない。そもそも私は村人の依頼で来ているわけだから私が帰ってこなければ村人達も不審に思うだろう。

 

更にはグリベアーに殺られたと勘違いすれば、新たな冒険者や騎士団が来るかもしれない。そんなリスクをウォルボルクが犯すわけがない。

下山しろと急かしてくるがそうはいかない。奴の思い通りになってたまるかと奴を煽って何とか朝食を作らせた。

 

 

目の前の机に置かれた、皿に盛られた朝食にゴクリと喉を鳴らす。普通に美味しそうだ。

クッ…!!毒が入っている可能性も考慮しなければ…いや、そんな回りくどい事をせずとも私を殺せるか。

今の私ではウォルボルクに手も足も出ないのだから。

 

だから大丈夫だ。

 

 

1口目を口に含んで…

 

「…え?」

 

既に皿から朝食は消え失せていた。残るのは美味への名残惜しさと口周りに白く付いたヤギのミルクのみ。あっという間に、何の警戒心も無しに敵から差し出された朝食に貪り食らってしまった。

淑女としても勇者としても非常識なそれに消沈する。

…くっ殺せ!

それに私が作ったものより美味しいのが腹が立つ。

 

「…食べ終わったら出て行け」

「ちょっ、もうちょっとだけ…!聞きたいことがッ!」

「…この水球が村までの道を案内する。ついて行け」

 

魔法で出来た水球を手渡されついに追い出されてしまった。くそ、まだ奴の目的が掴めていない。

諦めるか?いや論外だ。

 

一旦魔法に従い村へと戻り討伐完了の報告をしに行く。

水球は村への方向へ向けて太陽光を屈折させて光の矢印を作る。魔法で作ってからは術士が接触しなくても作動する自立式の魔法は通常の魔法よりも難しい高等魔法。今更だがそれを軽々しく作るとなると、高い熟練度を必要とし、やはり高い実力を持つのだと嫌でも理解してしまう。

 

「おおっ、冒険者様!よくぞご無事でお戻りになりました。こちらが今回の依頼金になります、お受け取りください」

 

討伐証明として剥ぎ取ったグリベアーの鼻を村長へと渡す。かつては耳でも良かったそうだが、殺さずに耳だけを切り取り不正をする輩が現れたため、不正をするには厳しい鼻が討伐証明の部位となっている。

魔物によっては鼻水がデロデロなこともあり大変不愉快だ。

 

「ところで山で青年に1泊泊めて貰ったのですが何か彼についてご存知ですか?」

「山の中…あぁ、彼のことですか。魔王軍との戦争の終結後くらいから山に住み始めた変わり者でねぇ。

よく村に降りてきて村の米や野菜を買っていくんですよ。

まぁ悪い人では無いのは確かです。子供たちからも懐かれているようですしね」

「そうですか…ありがとうございます」

 

その後も何人かにウォルボルクのことを聞いてみたが違いはあれど評価は殆ど同じような回答だった。

 

曰く腕は確かで魔族との戦争に関わっていた軍人。曰く引退した冒険者。果ては妻の不倫によって傷心し、癒しを求めてこの穏やかなこの地域に来たのではないかという根も葉もない話まであった。

何処から不倫なんて話が出たのやら…

 

奴の狙いが分からない。本当に隠居でもするつもりなのだろうか。

それを確かめるまで私が何処かへ去ることは出来ない。

それこそもしウォルボルクが何かを企んでいたら手遅れになってしまう。

ウォルボルクは魔族最強。魔王とも戦ってわかったが、ウォルボルクの方が強い。同じ条件なら100でウォルボルクが勝つだろう。彼の本領が最大に発揮出来る水場なら尚更だ。

今の私では奴を倒すことは出来ないし、パーティメンバーの皆でも難しいだろう。

 

だが、奴を倒せなくても、奴の目論みは潰せるかもしれない。

 

そうだ、奴の家で見張ってやろう。

素晴らしい作戦だ。

奴の動向を1番近い位置で把握出来る。私に何かあれば村人が何かしらの行動を起こすかもしれないと示唆していればウォルボルクは動きづらくなるだろう。

早速、使っていない装備を村長に少しだけ預けて山に戻る。

村長にはウォルボルクにまた会いに行くことと、また装備を取りに来ると言っているので、もし私が殺されればウォルボルクは言い訳ができない。

 

そもそも宛のない旅の道中であり、路銀が尽きかけていた所でもあり丁度いい。

 

ふふん、私は天才かもしれない。

 

「貴様が人間に危害を加えないか監視するためにここに居候する事に決めたぞ!ちなみに拒否権は…ない!」

「……………」

 

パタンと静かに扉が閉められた。




性格的に顔が良かったらハ-レムまでは行かなくとも恋人とかは作ってしまいそうなのでそうならないように生えてきた忌み子設定。主人公に元々重い過去なんて存在していなかった。

技名にルビを付けて欲しいと意見があったので皆さんの意見を聞きたいです。

  • ルビを付けて欲しい
  • 要らない
  • あとがきで読み方記載
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