今回は短めですが次回は長めになると思います。
半分くらいかけてるので更新にそう時間はかからないと思います。
明るい光が煌々と厨房を照らす。様々な調味料が並ぶ中、脇に置かれていた卵を手にし、大きなボウルに割って入れる。
ドパッ
卵がひび割れた瞬間、勢い良く黄身と白身がボウルへと我先にとばかりに溢れ出す。通常サイズの卵から流れるのは10個の黄身とそれを包む白身。黄身の大きさは通常の黄身より少し大きい。
質量どうなってんだこれ?
その中の黄身をスプーンで1つ掬い出し、細切りにした牛のもも肉を盛った小さな皿に乗せる。
その上に味噌、一味、唐辛子、醤油、砂糖、ゴマ油を混ぜて作ったタレをかける。
実はこの世界、調味料に関しては現代日本と殆ど変わらない程に充実している。転生者の伝家の宝刀、マヨネーズも既に存在している。料理面では無双できないけど日本で食べてきた料理をこちらでも食べれるのはとてもありがたい。
そんなわけではい、生ユッケ完成。
隣にはスライスしたレバー。その皿の横にはごま油と塩を用意。
余った卵は掻き混ぜて卵スープにする。黄身を大量に使った贅沢な卵スープだ。鶏の骨から抽出した旨味たっぷりの鶏ガラを使用。うっひょー!美味そー!
コップに酒を注いで手を合わせる。いただきます。
「な、なぁ…それ生じゃないか…?」
少し引き気味のテラシア。分かってないな、生が美味いんだよ生が。馬肉とか魚とか色々あるけどやっぱり牛の生ユッケが一番美味いんだなこれが。
しっかりとした噛みごたえと共に、黄身と絡み合いちゅるっと喉を滑るように胃に消えていく。
バランスよく入ったサシが肉の旨味を引き出している。
そしてレバー。ごま油の中に塩を入れて、レバーをちょちょいと付ける。そして口へ…ウマーッ!!
某動画投稿サイトにあった海外の反応に出てくる大袈裟な外国人のような言葉が脳内を駆け巡る。
一言で言えば超濃厚。噛めば溢れ出す旨味と甘味。
新鮮な肉の為、血なまぐささは無く、特徴的なレバーの臭みもない。
現代日本では生で食べるのに苦労した…。だが…今は違う!!食べ放題だ。
そして酒で1度口の中をリセット。そしてまたユッケとレバーを口に運ぶ。たまに卵スープ。
ウメェー、肉の永久機関が完成しちまったなぁ。
「お、おい…本当に大丈夫なのか!?」
目の前で酒をチビチビと飲みながら騒いでいるが無視する。
再度レバーを口に運んだ時、テラシアが酒を机に置いて俺に問い掛けた。
「ウォルボルク…聞きたいことがある」
一瞬箸を止めたがまた動かす。酒をあおり、テラシアに話せと視線を送る。
「何故、お前は私を殺さない?私はお前たち魔王軍を潰した、魔王を殺した仇のはずだ」
「…魔王と戦って負けた、軍門に下った理由はそれだけだ。…義理も思い入れもない」
「ウォルボルクが負けた?」
「…かつてな。…今は負けない」
「ならなぜ魔王軍を抜けなかった?ウォルボルク程の力があれば魔王を退けて抜けることも出来たはずだ」
「…魔王軍は脱退に関しては特に厳しい。…情報が漏れることを懸念してだ。…四天王程になれば重要な情報を知ることが多いからまず抜けれない。…もし抜ければ…」
追っ手がひっきり無しにやって来るだろう。俺は平穏に暮らしたい。そんな血なまぐさい生活は御免だね。
「…それに魔王を倒した所で、魔王軍自体が魔王の信望者で構成されている。…すぐに仇討ちだので魔王軍全軍から狙われる。…それは避けたかった」
俺1人では…守れない。
「最後に1つだけ聞きたい。ウォルボルクの目的は何だ?」
目的か…
「…自由に生きる。…それだけだ」
△△△
私はウォルボルクから色々と聞き出した。魔王軍を潰した私への思い。魔王軍への加入理由に抜けれない理由。
そしてウォルボルクの目的。
自由に生きる…か。そう言った彼の言葉に何一つ嘘はなかった。
何故彼がそう言ったのか、彼の言う自由がどのようなものかもわからない。けれど…なんだかそれは悪くない様なものだと直感でそう思った。私は昔から勘がいいから間違いない。多分。
「逆に私に聞きたいことは無いか?今なら何でも答えるぞ」
「…………」
無視して箸を進めるウォルボルクにイラッとするも、何か気に入らないので勝手に自分語りをする。
「私の実家は宿屋だった」
思い出すのは十数年、ずっと住んでいた我が家。大きな湖の側にあった小さな村の唯一の宿屋。
「それなりの大きさで料理を振舞ったり洗濯をしたりとかサービスをしてたんだ」
「……その料理の腕でか?」
「うるさいッ!!料理は姉さんが担当だったからまだ練習不足だっただけだッ!!」
何故か姉さんから厨房に入るなって言われてたけど、まぁ今はそれはいい。
「それで掃除や洗濯等を色々とこなしていた訳だが…」
「………………」
その後は…村が魔物に襲われる。建物が破壊されていき、顔馴染みの人達が次々に殺されていく。
そして遂には私も殺されて…
「女神メラシーに加護を授かり勇者になった」
「……端折りすぎて訳がわからん」
「話が少しばかり暗くなる。晩酌の時にそんな話をしても仕方ないだろう」
グイッと手元の酒を傾ける。爽やかな果物の香りが鼻腔をくすぐる。
「ちょっとそれを分けてくれ」
「…………」
「おい!箸でガードするな!」
ウォルボルクのガードをすり抜けて奪い取ったレバ刺しなるものをまじまじと見つめる。
思いっきり生肉だ…。これをそのまま食べるのか…?お腹壊さない…か?
忌避感が拭えないまま、ええいままよと口に放り込む。なんと言うか…ぬっとりとしている。思ってた味とは違う…焼いたレバーのような独特な味はしないし食べやすい。だがこれは…
「微妙だな」
「…奪っておいてそれか」
不味くは無い。が、好き嫌いが結構出そうな味だ。
もう生肉はいいや。
飲みかけの卵スープを奪い取り口に含む。これは美味いな。鳥の旨みが全身にに染み渡る。さっぱりとしていて美味い。更に口に運ぼうとするとウォルボルクに皿を奪い返された。
「…厨房に鍋がある。…食べたければそっちから取ってこい」
言われた通り、厨房に置いてあった鍋からおたまでスープを皿に掬い入れる。
瞬間、不意におたまがぶれる。
「オアッツッ゛ッ゛ッ゛!!?」
荒ぶったおたま。そこから放たれるのは熱々の卵スープ。中の卵は指に丁寧に絡みつき、余すこと無く熱さを直接指に伝えてくる。つい手放してしまった木製の皿は足の小指に向けて落下。
小指の痛みと共に素足にスープがかかることで熱さとの巧みなコンビネーション。その連携の前に私は為す術なく敗れ、地に伏せるのであった。
「グォォォオ゛オ゛オ゛…ッ!!」
「…何をしてるんだお前は」
スープは熱いがウォルボルクの呆れたような視線はとてもヒンヤリしていた。
食レポって難しい…
次回、『手合わせ』
技名にルビを付けて欲しいと意見があったので皆さんの意見を聞きたいです。
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ルビを付けて欲しい
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要らない
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あとがきで読み方記載