元星漿体のあの人の設定改変ものif 作:時村ニレ
天元と星漿体の設定について、当作独自の設定を結構盛っています。また、甚爾の身体の記述も独自解釈になります。御了承下さい。
2023/6/13 18:04 冒頭の構成を変更しました。
『クソな仕組み』と『必要な仕組み』は、時にどちらも矛盾なく両立する。例えば、呪術師社会と非術師社会の
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禪院甚爾の意識を落として厳重に拘束した後、高専まで移送する役目は楽厳寺由基子が1人で受け持った。彼女は天元様から受け持った密命があり、高専にてそれを果たすという。
一方、夜蛾正道と夏油傑は、引き続き天内理子の遺体を回収する任務を受け持つ。2人で盤星教本部の建物に入り、地下にて指示通り遺体の回収を成し遂げた。――醜悪な経験と引き換えに。
非術師の、拍手だった。2人を取り囲む大勢の拍手。拍手。拍手。天内理子の死に拍手を送る、非術師の盤星教信者達だ。どうも『2人が星漿体を殺してくれたのだ』と勘違いしている様子の。
「先生、これは……」
傑の小声は明らかに耐えられなさを含む形で震えている。
布に包まれた天内理子の亡骸を抱えた夜蛾は、同様に小さな声でフォローした。教え子に見せるような光景ではなかった、と即座に感じたから。呪術師である以上、この手のヒトの醜悪さに触れることは避けては通れまい。ただし、『まだ高専2年の年頃には早い』という感覚がこの時の彼にはあったのだ。
「すまん。判断を誤った。まだ若いお前が触れるにしては、……ひどく、ろくでもなさが過ぎる」
「本当に、本当にろくでもない。おそらく
「ああ。そうだな」
――この時の己の言葉が、真の意味で教え子に向けるものとして適切なものだったかどうか。翌年の夏のある時期から、夜蛾は考え続けることになる。
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「
伏黒甚爾が感じたのは、まず激痛であった。ここ何年かなかったほどの痛みに導かれて意識が浮上して、やたらと重い瞼をどうにか開ける。視覚も嗅覚も聴覚も経験したことないほどいびつで
椅子らしきものに座らされる姿勢で、後ろ手に拘束されていた。狭い部屋だ。四方の壁には多数の呪符が貼られまくられている。おまけに右足の甲には呪具らしき小刀が深く突き刺さっていて、床に縫い付けられる形になっていた。――高専の拘束部屋といったあたりのところか。
「目が覚めたのね。『術師殺し』の禪院甚爾」
「今は伏黒だ。婿に入ったんでな……。俺の身体にどんな細工したんだよ。楽厳寺由基子」
右後ろから聞こえてきた声には顔を向けず、右足を見下ろして答える。声を掛けられる前に本人が立っている事さえ分からなかったが、それを気取られることがないように。
五感があらゆる意味で衰退している代わり、体内を巡る妙な
「それ、魂に干渉する特級呪具。変換効率がとんでもなく悪いけれども、刺された相手の体力を奪う代わりに呪力を与える。それでアンタの強みを打ち消した」
「……!! 呪力完全0の天与呪縛を壊したのか! 今の俺はとんでもなく
「正解。今のアンタは3級呪術師と1対1で戦っても負けると思うの。天元様からは今日中にアンタを処刑するように指示が出た。アンタが弱いままでいるうちにね」
「!! そうか!! そういうことかよ!! そーいうことだったのかよ!! 畜生め!!」
甚爾は爆笑した。この状況に関わらず、涙が出るほどに爆笑した。何ということだろう。体内の
「検証する気は金輪際ねえけどよ! 今、俺が正しく手印を組めばたぶん2匹の犬が出る!! 俺の生得術式、おそらく十種影法術だ……!!」
生まれながらの強大な呪縛が無ければ、魂が縛られていなければ、普通に使えていたはずの隠されたもの。死期の見えた今になって、特級呪具によって
――心底、もう死んで良い、と思った。客観的に見て生きていられる状況でないし、逃げられるはずのない状況には違いなかった。それとは別として、甚爾自身はいずれこの場に下される己の死を心の底から受け入れた。
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呪いが呪わしくないはずがなく、呪術を扱う呪術師が呪わしくないはずがない。一般社会では公言不能な残酷さやクソ具合を飲み込んだり振りかざしたり、弱みや強みを時に利用し合い時に騙し合うために、呪術師同士で、『縛り』というものは結ばれる。
「じゃあ、……縛りを確認する。『呪術師』伏黒甚爾。『アンタは今日この部屋で私の呪力により殺される』、その代わり――」
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「確かに受け取ったよ。2人とも手間をかけた」
「2人に今だから言えることがある。私が由基子に下していた密命のことだ。私が指示したのは、『天逆鉾の術式強制解除能力で結界術を解除できるのか検証し、仮に解除できた場合、天逆鉾を”呪具を破壊する”能力の特級呪具で完全に破壊すること』。意図は分かるね? 呪霊操術の子」
分かりやすい問いかけ。傑は即答した。
「放置していた場合、天元様の結界に対しても非常な脅威となるから、でしょうか?」
「その通り。結果として天逆鉾は先ほど完全に破壊され、もうこの世には存在しない。六眼の子には君達の口から伝えてあげるといい。あの子にも天逆鉾はかつてない脅威だったろうからね」
「ご配慮痛み入ります。天元様」
夜蛾が再び頭を下げて、傑もまたその挙動に
「それと、禪院甚爾について。今、彼は拘束部屋で由基子に尋問されているよ。指揮系統面では変則的だが、私が彼の処刑を総監部に事後報告する形をとる。時間をおくと彼を助命して利用したい層が出現しかねないからね。執行人も由基子だが、……私にとって悪い事態ではないんだが、予想外の事態が発生してね。別に洗脳系の術式を使ったのではないのだけど、禪院甚爾は『今日中に由基子の呪力によって拘束部屋で殺される』という縛りを受け入れたらしい」
「……!?」
一体、拘束部屋で何が起きたというのだろうか。傑の目には、『術師殺し』の男は大人しく執行を受け入れる性格とは真逆のように見えたが。
「対する由基子側の代償は『禪院甚爾に対して、一部の呪術関係者が知るべきであろうと思われる、天内理子と楽厳寺由基子についての情報を語ること』。もちろん、この縛りの締結については私が許可を出した。……それでだ、君達も『情報を知るべき関係者』だと言えなくはないんだよ。星漿体を護衛した2人も、連絡役だった傀儡操術の子も」
傑も、そしておそらく夜蛾にも想定していなかった内容を、天元様は続けた。
「だからね、今から拘束部屋に行って、執行の立会人の身分で由基子の話を聞く権利はある。もちろん、拘束部屋に行かずに聞かずにいる権利もね。……どうするのか3人がそれぞれ個々で決めるといい。六眼の子もずいぶん様子が落ち着いたようだから、決断はできるはずだ」
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拘束部屋における、執行人側の楽厳寺由基子の物語。
伏黒甚爾は聞いた。結局、夜蛾正道も、五条悟も、夏油傑も、その話を聞いた。
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ああ、みんな来たのね。
事前に言っておきますけど、今回の件で護衛の子達の落ち度を責めるつもりはありません。『術師殺し』の実力でなら、学生さん方を打ち負かしたのは順当だったと思ってるから、私は。
私がキレてるのは、伏黒甚爾が理子ちゃんを殺したこと、盤星教が伏黒甚爾を雇ったこと、……そもそも理子ちゃんの情報を直前で流出させた、どこかの誰かさんにも私はキレてる。
まあ、とにかく、時系列を
私にとっての全部の始まりは、1992年の7月の薨星宮。私は中3で、理子ちゃんが生後3ヶ月位だった。私が星漿体から降ろされて、理子ちゃんが新たな星漿体になる儀式の日。……本来はね、今日に私が同化するはずだったんだけど、理子ちゃんが生まれて変更されたという構図ね。その時私は結構抵抗していて「こんな子を生贄に突き出す仕組みはクソだ」って言って。それで
星漿体でいることは、魂に付けた矯正具みたいな呪縛をつけて生きること。それを天元様の手で外された時に、私はものすごい量の呪力に目覚めた訳ね。
天元様に誘われたわ。「星漿体との同化の仕組みがクソだとも改善したいとも思うなら、東京の高専においで。どれほど難しく代えがたい仕組みなのか直々に教えてあげる」って。
それでね、「難易度の高さに心が折れるにしても、天元様以上に発想と才能を見せて何か同化に変わる改善策を見出すにしても、どちらにしても意義はある。今の私をそのまま放置しておくと、天元様を心から憎むだけの術師になってしまいそうだから。一生かけた無駄骨になるかもしれないし、将来どんな発見をするかなんて分からないけど、研究中心の術師という生き方を提示したい」って、そういう風な事を言われたの、……その時の薨星宮で。
だから私は1993年4月にこちらの高専に入学して、……通常の呪術の任務や授業を受けながら、天元様直々の教えも受けることになったの。それから天元様の指示通りに大学の生物学科に編入学して、卒業してから呪術高専に戻ってきたという流れね。高専に戻ってきて1年過ぎたあたりで、天元様の推薦で特級術師になってる。薨星宮でしか使えない私の『隠し玉』が物騒だからね。
術師との2足のわらじで、ずっと、星漿体の同化システムを研究してたのよ。生贄として誰かを捧げるという形のほかに、天元様を維持する方策がないのか。
天元様の同化に非常に適した素質のある子って、おおよそ15~30年に一度スパンで生まれているんですって。私は同化した場合400年は天元様が維持できるであろう星漿体、だった。理子ちゃんは500年天元様を維持できる星漿体だった。
私と理子ちゃんの年の差はギリギリ15歳差くらいでしょう? 理子ちゃん以後に生まれて同化に適合する子はまだ産まれていないから、たぶん次の子が、……数百年スパンで『耐えられる』素質の子が生まれるまで、今から最大で約15年くらいかな。
理子ちゃんが同化できなかった場合、いずれ生まれてくるであろうそんな子が次の星漿体が同化対象になる訳ね。その子が例えとんでもなく幼くても、例えば同化時点でやっと歩いて喋れるようになった年頃でも、容赦なく生贄として利用すること、……そんな『縛り』であれば、次の星漿体との同化までは天元様もしのげそうだ、って、そういうクソみたいな発見を私は成し遂げていた。
――それが、その程度のことが、私が今まで時間を費やして見つけ出した研究の成果だった。
2年前。タイミングよく禪院家と揉めて、ほとぼりを覚ますのを口実に私が出国する時、私は天元様と縛りを結んだの。『天内理子が同化不能になるか同化拒否に及んだ場合、同化の翌日から、次の星漿体の同化まで、楽厳寺由基子は呪術師として天元に完全に隷属する』って。
私なりの、同化の研究についての発見者としての、筋の取り方だった。天元様の
……知っておいてね? たぶん護衛の2人は高専生でいるうちに特級呪術師になるでしょう。私の立ち位置を含めた諸々の上層部の政治的あれやこれや、将来的にはどう頑張っても巻き込まれる立場になるから。時々は正道君も巻き込まれるかもしれない。
2年前の私のその出国について補足しておくとね、仮に理子ちゃんが同化を拒んだ時に対しての、備えの意味もあった。あの子は日本には暮らしていけなくなるでしょうから、代わりに海外に逃げる場合の、逃亡先としての拠点を作りに行っていたの。
理子ちゃんには、同化以外の選択肢をあげたかったの。私は強制的に星漿体にされて、人生が一本道しかないって思いつめていた年頃に、強制的に星漿体から降ろされたから。一本道しかない生き方の辛さを、知り尽くしていたから。
これまでの研究の成果を踏まえても、本当にえげつない選択肢しか用意できなかったけれど、それでも。それでも理子ちゃんにだけは、……進みたい地獄を選ぶ形でしかないけれど、ただ、それでも『同化しないかどうか選ぶこと"だけ"はできるんだ』って! そんなクソみたいな事実しか用意できなかったけど、でも、今日、伝えたかったの! 天元様と私と理子ちゃんと3人きりで、薨星宮の本殿で!!
……理子ちゃんの情報が変なタイミングで漏れなければ、根本的に今回の件は起きなかった。情報を手に入れた盤星教が、『理子ちゃんの保護』に舵を切っていても同じね。それで理子ちゃんが自分の意思で同化を拒んで保護を求める場合も、ひょっとしたら有り得たんだと思う。
仮にそういう流れで私が天元様に隷属することになったとしても、それならそれで納得していたのではないかな、私は。……もちろん、理子ちゃんが自分の意思で同化するのなら、それも仕方ないと思っていたでしょうけど。
理子ちゃんの選択次第で私の術師人生が左右されるだろうって思ってた。そうなることは元々納得しきってた。
でも、ああいう風に人生が終わったことは許せないの。理子ちゃんだけはあの場所で死ぬべきじゃなかった。絶対に、あんな風に殺されるべきじゃなかった……!! 絶対に、絶対に!!
当作では悟に三段活用を言わせていないので、台詞が多少変わりますが甚爾に言わせてみました。作者の脳内解釈ではこういう反応と思考になりそうだと考えたのですが、読者の皆様にとっては『甚爾らしい』姿だったでしょうか……?
アンケートは前々話からでなく当話でのみ設置した方が良かったのではないかと反省しきりです。前々話の時点では由基子の情報が足りていなかったので。
次回は秘匿死刑執行回の予定です。
ぶっちゃけ、伏黒甚爾を生体解剖したいレベルでブチ切れてる系のオリ主ってありだと思いますか?(描写は全年齢作品相当にぼかす前提で)
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生体解剖したい発言:あり、解剖実行:あり
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生体解剖したい発言:あり、解剖実行:なし
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生体解剖したい発言:なし、解剖実行:あり
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生体解剖したい発言:なし、解剖実行:なし