気が付いたらイザークになってました(白目)   作:トロロ将軍

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潜入任務

「では足付きはオーブ領海に逃げたんだな?」

 

あれから数日。アフリカからカーペンタリアへと移動した俺は補給物資と共にザラ隊が母艦としている潜水艦に合流した。

 

アークエンジェルはオーブ海軍の攻撃を受けながらオーブ領海に侵入したらしい。現在ザラ隊はオーブ領海近くで待機中だ。流石に中立国の領海に侵入するような危険は冒せない。

 

「それよりも・・・お帰りなさいイザーク。アフリカはどうでしたか?」

 

「俺達はお前がいなくてマジで大変だったんだからな。これからバリバリ働いて貰うぜ」

 

アークエンジェルの動向を知らせた後で俺を迎えてくれるニコルとディアッカ。こんなに合流が遅くなってしまったというのに笑顔で迎えてくれるなんて本当に嬉しい限りだ。アスランは艦長と今後の動向の話し合いをしている最中だ。

ちなみにアスランはあの後あっさり発見できたらしい。よかったよかった。

 

「二人共すまなかったな」

 

「謝らないでください。イザークのアフリカ行きは事故のようなものですから」

 

そんな話をしているとアスランが戻ってくる。恐らく今後の方針が決まったのだろう。

 

「おや、お身体は大丈夫ですかザラ隊長?行方不明になられたと聞いていましたが?」

 

「やめてくれイザーク。お前に畏まられると身体が痒くなる」

 

「これは失礼。・・・で、これからどうするんだアスラン?」

 

俺の問いにアスランが全員を周囲に集める。

 

「オーブに足付きの引き渡しを要求したところ、「地球連合の戦闘艦は既にオーブ領域を離脱した」という回答が届いた」

 

「足付きは既にオーブから離脱しました。なんて本気で言ってんの?それで済むって、俺達バカにされてんのかねぇ」

 

ディアッカの呆れたような言葉にアスランは首を振る。

 

「正直俺はこのオーブの回答を信じられない。俺達が奪取したGはオーブのコロニーで作られていた。恐らくオーブの協力を得てだ。そんな機体を載せた艦をただ追い返すなんて俺には考えられない。きっとまだ足付きはオーブにいる筈だ」

 

まぁ確かにオーブの回答を「はいそうですか」と受け入れるほど俺達は馬鹿ではない。

 

「カーペンタリアから圧力を掛けてもらうしかないな。まぁそれで事態が解決するとも思えんが」

 

「押し切って行きゃ足付きがいるさ。それでいいじゃないイザーク」

 

「オーブを舐めるなよディアッカ。ヘリオポリスとは違うんだ。オーブ軍の精強さは言うまでもないだろ。それに表向きは中立だが、裏はどうなっているのか計り知れない、厄介な国なんだよオーブは。・・・で、結局どうするんだアスラン?」

 

短絡的なディアッカを諫めながらアスランに問う。まぁアスランの腹は決まっているのだろう。

 

「カーペンタリアからの圧力は掛けてもらう。しかしすぐに解決しないようなら・・・オーブに潜入する」

 

「潜入・・・ですか?」

 

「簡単に言うけどよアスラン。いったいどうやって潜入するつもりだよ?」

 

ニコルとディアッカの疑問も尤もだ。

 

「オーブに潜入中の工作員を使う。モルゲンレーテの偽装IDと作業服を用意してもらう手筈になっている」

 

「用意がいいことで」

 

オーブがカーペンタリアからの圧力程度に屈しないことは明らかだろう。でなければザラ隊が問い合わせた時にアークエンジェルを引き渡したはずだ。

 

「とにかく今は待機だ。オーブが誠実な対応をしてくれることを願おう」

 

そうして話し合いはお開きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのIDで工場の第一エリアまでは入れる。だがその先は完全な個人情報管理システムでね、急には用意できなかった」

 

原作通り人気のない岸辺から上陸した俺達に工作員が接触する。その手にはモルゲンレーテの社員IDと作業服が握られていた。しかし原作とは違う点がある。

 

「しかしお前達は四人だが大丈夫か?IDは二人分しかないんだぞ」

 

そう、モルゲンレーテのIDカードと作業服が二名分しかないのだ。

工作員曰く急な要請で二つしか用意できなかったとのことだ。

まぁ粗雑なIDを四つよりも精度の高いIDを二つの方が作戦の成功度が高くなるからありがたい。

 

「おいイザーク。もっとマシな服はなかったのかよ!?」

 

「・・・文句があるなら砂漠の虎に言うんだな」

 

振り向くと赤いアロハを着るディアッカが見える。色黒なのも合わせてよく似合ってる。

 

「でも二人共似合ってますよ」

 

「そうだな。イザークもディアッカも良く似合ってる」

 

モルゲンレーテの作業服を着ながらアスランとニコルが俺とディアッカを褒める。

オーブは南太平洋のソロモン諸島に位置するからアフリカよりはアロハが合う国だろう。

 

「では予定通りアスランとニコルはモルゲンレーテの工場を、俺とディアッカで港湾関係を当たってみる」

 

「わかった。では17時にモルゲンレーテ前に集合だ。二人共怪しまれるなよ」

 

「それはこちらのセリフだ。二人はモルゲンレーテに侵入するんだ。絶対に見つかるなよ」

 

片手を上げてアスランとニコルがモルゲンレーテ方向へ去って行く。

 

「俺達も行こうぜ。高台に登れば主要な港は一望できるだろうよ」

 

「そうだな。行くぞディアッカ」

 

そうして俺達もアスラン達とは反対側へと向かった。

 

そして・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんの成果も得られませんでしたってか。ま、当然か」

 

「おいイザーク、お前のやつも旨そうだな。一個くれよ」

 

原作でも見つからないものが高台から見つかるかよって話だよな。

今はモルゲンレーテのあるオノゴロ島からオーブ本島に移動して昼食ついでに良さげな喫茶店でたい焼きを食べているところだ。オーブは日系移民が入植し発展したことから日本文化が色濃く表れている。このたい焼きもその一つだろう。ディアッカはパンケーキを注文していた。顔に似合わず可愛いものを注文するものだ。

 

ちなみに俺達はサボるために本島に来た訳ではない。先程とは別の工作員が本島を中心に活動しているからそちらへの接触の為だ。断じてサボっている訳ではない。

 

「おい見ろよイザーク。ここ抹茶ラテなんてやってるぜ。プラントで飲んで以来だぜ。すみませーん!」

 

・・・断じてサボっている訳ではない・・・はず。

 

そんなこんなでデザートのケーキまで楽しんでから店を出る。こんなところアスランとニコルに見つかったら殺されるんじゃないだろうか。

 

「接触対象との待ち合わせ時間は16時だったか?」

 

「あぁ、今が13時だからまだ時間があるな。観光でもするか?」

 

ディアッカに対し「遊んでるつもりか」と言いたいところだが、プラントに住んでいるとオーブなんて一生に一度行くかどうかの場所だ。俺の中の天使と悪魔がビームサーベルで斬り合っている。そして・・・。

 

「・・・ちょっとだけだぞ」

 

はい、天使君の負けです。まぁアークエンジェルって大天使って言うし、そう考えたら天使が負けるのも頷けるよね。

 

「グレイト!ナイスだぜイザーク!」

 

そのセリフは敵機を撃墜した時に言って欲しかったよ。

まぁいいか。取り合えず1時間程自由行動ってことで。

 

「ちょっと、止めてよ!」

 

そう言ってディアッカと別れようとしたところで女性の大声が聞こえる。痴話喧嘩か?

声の方を見ると金髪と茶髪の女性二人がチャラそうな男二人に絡まれているのが見える。どうやらナンパらしい。

 

「おいおい、抹茶ラテで良い気分だったっていうのに嫌なもん見せんなよな。どうするイザーク?」

 

ディアッカは心底どうでもよさそうな表情だが、正直俺は見ていられない。

 

「ちっ、行くぞディアッカ」

 

「OK、じゃあ土産物屋に・・・っておいイザーク、どこ行くんだよ!?」

 

俺はディアッカの声を無視してチャラ男達の元へ向かう。

 

「おい貴様ら、俺は今ものすごく不愉快なものを見せられて機嫌が悪い。とっとと失せろ」

 

「あぁ?なんだてめぇは?カッコつけてんじゃねよ!」

 

チャラ男の一人は突然現れた俺に驚くも、すぐに俺を排除しようと殴りかかってくる。本当に短絡的な奴だ。

俺は拳を避けながら掴み、チャラ男の後ろで締め上げる

 

「痛てててててっ!痛てぇ!」

 

「止めておけ。貴様のようなチャラチャラした奴が俺に勝てるわけないだろう」

 

チャラ男は痛がりながら自分の膝を叩いている。タップのつもりだろうか?

 

「てめぇふざけんじゃねぇ!」

 

「おいおいイザーク、一人で張り切りすぎるなって」

 

チャラ男を締め上げている俺にもう一人のチャラ男が殴りかかってくるが、そいつをディアッカが投げ飛ばす。

 

「おいお前ら、この辺で止めとけって。うちのイザークはキレると本当にヤバいぞ?腕の一本や二本なくなっちゃうかもな」

 

ディアッカが睨みを利かせるとチャラ男二人は逃げる様に離れて行った。

 

「・・・誰がキレるとヤバいって?」

 

「いやいや、言葉の綾でしょあんなの」

 

「ふんっ・・・行くぞ。俺は御守りが見たいんだ」

 

そう言って物産店のある方へ歩き出す。しかしすぐに止められることになる。

 

「あのっ!助けて頂きありがとうございます」

 

「正直困ってたから助かったよ。ありがとうお兄さん達」

 

彼女達は俺達にお礼がしたいということで喫茶店を奢ってくれることになった。そう、さっきの喫茶店である。案の定店員に二度見されたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、アサギちゃんとマユラちゃんってモルゲンレーテで働いてるんだ?あそこって国営企業なんでしょ?エリートじゃん凄いぜ!」

 

「いやぁ、入るのほんとに苦労したんだよね」

 

ディアッカと金髪の女性が盛り上がってる。

彼女達はそれぞれ『アサギ・コードウェル』と『マユラ・ラバッツ』と名乗った。そう、皆大好きオーブ三人娘である。俺は名乗られるまで気が付かなかった。

ちなみに俺達はアメリカから来た観光客と名乗っている。

 

「ちなみに二人ってモルゲンレーテでどんな仕事してるの?その年でモルゲンレーテ社員なんて凄く重要な仕事してるんでしょ?あっ、二人共凄く可愛いから広報とか?俺スゲー気になる」

 

「ちょっとディアッカさん、可愛いなんてそんなそんな。私達テストパイロットをしてるんです。可愛く見えてとても優秀なんですよ」

 

「ちょっ、マユラ!」

 

「あ!?・・・ごめんなさい。今のオフレコでお願いします」

 

アサギに注意され俺達に口止めするマユラ。ディアッカは「こっちこそ聞きすぎてごめんな」と謝りつつも俺にアイコンタクトを送ってくる。どうやら押せば重要事項を喋りそうだな。特に穴はマユラの方か。

 

「お二人共まだ時間は大丈夫ですか?自分達はつい最近観光でオーブに来たばかりなので、お勧めの観光スポットなどを教えて頂きたくて」

 

「俺も友達にお土産を買っていきたいからさ。ここで会ったのも何かの縁だし、少し付き合ってもらってもいいかな?」

 

俺達の誘いに「私達で良ければ」と快諾してくれるアサギとマユラ。俺達は喫茶店を出るとそのままオーブ首都の中央エリアまで歩いていく。アサギ曰く中央のショッピングモールでお土産などは大抵揃うらしい。

 

俺達は途中で買ったタピオカミルクティーを飲みながら四人でショッピングを楽しむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、・・・なんの成果も得られませんでしたってか」

 

「・・・そうだな」

 

結局アサギとマユラはアークエンジェルの情報は喋らなかった。まぁ当然か。彼女達はモルゲンレーテの社員なのだ。当然守秘義務は課せられているだろうし変なことを喋らないよう教育されているのだろう。

 

「しかしまぁ、これ見たらアスラン怒るだろうなぁ」

 

ディアッカの言うことも尤もだ。今俺達の両手には大量の紙袋が握られている。こんな姿を見られてはあのニコルですら声を荒げるかもしれない。なにせ接触した工作員ですら俺達を二度見した程だ。

 

「しかし集合時間が迫ってる。荷物を隠す暇はない」

 

集合時間に遅れてアスランとニコルを心配させるより怒られた方がマシだ。潜入任務中の人間が集合時間に現れないなど要らぬ心配を生むだけだ。

 

そんなこんなで何とか集合場所に辿り着く俺達。遠くにニコルの姿が見える。何とか間に合ったようだ。

あれ?アスランが金網のところに。いったい何をして・・・あっ!?

 

「昔、友達に!・・・大事な友達に貰った、大事な物なんだ」

 

激エモ感動シーンじゃないか!どうしてこんな大事なイベントを忘れていたんだ俺は!?

 

「イザーク、それにディアッカまで。どうしたんですかその荷物は!?」

 

こら馬鹿ニコル!この名シーンを邪魔するんじゃない。ほら、アスランが君の声に驚いてこっちを見ちゃったじゃないか。

そして俺は見てしまった。アスランの驚いた表情が俺達の荷物を見た瞬間、徐々に無くなっていくのを。

 

「・・・イザーク、ディアッカ・・・帰ったら格納庫に来い」

 

「「・・・はい」」

 

この沈黙した空間にアスランの冷たい声だけが響く。無表情ってこんなに怖いんだなって知ったわ。

そのまま俺達に背を向けウェットスーツが隠してある岸辺に歩いていくアスラン。

 

俺とディアッカはニコルの冷めた視線、そして金網越しのキラの憐れむような視線を受けながらトボトボとアスランの後ろを付いて行くのだった。

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