【悲報】
ジョージ・アルスター氏、宇宙の藻屑になる。
これでフレイ復讐ルートに入ってしまった。
予定ではヴェサリウスの射線上でウロチョロしてジョージ・アルスターを助ける計画を立ててたんだが、なんとイージスがスキュラで乗艦を破壊してしまったのだ。
お陰でキラ君がフレイの甘言でアークエンジェル絶対護るマンになってしまうじゃないか。おのれアスランめ!
その後は原作通りアークエンジェルからラクス・クラインを人質に停戦要求があり今に至る。
「しかし行方不明のクライン嬢がまさか足付きに囚われていたとはな」
「これでは迂闊に手を出せませんね」
アークエンジェルからの停戦要求を認めたヴェサリウスは現在アークエンジェル後方の着かず離れずの距離を航行している。
俺達赤服組はブリーフィングルームで待機を命ぜられている。尤もアークエンジェルに手出しができない以上ただ状況の好転を待つしかできない訳だが。
「全員揃っているか?」
ブリーフィングルームにクルーゼ隊長が入室してくる。俺達は立ち上がり迎えるが手で座るよう促された。
「知っての通り状況は最悪だ。前最高評議会議長の娘であるラクス・クライン嬢が足付きに捕らえられている。これは高度に政治的な問題であり我々では判断できない状態だ」
確かに、国の要人が捕虜になっている状況に関しては軍事よりも政治の領分だ。むしろ現場が勝手に動いたら首が飛ぶレベルの案件だろう。
「ではこのまま足付きを見逃すと?」
「プラントからの指示しだいではそれもありうる」
俺の問いにクルーゼ隊長は頷く。
「なんにせよ全てはプラントからの命令待ちだ。それまでは足付きを見失わないよう追跡を続ける」
現状維持。そう言って俺達は解散した。
クルーゼ隊長、ディアッカ、ニコルがブリーフィングルームを退室する。
その後に続くようアスランがブリーフィングルームを出ようとするのを腕で制止する。
「どうしたんだイザーク?」
戸惑った表情でアスランが俺を見る。
「惚けるなよアスラン。数度の敵MS・・・ストライクとか言ったか?奴との戦闘の際の貴様の腑抜け具合は目に余る」
「それは・・・」
アスランが俺から目を逸らす。
「アカデミー首席の貴様があんな情けない行動をするとは考えられない。答えろアスラン、貴様は何に悩んでいる?」
「・・・」
現状アスランとキラの関係を知っているのは本人とクルーゼ隊長だけだ。そのクルーゼ隊長がディアッカやニコルにその内容を降ろさないということはアスランから語って貰うしかない。
「一人で抱え込むなアスラン。俺達はアカデミー同期で、同じクルーゼ隊長の仲間だろう?もっと俺達を頼れ」
「・・・イザーク」
事情を知っている俺はともかく、何も知らないディアッカやニコルはアスランの躊躇で戦死する可能性がある。今の所ほぼ原作通りに進んでいるが何時ルート分岐してもおかしくない。だから不安要素は極力排除したいのだ。
「・・・イザーク・・実は」
観念したのかアスランが話始める。
ストライクのパイロットであるキラ・ヤマトが幼少期からの友人であること。
何度もザフトに誘っても連合軍を抜けてくれなかったこと。
キラを殺したくないこと。
「俺はキラを殺したくない。アイツはコーディネーターなんだ。俺達の仲間なんだ!」
「・・・アスラン」
「すまないイザーク。少し考える時間が欲しいんだ」
そう言うとアスランはブリーフィングルームを出て行った。
「諸君、敵MSからの通信、どう考える?」
「クライン嬢の引き渡しの件ですね。正直罠としか考えられません」
キラ・ヤマトからのクライン嬢引き渡しの打診、これは原作通りだ。後はアスランが彼女を受け取り、キラと決別して今回の件は終了だ。
「十中八九罠だろう。しかしこのチャンスを無視したとなればプラントからお咎めが来ることは間違いないな」
艦橋でクルーゼ隊長とアデス艦長の話し合いが進む。
「クルーゼ隊長、自分が行きます。罠であれどうであれ、これを逃す理由がありません」
クルーゼ隊長にアスランが進言する。恐らくキラに対し最後の説得を試みるのだろう。
それにクライン嬢はアスランの婚約者だ。アスラン自身が迎えに行きたいと思うのも当然だ。
「ふむ、アスランの意見も尤もだ」
クルーゼ隊長が頷く。決まりだな。
「足付きからの打診を受ける。クライン嬢の受け取りをイザークが、罠だった際のイザークのサポートをディアッカが担当しろ。アスランとニコルは機体に搭乗し待機だ」
OK OK。俺がクライン嬢の回収ね。
・・・え?・・・俺!?
「待って下さい隊長!ラクスの受け取りは自分が行きます!」
「駄目だ、アスランはMS隊の指揮がある。それにバスターは近接性能に欠く機体だし、若いニコルには少々荷が重い。汎用性の高いデュエルとイザークに任せよう」
アスランの進言は一瞬で却下された。
確かに現場指揮官がやる任務ではないと思うが。・・・えぇ俺ぇ?
「イザーク、危険な任務だが非常に重要な任務だ。頼んだぞ」
「は、はぁ・・・。了解致しました」
突然の出来事で気の抜けた返答しかできなかった俺を誰が責められようか。
今まで原作通り進んでいたのに一体何があったのか?
そりゃあ原作と変わっている個所は度々あったさ。
原作ならヴェサリウスの他にガモフって艦が随伴していたし、イザークの最初の戦闘だってアークエンジェルじゃなくストライクと戦っていた筈だ。
でもそんなの些細な差だったじゃないか。
それが突然こんな・・・俺何かやっちゃいましたかねぇ。
そんな疑問を相談出来る筈も無く、俺はデュエルの発進準備に取り掛かる。
ストライクは既にアークエンジェルから出ているため急げとのお達しだ。
≪イザーク、アスランからストライクのパイロットの話聞いたか?≫
突然ディアッカから通信が入る。プライベート回線だ。
「あぁ、この前のブリーフィング時に少しな」
≪昔のダチが敵なんて、相当辛いよな。俺とニコルもさっきアスランからこの話を聞いてさ、謝られちまったよ。「腑抜けた動きをしてすまない」ってさ≫
「・・・奴の行動は赤服としては及第点以下だ。だが、人間はそう簡単に悲劇的な状況を飲み込めはしないさ」
≪イザーク・・・お前≫
「無駄話はここまでだ。イザーク・ジュール、デュエル出るぞ」
どうやらアスランは隊の皆に事情を話したらしい。
この任務が終わったら四人でブリーフィングだな。
ヴェサリウスからデュエルを発艦させる。そのすぐ後にバスターが発艦するのが見える。
「交戦の意思は無いことを証明するためにビームライフルは持つなってか。これじゃ丸腰と変わらんな」
今のデュエルの装備は頭部のイーゲルシュテルンと二本のビームサーベルのみだ。
もしもストライクから撃たれたらバスターの支援頼みだ。
そんなことを考えている間に前方にストライクが見えてくる。
≪コックピットを開けてください≫
ストライクと接触した瞬間ビームライフルを向けられる。本当勘弁してほしい。
要求通りコックピットハッチを開けるとストライクのコックピットハッチも開く。
中にはキラ・ヤマトらしきパイロットとクライン嬢が乗っているのが見える。
「交渉事がしたいのならば名乗るべきではないか、ストライクのパイロット?」
≪え?あ・・・き、キラ・ヤマトです≫
「・・・ザフト軍、クルーゼ隊所属、イザーク・ジュールだ」
≪え、あ・・・はい≫
まさか人質を取られている側が強気に出るとは思ってなかったのかキラが戸惑った様子で返答してくる。
そのことが面白く少し笑ってしまった。
「早速だがそちらが保護しているラクス・クライン嬢の返還を願いたい」
≪わかりました。今からラクスをそちらのコックピットに移します≫
キラがそう言うとストライクのコックピットからクライン嬢が飛び出してくる。
婚約者がいる女性に触れるのはどうかと思ったが、この場合は仕方がないだろう。
俺はデュエルのコックピットに入ってきたクライン嬢を受け止めると横向きで膝の上に乗せる。
アスランに対して申し訳ない気持ちが生まれるが、残念ながらデュエルのコックピットはそんなに広くはないのだ。特に今のクライン嬢は腹部に服を入れているからか太ましいシルエットだしな。
「クライン嬢の保護と返還を感謝する」
≪お願いします。ラクスを・・・彼女を安全な所へ≫
「無論だ。クライン嬢はすぐにプラント本国へ送り届けられるだろう」
≪ありがとうございます≫
俺の解答にキラが頭を下げて礼を言ってくる。
「貴様、確かキラ・ヤマトといったな」
≪はい、そうです≫
「貴様のことはアスランから聞いている」
≪え?アスランから?≫
突然友人の名前を聞いたキラが驚いた表情をする。
「俺は貴様のことを知らないからザフトに勧誘したりはしない。だが、アスランの友人というのであれば言伝程度なら受けてやろう。何かアスランに伝えてほしいことはあるか?」
≪・・・僕は≫
俺の提案を聞いてキラが言葉を紡ぐ。
≪僕はあの船に、アークエンジェルに護りたい仲間が、大切な友達がいるんです。だから、僕はザフトには行けません。そう・・・アスランに伝えてください≫
そう言葉を紡ぐキラの表情はとても辛そうで・・・とても悲しそうだった。
「貴様の言伝、確実にアスランに伝えよう。・・・辛い選択だな」
≪え?あの・・・≫
俺はコックピットハッチを開けたままデュエルを後退させる。
「会談は終了だ。ストライク、コックピットハッチを開けたままこちら向きに1000m後退しろ。そこからは自由だ」
≪・・・わかりました≫
ストライクは俺の言葉通りストライクを後退させ、そのままアークエンジェルに戻っていった。
≪撃つかイザーク?≫
「いや、クライン嬢がいる以上危険は避けたい。ヴェサリウスに帰艦するぞ」
ディアッカの提案を却下しヴェサリウスに機体を向ける。
「お優しいのですね、貴方は」
「自分はザフトの人間として行動しただけです」
「ふふ、そうですか」
隣にいるクライン嬢に何かを見透かされたような感覚に襲われながら俺とディアッカはヴェサリウスに着艦するのだった。