気が付いたらイザークになってました(白目)   作:トロロ将軍

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低軌道会戦

「イザーク・ジュール、デュエル出るぞ」

 

ヴェサリウスのカタパルトから出撃した瞬間、望遠モニターに爆散する敵艦が映し出される。先行して出撃したニコルの奇襲が成功したようだ。

 

「アスラン、ディアッカ、予定通り敵陣を突っ切り最短ルートで足付きへ向かう。遅れるなよ!」

 

≪OKイザーク。ここを足付きの墓場にしてやろうぜ≫

 

≪ジン隊は敵MAの相手を。艦砲射撃をおこなうヴェサリウスへ接近させるな≫

 

スロットルを踏み込みスラスターを吹かし第8艦隊に接近する。

 

≪戦艦のビームなんて当たるかよ。落ちな!≫

 

第8艦隊の艦砲射撃を回避しながらバスターが武装を連結させ『超高インパルス長射程狙撃ライフル』を放ちネルソン級を撃沈する。

 

「そこを退け!」

 

俺もビームライフルでドレイク級の艦橋を撃ち抜く。どの艦の対空砲火もアークエンジェルに比べれば貧弱すぎるな。

アスランもスキュラでドレイク級を二隻まとめて葬っている。

 

≪イザーク、足付きを見つけた。陣形の中心だ≫

 

ディアッカの示す方向に足付きが見える。隣の戦艦が第8艦隊の旗艦だろう。

 

≪足付きの様子がおかしい・・・まさか降下するつもりか?≫

 

≪はぁ?戦闘中に地球降下って、味方の艦隊を見捨てるつもりかよ≫

 

 

旗艦から離れ降下態勢に入るアークエンジェル。原作通りだ。

 

「ディアッカ、時間がない。一気に足付きを叩くぞ」

 

≪OK!・・・おいイザーク、お前の獲物のお出ましだぜ≫

 

来たかストライク!

 

「疼く傷も何もないが、このアサルトシュラウドが貴様に引導を渡してやるストライク!」

 

スラスターを吹かしビームライフルを放ちながらストライクに接近する。

ストライクもこちらに気が付いたのか回避行動に入るが、逃がさん!

 

≪イザーク、帰還限界時間は7分程度しかない。高度と時間に気を付けるんだ!≫

 

「アスランは心配性だな。それに7分しかないのか、それとも7分もあるのかは考え方次第だろ?」

 

≪イザーク!≫

 

嘘です。7分もあるなんて考えられません。でもブリーフィングで「ストライクの相手は俺がする」なんて啖呵を切ってアスランに作戦をごり押ししたのに情けない恰好を見せられるものか。

あと、こうやって自分を鼓舞してないと不安になるんだよ。足元の地球がデカい。制限時間超えたら絶対落ちて死ぬってこれ!

 

「尤も、こんな状況でビビっているのは俺だけじゃないみたいだがな」

 

先程からストライクが高度を高くとって戦っている。原作では特に怖がっている描写はなかったが、無意識に地球への落下を恐れているのだろう。ならば!

 

「ストライク・・・今日こそ落とす!」

 

ストライクへ向けシヴァと220mmミサイル、ビームライフルを放つ。流石のストライクといえどこの弾幕を全て躱すことはできず、何発かシールドで受けている。

 

しかし向こうもやられてばかりではない。的確にこちらにビームライフルを放ってくる。

アカデミーでMSの訓練を積んだ俺と違い、ヘリオポリスが初めてのMS操縦の筈なのにこの練度とは。これが主人公補正なのかスーパーコーディネーターの能力なのかはわからないが非常に厄介だな。

 

ストライクがビームサーベルを抜き、斬りかかってくるのをシールドで受ける。射撃戦では埒が明かないと思ったか?

 

「甘い!」

 

ストライクをビームサーベルごと押し返し、胴体にシヴァを叩き込む。PS装甲を纏っているストライクに直接のダメージは無いが、着弾の衝撃までは防げまい。

 

「終わりだ!」

 

シヴァの衝撃で少し離れたストライクにビームライフルを向ける。しかし引き金を引く前に蹴り飛ばされてしまった。

そのまま再度斬りかかってくるストライクのビームサーベルをスラスターを吹かし後ろに回避する。牽制のためイーゲルシュテルンとシヴァを放つが躱されてしまった。

 

「このぉ!いい加減落ちろ!」

 

ビームサーベルを抜きストライクに斬りかかるが、シールドで受け止められ両機の動きが止まる。その隙にシヴァを撃ち込もうと照準を向けるが、ストライクのイーゲルシュテルンに破壊される。

 

≪イザーク、もうすぐ時間だ。離脱しろ!≫

 

第8艦隊の旗艦が爆発した瞬間にアスランからの通信が入る。その内容にはっとなりタイマーを見ると、残り時間が3分を切っていた。

 

「クソッ、引き上げだディアッカ」

 

≪そうしたいが、このMAがしつこすぎるぜ!≫

 

アークエンジェルを攻撃していたディアッカはメビウス・ゼロに粘着されていた。

 

≪イザーク、ディアッカ、急ぐんだ!≫

 

≪退路は確保しました。戻ってください!≫

 

アスランとニコルから再度通信が入るが、どうやらストライクは逃がしてくれないらしい。

ストライクがビームライフルを向けてくるが、ビームサーベルで両断する。その勢いのまま斬りかかるがシールドで防がれてしまった。

 

「この・・・うわぁ!?」

 

離脱のためストライクから距離を取ろうとした瞬間、デュエルの顔面にストライクの蹴りが入り吹き飛ばされる。

そのまま態勢が崩れたデュエルに対しストライクがビームサーベルを振り上げ接近しようとしたところで、両機の間をシャトルが通過した。

 

「シャトル?ヘリオポリスの難民か?」

 

原作だとイザークが脱出した第8艦隊の将兵と誤認し撃ち落とした難民シャトル。キラの心に大きな傷跡を残し主人公補正を強化したイベントだ。

しかし原作を知っている俺はそんなキラ強化イベントは当たり前だが踏まない。そもそも脱出した将兵だろうが抵抗手段のない敵兵への攻撃は国際法で禁止されているのだ。当然赤服エリートの原作イザークも知っていた筈だけれど、余程冷静さを失ってたんだろうなぁ。

 

≪クソッ、せめて一発だけでも!≫

 

・・・ディアッカ君?

 

バスターの武装の先にはアークエンジェルが見えるが、明らかに難民シャトルが重なっている。しかしアークエンジェルを注視しすぎて見えていないのか?

 

「待てディアッカ!」

 

≪仲間を置いて逃げ出すなんて、腰抜けなんだよぉ!≫

 

バスターの超高インパルス長射程狙撃ライフルが放たれアークエンジェルに向かう。しかしその射線上には難民シャトルが。

 

≪止めろ!それには!≫

 

オープン回線でキラが叫ぶ。しかしバスターの放ったビームが無慈悲にも難民シャトルを貫く・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・前にシールドで防いだ。

 

あっぶな、マジでギリギリだった。アサルトシュラウドでスラスターが増設されてなかったら間に合ってなかった。フリーダムがフレイの救助艇を守った時みたいに腕伸ばしたわ。ナイス俺!

 

≪イザーク!?≫

 

「馬鹿者!民間人を狙う奴がどこにいる!」

 

≪民間人!?・・・俺は足付きを狙って≫

 

やはりシャトルが見えてなかったらしい。まぁ時間制限付きの極限状態でメビウス・ゼロの粘着を受けていればシャトルも見逃すか。・・・見逃すか?まぁいいか。

 

「話は後だ。アスランとニコルが退路を確保している。離脱するぞディアッカ」

 

そう言ってスラスターを吹かし高度を上げようとするが、一向に上昇しない。

 

「機体が上がらない・・・まさか!?」

 

急いでタイマーを見ると、数字は無情にも0を指していた。

 

≪イザーク!≫

 

「クソッ、高度が上がらん!」

 

シャトルを守るために高度を下げたのが仇となったか。

高度計は数値が上がるどころかどんどん下がっていく。このままじゃコックピットの中で蒸し焼きか地表に激突してバラバラだ。

 

≪イザークさん、掴まってください!≫

 

「なんだと!?」

 

突然ストライクからオープン回線で通信が入る。モニターにはデュエルに向かって手を伸ばすストライクが映っている。

 

「貴様、何のつもりだ!」

 

≪話は後です。このままじゃ地球に・・・早く!≫

 

ストライクがスラスターを吹かしデュエルに接近する。自分だって水平移動が精いっぱいの筈なのに、俺を助けようと・・・だが!

 

「連合の手は借りん!」

 

≪え?・・・わぁ!≫

 

俺はストライクが近づいたタイミングで俺達より下を飛んでいるアークエンジェルへ向け蹴り飛ばす。

連合軍に捕まるということは捕虜になるということだ。血のバレンタインへの報復とはいえ、エイプリル・フール・クライシスを引き起こした捕虜の扱いなど想像に難くない。だからストライクの助けは断らせて頂く。

アークエンジェルへ蹴り飛ばしたのは敵である俺を助けようとしてくれたせめてもの礼だ。甘いと思われるかもしれないが、これだけは譲れない。

 

「デュエルは単体で降下できるスペックがあったはずだ。後は・・・」

 

俺はシールドを下にして降下態勢に入る。その後、降下速度と降下角度を計算し予想着陸地点をアフリカと割り出し、ヴェサリウスへ連絡する。MSよりも艦船の方が強力な通信機を搭載している。恐らくヴェサリウスが降下地点のザフト地上軍に連絡してディンか何かを使用して空中で回収してくれるよう要請してくれるだろう。尤も、降下地点近くにザフト軍が展開している可能性は低い。原作イザークはどうやって降下したんだ本当?

 

「・・・やっぱりストライクの手を取っておくべきだったかなぁ」

 

若干の後悔を感じながら機体は降下していく。

 

・・・どうか無事に降下できますように。

 

大気との圧縮熱で真っ赤に燃える機体の外を眺めながら、今後の無事を祈るのだった。

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