気が付いたらイザークになってました(白目)   作:トロロ将軍

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思いがけない会敵

「お世話になりました。ご武運を、バルトフェルド隊長」

 

今日、バルトフェルド隊はアークエンジェルに対し総攻撃を敢行する。

俺はそんな忙しい状況のバルトフェルト隊長に別れの言葉を述べていた。

 

「すまなかったねイザーク君。足付きがいなければもう少しおもてなし出来たんだがね」

 

「足付きがいなければそもそも自分はアフリカに来ていませんよバルトフェルド隊長」

 

この総攻撃に俺は参加しない。俺の任務はピートリーと共に物資輸送部隊をアフリカ東部のポート・スーダンまで護衛することだ。ポート・スーダン到着後は輸送機でカーペンタリアへと向かい、地球に降下してくるアスラン達と合流予定だ。

 

「クルーゼ隊に戻っても元気でやるんだぞイザーク君」

 

そう俺の肩を叩いたバルトフェルド隊長は、レセップスに乗ってアークエンジェルとの決戦に向かう。

俺はそれを見送るしかできなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バルトフェルド隊長が足付きと戦っているのをただ見送るしかできないとは・・・なんとも無力なものだな」

 

「仕方ありません。イザークさんは砂漠戦どころか地上戦の経験すらないんですから。それに、護衛も立派な任務です。アフリカ方面軍は常に物資が逼迫しているので輸送も非常に大事な任務ですよ」

 

ピートリー艦上でぼやく俺に隣にいたザウートのパイロットが答える。しかし何を言われようと見知った人間が死ぬのに何もできない無力さとやるせなさが消えることはない。

 

ラスティやミゲルの死に関しても俺は何もできなかった。ラスティに関しては俺とラスティの役割交換が許可されず、ミゲルに関してはそもそも出撃許可が下りていない。ヘリオポリス攻撃時のイージスの出撃は明らかにアスランの命令違反だ。

 

ザフトは軍隊ではない。しかしだからと言って規律を乱して良い訳ではない。規律や統制の欠いた武装集団などテロリストにも劣る存在だ。

今回のバルトフェルド隊長とキラの戦闘だって介入しようと思えばいくらでも介入できる。結果がどうなるかはわからないが、アイシャさんを助けることができるかもしれない。

 

だが俺は動かない。俺が命じられたのは輸送部隊の護衛、そしてカーペンタリアへの移動だ。俺の勝手な行動が仲間やプラントにいる家族に迷惑を掛ける。それに、俺自身そんな規律違反を認められないという感情が強い。

 

「大丈夫ですよイザークさん。砂漠の虎の異名を持つバルトフェルド隊長がナチュラル如きにやられるわけないじゃないですか」

 

「・・・レジスタンスの襲撃を警戒する。お互いコックピットで待機しよう」

 

彼の言葉に返答せずデュエルのコックピットへ向かう。

彼の言った『ナチュラル如き』という言葉。これが争いがなくならない理由の一つなんだろうな。

 

遠くに見えるアークエンジェルの乗員も俺達に対し『コーディネーターめ!』という感情を持っているのだろうか?まぁアークエンジェルにはキラがいるから幾分緩和されている可能性もあるが。

 

・・・ん?・・・アークエンジェルが見える?

 

そう疑問に思った瞬間、ピートリーから敵接近の警報が鳴り響く。

アークエンジェルが何でこんなところにいるんだ!?

 

≪MS部隊は輸送部隊の戦域離脱まで足付きを足止めせよ≫

 

「こちらイザーク・ジュール、了解した。ピートリーは足付きに対し艦砲射撃を実施しつつ輸送部隊と共に戦域離脱を願う」

 

≪こちらピートリー、艦砲射撃了解。輸送部隊と共に戦域を離脱する。MS部隊の武運を祈る≫

 

「よし、イザーク・ジュール、デュエル出るぞ」

 

ピートリー艦上から飛び降りた瞬間。ピートリーの主砲二基がアークエンジェルに対し砲撃を開始する。

こちらの戦力は陸上艦のピートリー一隻とザウート二機、そしてデュエルしかいない。

ちなみにデュエルのOSは整備兵が砂漠仕様に調整してくれている。

 

≪どうして足付きがこんなところに・・・まさかバルトフェルド隊長がやられたんじゃ≫

 

「落ち着け。バルトフェルド隊長がやられる訳がないと言ったのは自分だろう?自分の隊長を信じろ」

 

明けの砂漠の襲撃を警戒していたらまさかのアークエンジェル登場に部隊は浮足立っている。

 

「俺は敵MSを足止めする。ザウート二機は長距離支援を」

 

≪≪了解!≫≫

 

デュエルの望遠モニターにはアークエンジェルから発進するスカイグラスパー二機とエール装備のストライクが映る。

 

「しかし何故アークエンジェルがここに?まだ本隊の攻撃開始時刻になっていないというのに」

 

ピートリーからスカイグラスパーに対し対空砲が放たれる。俺もイーゲルシュテルンを放つがどちらも命中することなく躱されてしまう。高性能過ぎるだろあの戦闘機。

 

≪イザークさん、敵MSが来ます!≫

 

ザウートのパイロットから警告された瞬間正面からビームが飛んでくる。すぐにシールドで身を護りつつビームライフルを撃ち返すが、ストライクの横跳びで躱されてしまった。

 

「ザウート、敵MS周囲に砲撃!点ではなく面で制圧するんだ!その後はピートリーの元まで後退しろ!」

 

俺の指示でザウートがストライクに対し砲撃を仕掛けるが、それすら悠々と躱されてしまう。

地球に降りてから数度の戦闘でキラは完全に地上戦のコツを掴んだらしい。

 

「こっちは初めての地上戦だっていうのに、羨ましいねその練度」

 

盾を前面に構えビームライフルを撃つが一向に当たらない。コロニー内での戦闘はアカデミーで経験しているが、地上での戦闘はそれ以上の厄介さだ。

せめてアサルトシュラウドがあれば手数で押せた可能性が・・・いや、重すぎて的になるだけか。

 

「ならば肉薄する!」

 

スラスターを吹かしストライクへ向けジャンプする。ストライクが俺に向けビームライフルを撃つが、シールドで防ぎつつビームサーベルを抜き、イーゲルシュテルンを撃ちつつ急降下で斬りかかる。しかしバックステップで躱されてしまった。

 

≪イザークさん!お願いです、退いてください!≫

 

「悪いがそれはできないな。足付きをこのまま行かせる訳にはいかない」

 

ストライクのビームをしゃがんで躱しビームサーベルで斬りかかる。

 

≪僕達はただアラスカに行きたいだけなんです!≫

 

「それを認められないと言っているんだ!」

 

ストライクが同じくビームサーベルを抜き斬りかかってくるのをお互いシールドで防ぐ。

 

「それより貴様、バルトフェルド隊長はどうした?足付きに攻勢をかけた筈だが、撃退したのか?」

 

≪バルトフェルドさん?会ってませんけど≫

 

バルトフェルド隊長と会ってないって、マジで本隊と行き違いになったの!?

しかし逆に考えればここで粘れば本隊が合流してくれるかもしれないってことだ。

それに目標はあくまでも輸送部隊の戦域離脱までの時間稼ぎ。キラには「このまま行かせない」みたいなことをカッコつけて言ったが、正直現有戦力ではアークエンジェルを撃破するどころかこちらが全滅してしまう。

 

≪イザークさん、貴方とは戦いたくない!≫

 

「甘いことを言うなキラ・ヤマト!バルトフェルド隊長が言っていた筈だ。どちらかが滅びるまで戦うしかないとな!」

 

≪そんなこと貴方は思っていない!イザークさん、貴方だって戦いたくない筈だ!≫

 

「随分俺のことを語るな。数度の交流で俺の全てを知ったつもりか?・・・舐めるな!」

 

ストライクを蹴り飛ばし態勢を崩させる。そしてそのまま上段から斬りかかろうとした瞬間、上空からスカイグラスパーのミサイル攻撃を受けた。ストライクに集中しすぎて他の敵機への警戒が疎かになっていたのだ。

 

「クソッ、飛行機如きが・・・落ちろ!」

 

スラスターを吹かしストライクから距離を取りつつスカイグラスパーから放たれたビームをシールドで防ぎ、イーゲルシュテルンをスカイグラスパーに照準して放つ。スカイグラスパーは回避行動を取ろうとするが、左翼に被弾し黒煙を出しながら高度を落としていく。

 

≪カガリ!≫

 

ストライクは高度を落としていくスカイグラスパーに気を取られ動きが止まる。・・・好機だ!

 

「もらったぁ!」

 

スラスターを吹かしストライクへ肉薄しビームサーベルを振るう。・・・勝った!

 

≪もう・・・もう止めてください!≫

 

確実に当たると思ったビームサーベルが空振る。正面に見えていたストライクがいつの間にかデュエルの右側に立っている。サイドステップ?・・・わからない。どんな機動をしたんだ?

 

「このっ!」

 

横なぎにビームサーベルを振るうもしゃがんで回避され、逆にデュエルの右腕が肘から斬り落とされ、そのまま蹴り飛ばされる。

 

「ストライク、急に動きが。・・・もしや種割れか!?」

 

すぐに態勢を立て直し左腕のシールドをストライクに投げつけ、そのままビームサーベルを抜き斬りかかる。

しかし俺の投擲したシールドは難なく弾かれ、むしろデュエルの左腕を肩から斬られる結果になった。

 

≪僕は・・・殺したくなんてないんだ!≫

 

キラの叫ぶ声が聞こえる。次の瞬間、デュエルの両足が切り裂かれ胴体が砂の大地に落ちる。

唯一残った頭部のメインカメラはデュエルのコックピットへ向けビームサーベルを突き刺そうとするストライクの姿が映し出される。

 

ディアッカ、ニコル、アスラン。・・・母上。

すまない。・・・俺、死んだわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・しかしその死が訪れることはなかった。

ストライクのPS装甲がダウンすると共にビームサーベルの刃が消える。

 

PS装甲がダウンしたストライクは俺に止めを刺すことなく、スカイグラスパーが落ちたと思われる場所へ向かって行ってしまった。

 

「・・・見逃された?」

 

嫌な汗が身体中を流れる。俺はヘルメットを外し袖で汗を拭う。

 

≪こちらピートリー、被害甚大なれど輸送部隊の被害は軽微なり。デュエル、そちらの状況を送れ≫

 

ピートリーからの通信が入る。輸送部隊は無事戦域を離脱できたらしい。

俺は輸送部隊の無事と自身が死ななかったことへの安堵で脱力する。

 

「だが、この感情は一体?」

 

俺は生への喜びとは別のよくわからない感情を抱きながら、遠くへと飛び去るアークエンジェルを見つめるのだった。




ザフトって個人の階級が無いらしいけど、初対面の相手をどう呼ぶんだろう?
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